映画ドラえもん のび太の新恐竜

登録日:2020/02/23 Sun 05:6:11
更新日:2024/04/06 Sat 20:29:43
所要時間:約 15 分で読めます






ハロー!新のび太。



監督: 今井一暁
脚本: 川村元気
主題歌: Mr.Children「Birthday」
挿入歌: Mr.Children「君と重ねたモノローグ」


『映画ドラえもん のび太の新恐竜』はドラえもんの40作目の映画作品。
監督と脚本は『ドラえもん のび太の宝島』と同じコンビが再結集している。

本来は2020年3月6日公開予定だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止措置としてイベント・スポーツ自粛要請がされたため、上映開始日が延期された*1

今作はキャッチコピーやポスター、ストーリーも含めて、まさに「のび太の」映画となっている。
今まで何度も描かれてきた「他人を思いやる優しさ」に加えて、自身同様に出来の悪いキューを相手にして生まれる「親心」にも注目。

ちなみに延期後の公開日、8月7日といえばのび太の誕生日であり、結果的にのび太推しの要素が一つ増えたともいえる。


概要

恐竜ネタの映画は『のび太の恐竜』(そのリメイクの『2006』)と『ドラえもん のび太と竜の騎士』に続いて三作目(四度目)。
そのためか、歴代恐竜作品のオマージュと思われる要素が多い。
また「親としてののび太」が描かれるためか、原作における「大人のび太」をイメージさせるようなシーンも多い。
何よりも今作は映画ドラえもん40作目にして、ドラえもん連載開始から50周年のドラえもん50周年記念作品でもある節目の作品である。


ストーリー

ボクがこの子たちを守らなきゃ。
行こう、白亜紀へ!

のび太が見つけたたまごの化石から生まれてきたのは、
かわいい双子の新恐竜、キューとミュー。愛情たっぷりに育てた双子の幸せを願い、
みんなで向かったのは恐竜たちが栄えた白亜紀の日本だった。
6600万年前の世界を舞台に大冒険が始まる!

(パンフレットより引用)


キャラクター

いつものメンバー

大長編一作目をリスペクトしているのか、今作は全員、大長編補正がわかりやすい。

お馴染み22世紀のネコ型ロボット。
楕円形の石を化石だと言い張るのび太をバカにして呆れるが押し切られ、タイムふろしきを貸し与える。
現代日本で恐竜を育てるのは無理だと諭しながらも、真剣に二匹に向かい合うのび太を優しく見守っていた。「温かい目」は残念ながらなかった。

恐竜の絶滅を知らなかったため馬鹿にされ「本物の恐竜が見つからなければ目でピーナッツを噛むと宣言*2。恐竜博の化石掘り体験で躓いた石が偶然本物の化石だったため難を逃れる*3

キューとミューの親となって奮闘し、時に優しく、時に厳しく向き合っていくその姿は大人顔負け。まさに「新」のび太。
今作では今まであまり見せなかった「親としてののび太」が強調されており、自らの姿勢に悩みながらも子育てに向き合う姿が描かれている*4

序盤はできもしない約束をしたのび太を心配していた。
その後はミューと女の子同士意気投合。彼女の友達として旅に同行する。
お風呂シーン(しかも今回はミューと一緒に入っている)があったり、海に落ちたのび太が無事だった際に真っ先に駆け寄り抱きついたり*5、今作は刺激的印象的なシーンが多い。
同年に公開された『STAND BY ME ドラえもん 2』と合わせて、正ヒロインっぷりをこれでもかと発揮しており、彼女の主演作品という面すらある。

+ キューとの向き合い方に悩むのび太にかけた言葉は必見
「のび太さんは、人の痛みや悲しみがわかる、優しい人。私は、そんなのび太さんが好き」

中盤、空を飛べるようにしようとキューに厳しく指導するのび太は、遂にキューと喧嘩してしまう。
一人座り込んだのび太に近づき、励ますようにかけたのがこの言葉。

今の彼女は知らないだろうが、この言葉は後に静香パパが静香に語った「あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。 それが一番人間にとって大事なことなんだからね」に重なるもの。
夕暮れの水辺で繰り広げられたこの会話は、事実上の告白シーンとして話題となった。
作画もかなり気合が入っていることが窺える。

