SCP-268-JP

登録日:2020/12/23 Wed 12:51:54
更新日:2024/04/14 Sun 16:35:39
所要時間:約 3 分で読めます





「英雄」は、自らを犠牲にしてでも誰かを救う。



SCP-268-JPはシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはEuclid。



概要

SCP-268-JPは、黒革表紙の本。ただしアノマリーだけあってページ数の計測ができないという特性を持つ。
この本にはタイトルが付けられており、それはいずれも「自分の命を犠牲にして他者を救った人(SCP-268-JP-B)」を抽象的に褒め称える内容となっており、
この本は「自分が死の危機に晒された際に他者に救われたが、その人がかわりに死んでしまった」というイベントに於いて生還した人(SCP-268-JP-A)の前に現れる。

そしてその人は本を手にとってしまうと消失してしまう。財団は「どこに行ったかは不明」と報告書に綴っているが、
自然に考えるならその本に閉じ込められたとするのが妥当なところであろうか?
そして、せっかく助かった命なのに本の中で再び死の危機にさらされる(という内容の記述がされる)。
そしてそこにやっぱりヒーローが現れる。それはもちろん、「あの時の恩人(SCP-268-JP-B)」である。

なお、恩人たちはみな死んだときの記憶を有している(ように本の記述からは読み取れる)。
そして恩人たちは毎回毎回、目の前の人を「あのとき」と同じように助けようとして、救出には成功するが、自分は死ぬ。そして救出に成功しても、再び別の場所に両名は召喚され、また同じように危機が訪れる。当然、恩人ことSCP-268-JP-Bは、死ぬ際の激痛を何度も味わい続ける。
これが、恩人が疲れ果てて救出をやめる、つまり「諦める」まで続くのだ。

SCP-268-JP-Aが地下鉄のホームから転落する。SCP-268-JP-Bがホームに押し上げ救命するが、自身は直後通過した列車と接触し死亡する。
SCP-268-JP-Aに向かって鉄骨が落下する。SCP-268-JP-Bが突き飛ばすことで救命するが、自身はその下敷きとなり死亡する。
SCP-268-JP-Aが増水した河川に流される。SCP-268-JP-Bが河川に飛び込み救命するが、自身は力尽き濁流に呑まれ溺死する。
SCP-268-JP-A、SCP-268-JP-Bの両名が山中でガラガラヘビの毒に侵される。SCP-268-JP-Bは所持していた一人分の血清をSCP-268-JP-Aに与え救命するが、自身は死亡する。
SCP-268-JP-Aは拳銃を所持した暴漢に捕まっており、暴漢はSCP-268-JP-Aの解放条件に新たな人質を差し出すことを要求する。SCP-268-JP-Bが人質になることを申し出て交換が行われるが、最終的にSCP-268-JP-Bは射殺される。
SCP-███-JPに似た外観と特性を持つオブジェクトによりSCP-268-JP-Aが[編集済]を受ける。SCP-268-JP-Bは[編集済]することで救命を行うが自身は[データ削除]となって死亡する。

なお、彼ら以外にも登場人物はいるが、ゲームのモブのように一定のセリフを繰り返すばかりで彼らの応答に答えない様子が確認されている。
最終的にSCP-268-JP-Aは死ぬと、その死んだSCP-268-JP-AをSCP-268-JP-Bは見つめながら、霧のように消えるという描写が追記され、
その後の本のタイトルは、なんと『我が身かわいさにSCP-268-JP-Aを見殺しにしたSCP-268-JP-Bを罵倒する内容』となってしまう。
SCP-268-JP-Aは本の中での描写と同様の内容で死んだ状態で現実世界に再出現。本はその後異常性を喪失、忌まわしい記録を閲覧可能になる。

なお、活性状態の本は1度に1つずつしか現れない(不活性化した本が消失することはないが)。
よって誰かがずっと救出を続けてさえいればそれ以上犠牲者は増えないのだが、
いくらなんでもそれに頼るのは人道的にアレだし、倫理を抜きにしても不確実なこと極まりない。
そこで財団は「プロトコル・ヴィラン-268」としてフロント企業を介してSCP-268-JPと同様の装丁の本を出版し、
内容として「致命的な状況で別の人に救われた人」をテーマとして、その生還した人や亡くなった人を
徹底して批判するという侮辱的かつ悪趣味で倫理的にも大問題な本をシリーズ化して出版している。
これにより世間的には「忌避されるべき問題作」として捉えられ、民事訴訟まで起こされているが、
このシリーズのおかげでSCP-268-JPによる被害者を減らすことに成功している。
SCP-268-JP-AとSCP-268-JP-Bを救うためなら、当のSCP-268-JP-AやSCP-268-JP-A、SCP-268-JP-B両名の
家族・知人・第三者に嫌われても構わない。というかそれが財団の使命なわけだし。

インシデント記録

SCP-268-JP-17
SCP-268-JP-A: 26歳女性。消失の2年前に肝癌の治療のためSCP-268-JP-Bから肝移植を受け救命される。
SCP-268-JP-B: 享年32歳。男性。SCP-268-JP-Aの実兄。肝移植の手術の後、合併症により死亡。
表題: 病魔に苦しむ妹を救った、心優しき兄の英雄譚
改題後: たった一人の肉親を見殺しにした屑野郎の物語
内容: 全96章。最終章でSCP-268-JP-Aは大型車両に撥ねられたことによる内臓破裂で死亡する。

