森蘭丸(戦国武将)

登録日:2018/11/06 Tue 20:47:54
更新日:2024/02/06 Tue 03:00:16
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森蘭丸(1565~1582)とは、安土桃山時代の人物。本名は「成利」。また「乱丸」と書かれることもある。
ぶっちゃけ、「戦国武将」と言えるほど史実において大した活躍はしていないのだが、その悲劇的な最期により高い人気を誇る。


史実における活躍

森可成の息子として尾張葉栗郡蓮台(現在の愛知県西部)に生まれ、織田信長の小姓を務める。

その後、母の妙向尼と共に石山本願寺との和睦において使者として活躍し、兄である長可が領地替えになったのに合わせて、
兄の旧領地である美濃兼山に5万石の領主として封じられる(ただし、実際には小姓として働き続けていたので領主としての仕事は行っていなかったようである)。

しかし、同年、信長と共に本能寺に逗留していた際に明智光秀による謀反が発生。
奮戦するも討ち取られる。享年18。


以上、これが確実視されている限りの蘭丸の活躍の全てである
少なくとも信長の下で行っていた仕事は「秘書」か「事務官」といったところであり、武将としての活躍は皆無である。
若くして亡くなってしまったこともあり、純粋に活躍だけを切り取ると、「将来有望な若手」止まりなのは仕方ないだろうが……。

ぶっちゃけ父である可成の方が、信長に対する戦働きでの貢献度は遥かに高い。また、兄の長可も甲州征伐に大きな勲功があった。
にもかかわらず、知名度では間違いなく蘭丸の一人勝ちである。人間、最期の時で全てが決まる、ということだろうか。


逸話

美少年であり、信長にはその美貌と高い才覚を愛され、寵愛されていた小姓というイメージが世間一般にも広まっており、
若くして主君のために散った「薄幸の美少年」という印象が強いのも、蘭丸が人気を博している理由の一つと思われるが、
容姿に関する資料も、信長の具体的な好みに関する資料も残されていないので、本当に美少年だったのかも本当に信長とそういう関係にあったのかも謎である。
当時の資料(または父や兄の人間兵器ぶり)を見る限り、筋骨隆々の大男だった可能性も十分ある。

また、信長に気に入られていた理由はもちろん蘭丸自身によるところもあるだろうが、
一族の多くが正真正銘命を懸けて働いていた森家の奉公に報いるためというのもほぼ確実にあるだろう*1

ちなみに、『美少年を寵愛する』という点で信長をホモだったのかと勘違いする方もいるかもしれないが、当時は男色はごく一般的な戦国大名の嗜みとされており、
両性愛者なのはむしろこの時代の武将では当然であった。
※著名な戦国大名では秀吉が男色を嗜まず、女性だけを愛したと伝わっているが、これは元々生まれの関係でそういう風習に馴染みがなかったせいとも言われる。


真偽の程は不明なものの、蘭丸の忠節ぶりを示す小姓の時のエピソードなどは多く伝わっており、
  • 重い献上品を運ぼうとした時に信長に「転ぶぞ」と注意され、信長の顔を立てるためにわざと盛大にすっころんで見せた
  • 信長が切った爪を捨てに行こうとした際、数が一つだけ足りないことに気が付き、信長にも協力してもらって足りなかった爪を探し出し、ちゃんと全て処分した*2
  • 信長が小姓たちを集めて「この刀の鞘の傷の数を当てられたらこれをやろう」という余興を始めた時、「殿が厠の時などにその刀を預かっていたから知っている」と不参加を表明し、感心した信長に刀を渡される
などなど、枚挙に暇がない。仮に作り話だったとしても、そんな話が創作されるほどには有能な小姓だったということかもしれない。
記録は残っていないとはいえ、父が名将だったことを差し引いても、信長に重用されていたのは事実だったようなので、
少なくとも「顔だけの無能」ということはなかったのではないだろうか。


