過去作の再現・セルフオマージュ(ゲーム)

登録日:2019/04/04 thu 22:53:12
更新日:2024/02/15 Thu 19:12:09
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概要

シリーズが多く重なった作品や、同一世界で長い時間が経過しているゲーム作品では、
しばしば過去作にあったステージや演出が少し形を変えて、もしくはほぼそのまま再登場する事がある。
それは時間経過の演出、シリーズ古参プレイヤーへのファンサービスなど意図は様々であるが、
総じてプレイした者をニヤリとさせる小粋な演出として受け入れられている。

ファンサービス的な要素を含まないにしても、「ある地点の様子を同じ視点で描く」という演出は、
時間経過やそこで何が起きてどうなったかを分かりやすく示す技法として広く用いられており*1
単一の作品として見ても十分に秀逸な演出と言える。


代表例

ここでは旧式ハードで発売されたソフトのリマスターやリメイクではなく、シリーズの新作としてリリースされた作品の描写のみを扱う。
また、過去作の舞台がそっくりそのまま連続登場しているだけのような、過去作との繋がり等を意識した演出として使われていない例*2
完全にシリーズのお約束として定着したイベント等*3、原作付きゲームやお祭りゲーの類に於ける原作再現は含めない。


元々AC3という作品自体が初代ACのセルフオマージュ的な作品であるが、
その集大成とも言えるのが最終ミッションの『中枢侵入』である。
当ミッションは空中に浮かぶブロックを足場に長い竪穴を上り、その後下りる事で破壊目標である地下世界を統べる巨大コンピュータを破壊しに向かうのだが、
これは初代ACの最終ミッション『レイヴンズネスト』とほぼ同一の構図である。
また竪穴を下る際にもクレスト社の代表から、
「例え偽りであっても人間には秩序が必要である」「それを破壊する主人公は、その後の世界の行く末を見届ける義務がある」という旨のメッセージが届くが、
これも『レイヴンズネスト』でコンピュータ破壊後にAIが主人公に語り掛ける発言とほぼ同じものである。

全体的なストーリー、そして最終ミッションの流れこそ初代と似通っているが、
クリア後に陰惨なものが残る初代に対して、『3』は非常に爽やかなものとなっている。


上記AC3の直系の続編作。
初代に対するAC3ほど露骨ではないにせよ、こちらは初代シリーズ最終作である、
ARMORED CORE MASTER OF ARENAのオマージュ要素が各所で見られる。
本作ラストミッションである『未踏査地区最深部侵入』においては、
今まで謎めいた存在であったAI研究所の女性であるセレ・クロワールと、もう一つのレイヤードの管理者たるIBISの通信音声が重なったり、
ラスボスエリア直前に複数のゲートを只管潜り抜けていくといった構図や演出は、
やはり上記ACMOAのラストミッションと非常に似通ったものである。


主人公らの宿敵となる主任とキャロル率いる「企業」やその正体、目的が初代ACのレイヴンズネストと似通っており、
またキャロルも初代ACで登場した台詞の改変版のような発言をしており、初代のオマージュと考えられる。
またこれを根拠に、『「企業」が後のレイヴンズネストであり、ACVの世界は後の初代に繋がる』と考える者も居る。
実際には諸々の設定の齟齬から多くのプレイヤーから懐疑的に見られているが。


上記ACVの約100年後が舞台である本作では、ACVに登場したステージのその後と見られるステージがいくつかある。
ほとんどが水没していたり経年劣化が進行していたりと、地形や一部の建造物に名残を残す程度だが、
見覚えのある地形が寂し気な姿になっている様は一種の感慨を覚えるだろう。
また「財団」も、最終ミッションにてこれまた初代でAIが語った内容と似た言葉を主人公に言い放つシーンがある。


本作の最終ミッション『メガリス』は、
『敵要塞の通路に戦闘機で突入し、ミサイルの発射口から脱出、爆炎に包まれる敵要塞を背に主人公は空目がけて脱出する』というメチャクチャなものだが、
この流れは『2』の最終ミッションとほぼ同一である。


