SCP-1569-JP

登録日:2020/04/21 (火) 12:00:00
更新日:2024/02/29 Thu 12:29:21
所要時間:約 10 分で読めます




SCP-1569-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトのひとつである。
JPのコードが示す通り、日本支部生まれである。
オブジェクトクラスは「Safe」。

概要

このオブジェクトは全長10㎝のドロップ缶である。スチールで出来ているが普通のドロップ缶より強度があるらしい。
表面には「思い出ドロップ」と言うラベルが貼られており、裏面には下記の文章が書かれていた。
思い出、もう一度体験しませんか?
この缶を振って、中のドロップを食べるだけ。
あら、びっくり!君の思い出が再びよみがえってくる!
~伏木駄菓子店~

特別収容プロトコルは簡単なので省略する。このドロップ缶をヒト(以下、使用者)が持って左右に振ると、内部に様々なデザインのドロップ(以下、SCP-1569-JP-1)が出現する。この時、使用者は過去の記憶を一つ失ってしまうが、出現したSCP-1569-JP-1を食べることで記憶を復元する事が出来る。

・実験記録

一回目

実験内容:Dクラスに缶を振らせ、発生した黄色い花型のSCP-1569-JP-1を食べさせる。
結果:摂食したDクラスは花屋でバイトをしていた記憶がよみがえってきたと報告した。
どうして花屋のバイトが死刑囚になるんですかね・・・

二回目

実験内容:一回目の実験の状況を思い出した状態で缶を振りSCP-1569-JP-1を摂食する。
結果:白い財団ロゴマーク型のSCP-1569-JP-1が発生し、摂食したDクラスは実験時の記憶がよみがえってきたと証言した。また消失する記憶を対象の意思で指定できることが分かった。

三回目

実験内容:発生させたSCP-1569-JP-1を別のDクラスに食べさせる。
結果:発生した目玉焼き型のSCP-1569-JP-1を食べたDクラスは朝食の記憶が2つあると証言し、反対に発生させたDクラスは朝食の記憶を失っていた。また記憶の引継ぎが行えることが発覚した。

追加実験の結果、記憶を引き継げるのは一回限りである事が判明した。また一度引き継いだ記憶はSCP-1569-JP-1に出来ない事も分かった。

発見経緯

岡山県のとある病院で潜入中だったエージェントによって発見された。当時入院していた水田肖子氏の見舞いに来ていた森雄吾氏が原因不明の記憶障害を起こして昏倒した際、近くにこのオブジェクトが落ちていたらしい。
‎・・・毎度の事ながらオブジェクトの存在を的確に見抜くエージェントの慧眼には恐れ入る。

以下は森雄吾氏の自宅にあった日記の抜粋記録である。
プライバシー?なにそれおいしいの?

7月12日
隣のベッドに女の子がやってきた。すごくかわいい顔してた。
でも寂しそうだ。ずっと窓の外を見ている。
話しかけてみようか。暇つぶしに。下心はない。ない。
骨折で入院した森氏。偶然水田氏と同室になったらしい。
下心もないらしい。
7月14日
肖子さんが自分の病気について話してくれた。
なんか、脳のどっか前頭葉?かどっかに障害があって記憶に影響があるらしい。
それで今までの記憶が曖昧でよく自分が分からないと教えてくれた。
(中略)
俺に出来ることはあるだろうか。とりあえず、明日からもばんばん話しかけてみる。少しでも悲しい時間を減らすために。
水田氏の病状は良くないようだ。数日後に森氏は退院するが、その後も水田氏の見舞いに通い続けていた。
7月21日
奇妙なことがあった。
帰り道に見たことない店があった。確か名前が伏木駄菓子店みたいな名前だった。
ひっそりと建ってたその店になぜかふらりと立ち寄ってしまった。
中に入るとおばあさんぐらいの人がじろじろ見てきたと思ったら、突然ドロップ缶を渡してきた。(後略)
森氏、SCP-1569-JPを入手した模様。そして翌日にその異常性を認識する。
7月22日
実験は成功した!肖子さんに俺の記憶を渡せれたみたい!
肖子さんに、昨日日記に書いたシャボン玉の記憶が渡せた!
……実感はない。無くなった感じもない。これはあまりに薄い記憶だからなのかな。
でも、これで肖子さんが少しでも元気になるなら。俺は。
実験て…役に立ってはいるようだが、もう嫌な予感しかしない。
9月29日
あれから結構いろんな記憶をあげている。
(中略)
渡していくたびに、喜んでいる姿を見るたびに。気のせいにしていた感情が増えてきた。
俺は、肖子さんが好きになっている。
どうすれば、良いように伝えられるだろうか。
その辺にしておいた方が・・・。
9月30日
今日、あのドロップを使って気持ちを伝えてみようと思う。
出来るだろうか。一応会う前に作ってみたほうがいいだろうか。
いや、作るなら肖子さんの前でだろう!やってやるぞ!
ちゃんとつたわればいいな、行ってきます。