光秀の謀反に早期から気付き信長に警告していた……という逸話もあるが、こちらは流石に真偽不明。
少なくとも本能寺の変発生当時の信長側の対応が完全に不意打ち状態だったのは確かなので、
気付いていたとしても、そこまでの確証があって信長に警告していたわけではないだろうし、
そもそも現代から見ても光秀の謀反はかなり突然のもので予兆は特にないため、早期に気付ける要素が(現在判明している限り)ロクにない。

また、主に創作界隈では「光秀と不仲だった」「信長の寵愛を笠に着て光秀に高圧的に接していた」などと描かれることもあるが、史料的な根拠はない。
光秀とは職掌が全く違うので直接関わる機会もほとんどなかったであろうし、
光秀の功績や年齢差を考えると、いくら信長の寵愛があっても光秀に強く出ることなどなかっただろう。
全くありえないとまでは言えないが、それぐらい関係性の薄い間柄である。


フィクションにおける森蘭丸

この時代周りの人々は作品によってかなり性格に改変が加えられるのだが、蘭丸に関しては「美少年」「信長に忠実」の2点はほぼ全く外されておらず、
作品間の扱いに差異の少ない人物であると言える。
なお、よく知られる絵において蘭丸が本能寺の変で使用していた武器は「槍」なのだが、なぜかゲームに置いて槍を武器にしている蘭丸は滅多にいない


ゲーム作品

森蘭丸(戦国無双)の項目も参照。
刀を武器にする信長の近習。妄信的に信長を信奉しているタイプ。

森蘭丸(戦国BASARA)の項目も参照。
こちらは弓を武器にするこまっしゃくれたガキ。
どちらかというと「無邪気であるがゆえに信長以外を信じていない」タイプで無双版とは少しキャラクターの描き方が異なる。

  • 婆娑羅2
弾幕STGの方のバサラ。線の細いイケメンとして描かれている。ラスボスが信長なので、信長を討伐する最終面の中ボスとして登場する。
STGという事もあってか髑髏をあしらった戦闘機で出陣し、セリフは登場時の字幕のみだが撃破すると「ぐはっ!」という野太い声が聞こえる。
特筆すべき事として、弟の「坊丸」「力丸」も同じステージにネームド武将として登場する事が挙げられる。顔グラもセリフもないが
兄・長可と弟・忠政も登場するが、こちらは前田利家の配下。特に長可はワイルドなイケメンとして描かれ、拡散バズーカを持ったこれまたイケメンな人型ロボで出陣する。

ピンク髪。どちらかというとイケメン度を重視しており、ちょっと珍しいタイプかもしれない。
武器は銃剣。「小姓」というよりは、「執事」をイメージしたデザインになっている。

  • 信長の野望シリーズ
「美少年」というよりは「美青年」に近いタイプだろうか。確かに没年からすると、こっちの方が妥当かも知れない。
戦争にはあまり向いていないが、内政や外務などに高い適性を発揮するタイプ。

織田信長が悪役のため、その手先として登場。
鬼武者3』では時空を超えた未来のフランスに飛ばされ、そこで改造手術を受けて幻魔と化す。

織田軍初期配置のユニットの一人。本作はエロゲーのくせに割と史実通り男性の武将もいるが、エロゲーらしくクールビューティの美女である。
しかしせっかく女体化したのに作中のエロシーンは覗きイベントだけで本番なしとわざわざ女体化した意味がよく分からないことになっている。
なお、蘭丸でなく「乱丸」という名だが史実でもこちらの方が正しいという異説もある。


漫画作品

  • 第六天魔王織田信長
「森蘭丸が主人公」という珍しい視点の漫画。
この作品における信長は完全な暴君として描かれており、最後まで忠義を果たすのは蘭丸のみとなっている。
というか、ほぼ完全な妄信レベルになっており、かなり異常な関係に見える。

金髪のイケメン。ドS戦闘狂パイロマニアの信長とシラフで話し合えるキケンな美少年(ちなみに兄・長可は気が合いすぎて喧嘩仲間になっている始末)。
幼い頃から主君より年上の光秀を只管にいじっている。