リアル時間で12年振りのナンバリング新作にして、『04』以来となる作中経過時間で13年振りのユージア大陸が舞台となる作品。
『04』や『5』と密接な関係にあり、特に『04』と同一の地域が舞台という事で、どこかで見た地形や地名が多数登場する。
その最たる例がミッション12「ストーンヘンジ防衛」とミッション15「ファーバンティ攻略戦」である。

前者は『04』で主人公らが破壊した巨大地対空レールガン『ストーンヘンジ』を再起動し、敵の巨大航空機撃破に使用するというもので、
過去に主人公らの最大の脅威として立ちはだかり苦労の末に破壊した兵器を、今度は自軍の最後の希望として敵軍から守り抜くという、
いわゆるリバースミッションとなっている。
何の因果か、ストーンヘンジ撃破ミッションは 『04』でもミッション12だった。

後者は、これまた『04』にて行われた敵国エルジアの首都ファーバンティを襲撃・制圧するというミッションと全く同一の構図である。
またこの作戦が実行されたのも、『04』と同じ9月19日である。
ハードの進歩により描画が非常に精密になった事に加え、小惑星落着の被害により水没していた地域の損傷がより激しくなっている、
『04』と全く同じ位置に同じ敵が配置されているなど、『04』のプレイヤーにはたまらない演出が盛り込まれている。

ストーリー終盤には、『5』にて主人公らを乗せた空母ケストレルのアンダーセン艦長が、意外極まる形で再登場する。

また、DLCミッションの重要人物が『04』で主人公らが殲滅したエイギル艦隊旗艦艦長を務め、『04』主人公と交戦した過去を持つ人物となっている。

総じて、これもまた過去のナンバリング作品からのゲスト出演てんこ盛り、ファンサービス山盛りの作品になっている。


  • メタルギアソリッド2
本編となる『プラント編』は、そのストーリー展開や発生するイベント、施設の間取りなどがが尽く前作と酷似している。
しかしこれは単なるファンサービスなどではなく、大きな陰謀が隠されており……。


ソリッド・スネークの物語の完結編という事で、過去のMGSシリーズに登場した演出が多数存在する。
まず敵の4人のボスのコードネームが、MGS1のボスと同一である*4
終盤にはMGS1の舞台となったシャドーモセス島に上陸、のっけからMGS1冒頭のプレイ画面という形でスネークの回想が入る
島はMGS1のラストで放棄されたまま9年が経過した事で劣化した各種機材や地形、かつてスネークが破壊したままの兵器がそのまま残されていたり、
スネークが監視カメラの存在に気付くムービーが入った所に行くと、当時と同じアングルでそのカメラが壁から剥がれ落ちるムービーが入る、
ディスクの入れ替えが発生した場所で ディスク交換を促される(そして今やそれが不要になった事で時代の進歩を感心される)
MGS1と全く同じ位置に同じアイテムが落ちていたりなど、時間の流れを感じさせる演出がこれでもかと投入されている。

また最終ステージで戦うボス、スクリーミングマンティスに対し、似た戦法を使うMGS1のボス、サイコマンティスと同じ対処法を使うと、
「まさかサイコマンティスの時と同じ対処法を使っているのではないか」と指摘される、
スクリーミングマンティス撃破後はサイコマンティスの幽霊が出現しMGS1と同じ「超能力」を使う、
しかしハードがPS1からPS3に移った事、それに伴いメモカが無くなった事に困惑する など、ネタに寄った演出も多数ある。

上記のメタルギアシリーズとは異なるが、コナミを退社した小島監督が立ち上げたゲーム。
ゲームが好きで、何かと物事をゲーム用語で表現するキャラクターが「ゲームオーバー」という例えを出すのだが、その時のロゴがMGS1のそれと同じである。
また、本作では世界中の他のプレイヤーがどんな場所を通ったかが分かる足跡を残せるシステムがあるのだが、そのシステムの説明時に「お前が潜入捜査官だったら失格だが」とわざわざ一言付けたり、
主人公が運送業者にも関わらず段ボールが存在しない世界観なのだが、敵陣に侵入して段ボールを見つけた主人公がすごくノリノリで段ボールの中に入るがその間に敵がやってきてステルス出来なくなるなど、
ところどころでメタルギアとの繋がりを見せる要素がある。


