通形ミリオ

登録日:2018/7/24 (水) 16:45:00
更新日:2024/04/15 Mon 15:41:26
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困ってる人がいたらお節介やいちゃうのはヒーローの基本だろ




通形ミリオ(とおがたミリオ)は、『僕のヒーローアカデミア』の登場人物である。
雄英高校ヒーロー科の3年生であり、全雄英生徒の頂点に立つ男。彼を含め上位3位までの生徒はBIG3と呼ばれ別格視されている。
その力量は既にプロクラス…どころか、相澤消太から俺の知る限りプロを含めてもNo.1に最も近い男と評されるほどの実力者である。

ヒーローネームは「ルミリオン」。「レミオロメンみたいでかっこいいだろ!」らしい。いるんだレミオロメン。
実にヒーローといったデザインのスーツだが胸元に光る1000000(百万)の数字プレートが目を引く。
これは「全て (all) とまでは行かなくても100万人 (million) は救ってみせる」という気概から。
あとスーパーマンみたいな真っ赤なマント。かっこいいが『Mr.インクレディブル』よろしくマントが原因で悲劇が起こらないことを祈る。
またこれら装備一式は本人の毛髪から作られた繊維なので“個性”の発動に呼応して一緒に透過する優れものなのである!やっぱりマント無駄なんじゃねえかな…


◆人物

180㎝を越える長身に鍛え抜かれた筋肉、そしてパックマンみたいな目をした特徴的な風貌の男。
犬を連れて冒険に出ていく漫画とか、二足歩行で歩く天才ビーグル犬の漫画とかああいう感じである。

性格は一言で言うとよく喋りよく笑うお節介さん。大仰な肩書に反してちょっと抜けていて親しみやすい、周りを明るくする男。どことなくオールマイトを彷彿とされる雰囲気を持っている。主人公・緑谷出久との共通点も多いが、自壊を厭わずがむしゃらに目標に向かっていく出久とは対照的に、彼の場合は実力・精神ともに地に足がついていることを感じさせるシーンが多い。
実はミリオは今でこそ首席の地位にいるが、1年の頃は優秀どころか扱いの難しい個性を持て余した最下位常連の落ちこぼれ生徒だったという
彼が才能開花の兆しを見せたのは2年時のインターンでサー・ナイトアイに師事し始めてからの事になる。
それでも現役で雄英の入試試験をクリアしているので、あくまで全国トップクラスという括りの中での落ちこぼれであることは留意されたし。

根津校長はミリオがトップに躍進する以前から彼を個性「ワン・フォー・オール」の後継者としてオールマイトに推薦していた。
曰く「決してほめられた成績じゃないが存在感のある生徒。彼の周りはよく笑い声が響いている。最低辺の成績でも笑顔だけは絶やさない点で君のヒーロー観にぴったりじゃないか?」と。


個性:透過

発動中はあらゆる物や攻撃をすり抜ける透過体質になれる個性。
葉隠の個性は「目には見えないが当たる、そこにいる」という透明人間化だが、ミリオは「目に見えるのになぜか当たらない」状態になる。
例えるならオビト神威ティキミックっぽい感じの能力。
発動中は実質無敵状態だが、調節を間違うと身に付けている服も落ちてしまい全裸を晒す羽目になるというデメリットが存在する。例えば1枚の壁を透過する際も、

1.こちら側の足以外全身を透過させる
2.向こう側の足の透過を解除して接地
3.残った方の足を透過させ壁抜け完了

といった風に、ごく簡単な動作にも一々いくつかの工程を必要とする超上級者向け個性。
笑い話ではなくこの制御の難しさから、同じ個性を持つ父親もヒーローになる夢を諦めている。自分達の個性は一歩間違えると身体が真っ二つになってしまう難しい個性だから、もしミリオがヒーローを目指すなら苦労するだろうと…

また全身を透過させると重力に従い地中に落ちる。そこでは光や音、空気をも透過してしまう為、見えない・聞こえない・空気を取り込めない、ただ落ちていく感覚だけが残るようになる。怖っ。
この状態で能力を解除すると質量のある物同士が弾き飛ばされる現象が発生し地上に飛び出すことになる。“壁の中にいる”状態にならなくてよかった。
言い換えると、地上に留まる為には、足の裏なりどこかしら一ヶ所は常に実体化させる必要があることを意味する。そのため、絨毯爆撃染みた遠距離攻撃を回避するには一旦地中に落ちる必要がある。
こうした理由から、ミリオは複数人を相手取る時は、まず遠距離攻撃持ちを優先的に処理している。
身体の向きやポーズでポイントを狙うことが可能で、ミリオはこれを利用して瞬間離脱から突然相手の背後に出現する戦闘パターン(傍目にはワープしたように見える)を持っている。
調節を損なうと体が真っ二つになるなり、悲惨な形で死ぬ。

