ジョーカーの国のアリス ~ Wonderful Wonder World ~

登録日:2020/09/28 Mon 12:42:13
更新日:2024/04/09 Tue 12:42:56
所要時間:約 10分で読めます




ジョーカーの国のアリス』とは、QuinRoseより2009年に発売されたPC専用乙女ゲーム。


【概要】

QuinRoseの人気作品『ハートの国のアリス』のファンディスク。
クローバーの国のアリス』の続編であり、前作で誰とも結ばれなかったifの世界で新たな物語が始まるというゲーム。

ターン制システムを採用しており1ターンごとにマップを散策して攻略キャラと接し好感度を上げることによってゲームを進めていくというシステム。また新キャラであるジョーカーと話すことにより四季が変わり、それによってイベントが変わることもある。

そして2009年度乙女ゲー的クソゲーオブザイヤー大賞受賞作品。これにより発売元であるQuinRoseは3年連続で大賞を受賞したことになる。

前作、起動するとウイルスバスターも起動するマルウェアゲーこと『クリムゾン・エンパイア
前々作、青画面が頻発したリアルPCクラッシャーこと『クローバーの国のアリス
これらによって「バグの可能性は無限大である」と学んだQuinRoseファンたち。
本作も発売前にとある仕様がアナウンスされていたことで「今作にもとんでもないバグがあるのでは?」と懸念するファンも多かった。
それも恐れず購入した訓練された信者ファンたち。しかし懸念に反しバグは殆どなくせいぜい誤字・脱字が多い程度であった。
またシナリオもQuinRoseの持ち味が活かされ安定しており、出来自体評価されている。

しかし、『ジョーカーの国のアリス』は前2作を超え、別方向の悪魔と化していた……。



【あらすじ】

不思議の国のアリスを踏まえつつ、まったく異なるストーリー展開の恋愛アドベンチャーゲーム。
メルヘン調な世界なのに、帽子屋がマフィアだったり銃撃戦が珍しくもなかったりと物騒な世界。
現実主義で、夢見がちなところが皆無な主人公。
「ジョーカーの国のアリス」では、本来ならこの世界には有り得ない、
四季に絡む物語が展開。サーカスと共にエイプリル・シーズンが到来し、嘘つきの季節が訪れる。
表では楽しく賑やかなサーカスと、裏にある監獄。
主人公は、不思議の国に相応しく矛盾だらけの四季を過ごしながら、少しずつジョーカーに囚われていく。
キャラクター全員が知人という関係からのスタート。それぞれの形で主人公を大切に思っている。
主人公をジョーカーから守ろうとしたり、更に突き落とそうとしたり、想い方は様々。
四季の移り変わりも、それぞれまったく違う形で楽しませてくれる。
主人公は今まで、キャラクター達との付き合いが長くなっている。
全員とある程度仲がよく、それでも今まで恋愛関係に陥っていない。
相手のことは憎からず思いつつも、踏み出すことのなかった関係。
恋愛面においては、そこであえて踏み出す部分、『ちょっと意識していた友人と恋に踏み出す』部分について深く描かれている。
甘酸っぱかったり、切なかったり、危険だったり……。
キャラクターによって、言動や展開も様々。
四季を通しての恋というだけでなく、ジョーカーの存在や、前作で離れてしまった相手の存在も影響してくる。
楽しくも、穏やかではない季節。いつ別れるとも知れない刹那感が加わり、今までとは違った形の恋愛模様になる。
常識の通じない世界で、現実主義の主人公に、まともな恋愛は出来るのか―――。

【登場人物】

  • アリス=リデル
CV.なし
ご存じツンデレ主人公。とある事情で不思議の世界に移住中。
3作目となり流石に言動も多少は丸くなってきた。

  • ブラッド=デュプレ
CV.小西克幸
帽子屋ファミリーのボス。
頭の切れる司令塔であるが、面白いことが大好きであるため緻密な計画を自らダメにしてしまうアホの子。

