SCP-4971

登録日:2020/02/07 Fri 15:09:45
更新日:2024/04/29 Mon 22:53:44
所要時間:約 10分で読めます






監督評議会命令
以下のファイルはVK-クラス"塩漬けの地球"人間居住性終焉シナリオを引き起こし得る敵対的実体の記述を描写しており、レベル4/4971機密情報です。無許可のアクセスは禁止されています。





犠牲となったモノが二度と返ってこないという保証は、この世のどこにも存在しない。





SCP-4971はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスCERNUNNOS。
撹乱クラスは4/Ekhi。
リスククラスは4/Danger。

CERNUNNOS(ケルヌンノス)とは、収容自体は可能だが、それに必要なプロトコルに収容する以上の(倫理的かつ技術的)問題があって収容ができないオブジェクトに付与される。
分かりやすく言えば、何とか別の収容方法が見つかるまでの暫定的なクラスであり、それが出来たら従来のクラス分類にするという認識で良い。
なお、元ネタはケルト神話の狩猟の神にして冥府の神ケルヌンノスで、主に牡鹿の角を持つ姿で描かれる。現在は名前と僅かな壁画以外ほぼ全てが失伝している。



説明

SCP-4971とは、インディアナ州ヘイブンズブルックの旧サウスウッド・パーク・モール内部に存在する時空間異常である。分かりやすく伝えれば、屋内が異世界と繋がっている。


実際に入ると、草や蔦に覆われたメインエントランスに出るが、そこから移動すると例外なくSCP-4971内に行きつく。空間内は異様な電磁波で満たされており、機器にはある条件が重なると酷くぶれるようになってしまう。

そこには、明らかに施設内とは思えない大自然が広がっており、沈みかかっている太陽が常に存在している。この太陽は12時間その場に存在した後に沈み、更に13時間後に元の位置に戻る。

植物の多くが、ユーコン準州や太平洋岸北西部に見られる種と同じ外見だが、SCP-4971で採取された植物標本は如何なる類の遺伝物質も含んでいない。



で、この空間内には敵対的な異常存在が複数存在している。コイツらは例外なく、本来頭部が存在する場所に逆三角形のようなシンボルが存在している。

一応銃器等で対処することこそ可能なものの、しばらくすると頭のあった部分に存在するシンボルが震えて復活する。どうやらこの空間内の電磁波と関係しているらしく、エネルギーを充填していると思われる。オマケにシンボル自体が認識災害を帯びており、上記の機械がぶれるようになるのはこのためである。

なので出来る限り近付かず、どうしようもない状況に陥ったときのみ近付くことが定められている。



特別収容プロトコルは、

  • SCP-4971の空間異常が発生しているサウスウッド・パーク・モールは全面的に閉鎖してね。全ての入口はバリケードで封鎖しよう。

  • 装甲指揮大隊サイトー-9(ACB Sa-9)が常にこの建造物に野営してね(観測サイト-81-3)。ラーナ・グレイ指揮官の命令が有る無しに関わらず、何かの実体がSCP-4971の内部から出現したら、その実体を施設の中に押し戻そう。不可能な場合は武力制圧しよう。

  • 財団分類委員会と財団倫理委員会によって、適切な代替プロトコルが開発されるまでの間は、SCP-4971はCERNNUNOSに分類するよ。

  • もしもSCP-4971-▽が施設の中に出現したら、財団の総力をもってこれと戦おう。コイツを絶対に外に出しちゃダメだよ。


と、最後にSCP-4971-▽なる存在が突然出てきたが、コイツの本格的な説明については後述する。とにかくSCP-4971内で、一番ヤバい力をもった異常存在と捉えておけばよい。
その能力を軽く記述すると、例えばコイツを初めとした全ての実体の頭部が、例の謎のシンボルに置き換えられているのだが、調べた結果、これはイギリス南部にある古代ドルイド教団の遺跡から回収された様々な文書に見られる、 “ヴォクセンの眼”なるシンボルだと判明。

  • ミスカトニック大学から回収された“ポーター魔獣記”(抜粋)