制御難度以外にも欠点はある。
まず、個性自体に攻撃力が0なこと。
ガイドブックの限りでも、個性込のパワーは相澤やヴィラン連合のスピナー等、筋力的には常人に近い面々と同格のCとされており、
余り高い方ではない攻撃力を技術と疑似ワープによる射出スピードで補っている。
そして何より、その個性の特性上、サポートアイテムを着用しても個性発動と共にすり抜けてしまうので、装備による補強や防護がほぼ不可能な問題は大きい。
格闘技術によって柔らかい急所や防御が緩む瞬間を狙う隙を突くことである程度は対応出来るが、
実質毛髪を巻いただけの裸拳を実体化させて殴らざるを得ないに等しい以上、過度に硬い表皮の持ち主や火や毒液等を長時間纏える相手には、打つ手が無くなりかねない。
また、全身透過で地中に潜ればあらゆる攻撃を回避出来るものの、地表に戻る時に問題が生じる。
再び戻る際には一瞬であれ、地中から地表に出るまでの間は実体化した全身を無防備に晒さなければならないので、地中にまで影響が伝播するような個性や地表に強力な毒ガスを長時間散布する個性等、広範囲をする制圧タイプとも相性が悪い。
地中に潜っている間は上述の通り外部の情報を一切合切シャットアウトされてしまうので、
「地表がどうなっているかも分からない中で勢いよく飛び出したら、そこは致死性の毒ガスが充満地帯。思わず息継ぎをしてしまい、僅かとはいえ毒ガスを吸い込んでしまった」
なんて事態に陥るリスクが常に付き纏う訳である。


そんな扱いの難しい個性において何より必要なのは、周囲の動静を瞬時に判断し予測出来るだけの思考力とそれを支える経験値である。
上述の瞬間離脱時の出現ポイントの予測だけでなく、作中で披露したように地面を転がりつつ銃弾等の敵の攻撃を避ける場合も、転がって地面に接触する部位のみを実体化しつつ、自分の肉体の何所を攻撃が通過するか瞬時に予測して透過する。そんな繊細な制御を要求される。
ミリオはこの個性を格闘戦でも存分に使いこなし、相手のガードをすり抜けた瞬間に拳等の四肢の一部だけを実体化して当てる、防御が至極困難なすり抜け打撃へと昇華させている。

このピーキーな個性を後天的な努力で自在に操れるまで鍛え上げた半生に、ミリオは「弱い個性を強くした」と強い自信と誇りを持っており、自分たちがBIG3と呼ばれるようになったと聞いた時は「17年でやっとモノになってきたってことかね」と照れていた。



◆活躍

仮免を取得した(2名除く)A組の面々の前にヒーローインターンの有用性を説明するために天喰環・波動ねじれと共に現れ、その身を以て効力を実証した。
具体的にはミリオ一人vsA組全員で模擬戦闘を行い、開始から僅か5秒で半数を行動不能に追い込み残った半数も何の障害にもならず制圧された。*1

戦闘後は出久の要望を聞き入れサーの事務所へのインターン実習を口利きし、出久が試験に合格した事で晴れて彼の実習が開始した。
ちなみに元相棒であるオールマイトではなくミリオが橋渡し役になったのは過去の色々でオールマイトがサーと会いたがらなかったからである。

だが出久と共に行った周辺区域のパトロール初日に、ミリオは何かから逃げ出してきた包帯だらけの幼い少女、そして彼女を追ってきたと思しき現在サーが調査している案件に大きく関わる八斎會の若頭・オーバーホールと遭遇してしまう。サーの捜査に支障をきたさないため平静を崩さずその場をやり過ごそうとするが…