ガキ大将。
タルボサウルスから皆を守るため、ともチョコを見事なピッチングで口に入れるジャイアンズの大エース。
スネ夫と共に怪しげな組織の基地を見つけ囚われてしまう……が、相変わらずのタフネスで脱出してくるのも頼れるところ。
今作でもその身体能力と行動力でメンバーを支える。

恐竜に関しての知識に優れており、今作では知恵袋ポジションを確立。
序盤に恐竜同士の戦いを目撃したことで怯えるが、仕方なく同行するヘタレポジションも。
中盤(ジャイアンに押し切られ基地に侵入する)あたりまではわかりやすいヘタレだが、終盤覚醒するのもお約束。
基地である秘密を知り、それがのび太たちの逆転の切り札となる。


ゲストキャラクター

パンフレットには声優陣のインタビューが掲載されているが、いつもの5人以外にもキューとミュー、恐竜博士、ゴル、トップ、ジル、ナタリー長官役のものまで掲載された豪華仕様である*6

のび太が見つけた卵から生まれた双子の「新」種の羽毛「恐竜」*7
真上から見た背中には特徴的な模様があり、キューは逆さにしたスペード、ミューは(普通の向きの)ハート柄。

ミューは活発な性格で、好き嫌いせず何でも食べるタイプ。体も大きく、並ぶと静香を少し超えるくらい。
一方のキューはやや気弱なのんびり屋で、声もどことなく情けない。こちらの背丈はのび太よりやや低いくらい。
またミューは翼を使い滑空することが可能だが、一回り小さいキューは翼が小さく滑空もできず、こうした点からのび太には出来の悪い自分と重ねられている。

タイムふろしきで復元するのにかかった時間から六千六百年前白亜紀後期に棲息していたと推測された。

声の両者は『南極カチコチ大冒険』と縁があり、遠藤氏はモフスケ、釘宮氏はカーラを演じている。

恐竜博で解説を行っている男性。
(キューとミューが生まれたので)恐竜の育て方を訪ねてくるのび太にも、(宿題と勘違いしながらも)真剣に向き合いアドバイスをくれる人格者。
これらに対しては直接答えを教えるのではなく、自分で発想するようにヒントを与えるに留めている。
冒険パートと直接の関係はないが、のび太に強い影響を与えた人物。
今作では冒険パートで支えてくれるゲストキャラが居ない分、博士がのび太の師匠役を担っている。

実は超重要人物。詳しくは小説の欄にて。

  • ゴル(声・間宮康弘)
白亜紀に訪れた一行を襲ったタルボサウルス。ともチョコによってジャイアンの友達となる。
見た目の割に心優しいようで、トップと対決させかけられた際には「無駄に争いたくない」と拒否感を示し、ジャイスネが基地に侵入する際には不安そうな眼差しを向けて見送っている。

  • トップ(声・下和田ヒロキ)
スネ夫がともチョコを使ったシノケラトプス。
演じた下和田氏は『新・日本誕生』でペガ役を務めており、種族は違えど再びの相棒役となった。

  • ティタノサウルス
ドラえもんがともチョコを使った大型竜脚類恐竜……
なのだが、旅のダイジェストシーンで共に移動している程度しか描かれていない不遇の友達*8


パンフレットの「映画に登場する恐竜たち」より*11
日本を舞台にした物語であるため、アジアに生息していた種が多い。
マイナー種が多く、初見でわかる人がいるのか疑問。

+ 空の王者
  • 巨大翼竜
プテラノドンよりも遥かに巨大な翼竜。プテラノドンの住む谷で遭遇して以降、執拗に一行を狙う。
パンフレットに記載がない生き物で詳細は不明だが、おそらくモチーフはケツァルコアトルスか。
隠しキャラということで想像もつくが、終盤の強敵ポジション。
序盤中盤に出てくる敵キャラならともかく、歴代映画でも珍しい悪の組織の計画とかには関係なくストーリーの最終局面まで純粋にドラえもん一行を獲物とみなして襲撃するキャラ。
同時にストーリーの山場を見事に盛り上げてくれるナイスな敵でもあるが。

