コミュニティ放送

登録日:2020/11/11 Wed 23:41:47
更新日:2021/07/30 Fri 07:22:49
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コミュニティ放送とは放送局の一種、あるいは放送形態の一種である。主にFM波で放送されているため「コミュニティFM」と呼ばれることが多い。
AM放送が広域や県域を、FM放送がおおよそ県域の範囲をカバーしているのに対し、コミュニティFM放送はおおよそ市区町村の範囲での放送が許可されている。

■沿革

1980年代後半からのバブル景気に乗り、日本全国では民放テレビや県域ラジオを中心にして放送メディアが広がりを見せ始めた。それと同時期に、当時の郵政省が「ニューメディア時代における放送に関する懇談会」「放送の公共性に関する調査研究会」において市区町村域をフォローする「コミュニティFM」の言及がなされ、1992年に法制化。12月24日、北海道函館市に第1号となる「FMいるか」が開局した。

法制化された当時は「既存の民放や外国籍、個人の参入は不可」「市区町村ごとに1局のみ」「第3セクター方式で設立する際、地方公共団体の出資比率は30%以下」「出力は1W以下、聴取可能範囲は半径2~3km以内」という制限があったが、後々「出力が20w以下、聴取可能範囲は半径15~20km以内」と規制が緩和され、市区町村と出資比率の制限は撤廃された。

1995年1月17日、兵庫県の淡路島を震源とする「阪神・淡路大震災」が発生。当時は県域放送局の「サンテレビ」「AM神戸(当時。現・ラジオ関西)」「Kiss-FM KOBE」以外は関西広域圏の放送局しかなく、市町村単位で被災者が欲している情報はなかなか手に入りにくかったことをきっかけとして、神戸市、尼崎市、明石市、芦屋市、宝塚市、伊丹市、川西市と淡路島の津名郡をエリアとした臨時災害放送局「FM796 フェニックス」のほか、甚大な火災が発生した神戸市長田区をエリアとした外国人向けのミニFM局「FMヨボセヨ」「FMユーメン」、西宮市をエリアとしたミニFM局「FMラルース」が発足。その後長田区の局が「FMわいわい」、西宮市の局が「さくらFM」としてコミュニティFM局へと転身し、それ以降防災意識の高まりとともに全国各地に開局の波が広まっていった。

2011年3月11日発生した東北地方太平洋沖地震では、沿岸地域の放送局が浸水するなどの被害を受けて一時放送できなくなるトラブルが発生したが、どの局も復旧に努めて地域情報の発信を担った。また、この時に設立された臨時災害放送局がコミュニティFM局へと発展し、気候変動も含めた災害への備えとして、さらにコミュニティFM局への注目度が上昇していく。

2015年に栃木県栃木市で開局された「FMくらら857」をもって、全47都道府県にコミュニティFM局が開局。2016年には300局を突破した。

■概要

上記の通り、市区町村ぐらいの範囲が可聴エリアとなっているため、放送する内容も街の生活情報や自治体からのお知らせ、地域の居住者が手がけた様々な番組と、AMラジオや県域のFMラジオ局と比べ細やかなものとなっている。映画情報や音楽チャート番組など、広域局や県域局の番組と同じようなコーナーでも、地元の映画館の職員にインタビューしたり、地元にあるCDショップの独自チャートを放送したりと、コミュニティFM局ならではの範囲で情報を収集していることもある。

自局で制作した番組のみを放送している局もあれば、衛星ラジオ放送局の「MUSIC BIRD」や「スターデジオ」、東京都にある広域FM局「J-WAVE」の一部番組を再送信している局もある。多くの局は自主制作番組+再送信で構成しているが、どの程度の番組が自局制作か、再送信かは、100%自局制作の局もあれば、平日2~3時間程度のみ自局制作であとは全部再送信という局もあったりと、局それぞれの編成事情によってかなり違う。

一般にスタジオを公開している局も多く、商店街の歩道に面したビルにあったり、商業施設の一角にあったりとスタイルは様々。中にはカフェやアンテナショップと併設して憩いの場を提供していたり、待合室のような形で駅の中に設けたりと工夫が凝らされているものもある。しかし、昨今のCOVID-19(新型コロナウイルス)の影響もあって公開を中止していたり、観覧を制限している局もあるので、訪問などする際には注意が必要となっている。

また、番組のパーソナリティは専門職としてのアナウンサーやDJ、ナレーターの他にも、それらの職を志望する人々や中学校・高校・大学の放送部員という「喋りたい」「放送したい」一般の人々もボランティアなどの形で担当している。局側でパーソナリティの志望者を公募したり、放送枠を販売して番組を公募したりと機会を設けていることも多く、それに合わせて番組の内容も比較的自由度が高い。