「いかな…いで…」

「……あの…娘さん、怯えてますけど」

「(デクくん、余計な勘繰りはよせ!) 行こう」

「こんな小さい子が声も出さず震えて怯えるって、普通じゃないと思うんですけど (そうだ、自然じゃない)」

「(やめろ…!明らかに詮索を嫌がってる!警戒が強まれば益々シッポを出さなくなる!無難にやり過ごすんだ!!)」

「(違う、先輩!その方が怪しまれる!不自然だ!ヒーローが怯えた子どもをやり過ごすわけがない) この子に何してるんですか?」


しかし、自分の手袋に手をかけようとしたオーバーホールの動作にエリが気づき、自ら出久から離れ彼の元に戻ったことで事態は沈静した。出久は気づいていなかったが、オーバーホールは殺意を放つことでエリを釣り出したのだ。
帰還後、サーにはこの遭遇で得た「オーバーホールの娘」という情報を報告した*2
その後、サー主催の会議でエリが個性破壊弾の材料として扱われ人体実験を受けている可能性を示唆され出久と共に激しく後悔、一刻も早いエリの保護を誓った。
結果としてその場では見過ごすことを選択したミリオだったが、証拠が固まっていないタイミングで虐待の疑いを追及すれば、治崎の警戒心を強め、今後の捜査を難航させてしまう恐れもあった。出久が震えるエリを本能的に見過ごすことができなかったこととは対照的に、あの時点では現実的で理性的な判断をしたと言えるだろう。



会議から数日後、ヒーローと警察の協同で行われた八斎會突入作戦では透過を活用して単身・最速でエリの元へ向かい逃走中だったオーバーホールに追いつき交戦する。
彼の他玄野・音本・酒木という部下が控えていた不利状況にも関わらず、エリを奪取し保護しながら彼らをまとめて圧倒した。
だが倒れ伏したはずの音本がエリを狙い放った銃弾から彼女を庇い、ミリオの身体から透過の個性は消失してしまったのだ。


「個性なんてものが備わってるから夢を見る、自分が何者かになれると精神に疾患を抱えるんだ」

「笑えるな!救おうとしたその子の力で、お前の培ってきたすべてが今!無に帰した!!」


個性を失ったミリオを嘲り、トドメを刺してエリを取り返そうとするオーバーホールだが、その手はいなされ拳打が彼を襲う。



「相手をよく見て動きを予測するんだ。これまでの全て、何も無駄にはなってない!」



「俺は依然、ルミリオンだ!!」



確かにお前は強敵で、俺から個性は失われ、援軍も期待できない。だからどうした?
残っているのは鍛えた身体と、師から叩き込まれた技と、負けられない理由だけ。個性の有る無しに関係なく俺はヒーローで、俺の後ろにはもう傷つけさせないと誓った子供がいる。

それから5分後、到着したサーたちが見たのは
敵に追いついてから10分、個性を消されてから5分、その間強大な敵を相手にしながらもたった1人で、救助対象に傷一つ付けず守り抜いたヒーローの姿だった。*3



事件の後は病院でサーの死を看取り涙するも、病室を訪ねた出久をいつも通りの陽気なテンションで出迎えた。
個性と師を失い笑ってられるような状況じゃないが、サーを思えばメソメソもしていられない。自分が暗い顔してたらエリちゃんも辛いだろうと…
そんなミリオの態度を見て出久は彼我のあまりに大きな差を実感し、言葉を絞り出す。



「もし…!」

「もし僕が”個性”を先輩に渡せるって言ったら…そしたら」



「いらないです」


「もし仮に本当にそんなことが可能で俺が譲ってもらったとしてさ、そしたら今度は君が苦労するだろう!」

「何をしょぼくれてんのか知らないけど君はよくやった!ヒーローデクだよ」


後輩の的外れで不器用な励ましを受け止め、ミリオはまた笑った。*4
このやりとりが描かれた162話のサブタイトルは『ふさわしき者』。『お前は誰よりも立派なヒーローになっている』というサーの言葉を胸に、彼は歩み続けることを誓った。

後に文化祭編でデクは自分を認めてくれたと解釈している

八斎會突入作戦終了後、彼は学校を休学。またヒーローとして活躍できる日は来るのだろうか…












ミリオが個性を失ってから数か月後、超常解放戦線の全国掃討作戦が行われるものの、死柄木の復活によりヒーローたちは苦戦を強いられる。

次々とヒーローたちが倒れていき、No.1ヒーローエンデヴァーも荼毘の”ある告白”によって戦意を失ったその時、空からワイヤーとともにベストジーニストが到着。なんとか敵連合のメンバーとマキアをワイヤーで拘束することに成功する。
しかしマキアの力は強大でその拘束をも引きちぎりにかかり、さらにそこに脳無たちが現れジーニストに襲いかかる。