  • エリオット=マーチ
CV.最上嗣生
帽子屋ファミリーのNO.2。帽子屋の相棒。
イラっと来ると3秒くらい考えてから銃をぶっぱなす自称「ちょっと悪い奴」。

  • トゥイードル=ディー&ダム
CV.福山潤
どっちが兄でどっちが弟かハッキリしない双子の門番。
無邪気で残酷なこどもたち

  • ビバルディ
CV.甲斐田裕子
無慈悲で残酷かつヒステリックな女王様。
ワガママでめんどくさいせいかくだが何故かアリスのことだけは愛している。

  • ペーター=ホワイト
CV.宮田幸季
ハートの白の宰相でありアリスをこの国に引き込んだ張本人。
アリスのことが大好きで、それ以外の者は大嫌い。

  • エース
CV.平川大輔
ハートの騎士でビバルディの元部下。
ものすごくいい人なのだが、ものすごく運が悪く恵まれない。

  • メリー=ゴーランド
CV.堀内賢雄
遊園地のオーナー。
気さくな人物だが絶望的なまでに音楽センスがない。

  • ボリス=エレイ
CV.杉山紀彰
ナゾナゾが大好きな猫耳男。
猫のようにきままで自由な性格をしている。ピアスに嗜虐心を刺激されており、今作から常にナイフとフォークを持ち歩くようになった。

  • ピアス=ヴィリエ
CV.保志総一朗
コーヒーの飲み過ぎで常に寝不足なネズミ。
あどけない性格であり、自分の利害から好き嫌いの線引きをはっきりと決めている。

  • ナイトメア=ゴットシャルク
CV.杉田智和
人の心を読み、入ることが出来る夢魔。
極端に体が弱く吐血するという貧弱体質。

  • グレイ=リングマーク
CV.中井和哉
ナイトメアの部下で常識人。
昔は野心家でナイトメアを暗殺しようとしていたが、彼があまりにもかわいそうな人なので世話を焼いている。

  • ユリウス=モンレー
CV.子安武人
根暗な時計屋。
物事を常にネガティブに考えるめんどくさい人。

  • ジョーカー
CV.石田彰
本作のキーパーソンであり監獄の所長。
ホワイトさんとブラックさんがいて、事例により仮面と入れ替わる。(二重人格ではない)



【詳細】

当初、2009年度乙女ゲー的クソゲーオブザイヤー(以下『乙KOTY』)は
  • 低画力な割にやたらとグロいスチルが多くぶん投げ気味なバッドエンドである『断罪のマリア
  • 「57回目で(フリーズ回数を)数えるのをやめた」と言われた前作大賞のファンディスク『クリムゾン・ロワイヤル

この2作品が有力候補となっていた。
特に『断罪のマリア』はグロ要素のポテンシャルの高さから期待されており、「ついにQuinRose以外の企業が大賞を取るのか?」とされていた(『断罪のマリア』の発売元は花梨エンターテイメント)。

だが『ジョーカーの国のアリス』は「とある仕様」が事前にアナウンスされていたことから、発売もしていないのに有力候補に加えられていた。


さて、まずはQuinRoseファンの姉御たちをビビらせた仕様について説明しよう。

それは、ライセンス認証である。
『ジョーカーの国のアリス』は「shury2lite」というライセンスを使っていた。

要するに初回プレイ時に制作会社と通信をしてソフトとPCを紐づけ、そのPC以外では起動できなくするというシステム。まあ割れや中古販売の対策として使われるもの。
これ自体はエロゲとかでもよくあるシステム。

ではなぜ問題になったのか? 問題となったのは認証回数であった。

『ジョーカーの国のアリス』の認証回数、それは1回であった。

認証が1回しかできない。それが意味することはPCの買い替えに対応しておらず、また通信を介するため認証中に通信エラーが起きればもう一度認証することができなくなるということだった。
特に「shury2lite」は初回起動時に認証サーバーが不調かなにかで認証が失敗するとそれだけで残りの認証可能回数が減る症状が過去多数報告されている。

てか同じような認証システムを使う他会社が複数回にする一番の理由は、認証作業中に通信が途切れてしまった場合の救済措置であるため、1回というのは商業ゲーとしてあまりにも不親切な数字であった。もしも失敗理由が相手サーバー側の通信障害だったとしても失敗は失敗なのである。

ついでに一定期間が過ぎたら回数制限を解除するもしくは認証システムを消すパッチを配布する(=中古解禁)というゲームも多い中、本作の回数制限は半永久的に続くとアナウンスされている。2020年現在も同様である。
……そしてこの仕様が『ジョーカーの国のアリス』の息の根を止める最大の原因になるとはこのときは誰も気がついていなかっただろう。

一応救済措置として再認証設定は用意されている。
その内容がはがきでユーザーが郵便局で往復はがきを購入し、ロゼにIDの再発行を申請することで再認証が可能になる、というもの。
料金は当然のようにユーザー負担であり申請内容に不備があった場合は特に対応されず無視されるというなかなかの不親切さ。

