フレイ(北欧神話)

登録日:2020/03/16 Mon 18:37:52
更新日:2023/12/16 Sat 17:37:06
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『フレイ(Frey)』とは北欧神話の神の一つ。
フレイヤの双子の兄として知られ、妹や父のニョルズと共にヴァン神族より差し出された人(神)質の一人であるが、妹や父と同じく高い地位を得た。


【概要】

北欧神話というと、未だにオーディンを頂点としたヴァイキング達が活躍していた頃の、謂わば戦時体制下にあった頃の信仰体系ばかりが取り沙汰されるので、日本を含む他国ではオーディンやトールロキ、妹のフレイヤの知名度の方が高く、フレイは近年になってから漸く存在を認識されてきたような感もあるが、実際に北欧神話が信仰されていたアイスランド等では、非常に人気の高い主神格の一柱としての信仰を受けていた。

事実、ヴァイキングによる侵略と戦争の時代が過ぎ去って後に農耕と狩りの社会に回帰すると、戦争専門で暗い(恐ろしい)性格のオーディンよりも、快活で民衆の人気の高いトールと共に、豊穣神であるフレイの人気が高まり、後には三大主神格とされつつもトール>フレイ>>>オーディン位の信仰上の人気の格差が生じることとなった。
……といいたいところだが、オーディンに関してはキリスト教からの影響(信仰と融和したトール等に対して冬を支配するオーディンは大変に嫌われた)が非常に大きいと思われるため、何とも言えないところである。

実際、フレイとは元来は“”や“王”を意味する語であり、オーディンとトールを頂点とする信仰体系に取り入れられる以前の信仰では主神であったことが窺えるものとなっており、北欧神話でも元来は人質とされていながら、オーディンとニョルズの王権を受け継ぐ者とされていた。

因みに、トールは他地域の主神格(ゼウスやインドラ)と共通する天を支配する雷神、フレイが“主”の敬称を捧げられる太陽神の属性も兼ねた豊穣神(バアルやアフラ・マズダ)に相当する神性であるのに対し、オーディンは破壊と狂乱を司る嵐の神であり、他地域では下手をすると悪神扱いされ兼ねないような神性であることからも、オーディンを頂点とするに至った時期の神系譜が如何に脳筋戦時体制にあったかが窺えるというものである。(実際、本来はトールやフレイが主神格にあったのがオーディンの下に付けられたとする説が有力である。)

“フレイ”とは、上記の様に元来はこの神を顕す形容詞、或いは尊称であり、古い名、或いは本名をユングヴィと言う。
ユングヴィは“神の名”として伝わるが、元々は偉大なる民族の始祖たる“王”の名であったと考えられている。
スウェーデン王家の祖であるユングリング家の名前も、この神(王)の尊名に因む。
妹で“女主人”の意味を持つフレイヤとは、兄妹であるにも関わらず近親相姦の関係にある等、現代視点から見るとインモラル極まりないが、名前の意味的には元は兄妹ではなく配偶神であったのかもしれない。旧世界では王公貴族の血統を守る為の近親相姦は常識の部類ではあったけど。

他の異名にフロージがあり、これは古のデンマークの王の名として複数の散文や物語にて登場してくる。
実在した王の名としても見られることから、これも伝統的に引き継がれていた王の名なのかもしれない。
日本語表記ではフロジやフロディ、フロデとされている場合もあり、トールキンは『指輪物語』の主人公となるホビットの名をここから着想している。

フロージの幸福な治世を指す“フロージの平和”という言葉があることから、インドでいう転輪聖王(神格化された理想上の支配者像)のような存在なのかもしれない。

更に、この2つを組み合わせた“ユングヴィ・フレイ・イン・フロージ”(実り豊かなユングヴィの君)が正式な御名だとも言われる。


【主な逸話や神話】

北欧神話ではロキやバルドル等、逞しさよりもイケメンを讃えられる神は他にも居るが、その中でも最高の美形男子とされる。
更に、フレイは神々の中でも最高のデカ◯ラであり、嫌がらせのように象徴もデカ◯ラである。
つまり、イケメン+デカ◯ラという、見た目の時点で並の男が太刀打ち出来ないキャラクターとなっている。
描かれた図像からもイケメンぶりが窺えるが股間も直立させられている。現代の創作でも美形で描かれているがデカ◯ラまで描かないと嘘ということである。