  • キューとミューの仲間
旅の末に見つけた同種の恐竜。
群れを作り、翼による滑空を活かして生活していた。
雄雌は体色の違いでわかる。雄が緑、メスはピンク。
主食は魚。トサカのデザインが個体ごとに違い、特にボス雄はド派手になっている。

ミューは早々に仲間として認められていたが、小さくて飛べもしないキューには非常に辛く当たる。
ここから「できないならそれでもいい」と思っていたのび太も思いを変え、キューが仲間と共に暮らしていけるように「何としてでも飛べるようにする」との強い気持ちで向き合うことになる。ストーリーの転換点。

ちなみにジルとナタリーからは「弱者」と明言されている。
いわく「陸で生きる力も海で生きる力もなかった。だから住処を追われていき、最後に命がけで滑空して孤島へと逃れたのだろう」とのこと。

  • 首長竜
海に沈み溺死寸前の、のび太とキューを救った首長竜。
薄れる意識の中、のび太が思い出していたのは……?

+ 君がいるから、頑張れる。
正体はピー助。ファン感涙の再登場である。
今作では台詞は一言、「ピューイ」だけであるが、クレジットには「ピー助 神木龍之介(特別出演)」の文字がバッチリ。
声を考えると今作は『2006』の延長線上にある可能性が高いが、ドラえもん映画同士、直接のつながりが示唆されるのは珍しい*13

小ネタとして、序盤に宇宙完全大百科で検索したシーンで、フタバスズキリュウ*14の項目(外見はピー助)が一瞬映るのが確認できる。

  • ジル (声・木村拓哉)
  • ナタリー長官(声・渡辺直美)
白亜紀の日本を冒険するのび太達を密かに観察する人語を解すハヌマンラングールと、通信機越しに指示を与える女性*15
新恐竜(キューとミュー)に並々ならぬ関心を寄せ、彼らを連れたのび太たちを敢えて泳がしているが、邪魔となるようならば排除することも辞さないと述べる。
またジルは猿以外にも、時としてコウモリになって空を飛ぶシーンもある。

ジャイアンとスネ夫が発見した彼らの基地には、恐竜の剥製が大量に保管されていた。
スネ夫は恐竜ハンターだと推測するが、そこで二人を発見したジル博士に捕まってしまう……

声は以前3次元でテレビアニメ&舞台版がスネ夫な剣士の映画版や後にアニメ版が恐竜博士になる主人公の実写版を担当した人とビヨンセ。ここにもとんでもない大物を持ってきた。
声だけで予算を使い果たす気なのか?


登場するひみつ道具

キューとミューについて調べるために出したが載っていなかった*16
不完全大百科である。

  • 飼育用ジオラマセット
天候・サイズ調整自由な箱庭。ただしサイズ調整機能が壊れ始めている。
大きくなってきたキューとミューの居住空間。別名ノビサウルスランド(命名はのび太)。
冒険にも持ってきていたが、ジュラ紀での騒動の際に落としてしまった。

  • インスタントミニチュア製造カメラ
  • 即席魚のもと
撮影したもののミニチュア模型を造るカメラと、瞬間的に生まれ成長する魚の卵。
共にジオラマの環境を整えるために使用。

  • 空間移動クレヨン
赤いクレヨンで描いた円の中にいるものを、白いクレヨンで描いた円の中に瞬間移動できる。

  • 探検隊セット
着ると暑さや寒さ水中でも平気だという探検服一式。
テキオー灯の衣服バージョンのような道具。
今作のコスプレ枠1。

  • ここどこバンダナ
発信機となっており、バンダナを付けたもの同士は内側のモニターで居場所を把握できる。
今作のコスプレ枠2。

  • 足あとスタンプ
インプットした型と同じ形の足あとを光らせる。
キューとミューの仲間の足あとを探す際に使用。

  • たまご探検隊
自動で探索を行うたまご型のロボット集団。
足あとスタンプで指定した足あとを追跡させるために使用。
たまごはそれぞれに自我や性格があるようで、しっかり者からうっかりやまでいる。言葉こそ発しないが非常に可愛らしい。
ちなみに隊長のみクレジットに表記がある。担当は悠木碧とこちらも豪華。

