Superman: Secret Origin

登録日:2020/07/12 Sun 18:48:21
更新日:2024/03/18 Mon 20:56:12
所要時間:約 12 分で読めます




『Superman: Secret Origin』は2009年にDCコミックスから出版されたアメコミ作品。

+ 作品情報
『Superman: Secret Origin』#1~#6
発売 2009年9月から
脚本 ジェフ・ジョーンズ
作画 ゲイリー・フランク

日本では未邦訳。

2005年の『インフィニット・クライシス』で示唆されたスーパーマンの新たなオリジンを描いた作品。
『インフィニット・クライシス』以降、スーパーマンのオリジンは曖昧になっていたが本作で再定義された。

The Man of Steel Vol.1/MoS』と『Superman: Birthright』で描かれた現代的なアレンジを残しつつ、
スーパーボーイの存在や『リージョン・オブ・スーパーヒーローズ』との友情などシルバーエイジへの回帰に取り組んでいる。
その他にもクラークの単独の視点で語ることや惑星クリプトンのシーンを持たないことなどシンプルさを心掛けている。

上記のシルバーエイジへの回帰に加えデイリー・プラネットの面々との出会いやレックス・ルーサーとの対立がメインだが、
より多くのキャラクターを現代的に再定義し紹介するべく、様々なヴィランやサブキャラクターが顔を見せている。

『MoS』と『Birthright』のように革新性は無いものの、スーパーマンの親しみやすさを打ち出した作風で高い評価を獲得した。
その後2011年の『フラッシュポイント』で設定が変わると再びスーパーマンのオリジンが変更されたが、
2017年の『Superman: Reborn』や『Doomsday Clock』でオリジンに多少の変化が描かれた際に本作の設定が復活している。



【物語】

地球から遠く離れた惑星クリプトン。偉大な文明を誇ったその惑星には人知れず崩壊の時が目前に迫っていた。
その事実に唯一気が付いた科学者ジョー=エルは、自らの息子カルをクリプトン人が力を得ることが出来る地球に脱出させた。
地球にたどり着いたカルは、カンザスの片田舎スモールビルの農家ケント夫妻に拾われてクラークという名で育てられたが、
成長するにつれ覚醒する能力や両親から明かされた本当の出自に成長したクラークは悩み苦しむようになってしまう。
そんな中ラナ・ラングの命を救ったことと『リージョン・オブ・スーパーヒーローズ』との邂逅で人助けを志したクラークは、
大人になるとより多くの人々に手を貸すため、大都市メトロポリスで記者として働きながらヒーロー活動を行おうとしていた。
一時は街に混乱をもたらしてしまったクラークだったが、勤務するデイリー・プラネットの記事で信頼を得ることに成功、
しかしその記事は権力者レックス・ルーサーの怒りを買い、ルーサーと軍による攻撃が始まってしまう。


【登場人物】

惑星クリプトンの生き残り。両親の手で地球に送られ、スモールビルの農家ケント夫妻の一人息子として育てられた。
特別な力や自分の出自に悩んでいたが、思いを寄せるラナの命を救ったことで人助けを志し、スーパーボーイとして活動を始めた。
それでも疎外感は拭えず友人と壁が生まれ始めたが、自分の影響を受けたという『リージョン』との出会いで迷いを振り切った。

成人後はより多くの人を助けようと大都市メトロポリスに旅立ち、デイリー・プラネットの記者の職を得た。
同僚のロイス・レーンを救うために初めてスーパーマンとして姿を見せたが、市民に警戒され自分の行動に迷いを抱いてしまう。
その後ルーサーに招かれたレックス・コープでのパラサイトとの戦いで、ルーサーの言葉もあり市民の警戒心を強めてしまうが、
ロイスの記事とジミー・オルセンの写真が市民の考えに変化をもたらし、ヒーロー活動に前向きに取り組めるようになった。

しかしその存在感に嫉妬したルーサーとその力を恐れるロイスの父サム・レーン将軍の罠にはまって、
彼らが開発した新兵器メタロで重傷を負い、軍によるデイリー・プラネットの占拠を許してしまった。

『MoS』で変更された数多くの設定が復活しており、性格や風貌を含めシルバーエイジの雰囲気を取り戻している。
また彼を乗せたロケットもシルバーエイジ時代に近い青いボディに赤いパーツで構成されたデザインに変更されている。


≪ヴィラン≫

  • レックス・ルーサー
大企業レックス・コープの社長。メトロポリスの支配者と呼ばれ、様々な兵器の開発を通じて軍とのつながりも深い。
毎朝市民の中から実験対象を選んでおり、選ばれた者は望むものを与えられるため、市民から神のように崇拝されている。

少年時代は妹とアル中の父親と共にスモールビルで暮らしていたが、父親を事故に見せかけて殺してメトロポリスに移住した。
この頃にわずかながらクラークと顔を合わせており、宇宙への興味といった共通点から少々親しみを感じていた。
また偶然スーパーマンの弱点『クリプトナイト』を発見し、大人になってからも研究を続けている。