後日、森氏は決意を胸に水田氏の見舞いに訪れるが、そこでSCP-1569-JP-1を生成した際に記憶障害を起こして倒れてしまう。入院が必要となったため森氏へのインタビューは行われなかった。水田氏の方も情緒が不安定だったためインタビューの実施には時間を要する事となった。

以下は回復した水田肖子氏へのインタビュー記録である。
インタビュー記録1569-JP
(前略)
水田氏: ……倒れる前に、彼は私に話しかけてきました。「たべて」と。
尾瀬研究員: 食べてとは、……そのドロップ缶にドロップが入っていたのですか?
水田氏: [14秒沈黙]
尾瀬研究員: 水田さん。私は、あなたが隠していることを口外するつもりはありません。話してもらえないでしょうか。それによって、彼のことについて何か分かるかもしれないのです。
水田氏: ……ドロップはありました。中に一粒。ハート型のピンク色した綺麗なドロップ。ナースコールのボタンを押す前に、私はそのドロップを含みました。かりっと奥歯で噛み砕きました。そうしたら、そうしたら。[嗚咽音]
尾瀬研究員: 水田さん?












水田氏: 愛が。恋が。好きが。熱い思いが。溢れてきました。口内から脳髄へ、突き抜けるように。狂おしいほどの愛が。[嗚咽音]脳みそを包み、たくさんの記憶が流れ込んできました。彼の苦悶する記憶。私を思い微笑んでいる記憶。そして、告白しようと決意した記憶が。
(中略)
水田氏: ……教えてください。あなた、彼のことを知っているのですか?
尾瀬研究員: 知っているとはーー
水田氏: 彼の職業は。彼の顔は。彼の身長は。彼の趣味は。彼の性格は。彼の星座は。彼の、名前は。彼の記憶はないのに、彼のことばかり思い出してしまうんですよ。……彼は、誰なんですか。私は、彼目線の記憶しか、知らない!何も知らない!彼はどこの誰なんですか!彼は!何故私を好きなんですか!なんで!なんで……。
尾瀬研究員: ……水田さん。
水田氏: なんで、私は彼のことが、好きなんですか……。

<記録終了>






終了報告書: インタビュー終了後、水田氏は再び錯乱状態となったため鎮静がされました。現在、インタビュー内にて報告のあったピンク色のハート型のSCP-1569-JP-1について、詳しい研究が行われています。

‎・・・繰り返すが水田氏は脳の障害により森氏の存在を忘却している。
そんな人物に好意を向けられて大いに戸惑っただろう。
彼に確かめたい事は多くあるだろうが、それは叶わない。教えてくれる本人はオブジェクトの影響下に置かれているからだ。
彼の事が好きなのに。
こんなにやりきれない事があるだろうか?

そしてなぜ森氏は倒れたのだろうか?実はドロップ缶の裏の表記には続きがあった。
※強い思いをドロップにすると思わぬ事故に繋がる場合があります。ご注意ください。責任は一切負いません。
‎・・・。

彼を責める事など出来はしない。
だが彼が直接想いを伝えていれば、結末は違っていたかもしれない。

想いは儚い。溶けて無くなるドロップのように。



SCP-1569-JP

おもひで



追記・修正は森氏の回復を願いながらお願いします。


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最終更新:2024年02月29日 12:29