  • ラチェット&クランク3
チュートリアルステージとなる惑星ベルディンは、初代ラチェット&クランクのチュートリアルステージと同一の惑星のほぼ同一地域である。
そのため、スタート位置や辿るルートこそ異なるが、そのゴール地点は初代で主人公が住んでいたガレージ(が破壊された跡地)となっており、
そこに至る道も初代で見た覚えるある懐かしいものとなっている。
因みによく見ると、初代でガレージに貼ってあった「キャプテン・クォーク」のポスターが同じ場所に残っているのが確認できる*5

また『3』の舞台は初代と同一の銀河系であるため、初代と同じ惑星の別地域も探索エリアとして登場する。
ただしこれらは名前こそ同一であるがステージ演出としては特に類似性が無いためここでは割愛する。


  • ラチェット&クランク THE GAME
ラチェット&クランクシリーズのリブート作である本作は、初代のストーリーをなぞりつつ新要素を盛り込んだ作品である。
その性質上、ステージ構成がほぼそのまま再現されているものもあれば、
初代同様に惑星ケルバンのフィットネスコース前に設置されているクォークを模したロボット"クォークボット"を攻撃すると、
初代ではクォークボットを破壊するとスキルポイント*6が獲得できた事を受けてか「壊してもスキルポイントあげないぞ!」と言い返される、
仲間の一人がガラクチックレンジャー本部のトレーニングルームでラチェット&クランク3の惑星リルガールで遊んでいるなどのネタも用意されている。


  • マリオシリーズ
スーパーマリオギャラクシー2ではスーパーマリオ64の「バッタンキングのとりで」の再現ステージとして「なつかしの砦ギャラクシー」が登場。
『64』と同じ喋り方をする赤ボムが登場したり、当時のショートカットがそのまま使えたりする。



ドラゴンクエストXでは期間限定のイベントでDQ1DQ3のラスダン・ラスボス戦を体験できるイベントが行われた。
ドラゴンクエストXI(オリジナルPS4版を除く)では「時渡りの迷宮」を進むことで「冒険の書の祭壇」から過去のDQシリーズの場面場面で起こる怪事件を解決しに行くことができる。



  • ファンタシースター 千年紀の終りに
ファンタシースターの第1シリーズ、いわゆる『アルゴル太陽系編』の完結作に当たる本作では、シリーズの総決算として、様々な過去作ネタが用意されているが、その中でも趣深いのが、中盤のダンジョン『エアキャッスル』である。
中ボスとして復活した初代の黒幕と戦うべく、2000年前の遺跡に陣取る敵に切り込んでいく、と言う展開の中で、ダンジョン終盤の地形が、初代のそれを再現している。

ここで特筆すべきは、初代はいわゆる『3DダンジョンRPG』式で、それ以降の作品は、ドラクエタイプのオーソドックスな見下ろし型のRPGであるという点。
つまり3Dの構造を2Dに落とし込んだマップを、そのまま進んでいくという形で、初代経験者にピンと来させる作りになっている。
城と言うに相応しい、描き込まれた広いフロアを進んできたところで、唐突に狭くて単純な小部屋を連続する形になり、通常のプレイヤーにはボス戦が近い事を仄めかすのみだが、シリーズファンには、同時に懐かしさを感じさせる、ハイセンスなセルフオマージュと言える。