  • キャンピングバルーン
内部が居住空間となっている風船。

  • レストランガチャ
ランダムな食べ物が入っているガチャガチャ。

  • ともチョコ
半分にして食べた二人を一時間だけ友達にするチョコレート。
効果時間中は互いの能力や外見が反映され、言葉が通じなくても意思疎通できる。
静香はミューの飛行能力でタケコプター無しで空を飛べたり、ヴェロキラプトルにジャイアンが食べさせた際には鉄格子を食い破って脱獄に成功したりと、獲得できる能力はかなり強力。
なくなっていた桃太郎印のきびだんごの代わりに使用。

  • たずね人ステッキ
喧嘩別れしたキューを追う際に使用。
精度があてにならないことで有名だが、今作は成功した。

  • 逆時計
指定した対象の時間を巻き戻す時計型のひみつ道具。
終盤の危機を回避するべくのび太が使おうとするが……

  • チェックカード
ドラえもんではなく、ジルが使用。
翳した相手の歴史への影響を発光によって識別するカード状のひみつ道具。
もともとは『ドラえもん』ではなく『T・Pぼん』に登場したタイムパトロールの装備品。

  • 睡眠銃
同じくジルが使用。撃った相手を気絶されるショックガンの類似品。ただし恐竜用に調整されており人間には危険。
ジル博士は容赦なくジャイアン達に撃ち込んだ。

ベテラン組。今作でも大活躍。

・イナゴの缶詰
スモールライトを取り出そうとするたびに出てくるイナゴの缶詰。
今作におけるポケットから出てくる役に立たない道具枠。


その他

  • 逆上がり
のび太の不得手な事。序盤からこれができずに、周囲に笑われるという経験をしている。
同じように「空を飛べない」というキューに対して、当初は「できないならそれで仕方ない」と言葉をかけていたが、仲間の恐竜に出会ってからはその姿勢を変化させている。
つまり「逆上がり=飛行」は対照になっており、のび太の優しさに隠れた「自身への甘えや逃げ」を浮き上がらせる要素でもある。
のび太もこのことに気が付いたのか、キューが特訓する隣で、自身も逆上がりの特訓に励んでいる。

  • ボール
キューとミューの遊び道具の青いボール。
昔どこかで首長竜と遊んだような気が……?

ドラえもんが眠る押入れの壁に、何故か貼ってあることが確認できる。
気に入ったのか?


ネタバレ

+ 「彼らを捕えよ!!」
「ここは6600万年前の世界……地球に巨大隕石が衝突した時代なんだ……」

のび太たちがたどり着いた6600万年前。
そこは小惑星の衝突により、恐竜たちの時代の最後となる時間であった。
突如空を切り裂いた小惑星は、水平線の遥か彼方に衝突。
ドラえもんは「落下の衝撃で発生した熱波、その後降り注ぐ灰による寒冷化により、恐竜たちが絶滅する」と語る。

泣き崩れる一行。目の前に迫るその時を前にして、のび太は逆時計によって小惑星を逸らすことを考える。
歴史を変えることは許されないと語るドラえもんを押し切り、逆時計のスイッチに手を伸ばすのび太。
そこに現れたのは謎の男、ジルとナタリー。そしてタイムパトロールの面々であった。

その正体は歴史の重大な転換点を警護していたタイムパトロール。
ジルは恐竜から鳥への進化におけるミッシングリンクを調査してもいた*17
こうしたことを明かした直後、恐竜の絶滅回避=哺乳類の支配層の遷移、人類の誕生を無かったことにするという致命的な歴史改変を企てたのび太たちを連行しようとする

最後まで抵抗するのび太。
それに手を貸したのは、共に旅をしてきた仲間たちであった。
力ずくで連行しようとしたタイムパトロールであったが、チェックカードが反応したことで「無理に手を出すことは歴史を変えてしまう」として断念。
一方包囲から脱出した面々に対しスネ夫は考えがあると語り、島の上空へと皆を誘う。
スネ夫はタイムパトロール基地で映像を見て、あることに気づいていたのだ。