エルフや他の妖精達が住む九つの世界の一つ妖精国アルフヘイムの王でもある。
……乳歯が生えた時に記念として贈られたとのこと。

そんな生まれた時から恵まれ過ぎているイケメン神ではあるが、嫁さんは猛アタックで手に入れている。
フレイの妻は神々と敵対する霜の巨人族(ヨトゥン)のゲルズ(ゲルダ)で、気紛れに霜の巨人の世界ヨトゥンヘイムを覗いた時に見初めた、絶世の美女である彼女を娶る為に召遣いのスキールニルが苦労した話(『ギュルヴィたぶらかし』第37章、『スキールニルの歌』)にて詳細が語られている。
ゲルズは、フレイより11個もの神々が不死を保つ為に必要とする黄金の林檎や、ドヴェルグのブロックとエイトリよりオーディンに贈られた三大秘宝の一つであるドラウプニル(魔法の腕輪)といった貴重な宝を贈られても求愛を拒んでいたが、フレイより与えられた“勝利の剣”と“魔法の馬”を得て、暗く揺らめく炎に守られたゲルズの家の守りを突破したスキールニルが、対面したゲルズに“ルーン文字による呪いを刻む”と脅したことでゲルズもバリの森にてフレイに会うことを承諾し、直に顔を合わせた二人は結婚に至ったという。
尚、どうしてイケメンでデカ◯ラのフレイの求婚にゲルズが応じようとしなかったかといえば、フレイが殺害した巨人として名を伝えられるベリがゲルズの兄で、謂わば肉親の仇であったからとの説がある。
しかし、ベリの話はゲルズへの求婚の話と同様にフレイが“勝利の剣”を手放す経緯を語った話となっているので、時系列が食い合うものとなってしまっている。
フレイとの婚姻によりゲルズも神の一員とする記述もあれば無かったりと曖昧。
尚、二人の婚姻は厳しい冬に凍り付いていた大地が春の暖かい光を受けて再び実りを結ぶようになることの象徴であるとされ、ゲルズの名も“垣で囲まれた種蒔きされた耕地”を意味するとされ、二人が結ばれるバリの森もバル(大麦)の捩り=麦の実りを意味するという。
二人の息子をフィヨルニルといい、伝説的なスウェーデン王の名として知られる。(日本で言えばヤマトタタケルみたいなものか。)

イケメンデカ◯ラ神ではあるが、北欧神話の神らしく勇猛な戦士としても語られている。
特に、異文に於いて“勝利の剣”と呼ばれている大陽の様に輝く細身の剣を持ち常勝不敗であったが、上記のゲルズとの婚姻の件によりスキールニルに下賜され、フレイの手元より失われることになった。
この為、ラグナロクでは攻め混んできた炎の巨人の王である北欧神話最大のヴィランであるスルトと相対した時には牡鹿の角をもって戦うこととり、これが元でフレイは戦死してしまうのだった。

フレイヤと同じく、多産の象徴である猪と豚、更にはデカ◯ラと言えばの馬を象徴、聖獣としており、祝祭の犠牲獣として豚を捧げる相手はフレイであった。
現代でもクリスマスに豚を象ったお菓子が付き物となっている地域があるが、それはフレイへ豚を捧げたことが由来である。
『ヴェルシの話』では、切断された牡馬のデカ◯ラを保存し、祈りを捧げる場面が登場する。


【主な持ち物】

  • 妖精国アルフヘイム
光の妖精(エルフ)が棲む世界であり、前述の様に乳歯が生えたお祝いとしてフレイに与えられた。


  • グリンブルスティ
黄金の毛皮を持つ猪であり、異名を“フリーズルグタンニ(恐るべき歯を持つもの)”という。
フレイの聖獣であり乗り物だが、ロキとの賭けに於いてブロックとエイトリがミョルニル、ドラウプニルと共に生み出した宝の一つとのことなので、生き物みたいな何かなのかもしれない。


  • スキーズブラズニル
数ある船の中でも最高の物と語られる魔法の帆船で、高名なドヴェルグの鍛冶イーヴァルディの子等がフレイの物として作り上げたとされる。
広げると全ての神々を乗せる程の大きさとなり、帆を張るだけで風が船を運ぶが、畳むと袋に収まる程の大きさになるという。


  • ブローズグホーヴィ
フレイの御す馬として『スールル』に名が列挙された神馬の一つ。
乗り物としてはグリンブルスティの方が有名で、それ以上の情報も不明な為に前述の『スキールニルの歌』等で、スキールニルに下賜された馬と同じか否かはハッキリとしていない。


  • 勝利の剣
フレイの持つ神(魔)剣だが、名前がハッキリしておらず“勝利の剣”はゲルマン神話研究で知られるスウェーデンの作家ヴィクトル・リュードベリの異文に依る名称。
リュードベリによればムスペルヘイムの王スルトの持つとされるレーヴァテインと同じで、ここではドヴェルグとされるヴェルンドがミョルニルをも越えるものとして鍛え上げた剣だとされている。されるばっかりだがレーヴァテイン自体が伝承のみだとどんな物か解らんので仕方がない。
形状は飾りが付いた細身の剣だが、大陽にも劣らぬ輝きを放つという。
賢い(正しい)者が持てば、勝手に巨人族も倒してくれるという強力な剣であるが、後に『ロキの口論』にてイジられたように、フレイはゲルズを娶る為にこの剣を手放していたことから、ラグナロクにてムスペルヘイムからやって来たスルトに討たれることになってしまった。
尚、スルトがアスガルドに攻めいった時に持っていた剣とは、実はこの“勝利の剣”であり、常勝不敗であったフレイが敗れたのには“◯◯だけが◯◯を殺し得る”というルールが発動し、自身の力の源であった剣により殺されたのだ…とも解釈されている。
それが事実にせよ、どうしてスルトに“勝利の剣”が渡ったのかは不明であるが、スルトが持つ剣と同じということから、前述の様にレーヴァテインとは“フレイの剣”のことである……とリュードベリは主張しているのだが、かなり強引に剣の由来を説き、更に、かなり強引にフレイやスルトに渡ったとするばかりか、バルドルを殺したヤドリギもレーヴァテインである……としているので賛否両論が巻き起こった。
リュードベリの主張は、上記の“◯◯だけが◯◯を殺し得る”論の様に、類型神話に共通して見られる象徴論を重んじたもので経緯は重視されておらず、納得のいかない読者も多かったということだろうか。


【登場作品】

フレイ(魔探偵ロキ)
勝利の神・フレイ(パズル&ドラゴンズ)
フレイ(斬撃のREGINREIV)
豊穣の神童 フレイ(モンスターストライク)



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最終更新:2023年12月16日 17:37