Papers,Please

登録日:2019/10/05 (土曜日) 18:44:46
更新日:2024/04/14 Sun 16:51:12
所要時間:約 13 分で読めます





アルストツカに栄光あれ。




『Papers.Please』とは日本在住のアメリカ人であるルーカス・ポープ氏による、1980年代の架空の共産主義国を舞台に入国審査官となった主人公が日々訪れる入国希望者の審査を行うアドベンチャーゲームである。
Windows、Mac OS対応。2013年8月8日にリリースされ、2022年8月5日にiPhone、スマートフォン向けアプリが配信開始した。

概要

入国審査官に選ばれた主人公が架空の共産主義国「アルストツカ」を舞台に、入国希望者たちの提出した書類をチェックして入国の可否を判断していく。彼が働く国境の町・東グレスティンの国境検問所には正規の希望者もいれば、不法入国者、麻薬密売人、レジスタンスの構成員等不穏な人物も訪れてくることもある。
一方主人公は家族を養うために、日々与えられた給与から家賃や食費などの生活費を支払わなければならない。時には節約のために食費や病気時に必要な薬代などの節約を迫られる場面もあるが、放置しすぎると状況は悪化して最悪死に至ることも。
家族を全員死なせてしまう、若しくは日々の生活費を賄えなくなるとバッドエンド*1になる。最終的な目標はこうした状況下で家族と共に生き残ることである。
またプレイヤーの意向次第で物語が分岐していき、最終的に20種類の結末に分かれることとなる。エンディングを迎えても任意の日付に遡ることが出来、別のエンディングを目指していくことも可能。特定のエンディングを迎えるとシナリオを省いて入国審査によるハイスコアを競う「エンドレスモード」で遊ぶことが出来る。


ゲーム内容

  • 一日の流れ
一日の最初に新聞が画面に表示され、アルストツカの現状を確認することが出来る。
出勤すると入管省からチェックするべき事柄が通達される。ゲームを進めていくと次第に審査しなければいけない項目が増えていく。
シャッターを開けてスピーカーで入国希望者を呼び出し、審査をしていく。
審査中も時間が流れていき、退勤時刻まで仕事をこなせば一日が終了する。

  • 入国審査
一言で言うと入国希望者の提出した書類に不正がないかを確認していく間違い探しである。
入国させる者には緑色の「APPROVED」、入国を拒否するなら赤色の「DENIED」のスタンプをパスポートに押印し、残りの書類を入国希望者に返却すれば審査は完了する。

初日はパスポートの有効期限と国名のみをチェックするだけだが、ゲームが進行すると外国人の入国が許可されたため入国券が必要になったり、「労働許可証」「IDカード」「ワクチン証明書」などチェックするべき事柄が増えたり、判子の模様が微妙に違う偽物の書類が混ざりだしたり、押すスタンプが増えたりと複雑になってくる。すべての書類にある有効期限や氏名などに矛盾がないか確認する必要もある。

更に2日目以降は、書類と言動に不備のある入国希望者に対して不正がないか質問する「調査モード」や透視装置を使って武器や薬物の持ち込みがないか、書類と実際の性別に相違がないかを確認したり、指紋の照合といった内容が追加されていく。
また主人公の指示に素直に従わない者や新聞の犯罪者リストに載っている犯罪者が現れる場合もあり、「拘束ボタン」を押して警備兵を呼び出して拘束することも出来る。
ミスなどで不正入国を許す、若しくは不正がない者を入国拒否すると通達が来てミスを知らせてくる。二人までは罰金はないが、それ以上になると一人につき罰金が科せられる。

また時折、ゲートを突破して入国を強行したり警備兵を殺傷しようとするテロリズムが発生する場合がある。これが発生すると強制的にその日の業務は終了する。
ゲームを進めていくと麻酔銃やスナイパーライフルが支給され、テロを起こそうとするものが現れたら鍵を開けて銃を取り出し、狙撃をすることで阻止することが出来る。
見事命中させて阻止すると20クレジットの狙撃手当が出る。弾数が少ないため、万が一命中させることが出来なくても10クレジット支給される。ただし、誤って無実の罪の者を射殺してしまうとその時点でエンディングになって終了してしまうので注意。