再認証には現住所とプロパイダのメアドが必要となるため『ゲームをやりたいだけなのになぜ会社に個人情報を渡さなければならないのか』というごもっともな意見も出た。
仮に個人情報を渡したくないプレイヤーが認証通信を失敗した場合、この仕様のために中古として売ることもできないのでパッケージを眺めるかフリスビーとして遊ぶかしか用途がなくなる

スレでは本当に初回認証に失敗した者や、認証に成功して普通にプレイしていたはずなのに何故かいきなりライセンス情報が消えた者などが報告されちょっと騒ぎになった。
制作会社にメールを送る者も多くみられたが、返信は芳しくないものであった。
鍛え抜かれた信者にとってQuinRoseにお問い合わせメールを送ることは日常茶飯事なのである。




もうひとつの問題点はシナリオであった。問題点を一言でいえば読み続けるのが苦痛なシナリオ
あれ、でもさっきシナリオはクオリティ高いって言ったじゃんと思われるかもしれないが、そちらも事実である。
シナリオのクオリティの高さと、読み続けることが苦痛であることを斜め上の方法で両立させた。

さてさて、本作はマップを巡り攻略対象と会話をして好感度を上げていくというシステム。そしてすべてのターンが終わった時のキャラクターごとの好感度やフラグによってエンディングが変わるという仕組みである。

その上で1プレイのターン数は198ターンである。
……この時点で何か嫌な予感がした人もいるかもしれない。

そして各キャラクターのイベント数。驚くなかれ。


20~30個


あれ? と思われた方もいらっしゃると思うのでもう一度。


全ターンが198とクソ長いのに対し各キャラのイベントは多くて30個しかない


じゃあ残りのターンは何をするのか? 同じイベントを見ることになる。
水増しってレベルじゃねーぞ!
どんなに良いシナリオであったとしても、何度も連続で読まされれば飽きるというシンプルかつ当たり前の事実を突いたものだった。

一応好感度を溜めたら他キャラのイベントを見て遊ぶという手もあるが、本命以外の好感度を溜めすぎると意中のエンディングを迎えられなくなるので最低限しかできない。
誰もいないマップに行ってターン数を潰すという方法もあるが198という長すぎるターンのせいで結局飽きる。
そもそも『好感度を溜めたら』と言っても1ターンで1~3程度しか上がらない割にエンディング到達用の数値が108と高いためそれだけで一苦労。
スキップ機能も微妙に使いにくいため、フルでスキップしたとしても1プレイ4~5時間はかかる。

さらにさらに、キャラを変えただけでほぼ同じ展開になるシナリオがあったり、別に二股エンドがあるわけでもないのに何故か別のキャラで同じイベントを共有していたりと用意周到に水増しされている。このおかげでプレイを進めれば進めるほど見たことがあるシーンが増え、飽きてくる。
またスチルも事前告知で「1000枚以上のボリューム」としていたが、実際は差分を別スチルとしたり、(季節変更がゲームシステムに組み込まれているとはいえ)背景変えただけでキャラのポーズ・アングルがほぼ同じスチルがあったりとこちらもこちらで水増しされていた。実際のスチル数は……うん。

この飽きるということに対し、姉御たちの答えはひとつであった。
それは連打

見たいイベントだけ見たらあとは作業ゲーであると割り切り、ひたすらマウスを連打してゲームを進めていく。というか悲しいことに答えはこれしかなかった。今でいうゲー務のはしりかもしれない。
『ジョーカーの国のアリス』のゲームジャンルが乙女ゲーから連打ゲーに変わった瞬間である。
幸い本作は前2作と違い「プログラミングミスにより連打するだけでフリーズする欠陥」は改善されていたため心置きなく連打することができた。

……しかしそれでも恋愛シミュレーションゲームをやっているにもかかわらず連打ゲーがはじまるというわけのわからない状況に困惑し、連打のしすぎでリアルに指を痛めてしまうという現象がスレで何度も確認され、本スレでは『腱鞘炎シナリオ』と恐れられることとなった。


そうして検証も終わり、ついに本作が乙KOTYスレに送られる。
結論としては『断罪のマリア』と壮絶な殴り合いを繰り広げることとなった。

クソ仕様の『ジョーカーの国のアリス』、クソシナリオの『断罪のマリア』。
クソ要素のベクトルが違う故に選評は困難を極めた。乙KOTYがもっとも荒れた年とも言われている(ちなみに2番目に荒れたのは2011年)。