上空から見えた島。そこに建っていたのは巨大なジャングルジム――かつてキューとミューが遊んだノビサウルスランド――であった*18
この島は、のび太がジュラ紀で落としてきた飼育用ジオラマセット(ノビサウルスランド)が、長い時を経て巨大化し続けたことで生まれていたのである。
ジオラマの内部であれば、周囲の環境の影響を受けることはない
それはすなわち、内部に恐竜たちを避難させれば、この大災害を生き残ることができるという希望であった。
刻一刻と熱波が迫る中、のび太と静香は空間移動クレヨンの線を引くために奮闘。
ジャイアンとスネ夫はゴルとトップの力も借りて、できる限りの恐竜たちを線の内部へと誘導する。

その最中、のび太とキューの前に、あの翼竜が立ち塞がる。
「少しでも多くの命を救いたい」というのび太の想いも知らず、以前のように彼らを狙って襲い掛かる翼竜。
頼みの綱のドラえもんはお約束で戦える秘密どうぐが咄嗟に出てこずノックアウトされ、残されたのび太は飛べないキューを庇いながら必死に逃げ惑う。
ナタリーはジル博士に「急いで彼らを回収するように」と命じるが、ジルは「もう少し待ってくれ」とのび太たちを信じる。

追い詰められたのび太の叫びに応えるように、遂に自らの力で空を飛ぶキュー。
それは仲間のように滑空し美しく飛ぶのではなく、不器用にも翼を羽ばたかせて必死に空を飛ぶものであった。
それでも、今度は自分がのび太を助けるべく、のび太を掴まらせたまま翼竜の攻撃を縫って力いっぱい空を飛ぶキュー。
それを見たジルは「ミッシングリンク……」と呟く。
滑空していた一部の恐竜と、自在に羽ばたいて空を飛ぶ鳥類。
のび太と共に成長し、羽ばたきという新たな能力を身に付けたキューこそが、恐竜から鳥類へと進化した種、未だに発見されていない進化のミッシングリンクであったのだ。
彼はチェックカードがのび太に反応した意味を知り、歴史改変を起こさずに済んだことに安堵するのであった。

そして一通り物語が進んだタイミングで復帰したドラえもんは「欲しいものの代わりにイナゴの缶詰が出てくる」ことからある結論に至る。
「イナゴの缶詰――!!」
「出た!!(スモールライトが)」

こうして翼竜を退けたのび太たちは、何とか集めることができた恐竜たちをドームへと送り込み起動させる。
ドームは青空に包まれ、地球を襲った大災害を何とか免れることができた。
全てが終わった後、のび太たちが現在(未来)へと帰っていく。
消えゆくタイム・パトロール船を見送る恐竜たちの中には、あの首長竜の後ろ姿もあった。

そして物語はある日の学校へ。
そこにはできなかった逆上がりに挑戦するのび太の姿があった。
空を飛べた友達を思い出し、もう一度挑戦するのび太。
その時、遂に彼の体が鉄棒を一周する。

「できた……」

彼もまた、今回の出来事を越えて大きく成長したのだ。


小説

2020年2月6日に小学館ジュニア文庫より刊行。
こちらも2年前に刊行された『小説 のび太の宝島』と同じく川村元気と涌井学コンビによるもので、川村の脚本を涌井が小説として再構築し執筆している。

先述のように映画の公開が遅れたため、映画より半年ほど早く刊行される形となった。
主な内容は変わらないが、全体的に映画で描かれていない部分がフォローされている名ノベライズ。
以下は主な描写の追加部分。

  • ドラえもん
終盤、映画ではタイムパトロールに反してのび太に加勢するが、小説では最後まで歴史改変に反対する立場をとっている*19
その後は島の秘密を知って協力するのだが、のび太と対立するその姿は「成長と別れ」を暗示しているようにも映る。

  • のび太
最初に卵を掘り当てた際、映画では謎の回想シーンが流れたが、小説ではそれとなく普通の石ではないことを直感的に悟っており、自然と心を通わせる力のように強調されている。