新兵器メタロの発表会でスーパーマンに介入され、彼の情報を得ようとその場に居合わせたクラークとロイスを会社に招いた。
その時にパラサイトの襲撃を受けスーパーマンに助けられたが、彼を市民の前で糾弾し、市民を味方につけたと思われた。
しかしデイリー・プラネットの記事をきっかけにスーパーマンが自分以上に注目を集め始めてしまう。
その事実に嫉妬し軍の協力を得て彼の排除を開始、『クリプトナイト』を組み込んだ新型メタロを開発して軍に提供した。

『Birthright』で復活したスモールビルでの生活がよりシルバーエイジの頃に近くなった。
さらに父親を殺す悪辣さや自己顕示欲、スーパーマンへの嫉妬心が強調され、今まで以上に身勝手な存在として描かれている。

  • パラサイト(ルディ・ジョーンズ)
デイリー・プラネットの清掃員。肥満体で食い意地が張っており、その食欲は出会ったばかりのクラークにたかるほど。
その体型とデイリー・プラネットで働いていることが興味を引き、ルーサーに実験対象に選ばれた。
招かれた研究室でもドーナツを食べ続け、その内の1つが落ちた際に『クリプトナイト』の廃液が付着、
それを食べたところ体質が変化し、触れた者のエネルギーを吸収する紫色の怪物パラサイトに生まれ変わった。

次々に犠牲者を生み出し、偶然居合わせたクラークに目をつけるも、スーパーマンとなった彼と戦いになる。
一時はエネルギーを吸収して見せるも、『ヒートビジョン』と『フリーズブレス』の連続攻撃に敗れた。
この戦いでスーパーマンにダメージを与えたことがルーサーに『クリプトナイト』の効果を気付かせた。

比較的有名なスーパーマンのヴィランだが、『MoS』後は設定変更の影響でファイヤーストームの最初の敵として登場した。
その後はスーパーマンのヴィランの立場を取り戻したが、本作では改めてスーパーマンとのつながりが強調されている。

  • メタロ(ジョン・コーベン)
ロイスの父サムの部下で有能な軍人。サムから息子のように扱われ、ロイスに言い寄っているが、まったく相手にされていない。
『クリプトナイト』を組み込んだ新型メタロの搭乗員に立候補し、サムがおびき寄せたスーパーマンに襲い掛かった。
スーパーマンを『クリプトナイト』の力で追い詰めるも、味方の銃弾が直撃した『クリプトナイト』の爆発で倒れた。
その後ルーサーの改造手術によってパワーアップを遂げ、再びスーパーマンに挑む。

『MoS』後の最初のヴィランに選ばれメジャーヴィランの仲間入りを果たし、本作でもメインヴィランに選ばれた。
理不尽な改造を受けた小悪党からロイスに恋する軍人に変化し、この設定は『フラッシュポイント』後にも受け継がれた。


≪スーパーマンの家族・友人≫

  • ジョナサン・ケント、マーサ・ケント
スーパーマンの地球の両親。ロケットの赤子を引き取り、成長するにつれて超人的パワーを発揮する息子を温かく見守っている。
クラークが自分の力に悩み始めたと知ると彼の本当の出自を明かし、家族で協力して息子の悩みを乗り越えようとする。
特にジョナサンは言葉で精神面をサポートし、マーサは眼鏡やコスチュームを作るなど物理的なサポートを担当していく。

若々しかった『Birthright』から再び年齢を重ねた姿で描かれ、クラークの決断を優しく支える存在として描かれている。

  • ジョー=エル、ラーラ
スーパーマンの実の両親。惑星クリプトンの住人で、ジョーは科学者。星の危機を知り、実の息子を脱出させ星と最期を共にした。
息子を乗せたロケットに映像を残しており、彼の出自などの情報を伝えたが、クラークはショックを受けただけだった。
ロケットにはクリプトンの情報も記録されており、その一部を見たマーサはコスチュームのアイディアを思いついた。

クリプトンの独特な文化が明かされた『MoS』と『Birthright』に対し、今回は2人の服装などごくわずかな物しか描かれていない。
数少ない情報としてジョーの姿などにはジョーンズの師であるリチャード・ドナーの映画版『スーパーマン』の影響が見られ、
マーサが見たビジョンにはシルバーエイジのレトロフューチャーなクリプトンの姿が登場している。
ジョーとラーラはワンシーンのみの登場で台詞も説明的だが、その表情から息子カルへの深い愛情を感じさせる。

  • ロイス・レーン
メトロポリスの新聞社デイリー・プラネットの有能な記者。悪事を働くもアンタッチャブルな存在となったルーサーを追っている。
しかし編集長ペリーに記事を止められ取材にも行けず苛立っていたが、新人のクラークと協力してメタロ発表会に侵入した。
新情報を得ようとしたが失敗に終わり、逃げ出そうとして屋上から落ちてしまうが、スーパーマンに助けられ事なきを得た。