幼くして気立てがよく絶世の美貌を有する。というか、蘭丸の美男子設定が逆輸入されたため父・可成が作中一のモテ男になった。
父の壮絶な死に伴い、兄と共に信長に仕える。母親の腹の中に自制心を置き忘れてきた兄をどついてでも止めるよくできた弟。

  • タイムスキップ真央ちゃん
現代から精神のみが戦国時代に転移した少女・生田真央の依代となる。「乱丸」表記。兄の長可も登場する。
当初は普遍的なイメージの信長の忠臣だったが、忍者の少女・かざみとの出会いや、真央の影響を受けて徐々に変わっていき……

小説作品

  • 魔界水滸伝外伝 白銀の神話
後世に伝わる程の美形ではないが、どこか儚げな少年として登場。
未来から来て信長役を務める主人公北斗多一郎(八岐大蛇の化身)の見ている「常人には見えない世界(霊的な視点)」をなぜか目視して以来彼の興味を引き、最終的に彼と相思相愛となる。
恐怖耐性は低いものの、なんだかんだと決して逃げることはなく信長に仕え続け、本能寺の戦いで前線に立つも深手を負い介錯された。

蘭丸の役割を継ぐ「襲名者」で、侍女型自動人形の「森・蘭丸」。
ロボで大人っぽい女性とあまり蘭丸らしくないが、この世界の武将襲名者は秀吉等半分くらい女性なので(光秀など男性武将もいる)問題はない。
この世界にも一応兄の襲名者はいるが縁はなく、信長も女性でかつ諸事情により身動きが取れないため単なる主従関係である。
実は古代に生まれた「古式自動人形」の生き残りで、古式が住む内裏からの派遣者でもある。そのため「世界の秘密」にも詳しく、初登場時は独自の判断で主役陣営を止めるため対談に挑んだ。
だが主役陣は止まらず、光秀の代わりに本能寺に突入。止めるため奮闘するも敗れたが、自害しかけるも踏みとどまり生存。最終盤で情報提供を行った。


実写作品

  • 仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦
鎧武編「戦極バトルロワイヤル!」に登場した並行世界「戦極世界」の武将の一人「ランマル」。
武神オーズと同盟を組み、京都一帯(たぶん)を支配する武将ノブナガに使える美しき…って女性じゃねえか!
二丁拳銃を武器に闘う気の強い美女。BASARA知識しかない人が見たらノウヒメだと思うだろう。
ノブナガがホンノージ教会で武神鎧武軍に討たれ、落剝していたところを武神バロンこと駆紋戒斗/仮面ライダーバロンの軍門に下る。
エピローグでは女を捨てることを捨てるという決意を示した。

究極の眼魂を創造するために用いられた100個のゴースト眼魂の一つとして森蘭丸のゴースト眼魂が登場。
デザインは一般公募されたもので、史実の蘭丸の家紋をモチーフとしている。

  • 本能寺ホテル
演:濱田岳。イケメンといえばイケメンではあるが、どちらかというとひょうきんなイメージが強く押し出されている珍しい蘭丸である。というか初見だと秀吉と勘違いするかもしれない。
「魔王」信長に怯える小人物だったが、未来から来た主人公を自分の立場が危うくなっても守ろうとする心優しい性格。そして最後には自分たちの運命を聞かされても、逃げようとせず死に装束をまとって本能寺に残った信長と共に殉じることを選んだ忠義の士でもある。


追記・修正は最後までやり遂げる人にお願いします。

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最終更新:2024年02月06日 03:00

*1 信長は功績をあげた者は当然として、こういった者達には一族含めてかなりの温情を見せている。

*2 実はよく似た話が「韓非子」にある。ある君主(韓の昭侯)が爪を切り、一つを握ったまま「爪が一つ飛んだ」と言いだして側近たちに探させた。本人が隠しているから、当然側近は見つけられない。すると、一人がこっそり自分の爪を切って「見つけました」と差し出した。昭侯はそれで側近が誠実でないことを悟ったという。