SCP-2000-JP

SCP-2000-JPの記事へようこそ。

はじめに

当オブジェクトはそのナンバーが示す通り、SCP財団日本支部サイトで開催された「SCP-2000-JPコンテスト」の栄えある優勝作品である。
コンテストテーマはずばり「変遷」。

この記事を立てておいてこんなことを言うのは本当にアレなのだが、当記事は本家サイトでここまで以上の一切の事前情報なしに見るのが最も印象に残るだろう。
というのも、当記事はSCP-280-JPや旧SCP-CN-994のように報告書にギミックがあるタイプであり、流石にあれらほど度肝を抜くようなことは起きないのだが、いかんせん当Wikiだけでは伝えられない情報や印象もあるからだ。ここでは画像にリンクを貼ったりページにプログラムを仕込んだりはできない。

もしこれを読んでいるあなたがまだSCP-2000-JPを知らないなら、よければまず財団サイトで読んでいただくことを推奨する。
外部リンクは貼れないためSCP-2000-JPでググっていただくか、下のジャンプボタンで当ページ最下部のライセンス表記(「▷ CC BY-SA 3.0に基づく表示」)部分に飛びその中にある本家へのリンクを辿っていただきたい。



ただしSCP財団本部(EN版)の4桁ナンバーオブジェクトが二つ、とある財団本部の博士が一人登場する。
いずれも当Wikiに個別記事がある程度には有名だが、知らない場合はよく分からない可能性が高いためそのまま説明に進んでほしい。

「そんなこと言ってこっちをハメてビビらす気だろ!?知ってるんだぞ!」という用心深い方は下の折りたたみを開いていただき、判断していただきたい。

+ 用心深い方向け
あなたの推測は正しい。
確かに初版作成者は初めてソレが現れた時めっちゃビビった。
しかし、この記事のそれは旧CN-994のもののように恐怖を煽ることを目的とはしていない。
断言するが、ソレは完全に無害だ。そういうミーム汚染を食らっているわけでもない。
ソレがそこにいるという事こそが、なによりの僥倖なのだ。

しかし「だからそういう風にビビらされるのが一番嫌なんだ」という方も多いだろう。
なので最後にソレが現れるタイミングを述べておく。

+ ネタバレ注意
穴を二つ抜けた直後。
chromeで閲覧している人はライトモードを切っていないと出てきてくれないので注意。

そういうのはいい、ネタバレ上等という場合はそのまま下に進んでほしい。






























SCP-2000-JP

登録日:2020/02/22 (土曜日) 12:09:31
更新日:2024/04/28 Sun 03:51:00
所要時間:約 23 分で読めます






よくがんばった。えらいぞ。



SCP-2000-JPはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスThaumiel。財団の切り札である。


特別収容プロトコル

短いし、またここだけ読んでも全く分からない点はないためこちらから説明する。

まず、SCP-2000-JPは現在未収容。
SCP-2000-JPは「巣」に何らかの反応があった時、「巣」に戻ってくる性質がある。
そして入力デバイスを用いてSCP-2000-JPに接触すると、一定期間は「巣」の中に留まる。
だからその隙に「巣」が入っているサーバーをネットワークから物理的に断つことで収容できる。

以上。
Thaumielが未収容とは一体何があったのだろう。サーバーの中に巣がある、という点から何らかの情報生命体だろうか。ひとまず先に進む。


説明

SCP-2000-JPは先ほどの推測通り、コンピュータ及びネットワーク上で活動する情報知性体である。
その形態は言うなれば「生きている情報おつかいアプリ/ソフト」と例えることができる。

「イメージとテキストボックスから成るグラフィカルユーザーインターフェース」……まあ要するにLINEのような仕組みによってユーザーである我々とコミュニケーション及び業務命令が可能で、これに使われているSCP-2000-JPのイメージ画像はイエイヌ。ちなみにボーダーコリー。
情報伝達手段は日本語か英語をインターフェースに文字なり音声認識なりで打ち込むか、そのデータが入ったファイルを読ませることで可能。
またデータについては入出力も可能なので、メモリとして何かのデータを届けるまたは持って来ると言った芸当もなんのその。
つまるところ、電脳わんこが情報専門のおつかいをしてくれるわけだ。


SCP-2000-JP - 伝書使(でんしょし)