それら古代の民が、大いなる恵みと大いなる恐怖の両方を齎した木々を何よりも怖れ敬っていたのは驚くにあたらない。彼らは夜ごと狼や大山猫に襲われたが、満月の夜には高く聳える木々の真の神へと生贄を捧げた。彼らが“大地の静寂を知る者”と名付けたその神は、霜に覆われた北方の森から姿を現しては、部族を保護する対価として人間の心臓を取るのだという。この存在は死への恐怖心ゆえに直接見ることができず、ヴォクセンの眼を通した場合のみその雄大さが理解できるのだとも伝えられた…


どうやら守り神的存在だったらしく、対価として生け贄の心臓を取っていたらしい。

これらの情報をもって発見された経緯を熟読して頂きたい。



補遺4971.1: 発見経緯


この異常空間が発見された経緯として、とある閉鎖されたモールで悪魔崇拝の儀式らしきことが確認されていると財団の耳に入ったためであった。

2007年2月12日、警察官が閉鎖されたモール内で絶叫や不自然な音を聞いたと通報を受け、確認しに行った警察官全員が行方不明となった。
どうやら悪魔崇拝していた連中も見つからなかったらしく、代わりに血溜まりや死骸の一部が発見されたのみであった。

しかし財団は一つの重要な情報を握っていた。行方不明になった人物の中に、「カタリナ・ランドルフ」という白人女性がいたと知ると、すぐさま機動部隊を送り込み、調査を開始した。


このカタリナ・ランドルフという女性、政治的な集会や問題で4度ほど逮捕されており、最後に目撃されたのは、自称オカルティストの団体 “エデンの娘たち”と行動を共にしていたところであった。要は『人類こそ地球を汚す悪であり、魔法と秘技で地球を救おう』という超過激派のエコテロリストなる者たちであった。

だがまだここではカタリナ・ランドルフは重要ではない。今ここで注目すべきは“エデンの娘たち”、それも所属していると思われるアンナ・クリスチャンなる人物である。
どうやら彼女、ガチの異常存在であり、財団が所在を追っていた人物なのだが、一番問題だったのは、マサチューセッツ州のミスカトニック大学跡に保管されていた幾つかのアーティファクトを盗み出し、過去10年ほどの間にそれらを利用して小規模な召喚儀式に使用していたことが判明したことである。
どうやら奪ったアーティファクトの中には『“バイフィの最後の哀願”』なるものがあったらしく、曰く『神格的存在』を呼び出すための書物であった。

その書物の殆どに登場するワードとして、“大地の静寂を知る者”が存在する。予め伝えるが、この“大地の静寂を知る者”こそ、SCP-4971-▽である。これも頭の片隅に置いておいて欲しい。



現地探索

最初の探査で機動部隊イプシロン-13がSCP-4971内に侵入し、モール内で生け贄にされたと思われる人々の死骸と血溜まりを発見。その後、例の動物や昆虫を模した敵対的な存在と徐々に遭遇し交戦しこれを退けていくも、指令部の命令で近くの水源を探索する内に、全ての信号がロストしてしまった。


非常事態として、指令部は次に機動部隊イオタ-44“ギャングバスターズ”をSCP-4971内に送り込み、機動部隊イプシロン-13の捜索を命令したが、捜索してる内に“イパネマの娘”(アントニオ・カルロス・ジョビン/ ブラジルの代表的な作曲家の曲)と思われる奇妙な歌声が流れてきたり、ヒト型オブジェクトの大群に追われたりのドタバタで、結局隊員が1人犠牲となってしまった。

が、その直後シグナルロストしたはずの機動部隊イプシロン-13の隊長、E-13エクリプスから通信が入ってきた。彼らはまだ生きていたのである。

E-13エクリプスは機動部隊イオタ-44“ギャングバスターズ”を自分たちのある場所まで案内しようと通信で誘導するものの、途中でヒト型の存在に追い付かれ、更に2人失ってしまう。


ここでl-44 ホライゾンと、E-13 エクリプスの会話に注目。

  • l-44 ホライゾンと、E-13 エクリプスの通信(抜粋)
ホライゾン: 3名の隊員を失った。森の中の連中、数が多すぎる。 (合間) 奴らは何者なんだ、オーバー?