  • 精算
1日が終了するとその日の給与が支給される。成果給であり、素早く正確に仕事をこなせばこなすほどもらえる額は多くなる。
しかしミスを3回以上すると発生する罰金、及び家賃が徴収される。
その残った給与を食費や暖房費、病気の者がいれば薬代に割り振ることが出来、残りは貯金として残る。前述のとおり放置しすぎると病気が悪化して死亡してしまう恐れがある。
所持金がマイナスになったり、家族が全員死亡してしまうとバッドエンドだが、敢えて家族を死なせて人数を減らすことで食費や薬代を減らすという攻略も可能と言えば可能。
血も涙もない非情なやり方だが、どうするかはプレイヤーの自由である。
また所持金を審査室のアップグレードや転居費、息子の誕生日プレゼントに使うことも可能。

このように基本的には日々訪れる入国希望者を変化していく規則に応じて書類を審査し、時にはテロリストの対応を繰り返していくのだが、入国者たちには様々なドラマを背負っている。
時には良心に従って亡命者の事情を汲み取り入国を許可してあげる人情家になるのも良いし、逆にそう言った私情に囚われずにただ黙々と仕事をこなしていく仕事人になるのも良い。
一部の訳ありな入国希望者を許可したり、主人公に個人的な協力を要求してくる人の依頼を聞いたりすると国の紋章が描かれたコインを入手できることもある。
日数の経過と共に上官から賞状が贈られたり、家族から貰える写真や絵を飾ったりすることもでき、たまにそれらにリアクションしてくれる入国希望者もいる。

前述した転居やプレゼントは行っても大したメリットはないため、無理に行う必要はない。

プレイヤーの意向次第で様々なプレイスタイルを楽しむことが出来るのも本作の魅力と言えるだろう。


登場人物

  • 主人公
1982年に「10月度勤労抽選」によってグレスティン国境検問所の入国審査官に任命された本作の主人公。アルストツカの田舎町ニルスク出身。
名前は不明だが、後半の壁掛け写真で容姿は少し分かる。
妻と息子、義母、叔父、と主人公を含めて5人家族。また物語の後半で父や妹の存在も明らかになるほか、とある事情から妹の子(姪)を引き取って6人家族になる展開もある。

家族を養うために日々業務をこなしていく。
人物像についてはほとんど説明がないが、幼少期を知る女性に悪ガキだったと言われたり、自身の故郷を「どぶのような場所」と称する、感染症が流行している国からの入国希望者をよく調べずに「病気を国に持ち込むな」と言い放つ*2など、多少口の悪い部分が見受けられる。

  • ディミトリ
入管省に所属するグレンスティン区間の責任者であり、主人公の上司。
国家の軍人らしく不遜な態度を崩さない。物語中数回に渡って視察に訪れ、勤務業績に応じた表彰を渡してくる。
しかし私物などを掲示して二回警告を受けたり、友人の外交官女性を拘束するとバッドエンドになる*3ため注意。

  • カレンスク
警備兵。
彼が持ち場についた日以降、不正入国者を拘束すると二日に一度拘束手当てを融通してくれる。
後に牢屋の看守に配置転換されるが、変わらず手当てを融通してくれる。
爆弾に関する知識も豊富で、検問所に爆弾が持ち込まれた時には彼の助言のもと対処することになる。
ちなみに、爆弾の対処を失敗するとゲームオーバー*4になる。

  • セルジュ・ボルダ
主人公と同じニルスク出身の警備兵。6年間の戦争参加経験を持っており、その際にコレチア人のエリサという女性と恋仲になっている。
物語終盤で彼女絡みのイベントがあり、彼が生存して且つエリサの入国を許可するとお礼がもらえる。
彼らを幸せにしたいなら爆弾密輸者やテロ襲撃者を残さず撃退するように。
とあるイベントが完全に死亡フラグな上、その日だけテロリストが3人同時に現れる*5ので初見だと対処しきれない可能性大。