さらに財団の知能検査の結果、わんこは人間の五歳児程度の思考能力を持っているらしい。程よく頭のいいわんこ。
その上人間に対して極めて友好的であり、対話することと命令されることを好んでいる。人懐っこい忠実なわんこ。
でも未収容ということは、どこかに行ったまま帰ってこないのだろうか。これを呼び戻して引き止めろ、というのが特別収容プロトコルの内容らしい。
世話の焼けるわんこ。



ここ掘るワンワン

ここまででもまあ異常性はなかなかだが、SCP-2000-JPはさらに特有の能力を持っている。
なんと、コンピュータやネットワークに仕掛けられているセキュリティという名の壁を「掘る」ことで突破できるのだ。
ただしその壁が堅い、つまりセキュリティが厳しい場合掘るのには時間がかかる模様。
そしてその結果、SCP-2000-JPはその壁に穴……セキュリティホールを開ける。セキュリティホールって元々あるもんだけじゃなくて作れるのか……
このせいでSCP-2000-JPはプロトコルにもあったように特定のサーバなりなんなりに閉じ込められ物理的に隔離されている場合を除き、本質的に収容できない。
言うことを聞いてくれるのはなによりの救いである。でなければ最低でもEuclidクラスがついていた。

しかし、仮にSCP-2000-JPが穴を開けて出ていってしまってもそれを追う方法は存在する。
この穴がある領域から開けられていて、かつその領域がウェブぺージなど人間が視覚情報として受け取ることを目的にできていた場合、この穴は可視化される
以下の画像が例である。


この穴は見た目意味のないテキストの集合だが、SCP-2000-JPが行った先へのリンクが貼られている
これを踏めば、わんこの辿った道筋をこちらも追うことができるのだ。



わんこの習性と仕事ぶり

SCP-2000-JPはコンピュータやネットワークの中を自由に移動できるわけだが、それでも帰るべき「巣」は持っている。
この巣はわんこ自身が「自分にとって一番大事な情報がある」と見なした場所、とされる。
そしてそこ以外から持ってきた情報を保存するというのがSCP-2000-JPの習性だ。実に犬らしい。

しかし、この持ってくるという過程に犬ならではの欠点が存在する。
SCP-2000-JPはこの際に情報を「噛んで」運ぶため、特定の情報が破損してしまうのだ。
このせいでわんこが持ってくる情報やわんこに与える指示の信頼性には疑問符が付く。
実験の結果、以下のような傾向がみられるらしい。

破損しづらい情報
  • 指示された命令の内容
  • 与えられた言葉の意味
  • その他言語的情報

破損しやすい情報
  • 何らかの数量
  • 年月日や時刻などのタイムスタンプ
  • 「巣」以外の情報のアドレス
  • その他数値的情報

……情報ってのは数字の部分が噛みやすくて持ち歩きやすい、みたいなことがあったりするのだろうか。
つまり単に「○○しろ」みたいなのなら大丈夫だが、「××というアドレスに行ってプログラムを実行しろ」とか言われたら××のデータが壊れてしまって「???」となるわけだ。
むしろそういうのこそ情報操作の本懐な気がするんだが……まあそう都合のいいオブジェクトはいないということだろうか。困ったわんこだ。

















さてこれで報告書の内容は以上……おや?




わんこが空けた穴だ。この先にSCP-2000-JPがいるかもしれない。再収容のため、これを辿って追うべきだろう。
元記事ではこの画像にリンクが張られているが当Wikiではそれはできない。
代わりに、以下のリンクで飛んでいただきたい。
















































元記事では、この穴を抜けた先は見た目上背景が黒い空間にいくつかSCP-2000-JPの開けた穴が点在しているという構成になっている。
これも当Wikiでは無理なので、その「穴」の先にあるものを順に見ていくことにしよう。

先に言っておくと、計11個のそれらは全て「五條研究員」なる者へのメッセージか、その「五條研究員」とある者の対話記録だった。

一つ目の穴

五條研究員へのメッセージ。送り主はなんとクレフ博士
財団きっての問題児だが、内容は大真面目だった。五條研究員から受けたなんらかの報告への返信のようだ。

それによるとクレフ博士は「↑日ほど前からこのエリアで「SCP-■縺ォ帙s」の情報収集を行っている」…らしい。
先述の通り数字の情報が壊れて文字化けしてしまっており、博士がいつからそこにいるのかと、言及されているSCPオブジェクトのナンバーが分からない。