E-13エクリプス: 分からない。我々にも備えが無かったんだ。ここに向かう途中でバンコクが交戦し、ロストした。アトランティスの予測だが、奴らは - クソ、どう説明すればいいか… (合間) 奴らは欠片のようなものかもしれない。この空間に入るために必要な、あー、儀式をやっていた時、ここで迷子になった人間たちの残骸だ。

ホライゾン: 殺せなかったよ。1体撃ち倒したが、すぐ起き上がった。

E-13エクリプス: そうだ、奴らは何処か別な場所から力を得ているんだと思う。誰かが殺られると、大量の電磁波干渉が発生し、そいつは復活する。電磁波の発生源が何であれ、えー - かなり強力だ。それは我々の広域帯無線をブロックしていて、とても太刀打ちできない。


どうやらヒト型の存在は、儀式で犠牲となった者達の成れの果てであるとエクリプスは語った。何かが犠牲者たちを操っている........?


ホライゾン: 何処にいる? 我々は、ええと - 丘の上の空き地だ。お前たちと合流したい。

E-13エクリプス: 君たちの居場所から、あー - 北西の辺りに川が見えるか?

ホライゾン: ああ、見える。

空電。

E-13エクリプス: (空電) に1週間ほど前に着いた後、我々は山脈に向かって川を北東へと辿った。もうすぐ- (空電)

ホライゾン: は - チェック、チェック、エクリプス。いつ到着したと言った?

E-13エクリプス: あー、大体1週間前だと思う。太陽の動きは正常じゃないが、こちらには時計があるからな。何故だ?

ホライゾン: お前たちがアノマリーに入場してからまだ1日も経っていないんだぞ。我々がここに入ってせいぜい… 6時間? ぐらいだ。

沈黙。


明らかにこの空間は外との時間がずれていることが判明した瞬間である。


E-13エクリプス: だとすると - 畜生。あまり良い展開じゃないな、ホライゾン。

ホライゾン: 全くだ。このままではマズい、我々- (空電)

I-44チームはE-13チームとの無線交信を喪失する。E-13チーム側の録音は続いている。

E-13エクリプス: ホライゾン? 聞こえるか?

沈黙.

E-13エクリプス: ホライゾン? 聞こえているか?

アレッポ: (“イパネマの娘”と推定される空電混じりの歌声)

全ての無線通信が完全に途絶する。E-13の居場所からは、大きく低い唸り声のような音が遥か遠くから聞こえる。I-44アレッポの映像トランスミッターは12秒間の信号を発信する - 単一の静止映像が映し出され、それ以降の動画記録は失われる。




I-44チームの記録はそこで途絶えた。その記録映像の最後には、

鹿によく似た生物の体に、例の“ヴォクセンの眼”に角のようなモノが追加されているシンボルが頭部に存在する謎の存在

ただ1つだけ言えることがあるとすれば、I-44チームの連絡が回復することはなかったということだけである。



補遺4971.9: SCP-4971-▽

その後、E-13の生き残りたちは、暫くの間生存しており、その情報を財団指令部へ伝えていた。しかし食料は底を尽き、SCP-4971内のものは食えたものではなかった。水は一応飲めるが、喉が焼けるようと表現していた。

しかし、移動を開始して広い高原に出た途端、


エクリプス: (空電) いる、すぐそこにいる。おい。おいっ! お前! 振り向け! 振り向いて顔を見せろ!

全裸のヒト型の姿が前方の崖の縁で踊っている。エクリプス、ローマン、ナインアイズが銃を抜く。彼らが接近すると、彼女の下の地面に描かれたシンボルが見えてくる。人間の心臓1個が近くに打ち捨てられている。彼女は歌っている。

不明女性: (“イパネマの娘”を歌っている)

エクリプス: 地面に伏せろ! さっさと伏せやがれ!

女性がチームに顔を向けると、カタリナ・ランドルフであることが明らかになる。彼女は踊るのを止めない。巨大な傷跡が胸に見える。

ローマン: 伏せろ! いい加減にしねぇとブチ殺すぞ!

カタリナ・ランドルフ: (“イパネマの娘”を歌い続けている)

銃声。ローマンがカタリナ・ランドルフに発砲する。彼女は僅かに後ろによろめいて笑い、ナインアイズのライフルに撃たれて静かになる。彼女は地面に倒れる。

エクリプス: クソが。 (荒い呼吸) 殺ったか?

