ついに、知りたがっていた琴美の過去に触れた小鳥にも──そして、高木にも変化が訪れようとしていた。
2年の学園祭を前に友人の綾乃と美奈の許へやって来た2人…晶菜と寛子は学園祭で御披露目予定の自分達のバンドのボーカルを探しており、それを聞いて綾乃と美奈が白羽の矢を立てたのが当の小鳥だったのだ。
上がり症で自分の歌唱力にも全くの自信を持っていないと言う小鳥だったが、テストとして連れてこられたカラオケを聞いての2人の反応は…絶賛の嵐で、土下座する勢いで頭を下げてくる程。
それでも、悩みつつも断るつもりでいた小鳥だったのだがTVでちょっと前に高木の配慮でステージを見させてもらったばかりのブラックニードルが 凄い勢いで人気を上げている様子を見て、
琴美の過去の真相を知ると共に自らも垣間見たアイドルの世界への憧れからか、ボーカルを引き受ける条件として未発表に終わった“琴美の歌”をレパートリーに加えてもらうことを条件に承諾するのだった。
早速、バンドのリーダーである砂千の家で練習を開始するが……小鳥も加えたバンドの相性は抜群で思わず笑みが浮かぶ程。
緊張もすっかり解れていた所に差し入れをもってきた綾乃と美奈も合流して盛り上がっている中で砂千が問いかけてくる。
「音無さん… 音無って音無琴美の親戚か何か…?」
──学園祭当日。
小鳥から招待を受けた高木は、かつてはスカウトのために学校巡りをしていたことを懐かしみながらも足を運んでいた。
高木の心に浮かぶのは、ブラックニードルの単独野外ライブを前に黒井から誘われた二人でのあのステージの復活の提案。
そんなことを考えながら目撃した小鳥のステージ…そこで歌われた琴美の歌。
ライブを終えた小鳥とのやり取りの中で何かを決意した高木は返答を曖昧にしていた一朗ちゃんに自ら連絡を取り、黒井に今度のブラックニードルのライブに小鳥を出してくれるようにと依頼する。
一方、何も知らされないままにレッスンスタジオへと導かれた小鳥は本物のブラックニードルと遭遇したことも、リーダーの一沙が既に自分の名前を知っていたことにも驚かされたが、何よりも自分が出演するのがブラックニードルのステージだということを聞かされて激しく動揺する。
高木本人からの改めての依頼や、綾乃と美奈に学園祭以降、すっかりと打ち解けた砂千達に励まされ、懸念となっていた琴美と自分の違いや高木が自分に出演を依頼した本心を確認した小鳥は遂にライブの当日を迎える。
開演前の段階で企画の成功を確定させ、上司からの労いの言葉と共に“自分達”の今後の展望に思わず笑みを浮かべていた黒井だったが、その直後に聞かされた高木の退社の話を聞き顔色を変えて飛び出していく。
──一方、ステージでは最初から飛ばしたブラックニードルのパフォーマンスにより会場はいきなり最高潮に。
自らの消えかけていた夢の復活…その足掛かりとなるステージの実現だったが、高木との話を優先させる黒井。
しかし、そこで告げられたのは理想を同じくしていた筈の盟友からのそれぞれの道を進もうという別離を告げる言葉だった。
「前に進むんだ 私は私の道を お前はお前の道を」
…そして、ブラックニードルにより呼び込まれた予告もされていなかったスペシャルゲストとなる幻のアイドル──KOTORIがステージに立つ。
スタッフと友人達、砂千の両親等を除けばKOTORIが誰かを知る者は会場に居らず、当然のように戸惑いの声が上がっていたが歌が始まると観客の多くが彼女の歌声に涙を流し、彼女の存在に目を奪われ、彼女の背中に翼が広がる幻を見た。
そして、音無琴美を知る者達の反応は…。
──夢のステージは終わった。
高木に先んじて、黒井は大手プロダクションを退社して独立への道を歩むことを決断。
あのステージが新しい始まりとなったのは確かだが、黒井と離れることとなり動揺したブラックニードル・・・一沙であったが、黒井からなりの最高級の賛辞を受け取ると頭を下げ、歓迎されていないと自重しつつも国外(オーストリア)へと旅立つプロデューサーの背中を見送るのだった。
そして、小鳥にも最後の決断の時が迫っていた。
──高木からの正式なデビューの依頼の確認。
…それも、自分が今の大手プロダクションから退社することを明かされた上で、自分についてくるのならば従兄弟と立ち上げる新プロダクションの第1号アイドルにならないか?との誘いを受けたのだった。
クリスマスイブの夜。
真摯に悩んだ末に小鳥が高木に告げた答えはアイドルにはならない…ということ。
──こうして、高木と小鳥。
……いや、音無親子の19年越しの物語は幕を降ろした──筈だった。
──年が明けて9月にもなったというのに、未だに事務所がまともに稼働すらしていない765プロ。