  • M.ヴォネル
アルストツカ情報省に所属する特別捜査官。レジスタンスの調査をしており、情報提供を要求してくる。しかし情報を渡すとその時点でバッドエンドになる。
一方で、レジスタンスへの協力を行わずに職務に忠実であれば多少の不正には目を瞑るところもある。

  • ジョルジ・コスタバ
麻薬密輸・密売人のおっさん。
主人公になれなれしい言動で迫ってくる上に、最初はパスポートすら持って来ずに門前払いにされたと思えば、今度は手作り感満載な偽装パスポートを持ってくるわ、正しいパスポートを持ってきたかと思えば毎回何かしらの書類が足りてないわのはた迷惑な人物。挙句の果てには麻薬の密輸を何度も試みたり、その件で国際指名手配されていたりと数多くの問題を起こすが、憎めない愉快なおっさんである。
しかし国際指名手配で拘束されたにも拘らず、賄賂を払って短期で釈放されるなどただ者ではない。
またいくつかのエンディングのキーパーソンでもある。

  • EZICの使者
アルストツカに反旗を翻して新アルストツカを設立するために暗躍するレジスタンス「EZICスター」の構成員。主人公に工作員の入国や、政府への妨害などの協力を依頼してくる。太陽のようなマークが描かれた緑色の仮面とパーカーが特徴。検問所に来るたびに体重や身長が異なることから毎回別人が訪れているようだ。

  • その他の人々
その他にも、どうしても通りたいがゆえに妙なものを置いていく者、働き手を求めているため特定の職人に名刺を配って欲しい社長、職業を理由に高圧的に許可を求めてくるマスコミ、指名手配犯に復讐するために協力を求めてくる父親など、実に様々な人物が登場する。



犯罪者たち

重大な犯罪を犯した人物。
国外逃亡を図ろうと検問所を訪れる。
顔や名前と新聞や広報で照合することで拘束、逮捕することができる。
固有のイベントが発生する人物が数名と、ランダムで選ばれたパターンがいるが、ここでは前者を取り上げる。



国家

  • アルストツカ
このゲームの舞台となる共産主義国家。隣国のコレチアとの6年間の戦争を行っていたが、現在は終戦している。
都市グレンスティンの東半分を取り戻し、コレチア含めた周辺国との国交も回復している。
しかし回復してまだ間もないため、不法入国者やスパイの侵入、テロリズム横行などお世辞にも治安が良いとは言えないのが現状である。
モデルとなっているのは恐らくかつてのソビエト連邦。

  • コレチア
合衆連邦を除く5カ国と隣接しているかつてのアルストツカとの戦争相手国。グレンスティンの西半分を領有。
国交が回復したとはいえ、アルストツカとのにらみ合いは継続しており、治安はセルジュ曰く「アルストツカの10倍は酷い」と言わしめるほど劣悪らしい。
またアルストツカとは数年前まで敵国同士だった背景もあり、国民はアルストツカに対して悪い印象を抱いている者が多い。
モデルとなっているのはアルストツカと隣接している土地柄と名称的に、韓国(Korea)と中国(China)を複合している説が有力。

  • オブリスタン
アルストツカ、コレチア、アンテグリアより北側に位置する国。ジョルジ曰く「いい場所」とのことで多少は治安が良いようだ。
展開によっては家族全員を連れてここに国外逃亡することでもハッピーエンドになる。

  • インポール
コレチアの西側3ヵ国の中で最も南に位置する国。一日だけ不平等な関税による抗議でアルストツカとの輸入を禁止している。

  • アンテグリア
コレチアの西側3ヵ国の中で最も北に位置する国。専制政治を行っており、国民に迫害をしているらしい。そのため亡命してくる者も多いようだ。「グロリアン」という都市がリパブリアと揉めている原因のようだ。