沈黙。

ローマン: 多分死ん-

突然、大きな低い唸り声が響き渡り、続いて閃光が走る。全てのE-13残存隊員が吹き飛ばされ、地面に倒れる。ローマンとナインアイズの映像記録装置は即座に無効化される。音声記録は空電で満たされる。エクリプスが立ち上がる。

下方の谷間に巨大なシカ様の実体、SCP-4971-▽がいる。頭部や首は存在しない - 代わりに、該当部位の構造全体が、振動しながら白く発光する大きな紋章に置換されている。白く発光する球体が胴体の周囲で回転し、煌めく白い粒子を辺り一面の空気中に撒き散らす。SCP-4971-▽は谷に向かって大きく鈍重に一歩踏み出し、機動部隊に顔を向ける。紋章の中心に輝く円形のディスクがあり

カタリナ・ランドルフの死体が震え、肩を掴み上げられたかのように上昇して、地上1m地点に吊り下げられた状態になる。ローマンが発砲しようと銃を上げるが、死体は笑い始める。

死体が震え、I-44チームが聞いたものと同じ絶叫の逆再生に続いて、カタリナ・ランドルフの頭部が内側へ崩れ落ち、回転する白い紋章が内部から出現する。カタリナは素早く身を翻した後、停止してチームに顔を向ける。一斉に、チーム全員の無線の空電が収まる。

不明な信号: (“イパネマの娘”を歌う声)

エクリプス、ローマン、ナインアイズがカタリナ・ランドルフに発砲し始めるが、カタリナは急速に彼らから遠ざかり始める。先程と同じ低い唸りが聞こえ、E-13マーキュリーが背を向けて逃走する。峰に挟まれた道へ入る直前、彼女は振り向き、エクリプス、ローマン、ナインアイズが宙吊りにされているのを見る。全員の心臓が不可視の力によって死体から暴力的に引き抜かれる。E-13マーキュリーは前に向き直って走る。

マーキュリー: (荒い呼吸) どうしよう… どうしよう… どうしよう…

太陽が沈み、空が暗くなり始める。E-13マーキュリーは山中を走り抜け、山の左斜面に再び到着する。彼女は前に数歩踏み出すが、カタリナ・ランドルフの姿が目の前の空中に出現したのを見て立ち止まる。マーキュリーの心拍数が低下し、彼女はベルトからナイフを引き抜く。

マーキュリー: 成程ね。分かったわ。かかってきなさい

マーキュリーがカタリナ・ランドルフに突進する。またしても大きな唸り声が響き、E-13マーキュリーの音声・映像送信は途絶する。










補遺4971.10: 追加の信号送出

E-13およびI-44チームとの通信が途切れた後に、サイト-81司令部は更なるSCP-4971探索試行の一時中止を発表し、現地を厳重に封鎖した。上記のプロトコルはこれを元に作成されている。

ところが2007年10月19日、SCP-4971内にある通信機の1台に接続が確立され、信号送出を開始した。これに続いて気象、地形、電磁場などのデータを含む相当量の情報が、アノマリー内から現地のデータサーバーに転送されてきた。これに加えて、I-44およびE-13チームの完全な映像・音声記録も送信された。転送の終了時に通信機は再び接続途絶状態になった。

部隊の誰かが生存していたのだろうか?

さらに2007年10月29日、通信機は再び作動、山の頂上に設置された財団支給の広域帯無線通信アンテナの映像が送られてきた。この映像は途絶するまで6分32秒持続した。

さらに2007年11月19日、地面を撮影した1枚の静止画像が現地のデータサーバーに転送されてきた。土に書かれた文字には、




“まだここにいる”




最後の通信は2015年6月16日、通信機に18秒間作動していた。
送信映像には、非常に怯えた女性の顔を呈しており、何度も言いよどんだ後、通信機が不活性化する前に“もう走れない”、“ごめん”とだけ発言した。

その最後に送られてきたきた映像には、










怯えた女性の瞳に映ったヒト型存在





その後、更なる信号は受信されなかった。
彼女が一体どのような最後を迎えたかは、書かなくても分かるはずである。














補遺4971.8: アンナ・クリスチャンへのインタビュー(抜粋)