  • 恐竜博士
序盤でキューの病気を治してもらうためにのび太が訪問したシーンが詳しく描かれており、恐竜の治し方はわからないとしつつも、脱水を避けるために水分を適切に与えることが必要とアドバイスを送る。
この時に「だから、こういうふうにどこにも正解が見つからないときは自分の頭で考えてみるんだ」との言葉を送っており、この言葉が終盤ののび太の行動に多大な影響を与えることとなる。

タイムパトロールから「恐竜の絶滅は定められたことだ」と言われたのび太は、こう言い返す。

「ぼくの時代にも、あなたみたいに研究熱心な人がいたよ。恐竜博士って呼ばれてた」
「その人はね、『いまわかっていること、見つかっているもののなかに、正解があるとは限らないんだ』って教えてくれた」
「だから『自分の頭で考えることが大切なんだ』って教えてくれたよ!見つからないなら探せばいいんだ! 」

映画以上にのび太の師としての面が描かれており、その言葉から奮起するという流れになっている。
本編で飛ばされた理由がわからない……見つからないなら探せばいいんだ!

  • ゴル&トップ
小説だとティラノサウルス&トリケラトプス名義。
シノケラトプスはトリケラトプスの生物学上の分類はのは「ケラトプス科」までなのだが。

終盤、ジャイアンとスネ夫の下に馳せ参じるシーンが細かく描かれている。
何も言わずとも理解していたジャイアンの言葉は名言。
「来たか……」
「何が……?」
「決まってるだろ。友達のピンチに駆けつけるのは――」
「友達だ!」

ともチョコを介して他の多くの恐竜たちと意思疎通し、可能な限りの恐竜を誘導する。

  • ティタノサウルス
小説だとアラモサウルス名義*20
映画では途中(旅のシーン)でドラえもんと友達になっていることが示唆されているが、こちらでは実際に友達になり足として活躍してくれたことが描かれている。
今作ではドラえもんの立場が全体的に悪く、友達となる恐竜すらハブかれたのも不遇感が増している……

  • ピー助
映画同様に一瞬の出番だが、こちらでは「ピューイ」という声を聴いたのび太の心情が追加されている。
「キミが……助けてくれたんだね……」

しかしラストシーンの見送りに参加している描写が無い(地の文に出てこない)ため、見方によっては「そのまま死んだ」と捉えられなくもない難点が……*21

ちなみにクレジットのないこちらでは、一切名前が出てこない。
それでも一声で伝わるのは、彼の知名度の高さゆえか。

  • ラストシーン
島を外界から隔絶された海上へと移動させたことがドラえもんから語られている。


漫画版

主にむぎわらしんたろう担当の『映画ストーリー「映画ドラえもん のび太の新恐竜」』と
『ちゃお』で少女漫画風にアレンジされ連載された『映画 ドラえもん のび太の新恐竜~ふたごのキューとミュー~』がある。

むぎわらしんたろう版は概ね映画版のストーリーをなぞっているが、明確に異なるのが、他では繋がりがぼかされるなかがっつり『のび太の恐竜』*22の続編であること。
冒頭からピー助のことにも触れられており、ドラえもんたちもかつての経験があった前提の物語となっている。


余談

入場特典は小冊子。
恐竜に関係するお話や、登場する秘密どうぐに関係するお話が原作から抜粋され、カラーで収録されている。
これが五種類からランダム*23という代物で、集めようと苦労した人も多いのでは?
同じ年に「100年ドラえもん」と題したてんコミ全巻セットも発売されており、コンプ勢は少なからずいたはず。
公開前にはアニメで『のび太の恐竜』(原作準拠の短編)が放送された。
しかしアニメ一本で売れっ子俳優の神木氏を呼ぶわけにもいかなかったのか、こちらのピー助の声は久野美咲が担当している。
公式サイドの思惑としては「映画公開前にピー助を知らない人向けに紹介」というものだろうが、『2006』を知らずに本作を見た方はクレジットの「神木隆之介」を見て驚いたのではないだろうか。