圧倒的に人手が足りないのに創業者である筈の順一朗はハワイ旅行海外視察から帰って来ず、居残った順二朗は諸々の仕事に追われていたのだが、そんな中で少なくとも事務仕事を任せられるスタッフをと採用を出す中で、無名な事務所で薄給では誰も募集してくれないとボヤいていた履歴書の中に…彼女の名前があった。
「座って」
「失礼します」
「では改めて お名前は?」
「音無小鳥です」
「まずは我が社の志望動機を聞かせてもらおうか」
「はい」
「私はこの業界が──特にアイドルが大好きです」
「私の中にある この大好きって気持ちを多くの人に繋げて届けるそんな仕事がしたいと──」
【後半での主な登場人物達とその動向】
学園祭でのバンド活動──特に、両親が揃って音無琴美のファンであった砂千との出会いと、他ならぬ小鳥と会ったことにより前に進むことを決意した高木の依頼を受けてKOTORIとしてプロのステージに立つことに。
…しかし、ステージ後の高木からのアイドルになってみないか?との問いへの答えは一沙や砂千は後押しをしてくれていたものの否であった。
しかし、彼女が悩んだ末に出したその答えは決して後ろ向きでもなければ憧れだったアイドルを否定するものでもなかった。
小鳥をボーカルに迎えて学園祭にて披露されたバンドのリーダー。眼鏡っ娘。
担当はドラムで、大人しそうな見た目に反して情熱的な演奏を見せる。
自宅は音楽講師をしている母親のスタジオを兼ねているのか防音仕様となっており、バンド練習も伸び伸びと行える程。
実は、砂千の両親は揃って19年前の音無琴美の突然の失踪により中止となってしまったライブ会場にて出会った琴美の熱狂的なファンであり、業界にとっては口にするのも憚れる汚点となっていた琴美の存在がファンにとっては未だに“いい意味で忘れることの出来ない思い出”として残っていることを小鳥(や高木)は知ることに。
砂千自身も両親譲りの音無琴美のファンであったことと思慮深い性格もあってか、知り合った後には小鳥の最も頼りになる相談相手となっていった。
ブラックニードルのリーダー。
元は反骨心から発した発奮は、目に見える結果として現れたことでプロデューサー(黒井)への思慕として現れるまでに。
故に、自分を発奮させる切っ掛けとなった、かつて黒井と高木がプロデュースをしていた音無琴美の娘である小鳥との共演を聞いた後もその存在を率先して受け入れ、アイドルとしての在り方を聞いた。
小鳥の答えは一沙が思うようなものではなかったものの、彼女自身もKOTORIのステージを見守った後に「少しだけわかった気がします」と答え、小鳥にアイドルを続けてくれるようにと声をかける。
学園祭で琴美の歌を歌った小鳥の姿に衝撃を受けると共に、自らも19年前からやめていた前に進むことを始めることを決意。
黒井に小鳥をブラックニードルのステージに出してくれることを頼む一方で、自分の身を案じ続けていた黒井の気持ちを理解していながらも、もう自分の力は必要ないとして順一朗が設立予定の新事務所である765プロへの移籍の為に退職を決意。
小鳥にステージに出てもらうことを依頼した後は詳細を明かさない内から大事に巻き込むという中々にタチの悪いことをしているが、ダンスレッスンの神で琴美の担当もしていた澤田さん曰く「昔からのやり口」とのこと。寧ろ後の物理的に真っ黒くなって以降の姿を知ってると納得出来るというか……。
ブラックニードルの初ライブにて黒井に別離を次げた後に小鳥のステージを見届けるが、そこで幻なのかもしれないが琴美との邂逅も果たしている。
クリスマスイブに小鳥から返答を聞いた後は連絡を断ち、街で見かけた時にも敢えて声をかけない……等していたものの、事務職の求人にやって来た小鳥を温かく迎え入れる。どうせなら良縁も世話してやってくださいよ。 ←妻子に逃げられた人間に何ができるかと
アイドル冬の時代に、自分のブラックニードルが宣言通りに一点突破で風穴を空けるという目標を達成しようとしていたが、高木がプロダクションを辞めると聞き、自らも目的の達成を見届ける前にプロダクションを去って独立への道を歩むことを決意。
……全ては、盟友である順二朗と共に琴美を据えて歩もうとしていたかつての夢のステージの実現が他ならぬ順二朗に否定されたことが理由であり、順二朗が自分の力を認め、もはや二人で力を合わせることに拘る必要がないとエールを送ったことを頭では理解しつつも許せなかった模様。
つまり、後の961プロの社是である孤高主義に対して、この時代の黒ちゃんはどんなにワンマンに見える手法を取っていても常に順二朗を計画の中に入れていたのが(黒ちゃんから見れば)裏切られる形となったのが少なくともアニマスの世界観での対立に繋がってしまったようである。
「パパー!」
…君が出るんかい!