目標、砲戦距離四万!

登録日:2018/06/29 (金曜日) 18:05:00
更新日:2022/04/23 Sat 17:59:42
所要時間:約 2 分で読めます




「目標、砲戦距離四万!」とは、1993年に徳間文庫から発売された架空戦記短編集である。1991年に天山ブックス(大陸書房)から刊行された「逆転・太平洋戦史」の加筆・改題版にあたる。
今は亡き架空戦記小説の大家である佐藤大輔氏の小説家デビュー作で、氏の後の大ヒット作である「征途」「レッドサン・ブラッククロス」の原型になったともされる。


【概要】

第一章、作戦編。第二章、兵器編。第三章、幻想編。
に分かれており、それぞれ歴史をこうしたらこうなっていたかも、というシミュレーションが描かれる。
小説の前には史実の考察が入り、とてもわかりやすく史実を解説してくれるのでとてもありがたい。
内容のほうも、もしも真珠湾で第二次攻撃を行ったら? もしもジェット戦闘機が実用化できたら? もし超重爆富嶽が完成したら?
と、バリエーションに富んでいて、陸戦も海戦もあり、架空戦記小説のお手本のような作品でもある。
これから架空戦記小説を書こうと考えている方にとっては、ぜひ読むことをお勧めする一作である。
実際、架空戦記小説ブームに活躍された作家の中には本作を参考資料にした方もおり、後年に本作が与えた影響は決して小さくないと言えるだろう。

【収録作品】


第一部、作戦編。
●もしも真珠湾で第二次攻撃を行っていたら!?
●もしもミッドウェー作戦が成功していたら!?
●もしも栗田艦隊が反転していなければ!?
●もしも石原莞爾が現役であり続けていたら!?

第二部、兵器編。
〇もしもジェット戦闘機が実戦参加していたら!?
(橘花、秋水)
〇もしも重戦車を開発していたら!?
(二式改重戦車)
〇もしもあの軍艦が建造されていたら!? (※)
(超甲巡洋艦高千穂)

第三部、幻想編
◆もしも超重爆撃機「富嶽」が完成していたら!?
◆もしも超大和型戦艦が建造されていたら!? (※)

(※は徳間文庫版書下ろし)

【姉妹作】

『戦艦大和夜襲命令』

本作と同時期に出版された架空戦記本。こちらも天山ブックス版「逆転・太平洋戦史2」の加筆改題版。
ただしこちらは連作になっていて、珊瑚海海戦のifからトラック空襲までを続けてシミュレートし、最後は3つの選択肢の中から読者に選ばせる形で完結する。
また、後半には徳間文庫版書下ろしの「レッドサン・ブラッククロス外伝、フリードリヒ号を撃沈せよ」が掲載されている。RSBC第1巻より先に発表されており、小説版よりボードゲーム版に近い設定で描かれている。

『逆転・信長軍記』

太平洋戦争もの2作に続いて天山ブックスより出版された戦国もの。本能寺の変を生き延びた織田信長による天下統一をシミュレートしている。
本作は徳間文庫ではなくワニノベルス(KKベストセラーズ)から「覇王信長伝」として再刊され、第一次関ヶ原合戦で終わった天山ブックス版の続きも描かれた。織田政権下の日本が海外進出し、欧州諸国と対決することが示唆されていたが、そこまで到達する前に例によって3巻で中断。その後もタイトルと出版社を変えて最初から仕切り直すことを繰り返したが、結局佐藤氏の急逝によって未完に終わった。三州公は今も突撃を続けている。

【余談】

佐藤大輔先生らしいパロディやユーモアが散見されるので、何度も読み返して探してみるのも一興だろう。
わかりやすいところといえばB29のニックネームに某美少女戦士がつけられていたりする(天山ブックス版では別の少女向けアニメのネタだった)。


追記・修正は歴史のifに思いを寄せながら、佐藤大輔先生の功績に感謝して、お願いします。

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最終更新:2022年04月23日 17:59