この一件でスーパーマンに心を奪われ、ルーサー自身の招待で取材を行った際に何の情報も得られなかったこともあり、
パラサイトとの戦いの後にスーパーマンについての記事を書き上げ、彼が街から認められルーサーに狙われるきっかけを作った。
その後はスーパーマンを追いながらクラークに探りを入れるなどしていたが、父サムの暴走に巻き込まれてしまう。

『MoS』と『Birthright』での自立心が強い記者像を受け継ぎつつ、ヒロインらしい親しみやすさが強調されている。
また父サムの存在がフィーチャーされ、彼との確執や彼が抱える父親・軍人と両面から来るスーパーマンへの思いが描かれている。

  • ジミー・オルセン
デイリー・プラネットのインターンのカメラマン。メトロポリスの姿に憧れ街にやって来たが、まとまな仕事を任されずにいる。
そのことに嫌気がさし街を出ようとしていたが、パラサイトとの戦いを終えたスーパーマンと遭遇し、互いの悩みを話し合った。
そして最後に撮った彼の写真がロイスの記事の一面を飾り、正式なカメラマンとしてロイスとスーパーマンを追うようになった。

『Birthright』からさらに存在感が増し、クラークだけでなくスーパーマンとの友情も丁寧に描かれている。

  • ペリー・ホワイト
デイリー・プラネットの編集長。ルーサーの不正を見逃せずにいるが、会社を守るために記事に出来ず売り上げが落ちつつある。
そのことでロイスと度々議論になっていたが、彼女のスーパーマンの記事で会社の勢いを取り戻すことに成功した。

『Birthright』に比べると理想を持ちながら落ち着いた性格で描かれ、理想の上司といった雰囲気になっている。
また彼以外にもスティーブ・ロンバードやロン・トループ、キャット・グラントが登場し、編集部の空気を盛り上げている。

  • ラナ・ラング
クラークのスモールビルの友人。彼の特異性に気付いているが、そのことを気にすることなく思いを寄せている。
お祭りで竜巻に巻き込まれたところをクラークに救われ、彼が人助けを始めるきっかけとなった。

『MoS』『Birthright』と段々扱いが悪くなっていたが、本作で再びスモールビル時代のヒロインの地位を取り戻した。

  • ピート・ロス
クラークのスモールビルの友人。フットボールの最中にクラークと衝突し怪我をしてしまった。
そのことを気にすることなくクラークの友人であり続けたが、クラークは自分の力に悩み始めることになった。

ラナに並ぶクラークの友人でありながらこれまでのオリジンでは省かれていたが、今回ようやくの登場となった。

  • リージョン・オブ・スーパーヒーローズ
30世紀のヒーローチーム。様々な惑星の出身者が所属し、一員の証として『フライトリング』を身に着けている。
登場するメンバーは
惑星ブラール出身で磁気能力を持つコズミックボーイ(ロック・クリン)
惑星コンバル出身で発電能力を持つライトニングラッド(ガース・ランツ)
土星の衛星タイタン出身でテレパシー能力を持つサターンガール(イムラ・アーディーン)
惑星コル出身で最高レベルの知性を持つブレイニアック5(クエル・ドックス)
惑星ブグツル出身で非実体化能力を持つファントムガール(テイニャ・ワッゾ)
惑星カーグ出身で3人に分身出来るトリプリケイトガール(ルオルヌ・ダーゴ)

チーム誕生のきっかけとなったスーパーボーイに会いにコズミックボーイ、ライトニングラッド、サターンガールが過去に現れた。
会うだけのつもりだったがスーパーボーイの頼みで彼を未来に連れて行き、一緒に事件を解決するなど素晴らしい時間を過ごした。
その後スーパーボーイを過去に送り返した際に再び会う約束を取り付け、彼の初めての超人の友達になった。
彼らとの出会いは能力の有無や孤独感に悩むスーパーボーイの考えを変えるきっかけとなった。

『MoS』からスーパーマンと『リージョン』との関係は大きく変化したが、『インフィニット・クライシス』で再び変化を遂げ、
『Superman and the Legion of Super-Heroes』や『Final Crisis: Legion of 3 Worlds』でその影響が描かれていた。
そして本作でようやくスーパーマンと『リージョン』の友情が復活する様子が描かれることになった。

  • クリプト
エル家で飼われていた惑星クリプトンの犬。スーパーマンと同様に地球ではスーパーパワーを発揮する。
『リージョン』との出会いを経て周囲との違いに向き合い始めたクラークの前に現れ、彼の孤独感を癒していった。

『リージョン』同様に『MoS』で姿を消し、その後は異次元の存在として登場していたが、本作で従来の設定が復活した。



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最終更新:2024年03月18日 20:56