  • リパブリア
コレチアの西側3ヶ国の真ん中に位置する国家。このゲームの作者が作った別作品によると、国民に言論統制が敷かれており、またアンテグリアとの軍事的衝突が度々行われているらしい。
「トゥルーグロリアン」という都市があり、アンテグリアとは仲が悪いことがうかがえる。

  • 合衆連邦
アルストツカから最も遠い場所に位置する国。後半になるとポリオウイルスが流行し、一日だけ合衆国連邦の国民の入国を拒否することになる。

小ネタ

  • 名前や発行都市の間違いには1文字だけ違うことが多々あり、当然見逃すと通告を受ける*6
  • 透視スキャナが導入されていない序盤では性別の不一致を確認できないため、許可にすると通告を受ける。
  • 序盤の自爆テロの後、警備員が増員されるのだが壁周辺の警備員は日数の経過と同時にいなくなる。国境の強行突破が頻発する中、この警備の緩さは結構ネタにされる。*7
  • 通常入国許可した人物に対し、主人公は「アルストツカに栄光あれ」「問題を起こさぬように」と言って見送るが、テロリストや指名手配犯、密輸犯の入国を許可すると、主人公は無言のまま通す。
  • テロリスト襲撃は基本的に何もしなくても警備兵が対処してくれるが、一部のテロリストは放っておくと検問所に攻撃してきてゲームオーバーになるものが存在する。
  • 国外逃亡エンドでは主人公がオブリスタンの入国審査を受けるのだが、この時の審査官は偽造書類を持ち込んだ主人公を見逃したと思われる描写がある。

余談

  • 現在YouTube、またはSteamにてこれを元にした短編実写映画が無料公開されている。作者公認でシナリオの執筆にも関わっているとのこと。興味があれば視聴してみるのもいいだろう。

  • 本作に影響を受けたと思われるフォロワー作品もそれなりに数があり、審査対象や判断要素を置き換えることにより差別化を図っている。例えば、
    • ゾンビウイルスが蔓延した世界で避難施設に受け入れる人間を審査する」「見るからにウイルスに感染している人間でも、二次感染の恐れがなければ安全と見なされ受け入れることができる」「逆に健全であっても、取り調べで危険な人間と判断すれば排除しなければならない
    • 「アニメ調の中世ヨーロッパ世界で、英雄が帝国の国境警備に左遷される」「取り調べと称して女性にエロいことが出来る当然ながら日本のゲームです
    • 「3D視点で、検問対象は車に乗ってやってくる」「取り調べ対象や乗ってきた車の三次元モデルをぐるぐる回し、違法箇所を探していく」




おめでとう
貴方を追記修正する者に任命する。
アニヲタ民に栄光あれ。


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最終更新:2024年04月14日 16:51

*1 後味の悪い結末だが一応エンディングリストに追加される

*2 もっとも、この時ばかりは国からの指示で入国を拒否せよとの命令だったので理には適っているのだが、その件とこの対応については別問題である

*3 しかもこの女性、書類に記載ミスがあり入国許可すると罰点を受ける。拒否するだけなら後日ディミトリに罵倒されるがデメリットなし

*4 画面が白くなった後タイトルに戻され、エンディングリストには追加されない。なお以降も対処を誤るとゲームオーバーになるイベントが存在する。

*5 普段は1人だけ

*6 それもI(アイ)がL(エル)になってたり、p(ピー)がq(キュー)になってたりと、とてもいやらしい間違い方をする。日本語版でも濁点や半濁点がなかったりあったりするなど、それに近い間違い方をするため、時間はかかるが始めのうちはスキャンをしたほうが無難。流石に「ン」と「ソ」が入れ替わるようなクサチュー語の発想までは求められなさそうだが。

*7 一応、人材不足による各省庁の人手の奪い合いによるものという理由はあるが。