ここからは解決編である。
話は前後するが、アンナ・クリスチャンはSCP-4971が発見される3ヶ月前に確保されており、今回のインタビューは、SCP-4971が発見されて「カタリナ・ランドルフ」との関係が明らかになった後に行われたものである。
ここでは、SCP-4971の詳細と、行方が知れないカタリナ・ランドルフと奪われた書物の行方を探る目的があった。


アングル博士: あなたが“バイフィの最後の哀願”について知っている事を教えていただきたい。

クリスチャン: どうして? 今さらあなた達みたいな蛆虫と協力して何になるのかしら? どうせこれが済んだらまた私を独房に押し戻して、次また廊下に出す日まではそこで腐らせておくだけでしょ。

アングル博士: もし協力の意思があるならば、こちらにも解放を検討する用意があります。我々は情報が必要なだけです。

クリスチャン: 何が知りたいの?

アングル博士: アノマリーの先にある世界は何ですか? あの場所はどういう性質の空間ですか?

クリスチャン: あら、あなた達- (合間) あれを開いたのね。

アングル博士: 我々ではありません。カタリナ・ランドルフです。

クリスチャン: (溜息) あの馬鹿。あの子には警告した。何度も何度も警告したのに。畜生。

アングル博士: 何を警告したのですか?

クリスチャン: それは - OK、私は魔女でしょう? 箒に乗ったり鍋を掻き回したりはしないけれど… 幼い女の子の頃から、私には普通の人より多くのものが見えた。動物と話したり、木々たちの囁きを聞くことができた。もっと暗い存在、旧き存在の声も聞こえた。私みたいな人種が他にもいると知った時は、分かるでしょう、打ち明け話ができることにとても興奮したわ。私は… あらゆる神秘に夢中になった。秘密の会合、古い原語、そして… 先達が私たちに警告する事柄。儀式。

アングル博士: “最後の哀願”に記述されているような、ですか?

クリスチャン: (頷く) 私は何よりも儀式に魅了された。血と灰を混ぜ合わせ、割れた蹄の刻印を押して自然の力を借り受けるの。水を毒し、作物を腐敗させる。実際的な力 - あなた自身の力ではないけれど、その身に帯びていることに変わりはない。あの本には力が宿っている。でもそれはカタリナが望む類のものじゃない。


どうやらアンナ・クリスチャンは、嘘偽りのない魔女の家系であったらしく、本人もその事実に自信と誇りを持っていた。その後カタリナ達と出会って意気投合、彼女に魔術や儀式の知識を与えたが、それは思わぬ結果を招いた。


アングル博士: どういう意味です?

クリスチャン: カタリナとその信者たちは、魔女集会の仮面を被った環境テロリストよ。彼女たちは対価と犠牲を理解していない - 森を守りたいだけ。私もかつてはあの子を信じて色々な技を教えたわ。鉄を一瞬で錆び付かせ、ブルドーザーの履帯を壊すための魔法。土地を泥沼に変え、イナゴを呼び出して開発者を追い払うための呪文。でもカタリナは決して満足せず、もっと大きく強力な力を求めていた。あの子ならこう言うでしょう、“ガイアの顔から人の穢れを拭き落とすまで立ち止まることはできない”と。 (合間) “最後の哀願”を手に入れた時は、私もあの子と同じような子供だった。自分が全てを知っていると思っていた。けれど賢い年長者たちは忍耐を私に教えた。その忍耐の中で、私は“哀願”を、そこに書かれている事物をできる限り学んだ。それが私の想像とは違うのを、私が間違っていたのを学んだ。

アングル博士: 何だと思っていたのですか?