95回も妹を救った兄が屑野郎とは思わないが……。

SCP-268-JP-42
SCP-268-JP-A: 11歳男性。SCP-268-JP-Bの実子。
SCP-268-JP-B: 享年29歳。女性。SCP-268-JP-Aの出産時、胎盤剥離により母体か胎児かの選択を迫られるも出産を決断し死亡する。SCP-268-JP-Aが自身の息子だと認識しているように読み取れる。
表題: まだ見ぬ我が子の命を救った、愛深き母親の英雄譚
改題後: 無情なアバズレの息子として生まれたがために泣き叫びながら燃え尽きた少年の悲劇
内容: 全127章。最終章でSCP-268-JP-Aは炎上する家屋に閉じ込められ焼死する。

出産直後に亡くなったということは息子であるという確信だけで126回も救ったことになる。

SCP-268-JP-79
SCP-268-JP-A: 34歳男性。消失の8年前に派兵先の███にて敵襲を受けた際SCP-268-JP-Bに救命される。
SCP-268-JP-B: 享年37歳。男性。SCP-268-JP-Bを銃撃から庇い死亡する。
表題: 未来ある若き兵士を救った、尊敬すべき上官の英雄譚
改題後: 死に瀕する部下を我が身かわいさに見捨てた腰抜けのおはなし
内容: 全186章。最終章でSCP-268-JP-Aは輸血を受けられなかったことで失血性ショックにより死亡する。

血の繋がりもないのに185回も部下を救った人は腰抜けではないだろう。

と、ここまでは最終的に疲れ果てて見殺しにする結末で終わる。

しかし。

SCP-268-JP-106
SCP-268-JP-A: 8歳女性。消失の6年前に現在SCP-███-JPに指定されているオブジェクトに遭遇したことで[編集済]となるが、オブジェクトの無力化に伴いその影響から脱した。
SCP-268-JP-B: 享年2█歳。エージェント・佐久間。20██年、SCP-███-JPの回収任務中に殉職。しかしその直前、彼の機転により一時的な無力化に成功しオブジェクトは収容された。なおエージェント・佐久間はSCP-268-JP-Aの条件を満たすとしてSCP-268-JPに関する知識を有していた。
表題: 無辜の幼き少女を救った、忠勇なる財団エージェントの英雄譚
改題後: N/A
内容: 現在4512章。

なんと財団エージェントが巻き込まれる事態が発生。
このエージェントはもともと、SCP-268-JP-Aになりうるんじゃないかと財団より情報提供されていたようだが、
結果として自分がかつて別のオブジェクトの回収作業中少女を救ったかわりに亡くなってしまったらしい。

そんなエージェント・佐久間は4512回もその女の子を救い続けている。
このオブジェクトの特性は、「活性状態の本は1冊しか現れないこと」。
エージェント・佐久間は悲劇を自分で最後にしようと戦い続けていることになる。

そんな彼であるが、どうやら章の開幕のたびに何かを言おうとしているようだが黒塗りにされてしまっている。
もしかしたら、この英雄譚についての手がかりを掴んでいるのかもしれない。
彼が糸口を見つけることを祈るばかりである――。



SCP-268-JP - 終わらない英雄譚


英雄譚は終わらない、君が抗い続ける限りは。


関連Tale


オブジェクトが上述の通り胸糞なので、Taleも基本胸糞になることが多いが、
エージェント・佐久間を取り上げたTaleはかねがね熱い展開になる事が多い*1

称える必要などない、あんなクソ野郎を。英雄で在ることが出来たのに、自らそれを捨てた奴を称賛するわけが無い。

英雄、などではなく

英雄譚におけるモブ視点のTale。
真に意地が悪いのは、英雄譚なのだろうか?という切り口を変えた問題提起が突き刺さる。

読後にURLを見るとよりインパクトが増すだろう。

幕引の夢

かつてエージェント・佐久間を救えなかった財団職員たちのひとりが、
SCP-268-JPの管理という仕事を割り当てられるなか、
同じ時同じところにいた同僚たちの死のたびに文体が変化することに気付き、
自分が死ねばエージェント・佐久間の戦いは幕引きを迎えるのではと期待するのだが――。

駄作の一章、祈りの一頁

少女を救い続けるエージェント。今日は動物園で少女が襲われている。
エージェントはライオンから彼女を逃がすが、そのライオンはエージェントに話しかけてきて――。

表題:少年の夢と信頼を踏みにじった、エセヒーローどもの茶番劇

マイナスとマイナスを掛けるとどうなるでしょうか?

余談

SCP-268-JP-106には毎日ページ数が増えていくよう工夫がされている。
つまり、今あなたがこの項目を見ている間もエージェント・佐久間は自己犠牲を繰り返していると言うことだ。



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最終更新:2024年04月14日 16:35

*1 『5000兆年、初夏』は例外的に、エージェント・佐久間に否定的な記述が見られる。もっとも当該世界ではもはや人類が絶滅しており、エージェント・佐久間と少女が生き延びたところで希望がないのだが……。