SCP-715

登録日: 2020/03/10 Tue 11:36:13
更新日:2024/01/09 Tue 02:23:07
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SCP-715とは、共同創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトである。
メタタイトルは「私であったかもしれない顔」。
オブジェクトクラスはSafeからKeterを経てのSafeと、コロコロ変わっている。この時点で察しの良い人は何か危うげな雰囲気を感じとるかもしれない。

一度Keter認定されたオブジェクトがSafeクラスへと再指定されるのは、たとえば「それまでの収容手段に代わる画期的な収用法が発見された」「何らかのインシデントにより性質が変化し収容が容易になった」などといった理由が考えられる。

このオブジェクトもまた、財団が新たに「正しい扱い方を発見した」ゆえにSafeクラスに認定されたと言えよう。

ただし……

説明

コイツが何かというと、オハイオ州████████の████████シティモールに設置されている、1972年にソニーが製造した写真撮影装置である。プリクラや証明写真などの機材を思い浮かべてもらえれば分かりやすいだろうか。カーテンで区切られたブースがあり、写真を撮りたい人がその中へ入って、コインを投入し、撮影すると、撮影した写真が排出される、というもの。

その主な異常性は、排出される写真の人物の顔が、切り裂かれたように大きく歪んでしまうことと、もうひとつ。
シティーモールの地下にある空間(図面のどこにも存在せず異次元空間と思われる)に、撮影した対象と似た実体が出現すること。

地下空間は地下三階の南西の壁にある通用口から侵入できる。穴の壁は人間の脂肪組織によく似た詳細不明の生体物質により構成されており、常時強力な腐食性物質が分泌されている。
「人間の体に似た空間」と聞いてSCPに詳しい人は某要注意団体を思い浮かべたかもしれないが、関係性は不明。

そこに出現する実体はSCP-715-Aに指定される。実体は出現の際に撮影機を利用した人間と似た容姿をしているようだが、識別が困難なほどに顔を中心に裂傷が走っているという特徴がある。おそらくは撮影機本体から排出される異常な写真に写った人物の顔の傷と同じものなのだろう。

そして-A実体は穴から出現すると、その「肉の壁」に手足をめり込ませ、よじ登り脱出しようとする。壁からは常に侵入が困難なほど強力な腐食性物質が分泌されているが、実体には影響はない辺り相当な耐久力を持つという。実体は敵対的であり、こんなものがシティモールに解き放たれては大変だ。

収容方法についてだが、オブジェクト本体となる写真機を遠隔監視し、排出された全ての写真は職員が回収し、写真機があるオハイオ州のすぐ隣のインディアナ州のサイト81でさらなる調査を行う。

そして地下の穴には武装したセキュリティ職員が駐在。実体の脱出を阻止するため、発生を確認するなり必要な武力をもってこれを殺害することを決定している。


ここまでが三段階に変化したオブジェクトクラスのうちの第一段階、最初のSafe認定の時の概要。
写真機を使うことで発生する実体の危険はあるが、発生個所もその処分方法も確定しているため、研究しつつ見張れば問題はない。

だが、そんなオブジェクトが一転してKeterクラス相当の危険性と判断された事実が明らかになる。



パットン研究員のおかしな行動


オブジェクトの新たな事実が明らかになったのは、このオブジェクトを担当していたジェラルド・パットン研究員の奇妙な行動からだった。

ある日、パットン研究員は自らこの写真機で写真を撮影してみるテストを行った。それ自体はなんら問題なく終わったようだが、テストの直後、パットン研究員はその時来ていた他のSCPオブジェクトの配点要請を辞退。そちらの研究ではSCP-715の研究よりも大きな決定権、休暇日数、そして何よりもより高い給与が約束されていたにも関わらず、である(パットン研究員はそれまで昇進を断ったことはなかった)。ただ、この時はパットン研究員にしては珍しいとは思われたが、それ以上言及されることはなかった。

またそのしばらく後、サイト81の対現実改変異常定例調査(恒例の財団特有の謎技術)の際に、サイトの全職員に出頭が義務付けられているにもかかわらず、パットン研究員は検査に姿を現さなかった。ただこの時も大勢の職員の検査があるために大きく取沙汰されることもなかった。

だがサイト81の研究主任であるアガサ・ライツ博士が職員についての人事情報を調査した際に、このパットン研究員の行動に気が付く。またパットン研究員が担当するはずだったSCPが現実改変にまつわるものであったことにも着目。現実改変を伴うオブジェクトの担当に配属されれば、当然、定期的に現実改変の影響を受けていないかの検査を受けることになるだろう。

つまり、パットン研究員の行動は、いずれも現実改変の影響についての検査を避けるため、ということで説明できたのだ。

そこでライツ博士はパットン研究員の宿舎に現実改変の影響を受けずに映像を録画できる装置を密かに設置。それにより、パットン研究員の撮影を行った。

その結果、SCP-715の恐るべき真実が明らかになったのである。


Keter認定へ


撮影された映像では、パットン研究員はあの地下空間に現れる顔の裂けた実体、SCP-715-Aと同じように映った。

そしてこれを受け、同じように現実改変を受けないような機材で-A実体を撮影したところ……

それは、人間だった。

そう、SCP-715の真に見るべき異常性、それは異常な写真を出力することでも、地下に謎の実体を生むことでもない。

撮影した人間を、区別のつかない正体不明の複製に入れ替えてしまうことだったのだ。

財団がこれまで殺処分してきたのは、撮影機を使った途端に謎の空間に飛ばされ、訳も分からず混乱する人間たちだったのだ。敵対的に見えたのも、突然の事態で冷静な思考を失っていたのを財団が勘違いしただけだった。