周りに動けるものは誰もいない。絶体絶命かと思われたその時・・・




パ ーー ワ  ァ  ア!!!!!
「PO--WERR!!!!!」




地面から透過を使ったミリオが現れ、脳無たちを蹴散らしたのだった。

バブルガールから掃討作戦が行われることを聞いたミリオは作戦の前日、自分も役に立ちたいとエリちゃんに巻き戻しの力を自身に使ってもらえないかとお願いする。
エリちゃんは「その為にくんれんしてきた」と答え、2カ月間の訓練の成果を発揮し力を暴走させることなく、見事ミリオの個性を元に戻すことに成功した。

こうしてルミリオンは復活を果たし、また最高のヒーローへの道を歩みだしたのだった。


◆人間関係

落ちこぼれだったミリオを見い出し鍛え上げた偉大な師匠。
個性制御、格闘術、笑顔…サーが授けたたくさんの教えはミリオに受け継がれ、彼の血肉になっている。
ミリオをOFA継承者に推薦している。

  • 天喰環
雄英BIG3の1人。だがその高い実力に反して過剰に後ろ向きなメンタルの男。
ミリオとは小学生の頃からの親友で彼を太陽のような奴と比喩し尊敬している。
彼のヒーローネーム「太陽すら喰らう者(サンイーター)」はミリオのお前は俺なんかよりもっとすごいという言葉から取られている。

ナイトアイ事務所インターン生の先輩後輩関係にして、ミリオは知らないがオールマイトに「選ばれた男」と「選ばれなかった男」。
似てないようでどこか似ている「いつか最高のヒーローになる」2人。



◆余談

A組に単騎で無双したシーンでは、5秒か5分か意見が分かれていたせいかアニメではタイマーの演出が削除されていた。


「ワン・フォー・オール」という個性の強みの一つは継承を繰り返すため自前の個性と重ね掛けが可能という性質であり、オールマイトもかつて「もし少年が受け継いでいれば半冷半熱の上超パワーを持ったスーパーヒーローになるだろう」と話している。
そういう意味で、理論的に言えばミリオはOFAとすこぶる相性の良い人物の1人である。
個性関係なく極めて優れた身体能力と近接格闘能力を持つ一方で、攻撃力は鍛えた人間レベルでサポートアイテムで補強することも不可能*5という長所短所に上手く噛み合っているのだ。
普段は透過のみで必要な時だけOFAで強化補正するというやり方でも十分な脅威である。


ただし、実際は理論通りに行くかは怪しい。
まず、デクは個性の制御に失敗して両腕の靭帯に損傷を抱えており、それをサポートするためにサポートアイテムを装備しているのだが、ミリオにはそれができない。
つまり、後遺症の残る怪我をしたが最後、戦うのが困難になってしまうのである。

第二に、「ワン・フォー・オールは身体能力に限らず個性そのものも大幅に増幅させる上に、特異点を過ぎてしまった後は些細な感情の変化で容易に暴走してしまう特性を持つ、さらに個性持ちが継承した場合、寿命を削る」ことが明らかになったからである*6
ただでさえ精緻な制御を求められ、少し扱いを誤ると死んでしまう透過の個性とワン・フォー・オールのこの特性が合わさると極めて危険と考えられ、たゆまぬ努力で透過を物にしたミリオでも実戦レベルに到達出来るかは完全に未知数である。






追記・修正は痛くて辛くて苦しんでる女の子を包むためのマントを用意してからお願いします。

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最終更新:2024年04月15日 15:41

*1 不意を打ったとはいえOFA8%解放中の出久、硬化状態の切島さえ拳の一撃で気絶させている

*2 実際は違ったが父親を名乗る男の言葉なのでそのまま受け取っても仕方ない。

*3 付け加えるならオーバーホールは自分たちの攻撃がエリに当たることを躊躇していない。怪我、もしくは仮に死んだとしても個性で蘇生させられるからだ

*4 当然だがミリオは出久の個性が他人に受け渡し可能な例外的個性であるとは知らない。

*5 武器も透過してしまうため

*6 「ヒーローライジング」にて、ワン・フォー・オールを継承した爆豪勝己が自身の個性・爆破を使用した際、身体能力だけでなく個性も増幅される様子が描かれた。広範囲の岩を液状に溶解させる程にまで規模と温度が桁違いに増幅された爆破によって爆豪の腕に過剰な負担がかかっている様子がノベライズ版で言及されており、継承者自身の個性の制御がより困難になることが窺える