また前作前々作がゲーム以前の問題で大賞を選んだこともあり、初のシナリオ要素で大賞候補まで登りつめた『断罪のマリア』をどう扱えばいいのかわからないスレ民もそこそこいた。
なお、「どのようなシナリオであれば乙KOTYにおいて大賞と言えるのか?」という命題の答えは2011年『遙かなる時空の中で5』が登場するまで持ち越されることとなる。

そして『クリムゾン・ロワイヤル』はいつの間にか空気になった。
切り札と断罪があまりにも強すぎたのである。

荒れっぷりはすさまじく、意見がまとまっていないにもかかわらず勝手にそれぞれを大賞にした総評が現れるという始末だった。「KOTYスレでは常に中立意見であれ」という言葉はどこかにぶん投げられた。
あと両作品に「ジョーカー」という同名の人物が存在しているというどうでもいい共通点で盛り上がったりした。

しかしさすがの荒れ方にスレ民も反省したのか、後半はお互いに譲歩するような意見もみられるようになった。
その結果「クソ要素のベクトルが違い、何より次元が違うので優劣をつけるのは不可能」と結論付けられたことにより、仲良くW受賞となった。

「クソ要素のベクトルが違うが、どちらも大賞の域に達していないので優劣をつけるのは不可能」と結論付けられた2013年とはえらい違いである。


こうしてQuinRoseは3年連続で大賞を受賞することとなったのである。まったくめでたくねえ。
しかし前作前々作がゲーム以前の問題であったのに対し、本作は曲がりなりにもゲーム内容で大賞を勝ち取っているためQuinRoseにしては進歩しているのでは? とも偶に言われる。
まあ総評で「QuinRoseはバグなどなくとも生身で十分強かったのである」と書かれたが。

なお『断罪のマリア』はその後シナリオが整理された移植版の発売されたことにより「アクが強いだけでそう悪いゲームではないのでは」と考えられシリーズ自体は再評価の流れが来ている。
貴方は起動すら困難なゲームに。一方私は今ではメーカーを代表するゲームに、随分と差がつきました。悔しいでしょうねぇ。


【その後】

2011年PSP移植版が発売。
当たり前だがPSPということで認証設定が存在せず中古でも遊ぶことができる。
これによりPC版のフリスビー化が加速した


……そして時は流れ2015年。恐れていたことが現実となる。
QuinRose、まさかの倒産
これによって生じた問題は多々あるが、ひとつ言えるのは再認証設定をおこなってくれるものが誰もいなくなってしまったということである。
発売から6年と当時新品だったとしてもPCを買い替える者がチラホラ出てきた時期だったため起動すら出来なくなるプレイヤーも出てくることとなった。
つまり誰もが懸念していた「ライセンス認証期間が半永久的であるのなら、サポート終了した場合はどうするのか?」という疑問が本当に起こってしまったのである。
これによりPSP版の登場によってただでさえ肩身が狭くなっていたPC版は、マジでフリスビーとして遊ぶ以外の用途がなくなってしまった。
皮肉にも『ジョーカーの国のアリス』は生みの親の手によって息の根を止められたのである

というかまあ、認証設定は上述の通り制作会社のサーバーを経由しておこなわれるため、会社そのものが消失しているので仮になんらかの手段で今現在新品を買ったとしても起動することはできない。

2020年現在発売から10年が経過しその間PCの変化もめまぐるしかったことも考えると、起動することすら困難なゲームになってしまったといえる。

今からやりたいのであればPSP版で遊ぶほかない。
一応海外の姉御が違法スレスレで認証用パッチを開発したのでそれを使えば頑張れば起動できるかもしれない。え? そんな危険を冒すくらいならPSP版を買った方がいいって? ごもっともです。

QuinRoseは2019年にオトメイトのサブブランドQuinROse_Rebornとしてよみがえったのでもしかしたらまた認証設定を再開してくれるかもしれない。
……だといいなぁ。

このような事情からPSP版がほぼ完全上位互換になってしまったため思い入れを除けばPC版を使う理由はほぼない。
……とは言ってもプレイに時間がかかる作業ゲーであるが故にクリアした感慨はひとしおであり、思い入れがあるというプレイヤーも少なくないのでそう簡単にも言えないのだが。
てかハトアリシリーズ全般に言えるがキャラ人気だけは本当に高いのでそのような方はそこそこ多い。

今現在PC版をプレイできている人がいたら、発売当時に買っていてかつ同じパソコンを使い続けているというガチのファンである。
素直に敬意を表するべきだろう。




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