本作における大長編の悪役が誰になるのかは議論の種。
物語の構成的には小惑星か翼竜の二択といったところだが、どちらも特別な意図を持って敵対するわけでもないので微妙なところである。

今作ではドラえもん側が時間犯罪者となる、過去類を見ない事態となった
ドラえもんと過去改変についての議論は尽きないが、今作で起きた一連の出来事はまさに「ドラえもんがのび太と過ごすことが歴史に組み込まれている」という解釈に近いものとなっている。

エンディングは主題歌が流れる中、キューとミュー、のび太が走るというもの。
2022年2月26日に地上波放送された際にはこの部分がオミットされている。

恒例の次回予告では、宇宙を往く謎の巨大船が映し出された。
船の外見からおそらく……?と思われていたが、やはり次回作は『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』であると正式に発表された。
一度は2021年3月の公開が決定したのだが、しかしこちらも新型コロナウイルスの感染再拡大の影響を受け、公開1か月前に延期を発表。その後、新たな公開時期が2022年春となる事が発表され、映画の公開が1年延期される事となった*24

本作では「鳥への進化」が白亜紀末に起こっているが事になっているが、実際には鳥は白亜紀が始まる前には出現していた。

公開翌年の2021年には、中国の地質学者・邢立達博士らのチームが、恐竜の新種の足跡に「ノビタイサウルス」と命名したと発表した。
同氏は子供の頃から『ドラえもん』の大ファンで、本作でのび太が「ノビサウルス」と命名するシーンにあやかったとのこと。






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最終更新:2024年04月06日 20:29

*1 これによって、本来8月7日上映予定だった『STAND BY ME ドラえもん 2』の公開日も延期されている。

*2 これも『のび太の恐竜』オマージュ……ではなく「オオカミ一家」の方のネタ。とはいえ項目にあるように描かれた時期は「目でピーナッツ」の方が先なので、50周年記念として本家のこちらを採用したとすればリスペクトが感じられる。

*3 これを持って家に駆けこむシーンが、今作のタイトル前の「ドラえも~~ん!!」である。

*4 この辺りは大人層に向けたメッセージでもある模様。

*5 のび太も予想外だったのか赤面している。

*6 主題歌枠でミスチルのインタビューもあるし。

*7 羽毛恐竜への研究が進んだのは学術的にも最近の話題。新しい話題を積極的に拾うのも、初代リスペクトなのかもしれない。

*8 モンストとのコラボでもハブられていた。

*9 劇中では「アロサウルス」と呼称される。

*10 劇中では「ステゴサウルスの仲間」と呼称される。

*11 「恐竜ではない生物」もいるが。

*12 特別出演。

*13 原作との繋がりであれば『雲の王国』とキー坊といった例もある。

*14 本作公開時には「フタバサウルス」という学名がついている。

*15 猿などの大型哺乳類の誕生はもっと後の時代である。この点からスネ夫には「この時代に猿……?」と疑問を持たれていた。

*16 原作では「どんな情報でものっている」とされているため、この部分は原作の設定と矛盾している。あるいはストーリーの真相を考えると、タイムパトロールが情報統制でもかけていたのだろうか……

*17 アニメ版『T・Pぼん』に登場するオリジナルキャラクターのルイも、タイムパトロール隊員と兼業で生物学者をしている、という先例がある。

*18 ジャングルジムにはのび太がペンで名前を記していたが、今作もちゃんと「のび犬」と書かれている。

*19 結局(島の秘密を知った)ジャイアンに強引に連れ出されて脱出している。

*20 映画でもスネ夫がティタノサウルスを見て「本物のアラモサウルスだ!」と発言している。

*21 逆に小説では「海の生き物もできるだけ救えるように」と、のび太が海上にも線を引く描写が追加されており、ここから彼の脱出を想像することができる。そもそも映画でも普通に島まで入ってきていたので、海からは自由に出入り可能なのかもしれない。

*22 言及的には原作版と大長編どちらk

*23 それぞれの表紙はレギュラー陣5人が担当している。

*24 この影響で、アニメのエンディング曲が一年以上に渡って「Univeres」という状況が続くこととなった。