スポーツ中継を行っている局も存在し、特にプロ野球球団の東北楽天ゴールデンイーグルスは宮城県仙台市宮城野区をエリアとする「Rakuten.FM TOHOKU」を運営しており、その中で中継はもとより、チーム情報や観光情報などの情報番組を放送している。サッカーJリーグでは神奈川県川崎市にある「かわさきFM」が川崎フロンターレを、東京都調布市にある「調布FM」ではFC東京を放送するといった具合に、ホームタウンが存在する局が中継番組を編成することがある。特に、浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)のお膝元である埼玉県さいたま市の「REDS WAVE」は、局名が表すように「レッズ応援放送局」を標榜しており、ホームゲーム開催日には中継の前後に事前番組やアフタートークを行うなど手厚いサポートを行っている。中継は行わない局でも、チームの広報宣伝番組が編成されていることもあるので探してみるのも一興かと。

災害発生時には、自治体と「災害時の緊急放送に関する協定」を結んでいるほとんどの局が、地元中心の情報を提供できるように準備を整えている。避難所の開設や給水、店舗営業などの生活情報に、地震時の被害や台風・豪雨時の河川水位などの危険情報など、自治体が提供する情報とスタッフ・パーソナリティが放送エリア内で収集した情報を随時放送していく。緊急時には、放送へ割り込む形で自治体からの緊急放送が行われることも多く、2019年10月に襲来した「令和元年東日本台風」(台風19号)では、実際に河川情報や避難情報、土砂災害情報が頻繁に放送された局もあった。

多くの局ではインターネットを介した再送信を実施している。「サイマルラジオ」(同時放送ラジオ)と銘打って「CSRA」「JCBA」の2つの団体がポータルサイトを用意している他、Webブラウザとアプリで聴取できる「ListenRadio」「FM++」など、様々な形で聴くことが出来る。

アニラジ

広域局・県域局と同様に、コミュニティFMでもアニラジ番組が多数存在する。以下はその一部を紹介していく。

●ワイド番組

アニメやゲームを題材にしたトーク中心のワイド番組や、アニメソング・ゲームソングを取り扱うワイド番組が存在する。
  • ラジオボンバー (調布FM[東京都調布市])
    土曜朝の3時間番組。厳密には一般番組だが、メールのテーマがアニメ・ゲームに関わることが少なくなく、リクエストもアニメソング・ゲームソングが多め。月末の特集でも「田中公平特集」や「台詞が入る曲特集」など、アニメファン・ゲームファン向けの募集がしばしば行われる。
  • 2D (Radio-f[静岡県富士市])
    水曜夕方の2時間半番組。地元視点で二次元作品とのかかわりを採り上げたり、声優を招いて小中学生からの質問を受け付けるなど、精力的に活動。局で交通安全の呼びかけを担当している関智一とも関わりが深い。
  • アニメ関門文化学園 (COME ON!FM[山口県下関市])
    1998年から放送されている長寿番組。主に新譜のアニメソングを紹介したりリクエストをかけたりすることが多い。影山ヒロノブ・遠藤正明の両名とも縁が深く、イベントに参加したりタイトルコールがかかったりする。COME ON!FM本局では金曜日放送だが、月曜深夜には全国向けの放送も行われている。
  • あにわん (FM TARO[群馬県太田市])
  • アニDX (REDS WAVE[埼玉県さいたま市浦和区])
  • 悠太・麻美のアニメックスレディオ(Radio LOVEAT[愛知県豊田市])
  • 乙女部~2nd season~ (FM PiPi[岐阜県多治見市])
  • コーデBOX! 水曜日 (FM aiai[兵庫県尼崎市])
  • アニゲじゃナイト (FMみっきぃ[兵庫県三木市])
  • にかもとりかの【おれんじ☆かのん】 (FMちゅーピー[広島県広島市中区])

●トーク番組

声優やアーティストが担当するトーク番組も存在する。
  • yuhaku Presents 中原茂 "ただ風の中で" (中原茂:FM JAGA[北海道帯広市])
  • Come On A My House (氷上恭子:ラジオつくば[茨城県つくば市])
  • はるかひとみのふるこねくとちゃんねる! (はるかひとみ:フラワーラジオ[埼玉県鴻巣市]他)
  • 三橋加奈子のSaturday Bell (三橋加奈子:市川うららFM[千葉県市川市・浦安市])
  • LOVETRADIO (榊原ゆい・藤崎紗矢香:マリンFM[神奈川県横浜市中区])
  • ひのまりのネムロのひだまり (日野まり:FMねむろ[北海道根室市])
  • 絵空事計画 (津久井教生:すまいるエフエム[埼玉県朝霞市・放送終了])
  • radioclub.jp (髙野麻美、長久友紀、篠田みなみ、高田憂希桑原由気、白石晴香、藤田茜、深川芹亜、古賀葵etc.:かつしかFM[東京都葛飾区・放送局移動])
    2015年7月から2020年6月まで放送されていた、若手声優の登竜門番組。2020年7月から兵庫県の県域AM局・ラジオ関西へと移動し、2021年6月に終了した。
  • 折笠愛のMoonlight Dream (折笠愛:マリンFM[神奈川県横浜市中区・放送終了])
  • 谷本貴義のサブカル研究所 (谷本貴義:Tokyo Star Radio[東京都八王子市・放送終了])