  • 星のカービィシリーズ
過去作のキャラのイラストがちょろっと出てくる、過去作のボスに類似した技を繰り出すは熊崎が関わった作品のお家芸。
『ウルトラスーパーデラックス』の『大王の逆襲』のステージ2は初代フロートアイランズと酷似した構造になっている。
『ロボボプラネット』ではラスボスの存在そのもの過去作のとあるモノを再現しようとして失敗したとんでもない代物。また、『メタナイトの逆襲』のChapter7とBGMや強制スクロールまで同じエリアが存在する(落とし穴はトゲに変更されている)。
『スターアライズ』はドリームフレンズという形で過去作マップの再現を行った。転がってくる岩は団子ワドルディに置き換えられているが
そして、主人公カービィのルーツも匂わせる演出が……
星のカービィ64で初出、その強烈な難易度と不気味なBGMから多くのプレイヤーに恐れられたこうじょうけんがくも、
そのBGMや即死トラップの数々と共に度々新作で再現されている。
また、スタアラのエクストラスターδの最終エリアは…


遥かな時間軸の中で同世界を何周もしているため、セルフオマージュを多用している。


ステージ進行が過去作と大幅に異なる関係でタイトルも変更になったジャンピングフラッシュシリーズの3作目。
過去作が「ステージ上に散らばる特定のアイテムを集めながらゴールを目指す」という面クリア方式なのに対し、本作では「様々な依頼を受けて、依頼毎に用意されたステージの中でミッションをこなす」というミッションクリア方式なのだが、
その中には「過去作の時代を舞台にした映画を作る」という名目で過去作の面クリア方式を再現するステージが存在する。


過去作のオマージュ、再現、キャラクターや建造物の行く末がこれでもかと詰め込まれたシリーズ最終作。
燃え尽き、寂れ、壊れた世界に残されたものを辿る道程は、かつての記憶を火種とし、没入感と寂寥感を増す見事な演出となっている。
火継ぎを放棄して友との約束を果たした常識ねえ奴が原因な気もするが、それはささいなことだろう。


ロボットではなく、自我を持つプログラム「ネットナビ」が活躍するシリーズ。以前に発売されていた「無印」、「」、「DASH」の各ロックマンシリーズから要素を引っ張り、再構成したような形になっている。割合としては無印シリーズが多め。
無印シリーズのロボットの多くがネットナビとして登場。原型を感じさせながらも大胆なアレンジで元を知っているプレイヤーを楽しませてくれる。また、人間キャラにも以前のシリーズを元にしたものがあり、主人公である光熱斗(光=ライト)、コサック博士やシューなどなど。
メタ的な部分以外でも、無印ロックマンシリーズの「機械」を「インターネット」に置き換えたら?という構図になっている所があり*7、以前のシリーズであまり見られなかった「人間」と「ロボット」の関係を(「ロボット」が「ネットナビ」になっているが)重点的に描写している点は興味深いと言える。









追記修正は過去に思いを馳せながらお願いします。

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最終更新:2024年02月15日 19:12

*1 ゲーム・過去作オマージュとは異なるが、例えば映画「サマーウォーズ」のラブマシーンとの決戦前、陣内邸の一室にスーパーコンピューターが運び込まれるシーンでは、『スパコンの梱包が解かれる』→『スパコンのセットアップが完了する』→『冷却用の氷が運び込まれ、スパコンが稼働する』といった流れが効果的に描かれている。

*2 例:アーマード・コア4のメガリスとその周辺、ゴッドイーターのアナグラや贖罪の街などのマップ。これらは続編にも登場しているが、これらはストーリー中では特に「過去作との関わりの深い場所」としては扱われておらず、単純なマップの流用に近い。

*3 例:エースコンバットシリーズに於ける最序盤ミッション。多くの作品は『友軍の拠点に迫る爆撃機の編隊の迎撃』という趣旨のミッションから始まる。

*4 オクトパス・ウルフ・マンティス・レイブン。戦法や外見はマンティス以外全く類似は無いが。

*5 このポスターは、クォークの正体・実態を知ったためか、初代のラストステージとして再度ベルディンに訪れた際には剥がされていた。貼り直したのだろうか?

*6 シリーズ伝統の隠し要素の一つ。ゲーム中で特別な行動を取ると獲得できるポイントで、取得すると隠し要素が開放される。

*7 実際、元々ロボット工学とインターネット工学が競うように発展していたが、共倒れを防ぐためインターネット工学に一本化されたという設定がある。ここでロボット工学が選ばれていたら無印ロックマンに繋がっていたのかも知れない。