クリスチャン: 自然の神。ガイアへの呼び掛け。誰しも最初はそう思ったし、カタリナもそうだった。彼女は私を信じなかった - 私が怖がって情報を隠しているだけだと疑った。確かに私は怖かったけれど、それはカタリナがガイアの戦士を呼ぶのを恐れたからじゃない。“大地の静寂を知る者”が自然の神なんかじゃないと知っていたからよ。あれは犠牲の神なの。あれが棲む世界、あの世界の生き物たち、それらは全て犠牲と儀式の副産物。それによってあの世界は維持されている。人間や動植物の魂、遥か遠くに在る物も、大いに近くに在る物も。“大地の静寂を知る者”はその魂を取り込み、自分が思い描く新しい生命に作り変える。あれは確かにこの世界を再建するでしょう、でもそこは人類が生きていける世界じゃない。…川や湖をLSDに置き換えるようなものよ。


カタリナ達にとって魔術の意味などどうでもよかった。ただ地球を救うための力を求めた。それが何であれ、彼女達にとっては紛れもない善行だったのだろうとアンナは語る。時には堪え忍ぶことも大切であるという教えも、彼女達には届かなかった。

やがてカタリナとアンナは、他の同胞を生け贄に捧げて(モール内の血溜まりや死骸の一部)、とんでもない存在を召還してしまった。そしてアンナはそれを深く後悔した。

カタリナ達が呼び寄せたのは自然の神などではなかった。そんなものよりももっとおぞましい『犠牲の神』であったのだ(SCP-4971-▽)。しかしカタリナはそれを受け入れた。そしてその強大な力をもって、SCP-4971-▽はモール内の空間を歪ませ異常空間を生み出し、カタリナもまたSCP-4971-▽の下僕へと化したというのがSCP-4971の真相であった。

これは推測ではあるが、イギリス南部で信仰されていたこと、ドルイドの末裔たるアンナ達が詳細を知っていたこと、司る属性の類似などからSCP-4971-▽はすなわち前述の狩猟と冥界の神、ケルヌンノスそのものと考えられる。

アンナと残った仲間はSCP-4971-▽を恐れてその場を去り、その後カタリナが本格的にSCP-4971の扉を開いてしまったと語った。
アングル博士は、どうすればSCP-4971を何とか出来るかということをアンナに問いかけるが........


アングル博士: どのように門を閉鎖すればいいのですか?

クリスチャン: (笑う) 無理ね。カタリナだって別に気にしてなかった - あの子は憑りつかれていた。彼女はガイアのために世界を作り直したかった。対価が大きすぎる。

アングル博士: あの中の生物はどうすれば殺せますか?

クリスチャン: 殺す? どうやって神様を殺すって言うの? あれは世界中のあらゆる爆弾や銃弾をかき集めても殺せない。あれは儀式で生かされている。ヤギや血や満月が関わる如何わしい儀式だけじゃないわ。世界中の人々が毎日やっている小さな儀式、小さな犠牲。あなたの財団が闇の存在を隠し続けるために執り行う儀式だって含まれる。殺すにはそれしかない。儀式の実行を止め、生贄を捧げるのを止めれば、“大地の静寂を知る者”は消える。そういう感じ。

アングル博士: それが不可能なのはご承知のはずです。

クリスチャン: じゃあ殺せないわね。お終い。あなた達はあれを殺せないし、まだ願いを聞き届けてくれる神々がいるなら、あれが門を見つけないよう祈っておいたほうが賢明よ。こちらの世界に出てきたら、その瞬間からあれは自分流の儀式を始める。そして、蹄や灰ではきっと満足しない。





SCP-4971-▽の異常性。
それは、儀式を吸収して生き永らえ、犠牲(生贄)を自らの下僕とすることで無限に力を蓄えること。世界各地の宗教・民俗文化で儀式が行われる限りは不死身な上、キリスト教のミサにおけるパン・葡萄酒、神道の蛙狩神事における蛙など、あらゆる生贄を旧サウスウッド・パーク・モール内部に取り込み、現在進行形で強大に成りつつあるのである。
…考えたくはないが、例えどんな異常存在を持ち出してあれを倒したとしても、その行為が「人類のためにSCP-4971-▽を犠牲にする儀式」とみなされれば自身を自身への生贄として殺した瞬間復活することすら考えられる。

I-44チームを通信不能に陥れたあの巨大な鹿のような存在こそが恐らくSCP-4971-Δであり、彼らもまた、SCP-4971-▽に命を奪われ下僕と化したのだろう。

逆に考えれば、その生け贄を完全に無くしてしまうことでSCP-4971-▽は完全に無力化出来るという結論に行きつくが、無論不可能なのだ。人類の社会を脅かす存在を倒すために人類が生存するための方法を放棄するなど、本末転倒である。