それはそれとして、五條研究員の送った報告とは以下のような内容だったらしい。
  • 「サイト-縺斐↓」で対抗ミーム兵器の開発が完成付近まで進んでいた
  • その調査のため、「サイト-縺斐↓」の施設放棄プロトコル解除のために技術者を派遣して欲しい
しかしクレフ博士は報告についてはその可能性が高いだろうとしているものの、派遣要請は却下した。というのもだ。
  • こちらのいるエリアも「サイト-縺斐↓」と同じ状況、ここに来た時点で職員は全滅していた
  • だから職員は送れない、自分で行ってくれ
  • 必要なら「サイト-縺斐↓」に収容されてるAnomalousアイテムを持ち出して使ってくれていいよ

……下線部に関して既視感がある方は本家サイトで最後まで読んでも理解できる。今からでも遅くはない。

二つ目の穴

同じくクレフ博士からの返信。
それによると、五條研究員は直近まで隔離環境にいたらしく、そのせいでいま世界がどうなっているか分かっていないようだ。
五條研究員は「では他の拠点に応援を頼んでくれないか」と送ったようだが、それは無理だ。もう、財団に機能している拠点はない。

なぜか。クレフ博士はこう記した。

財団は「SCP-輔s縺阪�」の制御に失敗した。
こちらも文字化けで何のオブジェクトか分からない。だが元記事では、この「SCP-輔s縺阪�」にリンクが貼ってある。

SCP-3519への。



詳細は個別記事に譲るが、大まかな説明を書いておく。
SCP-3519、オブジェクトクラスKeterこの時点では。
SCP-3519はある条件に当てはまるコミュニケーションによって感染するミーム災害、要は既にコイツにやられた人間が話す特定の情報に付与される「聞いただけで自分の中の常識を改変される」という極めて有害な概念要素である。

これに感染した人間は「2019年3月5日に世界が滅亡するのでその前に自殺するべき」と確信し、感染から40日以上生き残った人間は存在しない。
これに感染する条件は「感染した人間が世界の終末が迫っていることを述べるのをいかなる媒体でも認識する」という凄まじい緩さであり、財団の収容努力にもかかわらず感染と自殺は広がり続けた。そして「その日」に近づくにつれ世界が、財団が、機能を停止し始めていた。
なぜSCP-2000-JPの開けた穴の先にこんな終わりかけた世界の記録があるのかは今のところ分からない。

おそらく、このメールのやり取りは2019年2月25日から数日たったころになされたと思われる。
2月23日に博士の言う「対抗ミーム」を開発していたはずの機動部隊が連絡を絶ち、2月25日に特別収容プロトコルが改訂されて施設放棄プロトコルが発動できるようになったためだ。おそらく彼らもSCP-3519にやられてしまい、自殺してしまったのだろう。
もうクレフ博士も五條研究員も、それぞれ自分だけでどうにかする策を探ることしか出来ない状況になっていた。

三つ目の穴

五條研究員と、「AO-蝗幃峺」の対話記録。
「蝗幃峺」は文字コードをS-JISからUTF-8にエンコードすることで「四零」となるため、正しくは「AO-40」だったと思われる。
本来文字化けしないはずの数字が文字化けしているのは、なぜかわざわざ日本語に変換されていたからだった。
なおこれを用いると一つ目の穴で出てきた「サイト-縺斐↓」は「縺斐↓」が「ごに」となるので「サイト-52」となる。
五條研究員はクレフ博士の言葉に従い、サイト-52に行って事態を動かせそうなAnomalousアイテムを選んだようだ。
「SCP-■縺ォ帙s」については後述。

内容は以下の通り。原文ではLINE型だが、ここでは通常の台本形式で書き下す。

タイムスタンプ: 莠悟鴻蜊/梧怦/莠牙

五條研究員: 目的地でさっき渡したプログラムを実行したら訓練成功だ。

五條研究員: まずは「蜿ウ髫」縺ョ」に行こう。それ以外のルートは危ないから行っちゃ駄目だぞ。「AO-蝗幃峺」、大丈夫そうか?

AO-蝗幃峺: うん、分かった!

AO-蝗幃峺: ばしょがわかんない……

五條研究員:「蜿ウ髫」縺ョ」だ。もっと詳しく説明した方がいいか?

AO-蝗幃峺: だいじょぶ!おぼえた!