財団は写真機で撮影し出てきた実体をSCP-715-Bに指定し、またすぐさまSCP-715をKeter認定し、所在がわかっているSCP-715-B個体を全て収容することを始めた。
またパットン研究員……いや、パットン研究員のように見える生物をおそらくは拘束し、インタビューを行うことに成功した。

しかしながら、人間と入れ替わった-B実体は、写真機が財団に発見・収容されるまでどれほど生まれたのかわからない(財団もテストによりパットン研究員のような被害者を生んでしまった)。パットン個体は入れ替わった相手が財団職員という立場であったからこそ現実改変を看破されたが、逆に言えば専用の機材を用いるまで言動や容姿では一切違和感を抱かれなかったわけで、一般市民に紛れた-B個体はまず正体を見破られることはないだろう。

今も彼らは何食わぬ顔で人間社会に溶け込み、元となった人物の代わりに生活している。その全てを特定し、確保・収容することは、いかに財団といえど不可能と言っていい。Keter分類にも頷ける。

問題は、-B個体の目的だ。パットン個体の行動から、人間と入れ替わりに写真機から出てきた生物は、自分が偽物であることを理解し、またその正体を隠そうとしていることがわかる。

そうまでして人間そっくりの偽物を送り込み、いったい何がしたいのか。そもそもあの写真機は、地下空間は、誰がどのように作ったのか?

幸い財団は-B個体の1人であるパットン個体を確保しインタビューをしている。その口から事実が語られるかもしれない。報告書には記されていないが、実際パットン個体から財団は重要な情報を得たという。

しかし、それによって財団は思わぬ行動をとった。



Keterクラスの取り消し、Safe指定へ


パットン個体へのインタビューから得られた情報により、SCP-715のKeter指定は取り消され、再びSafeへと割り当てられた。

さらには他の-B個体の捜索もしないと明言され、収容プロトコルも写真機をロッカーに入れて放置(報告書にはわざわざそれ以外する必要がないと記載されている)、また-B個体と職員の接触を禁じ、さらに情報もクリアランスレベルによって制限することが決められている。

その上、報告書から「調査中」「理由は現在不明」といった部分が横線で消されるなど、調査自体を禁ずるような形となっている。

また、SCP-715-A……写真機で撮影を行い、入れ替わりで地下の穴へと放り込まれた者は、穴自体をサイト81/715と指定し、そこに収容することとなった。

このような扱いを決めた理由は、報告書には「パットン個体へのインタビューから得られた情報により」とある。「正常性を維持するため、少なくとも彼らの目的が分からない内は、放置した方が望ましい」とも。第四の壁の向こうから散々セキュリティクリアランスを突破してきた我々にも、その詳細はわからない。

だが、そのヒントとなるような出来事の報告書が最後に記されている。

事件715/A


パットン個体同様、財団のエージェントである “エージェント デーヴィッド K. フレデリックソン”もまた人間に成り済ましたSCP-715-Bであることが判明し、財団はコイツを終了させ検死することにした。


そしてこのSCP-715-B、拘留下の間にサイト81/715の方角へに向かって、低レベルのベータ放射線を放出していたことが判明していた。その検死の最中、放出量が激増し、同時に施設に大規模停電・収容違反が発生してしまった。

後の調査で、このエージェントに成り済ましたSCP-715-2の死体が消失していることが判明、監視カメラには、SCP-715プロジェクトに関与していた複数の職員がB棟研究室へ入り、SCP-715の死体と共にサイトから逃亡する姿が映っていたのである。恐らく、SCP-715の実験以外でも仲間を増やしていたのだろう。加えて仲間を呼び寄せる能力も有していたらしい。

さらに死体のあった場所には1枚の写真が。
そこには家族写真のように並んだ4人の男女が写っており、うち3人はSCP-715で撮った写真と同様に顔の部分が引き裂かれたように歪んでいたが、1人だけ、正常な状態で写っている女性が。

そして写真の上には以下のような文字が印字されていた。


私が聞くための私の耳

私が見るための私の目

私が喋るための私の口

私の顔に触れるな



恐らくは、この文章は普通の顔の女性の言葉だと思われる。

考察の域を出ないが、恐らくはSCP-715-B(怪物)の親玉に位置する存在、あるいは彼らの大本(意識の総意)ではないだろうか。少なからず"ソレ"が警告を発してきた。

「SCP-715-B(怪物)たちは私の"目"であり、"耳"であり、"口"である。彼ら(私)にこれ以上関わるなら容赦はしない」と。


これらのメッセージによって、財団はSCP-715のオブジェクトクラスをSafeに戻してしまい、プロトコルも改正されてしまった。

財団を含め、この世界にはもう既に人間に成り済ます怪物が少なからず紛れ込んでいるからだ。

……少なくとも、人間に成り済ましたSCP-715-Bは普通の人間には見分けがつかない。姿を奪われた人々に目をつぶれば被害はそこまで甚大ではない。SCP-715-Bによる被害も、成り済ましをのぞけば一切確認されていない。
SCP-715本体も厳重に保管されているため、これ以上犠牲者も、怪物も増える心配がない。

故に財団はオブジェクトクラスをSafeに格下げした。怪物を敵に回すよりは、見て見ぬフリをする方がずっとマシだからである。


端から見れば明らかに収容違反。それは疑いの余地もないだろう。
しかしながら人類を異常な存在から守り、社会が維持できるというのであれば、何処に潜んでいるのかも分からない怪物を敢えてそっとしておくことも、仕方のないことなのかもしれない。

財団の敗北によって、平穏は保たれたのである。




余談

この記事に登場する人物の中に、カーライル・アクタスというサイト管理者が登場するが、彼はこの記事の作成者、djkaktus氏のアバターである。




追記・修正よろしくお願いします。




SCP-715 - My Face That I May Be
by djkaktus
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最終更新:2024年01月09日 02:23