ウィリアム・R・デッカー博士による稟議書(抜粋)


一方でSCP-4971-▽自身をSCP-4971内に閉じ込める方法もまた、存在はしている。
実は奪われた『“バイフィの最後の哀願”』を財団は事前に発見しており、当時の書物の研究者と協力し、本を半分に分割した。そして前面を大学側が、後面を財団が保持し研究を進めていたのである財団側で全部研究していれば奪われなかったんじゃね、と言葉にするのは禁句

ここでカタリナに奪われた「前面」の書物には、「自然の神」改め「犠牲の神」を召還する方法が記載されていた。
そして財団側が保持していた「後面」の書物には、その「犠牲の神」を封印するための方法が記載されていた、のだが…

幸い、写本の後半は、別世界への扉が万が一開いてしまった場合にそれを再封印するための逆呪文の一種を扱っている。完全な呪文はある種の質問のように機能する — 術者は門を開き、それを開けっ放しにするか、閉じるかを訊ねるという仕組みだ。
残念だがここでもまた人命を捧げる必要があり、しかも対数的に増大する。バイフィは数学に詳しくなかったかもしれないが、ミスカトニック大の人々が計算済みだ — 最初の1時間で生贄1人、さらに1時間経つごとに必要数は倍々で増える。
プラス面として、これには上限がある。

つまり、良いニュースは、SCP-4971-▽を収容する儀式が存在すること。悪いニュースは、我々が約4時間前に生贄数の上限に到達しており、その上限は、文章をそのまま引用すると“未だ静寂を知らざりし全ての人間の心臓”であること。これが現状だ。もし地球上の全ての生きた人間を儀式の生贄に捧げても問題無いならば、SCP-4971を収容できる。

我々がこの問題の解決に取り組み続けるのは言うまでもない。

全てはあまりに遅すぎた。
財団が封印の手段を発見した時には、そのための犠牲はあまりに大きく膨れ上がっていた。
封印の儀式には「未だ静寂を知らざりし全ての人間の心臓」──






すなわち、

地球上に生存する全人類の命

が必要だと考えられている。








SCP-4971


儀式(Rituals)






こりゃ、どうしようもねーわ。
因みに本の著者であるパイフェも、本来こんなヤバい存在を呼ぶつもりなどなかったらしく、封印する方法と同時に後悔の文を残していたことも判明した。それはそれとしてパイフェェ........


よくわからん! 要約しろッ!!

  • SCP-4971はサウスウッド・パーク・モールっていう閉鎖された施設と繋がってる異次元空間だよ。

  • カタリナ・ランドルフっていうヤバい女が、魔女から習った魔術で生け贄を捧げたら、ヤバい神様(SCP-4971-▽)を呼んじゃったよ。その際空間が歪んだんだ。

  • SCP-4971-▽は犠牲という概念を司っているヤバい存在。コイツはまだSCP-4971内に留まっているけど、人間の心臓をブチりと奪って犠牲にした後に自分の下僕にするんだ。コイツが財団世界に入ってきたら大変だから、なんとしても止めようね。

  • コイツに生け贄にされたり、下僕にされた生物や人間は頭が変なシンボルに置き換わって他の人を襲おうとするよ。

  • カタリナはコイツに財団世界を滅ぼそうとさせてるけど、コイツ自身まだ力を蓄えているみたい。終わったらSCP-4971から出て来て財団世界を滅ぼすと考えられているよ。

  • 生け贄の神様だから、世界中の「生け贄に関する行為」全てをやめればSCP-4971-▽は弱体化して消滅すると考えられてる。でも財団のプロトコルや、「生き物が食物を食べる行為」も生け贄に関する行為に含まれてるから、やめたら人間は生きていけないし、他のヤバいオブジェクトが解放されちゃうよね。つまり不可能なんだ。

  • 封印もできるけど、やっぱり生け贄がいるよ。なんと地球上の全ての人間の心臓を捧げて、ようやく足りるかどうかなんだって。

  • もうどうしようもないから、コイツがSCP-4971から出て来ないように常に建物を監視するしかないんだ。





結論










どうあがいても絶望














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最終更新:2024年04月29日 22:53