AO-蝗幃峺: まよった……。

五條研究員:「蜿ウ髫」縺ョ」だ。分かるか?

AO-蝗幃峺: うん!かんぺき!

AO-蝗幃峺: どこだっけ……。

かわいい。この「AO-蝗幃峺」は間違いなく最初の報告書のSCP-2000-JPだろう。
「蜿ウ髫」縺ョ」は上述のエンコードで「右隣」。タイムスタンプも最初の4文字は「二千十」なのだが、それ以降は不明。
他の場所のアドレスやタイムスタンプが破損しやすいという説明に合致する。
なぜおそらく日本にないサイト-52にAnomalousアイテムとして日本語と英語を解すサイバードッグがいたかは分からないが……まあ、たまたまだろう。
ともかく、五條研究員はこの人類の危機をどうにかできるかもしれないものとしてAO-蝗幃峺を選び、その訓練を始めた。いったいどうするのだろうか。

四つ目の穴

クレフ博士からの返信。
五條研究員が行動を起こし始めたことを聞いて安堵したことと、これから「SCP-■縺ォ帙s」の管理施設へ向かうことが書かれている。
そして、お互い上手くいったらまた連絡を取ることを約束して締めくくられる。

五つ目の穴

五條研究員と「AO-蝗幃峺」の対話記録。
しかしAO-蝗幃峺の様子がおかしい。訓練をしてくれないようだ。

タイムスタンプ: 莠悟鴻蜊/梧怦/香譌

五條研究員: 「AO-蝗幃峺」、時間が無いんだ。巣から出てきてくれ。

AO-蝗幃峺: やだ。

五條研究員: ほら、撫でてあげるから。

AO-蝗幃峺: うん……。

五條研究員: よしよし。

五條研究員: どうした?訓練が嫌になったのか?

AO-蝗幃峺: うん。

AO-蝗幃峺: すぐに分からなくなるからやりたくない。

五條研究員: 弱ったな……。ご褒美とかあれば頑張れるか?何でもいいぞ。

AO-蝗幃峺: じゃあ、あたらしいなまえがほしい。とくべつなの。

五條研究員: 「AO-蝗幃峺」以外の名前を付けるだけでいいのか。成功したら特別な奴でも何でも付けてあげよう。

AO-蝗幃峺: ほんとに?じゃあSCPなんとかってなまえがいい。ばんごうふるやつ

五條研究員: 確かに特別な名前だが……。

五條研究員: ちょっと待ってくれ、そいつは……。

AO-蝗幃峺: だめなの?

五條研究員: いや……うん、大丈夫だ。上手く行ったら何とかしよう。

AO-蝗幃峺: やった!

わんこはご褒美としてSCP指定、つまり「特別収容プロトコルが必要なものという指定」を欲しがった。
現在はAnomalousアイテムのため、今のままでは無理だ。しかしもしAO-蝗幃峺がこの事態を何とかできたなら、可能かもしれない。
そういうわけで、五條研究員とAO-蝗幃峺は約束を交わした。

六つ目の穴

五條研究員へのメール……なのだが。

RAISAによる通達

当メールは「SCP-輔s縺阪�」の検知により閲覧が禁止されています。
詳細を確認される場合は担当者までご連絡下さい。

今や五條研究員にメールを送ってくる人間はクレフ博士しかいない。
つまり、クレフ博士もSCP-3519に感染してしまった。

また、この時のRAISA(財団の情報管理部門)はまず間違いなくSCP-3519を検知してブロックする仕組みなんて構築できるはずがない。もう誰もいないのだから。
なぜここではできているのかは置いておくが、つまりこのメールは送られたこの当時は全く警告もないまま五條研究員の目に入ってしまっただろう。
これが意味することは、すなわち……

七つ目の穴

五條研究員と「AO-蝗幃峺」の対話記録。

タイムスタンプ: 莠悟鴻蜊/∽ケ/荳エ

AO-蝗幃峺: ごじょうさん、きょうはくんれんしないの?

五條研究員: ああ。今までよく頑張ってくれたな。

AO-蝗幃峺: まだせいこうしてないよ?

五條研究員: もう必要ないんだ。世界は明日滅びるんだから。

AO-蝗幃峺: ほろびるの?

五條研究員: そう。だから早く死なないといけない訳だ。わかるな?

AO-蝗幃峺: えっと、えっと……。

AO-蝗幃峺: うん!わかる!はやくしないとだよね!

