SCP-049

登録日:2018/07/02 Mon 23:10:24
更新日:2023/08/28 Mon 21:01:48
所要時間:約 7 分で読めます







悲し――(間を置く) 多分。私はそんな事は思っていなかった……
同胞の医師が感染者となってしまったのは嘆かわしい事だが、仕事は続いていくさ。




SCP-049はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはEuclid。
項目名は『Plague Doctor (ペスト医師)』。


概要

項目名のペスト医師(Plague Doctor)は、14世紀から17世紀にかけて活動した黒死病の治療を専門とする医師のことである。
ただし医師とはいうが、その治療方法に効果があったわけではないと思われる。
彼らは特に17世紀には嘴のある仮面を被って、木の棒を携行し往診に向かっていた。
ペスト医師についてはSCP-049-ARCの『「ペスト医師/Plague Doctor」とは?』という項に詳しい。


SCP-049の外見。
画像出典:scp-wiki.net/scp-049
この画像は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

そんな見た目をしている約1.9mのSCP-049だが、本来のペスト医師と異なり、
こいつの頭の仮面や纏っているマントはこいつの体から生成されていると考えられている。
つまり絶対に人間ではありえないわけであるが、そうにもかかわらずX線では骨格は人間のそれに近いと言うことが判明している。

そんなSCP-049はマルチリンガルだが特に英語と中世フランス語を好んで会話する。
SCP-049は情に厚い性格をしているが、彼がPestilence(悪疫)と見做したものについては攻撃的になり、
止めようとしても止められない。
ただ、彼はラベンダーの香りを嗅ぐと落ち着く傾向があり、
そのため収容プロトコルでも彼が攻撃的な時はラベンダーの香りを散布するように求められている。
そしてその『悪疫』に感染していると思った人間に対して、一切抑制されない場合
SCP-049は触れただけで生命を止める能力を持ち(ただし本人はそんな能力であると思っていない)、
その後「ああなんてことだ、私は悪疫を治療できなかった」と嘆き悲しみ、
さらにその後肌見放さず持ち歩いている鞄のなかから、鞄のサイズに合わないでかい道具を取り出して、荒削りな治療めいた行為を行う。
その結果として(本人的には『成功』なのだが)SCP-049-2という実体をしばしば生み出す傾向にある。

失敗しようが成功しようがその時点で死んでいるが、『成功』した場合のSCP-049-2は
一切の記憶を失い、命令されたことしか出来ない生物学的機能も置換されまくったゾンビである。

すごく端折った言い方をすれば、「鳥の頭をしている、触れただけで人を殺せるバケモノ」が、
「どこぞの青だぬきの腹に付いているパンツみたいなバッグから道具を取り出して死体をゾンビに作り変える」ということ。

しかもSCP-049自身はあくまでこれを『善意』でやっているからたちが悪い。
いっそどこぞのテディベアみたいな、隠れた悪意があるほうがだいぶマシだった気がする。

医師の苦悩

出会い

SCP-049はフランス南部モントーバンで連続失踪事件の調査中に発見された。
SCP-049-2実体があたりに数体存在しており、職員と戦闘していたが、
SCP-049はそれに加わることなく日誌になにやら書き留めており、
SCP-049-2が全体無力化された折には自ら進んで財団の管理下に入った。

SCP-049は当初フランス語を話していたが、財団職員のハム博士が通訳を連れてこようとした際に
「私は英語も話せるよ」といい、ハム博士がドクターと名乗ったことから医療について語り始める。
ただしSCP-049曰く、「この世に病は『悪疫』ただ一つ」と語り、その治療のために彼は研究を続けていると語った。
SCP-049-2群は『治療』されたものであり、それはこの上なく効果的なのだ、しかしそれでもまだ研究は途上であると。

ハム博士はこの際、『非常に落ち着かない感覚を覚える』と報告しており、
SCP-049が持っていた杖を没収している。
SCP-049は当初不機嫌であったため、ハム博士は仕方なく、研究被検体を提供することにした。

研究生活

SCP-049は与えられた哺乳類を『治療』しては、それがSCP-049-2になるならないに関わらず、
それらをじっくり観察し、四次元バッグから日誌を取り出しては結果を書き留め続けていた。
提供された哺乳類には死んだヤギやオランウータン、牛、そしてDクラスが含まれる。
SCP-049は毎回成功するわけではないが、特に人体に近い生き物であることを要求している。

この際の研究は本当にハム博士からしたらなにがなんだかわからないのだが、
「お前の治療、元通りに戻ってないし一様にだらだらしたよくわからない生物になってるだけじゃね」と突っ込んだところ激昂されたため、
謝罪して落ち着かせている。

そしてハム博士がインタビューを続けているうちに、SCP-049はハム博士に「具合悪くない?」と尋ねた。
ハム博士の返答を聞いたSCP-049は、次の瞬間ハム博士を殺害し、SCP-049-2に作り変えた。

ハム博士の同僚シャーマン博士は激怒しながらもSCP-049にインタビューを敢行。
しかしそれは互いの口喧嘩に終わってしまった。
SCP-049は『悪疫』の流行に特に怯えている様子すら見せたが、自分の行ったことは救済であると繰り返し、
財団を『科学の徒ではなく感情の徒である』と認定するに至った。

悲しみ

そんなSCP-049だったが、イトキン博士が事件の三週間後にSCP-049にインタビューを行うと、
いつもどおり研究のための被検体を寄越せと言う他に、ハム博士について、明確に「死んだ」と認識していることを表明した。
そして同胞が『悪疫』に罹ったことを嘆き悲しんだようだが、一方で、それでも治療の研究は進んでいると確信を持ったとも。

Dr.イトキン: 君はがっかりする事になると思うよ。

SCP-049: (笑い声を上げる) おおドクター、それはどうかな。

トリビア

本項目のSCP-049は尖った杖を使ってジェスチャーをする様子を最初のインタビュー中に見せているが、
それは本項目を2018年5月10日に大規模に編集したdjkaktus氏*1のかつて執筆したジョーク項目、
『SCP-049-J - The Plague Fellow (ペスト野郎)』のセルフパロディである。

…が、このSCP-049-J自体、かつて書かれていたSCP-049のパロディ項目である。
本来のSCP-049は2009年12月10日にGabriel Jade氏によって執筆された項目であったが、
およそ9年後に抜本的に改稿されたことに伴い、メンバーの一部が過去版の保存を要請。
同時期に、SCP-JPでも改稿に伴い、旧版を特例で残すことをほぼ同時期に決定した。

その後、SCP-ENで特例でArchivedとして取り扱うことを決定し、SCP-JPもそれに合わせることに決定。
過去のバージョンはSCP-049-ARCとして扱うことになったのである。

つまり、現在のSCP-049は「旧SCP-049をパロったSCP-049-Jの要素を取り入れつつ、性質と性格を抜本的に変更した」ものである。
ただしこの改稿には賛否あったようで、RPC Authorityに移籍したメンバーは「djkaktusの改稿は初期のテイストを損なった」と批判していたりする。
なんだかよくわからない人型実体が好みか、きっといいやつなんだろうけどベクトルが間違ってて、しかも本人も満足していない実体が好みか、
その点で大きく新旧SCP-049の好みは変わってくるのだろう。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

本項目のコメント欄はSCP-049-ARC項と共通になっています。

+ タグ編集
  • タグ:
  • Euclid
  • SCP Foundation
  • SCP
  • ペスト医師
  • 黒死病
  • djkaktus
  • Gabriel Jade
  • SCP-049
  • ペスト
  • 医師
  • 医者

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年08月28日 21:01
添付ファイル

*1 SCP-2996の作者