●アニメソング・ゲームソング番組

  • もとラジ! (FMおだわら[神奈川県小田原市])
    日曜夜放送。週替わりのテーマに沿って30分間曲を詰め込みまくり、特定の声優・アーティスト・作曲家の特集が組まれた際には本人からコメントがあったり、本人がゲスト出演しトークを行ったりしている。
  • ゲームミュージックマニアックス (DARAZ FM[鳥取県米子市)
    第2・第4土曜日放送。ゲーム音楽プロデューサーの松下謙介と声優の古原奈々が、ボーカル曲や美少女ゲーム曲を含めた古今東西のゲーム音楽を幅広く紹介していく。
  • アニソン店長 (鹿角きりたんぽFM[秋田県鹿角市])
  • アニっくま~アニソン満載の120分!~ (FMカオン[神奈川県海老名市])
  • アニソンおとのくに (FMおとくに[京都府長岡京市])
  • アニソン♪音エア中!! (クローバーラジオ[埼玉県志木市&朝霞市・放送終了])
  • 静岡県沼津市・COAST-FMの番組全般(アニソン番組があるわけではないが、ラブライブ・サンシャインの舞台ということもあり、Aqoursの曲がリクエストされ、流れることが多い)

●ラジオドラマ・朗読番組

  • 声優が読む文学の時間 ~たくす~ (斎賀みつき、伊東健人、園崎未恵、深見梨加・他:ラジオフチューズ[東京都府中市])
    土曜夜放送。局がクラウドファンディングを募って声優に名作文学を読んでもらうという朗読番組で、朗読の後には声優本人による感想などのフリートークなどが行われる。クラウドファンディングのリターンに、音源が収録されたCDがあるのも特徴。
  • アニドラファンタジー (REDS WAVE[埼玉県さいたま市浦和区])
  • エムケイボイスマックスラジオドラマ (市川うららFM[千葉県市川市・浦安市])
  • 繪ほんの中には (中村繪里子:ふくろうFM[千葉県八千代市])

■課題

●経営基盤、および経営体質

主に純粋な民間団体が運営するコミュニティFMにおいて、資金難や広告収入不足によって廃局する例が少なくない。コミュニティFM局の場合は広域局や県域局に比べて可聴区域が限られており、スポンサーとなりうる企業の数も、リスナーの数も限られるため、リスナー数の低下がスポンサーへの広告効果の低下に繋がり、撤退へ至るという悪循環に陥りかねない。

他にも、営業担当職員の退職で懇意にしていたスポンサーが離れたり、開局から廃局まで放送している番組の広報を一切行わなかった*1りという、放送局の体質そのものが起因となる場合もある。

中には「経営危機に陥った放送局が別の団体へ譲渡した結果、その団体の思想によって放送局の体質や番組の内容が一変し、金融商品取引法に抵触する商品の紹介番組を放送したことで放送法に抵触する疑いで家宅捜索を受けたり、金融庁・総務省から重大な関心を寄せられたりして、告知もなく突如停波・廃局した」局があったり、「いつの間にかWebサイトが更新されなくなって、いつの間にか聴こえなくなって、いつの間にか総務省の登録から外れていた」局があったりという、なんとも両極端な出来事もあったりする。

もっと凄まじい例になると、監督官庁に無許可で送信アンテナを弄って、勝手に可聴地域を広げたことで違法無線局を運用したことになり総務省から放送停止処分を受け、再開はしたものの廃局に繋がったという事例も……*2

当たり前ではあるが、経営基盤や経営体質がしっかりしていることは放送局にとってとても大事なことなのだ。

●災害発生時の放送体制

災害発生時の情報拠点として期待されることが多いコミュニティFM局だが、災害の規模によっては即応体制がとれなくなる場合もある。

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では局舎が浸水・流失したことで放送機能が麻痺してしまい、仮設の局舎への移転を余儀なくされた局がある。また、局舎が直接被害に遭わなかった場合でも、2018年9月6日の北海道胆振東部地震で発生した長時間の大規模停電では、臨時災害放送用の非常電源が尽きて放送が長時間停止したり、スタジオが入居している商業施設が閉鎖されて長期間にわたって放送ができなくなるなど、情報拠点としての役割が困難となる事例も発生した。

また、ひとたび災害が発生すればスタッフ・パーソナリティも被災者のひとりとなってしまうため、放送人員の確保にも影響が出てくる。いくら災害時の情報提供のために開局したとしても、放送局が災害発生箇所から近い場合にはどうしても避けられない問題となってしまう。


追記、修正は地元のコミュニティFM局にチューニングを合わせるか、サイマル放送で好みの局へチューニングしながらお願いします。

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最終更新:2021年07月30日 07:22

*1 番組表すら一切公開しなかった。「地域の様々な活動や意見を発信するため柔軟な対応が必要であり、詳しい番組表を作成することが難しい」という理由らしいが……

*2 経営難で苦肉の策だったとしても、許可なく放送エリアをいじってはいけない。