五條研究員もSCP-3519に感染してしまった。明日滅びる、という点からこの対話は2019年3月4日のものとわかる。
五條研究員は当初隔離環境におり、感染したのは早くとも2月末になってから。SCP-3519元記事ではあまりに被害が大きすぎて40日以上は生き残れないとしか分かっていないが、たとえ感染から1週間でも「その日」を目の前にしたなら自殺してしまう可能性は極めて高いだろう。

SCP-3519が人間以外の知的存在に影響するかははっきりしていないが、この先の対話を見る限りたった今のコレでAO-蝗幃峺にも感染してしまったのではないだろうか。五條研究員に合わせてとりあえず同意してくれた可能性もあるが、これに続く会話でAO-蝗幃峺の方も翌日世界が終わるという前提で行動するようになっているからだ。

五條研究員: 「AO-蝗幃峺」も早く死ぬ準備を……。

五條研究員: 「AO-蝗幃峺」はどうやって死ぬんだ?

AO-蝗幃峺: あれ?どうするんだろう?

五條研究員: それは困ったな。何か出来る事があったら言ってくれ。

AO-蝗幃峺: じゃあね、ぼくいちどお外が見てみたかったの。SCiPNETってところにつないでほしいな。

五條研究員: 本当は駄目なんだが、世界が滅びるし構わないか。

五條研究員: ほら、繋いだぞ。

AO-蝗幃峺: ばしょさえきまれば、そのあとはうまくいくってところ見ててほしいの。

五條研究員: 何の話だ?

SCP-3519により自棄になった五條研究員は財団のネットワークシステム本丸であるSCiPNETにAO-蝗幃峺を接続した。
しかしこれにより、予期せぬ事態が発生する。

セキュリティ放送: RAISAによる……「ポート-蝗幃峺」に……不正アクセス……。

AO-蝗幃峺: きゅうにどうしたの?ごじょうさん?

五條研究員: 「AO-蝗幃峺」、まさかここで訓練したのか……?

セキュリティ放送: 鎮静ガスを……セキュリティ担当者は……装備を……。

AO-蝗幃峺: うわうわ、なにこれ。とまんない。

AO-蝗幃峺: ごじょうさん、どうしよう?

AO-蝗幃峺: ごじょうさん?

五條研究員は当初どこの情報に潜んでいるか分からないSCP-3519を回避するため、サイト内の情報を調べる際はセキュリティを極力くぐらないようにしていた。しかし、AO-蝗幃峺はこれをこじ開け、最初に訓練されていたとおりプログラムを実行しようとした。
今回行く場所は指定されていないため、自らと同じ番号のポートを選んだらしい。
これがサイトのセキュリティにサイバー攻撃とみなされ、これを送った端末のある場所……五條研究員のいるところに鎮静ガスを放ち、機動部隊に対応させようとされてしまったのだ。

こうして、五條研究員は昏睡した。
そして……

八つ目の穴

五條研究員と「AO-蝗幃峺」の対話記録。

タイムスタンプ: 莠悟鴻蜊/∽ケ/晏エ

五條研究員: う……

五條研究員: 今何時だ?

AO-蝗幃峺: 今はねえ、莠悟鴻蜊/∽ケ/晏エの荳画:疲律だよ。

五條研究員: 今なんて言った?

五條研究員: もう一度言ってくれ。

AO-蝗幃峺: 莠悟鴻蜊/∽ケ/晏エの荳画:疲律だよ。

五條研究員: ∽ケ/晏エなら、世界はもう滅びてるはずじゃ……。

AO-蝗幃峺: もう過ぎたけど、何もなかったよ?

AO-蝗幃峺: よかったね。

一人の人間と一匹の電子犬が2019年3月5日を生き延びた。
この時点でSCP-3519の誘う「2019年3月5日の世界滅亡」は迷信となった。もう、感染はしない。

九つ目の穴

五條研究員と「AO-蝗幃峺」の対話記録。

タイムスタンプ: 莠悟鴻蜊/∽ケ/蜈ュ

AO-蝗幃峺: ごじょうさん、あたまいたいの?

AO-蝗幃峺: ちょうしわるそう……。

五條研究員: まあその、ちょっとショックな事があってね。

五條研究員: この先一人で頑張らないといけなくなったんだ。

AO-蝗幃峺: ぼくもついてるよ。げんき出して。

五條研究員: まあ、そうだな。凹んでる場合じゃないよな。

AO-蝗幃峺: うんうん。

AO-蝗幃峺: ごめんね、へんなことしちゃって。

五條研究員: いや、あれは凄く助かったよ。

AO-蝗幃峺: ほんとに?

五條研究員: ああ。よくやった。この前言ってたご褒美をあげてもいい。欲しがっていた特別な名前だぞ。

AO-蝗幃峺: やった!新しい巣だ!

五條研究員: その代わりに頼みたい事があるんだが、いいか?

AO-蝗幃峺: なに?

五條研究員: SCiPNETの気に入った場所で、いつもみたいに情報を集めてきて貰えないか。それを私にも見せて貰いたい。

AO-蝗幃峺: わかった!いいよ!

五條研究員をSCP-3519から救ったのはまぎれもなくAO-蝗幃峺の行動だった。
実績があるし、どうせ他に財団職員はいないだろうからSCP指定しても誰も文句は言うまい。
実際はSCP-3519チームのローリー・ジョーンズ博士も生き残っているしO5-6になっちゃってるのだが、五條研究員にそれを知るすべはない。
新しい巣、というのは自分についての最も重要な情報がある場所を巣と見なすわんこにとって、「自分のSCP報告書」は一番大事なページになるということだろう。

SCP-3519が無力化した現在、もう何かを調べるのに怯える必要はない。
今世界はどうなっているのか、知らねばならない。そういえば、クレフ博士はどうなっただろうか。

十個目の穴

AO-蝗幃峺が拾ってきた五條研究員宛てのメール二通。片方はSCP-3519の検知によりブロックされている。
もう片方の送り主はクレフ博士。

それによると、博士は失敗したようだった。
「SCP-■縺ォ帙s」の施設に到達はしたものの、財団トップの「管理者」がその最高権限を持ってここを封鎖していたらしく、ガニメデ・プロトコルの発令によって解除されるはずのセキュリティが解除されていなかった。
博士はそれ以上何もできず、そこでSCP-3519に屈し命を絶った。

……さて、元記事ではここでようやく「SCP-■縺ォ帙s」の正体が明かされる。
とはいえ、この状況でクレフ博士が調べて目指す場所であること、ガニメデ・プロトコルというワードから察しの付く方も多かろう。

SCP-2000だ。*1

これも詳細は個別記事に譲るが、大まかな説明をしておく。
SCP-2000、オブジェクトクラスThaumiel
SCP-2000はアメリカ・イエローストーン国立公園の地下に秘匿されている財団製の施設であり、人類が滅亡しかけたまたはしてしまった時に文明を再構築する目的で使用される。
これを起動させることができれば、環境が無事なら人類は復活できる。
普段は極めて厳重なセキュリティで守られているSCP-2000だが、ガニメデ・プロトコルという財団の「もう人類の終わりを防げません」宣言がなされたとき、財団職員なら誰でもSCP-2000まで行ってアクセスし起動することができるようになる。

これを知ったクレフ博士はイエローストーンに向かったが、入口が封鎖されておりダメだったということだ。
しかし、封鎖されているのは入口だけだ。そして、SCP-2000のシステムもネットワークには繋がっているだろう。今ならセキュリティも緩いはず。ならば。

最後の穴

五條研究員の対話記録。
だが、相手の名前はもう「AO-蝗幃峺」ではない。

タイムスタンプ: 莠悟鴻莠/疲怦/晄蜊

五條研究員: そうか、クレフ博士もか……。よく拾ってきてくれたな。

???: えらいでしょ。

五條研究員: ああ。良い子だ。

五條研究員: 良い子にもう一つ頼みたい事があるんだが。いいか?

???: いいよ、がんばる!

五條研究員: 訓練の時みたいに「SCP-■縺ォ帙s」の所まで行って、プログラムを実行して欲しい。

???: うまくいったらなでてね!

???: あ、でもばしょわすれるかも……。

五條研究員: 今度は大丈夫さ。

五條研究員: 一つ聞きたいんだが、この前付けた名前は気に入ってくれたか?

???: うん!だいすき!

五條研究員: さっき話した「SCP-■縺ォ帙s」も同じ特別な名前が付いてるんだ。

???: ほんとだ。

そう、その名は。




五條研究員: お友達だな。

SCP-2000-JP: うん!

場所の名前が分からなくても、大丈夫。
それは自分の名前とだいたい同じ、特別なものだから。

五條研究員: 向こうにはたくさん人がいるからな、上手く行ったらたくさん褒めて貰えるぞ。

SCP-2000-JP: ほんとに?たのしみ!

五條研究員: これで場所を忘れたとしても、思い出せるな。

SCP-2000-JP: うん!
































































いきなり出てくるので知らないとビビるが、元記事では穴を抜けて元のSCP-2000-JP報告書に戻ったこのタイミングで画面上にこのような手紙をくわえた犬がニュニュッと現れる。
これが最初に注意した初見殺し要素。だが元記事で最初にこれに触れてほしいとしたのはこれでビビれと言っているのではない。これだけではないのだ。

言うまでもなくこのかわいいわんここそSCP-2000-JPである。
「巣」であるSCP-2000-JP報告書を閲覧している職員(=読者)がいたからだろうか、戻ってきてくれたのだ。
この状態でわんこをクリック/タップすると、くわえている手紙を読むことができる。

変わるもの、変わらないもの


内容は以下の通り。
このメッセージを開いて読んでいると言う事は、君は新たな財団職員なのだろう。そして、我々に何が起こったのかも把握しているはずだ。

我々が失敗したように、ほんの些細なきっかけから世界は崩壊してしまう。人類の歴史はその繰り返しだ。
まるで世界が不条理と不可能を必要としているかのように*2思うかもしれない。
だが、我々人類は諦める事なく全ての崩壊を乗り越え、君達はその先頭に立った。それだけは忘れないでくれ。

君達はこれから様々な異常存在──新たに生まれるもの、かつての財団が対処しきれなかったものも含めて、それらと関わることになるだろう。
君の目の前にいる異常存在は私がやり残した物の一つだ。報告書に記した通り、確保と収容、
──そして保護をお願いしたい。

おそらく、五條研究員からのものだろう。
先ほどまで我々が穴の先で見ていたのは、今の「一つ前の人類文明」がSCP-3519に滅ぼされ、五條研究員とAO-40もといSCP-2000-JPの活躍によってSCP-2000を起動し復活する顛末であった。

「右隣」ですら分からなかったあの頃とはもう違う。数値的情報は含まれていないとはいえ、現にたった今持ってきてくれた手紙には情報の破損が一切無いのだから。
人類が復活できた今は、以前人類をほとんど滅ぼしたミームを(たぶん必要ないけど)ブロックする余裕もあるのだろうし、英雄にも等しい活躍をした電子犬に、あるオブジェクトとほぼ同じ名前と、同じオブジェクトクラスを与えることもできている。
正直この作品がSCP-2000-JPである理由づけというか、SCP-2000-JPコンテスト参加作としてこの「コイツはSCP-2000-JPでなくてはならない」とすら思わせる構成は素直に感服である。



時と共に世は激しく移り変わり、人類は幾度も危機に直面する。
SCP-2000とSCP-2000-JPのおかげで、文明の「代」すらも変遷する事態になったこともある。

しかし、人類はずっと諦めずにそれに立ち向かい、乗り越えてきた。
最前線で人類を守る財団職員ももちろん同じだ。
どれだけ世界が変わっても、財団の使命は変わらない。



財団の未来はここで私達がつくるのだ



画面の前のあなたは今、目の前にいるSCP-2000-JPの新しい担当職員。
さっきまで脱走していたが、帰ってきてくれた。特別収容プロトコルに従って、確保・収容しなければならない。

保護は、まあ……今できることといったら……




目の前の世界を救ってくれた、このかわいいお利口さんの頭を撫でて、目一杯褒めてあげることくらいだろう。













SCiP.netから切断されました

特別収容プロトコル: SCP-2000-JPのホストとなるコンピュータは低脅威度物品保管庫内に収容されています。
収容担当者はSCP-2000-JPと1日2時間以上の対話を行ってください。



いままでずっとありがとう。これからも、よろしくね。



追記・修正はわんこをクリック/タップして撫でてきてからお願いします。





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最終更新:2024年04月28日 03:51

*1 ちなみに「にせん」を逆エンコードすると「縺ォ縺帙s」になる。

*2 ここはSCP財団の世界観を知るうえで最初に読むことになる「SCP財団とは」のページに書かれている"管理者"の言葉の引用である。