ナイトハルト・ミュラー

登録日:2021/02/16 (火曜日) 15:46:00
更新日:2023/12/14 Thu 14:27:00
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貴官が銀河系の私たちと同じ側に生まれておいでであれば、私は貴方の下に用兵を学びに伺ったでしょう。
そうならなかったことが残念です。

ナイトハルト・ミュラーは、銀河英雄伝説に登場する人物。
ゴールデンバウム王朝、ローエングラム王朝に仕えた軍人で、最終的には生存したまま元帥にまで昇進している。

声優は水島裕。

■[来歴]■
まだミューゼル性を名乗っていた頃のラインハルト中佐が、密命によってヘルクスハイマー伯が自由惑星同盟へ亡命するのを阻止すべく活動していた時に、フェザーン自治領の駐在武官(中尉)として名前が出る。

ラインハルトが元帥府を開くと招集されているが姿が見えず、リップシュタット戦役ではしれっと戦列に参加し、ケスラーと共にメックリンガーの旗下で門閥貴族連合と戦闘を重ねている。
そのリップシュタット戦役の前哨戦では、副盟主ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世を捕縛すべく屋敷に踏み入れるが、すでに逃げられており失敗に終わっている。

ガイエスブルク要塞をワープさせてイゼルローン要塞のすぐ近くに肉薄し要塞を奪還する第8次イゼルローン要塞攻防戦では、副司令官としてカール・グスタフ・ケンプ大将の指揮下に就く。
大規模な作戦にあって副司令官に指名されたのは、末端の席次なため戦果を上げさせる事で名声を得させようというラインハルトなりの配慮だとミッターマイヤーは推測していた。
ケンプが要塞指揮を執る間は艦隊司令を務めており、イゼルローン要塞に肉薄し要塞表面にダメージを与える事もあった。だが次第に戦果を焦るようになるケンプとの間に溝が生まれ、独断行動にも走るようになる。
それでも最後まで戦列を支え奮戦するも、ケンプ及びガイエスブルグ要塞を喪失したうえミュラー本人も重傷を負い、参加した将兵の9割近くを喪うという大敗北を喫する。
その負傷のまま敗残兵をまとめ上げ撤退し、処罰を覚悟のうえでラインハルトの元へ帰参し部下の助命を乞うた。ラインハルトは当初大激怒していたが、キルヒアイスの亡霊に諭され得難き人材を失うべきではないと判断して無罪とした。
これに安堵したミュラーは負傷からか気絶してし、暫くは静養に努めた。

神々の黄昏作戦(ラグナロック)では、第二陣として戦列に参加。ランテマリオ星域会戦では右翼を担う。バーミリオン星域会戦ではリューカス星域補給基地攻略のために動いていたが、基地司令が降伏したため予想外に時間が早まってしまい、ラインハルトの窮地に颯爽と駆けつける結果を生んだ。
あまりの急激な行動から脱落艦が増え、戦域に到達した時には僅か8000隻しか追従していなかったがヤン・ウェンリー元帥率いる第13艦隊を相手に善戦する。当初はこれに混乱していたヤン艦隊だが次第に勢いを取り戻し、窮地に追い込まれ旗艦を3回も移す。だがそれでも粘り強く戦線を支え続けていた事から、後年鉄壁ミュラーと称されるようになった。
会戦終結後はブリュンヒルトを訪れたヤンを出迎えているが、第8次イゼルローン要塞攻防戦の恨みを一切表立たせずに会話している。

同盟の降伏及びローエングラム王朝の勃興に際して上級大将に昇進。更にバーミリオン星域海戦の功績により、上級大将首席の地位と最新鋭旗艦級戦艦パーツィバルをラインハルトから直々に賜る。
そのラインハルトの大親征及び翌年のマル・アデッタ星域会戦では最後衛を務め防衛戦を演じる。
また、統帥本部総長オスカー・フォン・ロイエンタール元帥が謀反の疑いをかけられ一時拘禁された時には、統帥本部総長代行を務めた時期もあった。

イゼルローン回廊の戦いではラインハルトの直営艦隊前方に位置し、ヤンの艦隊攻撃を30時間も押し留め続けた。前年のバーミリオン星域会戦とは違い想定内の行動であったので、ヤンも性急な行動を選択せず一時は膠着状態になるが、ラインハルトが体調不良によって意識喪失する事態に陥ると撤退を余儀なくされた。その際も全艦隊の殿となって追撃を許さずにいた。
だが、ヤンが地球教徒の手により暗殺されるとその弔問の使者としてイゼルローン要塞に赴く。彼の後継者たるユリアン・ミンツとも私的に会談し、お互いにヤンを失った事を惜しみながらイゼルローン要塞離脱者の航路を保証する旨を約束した。

ロイエンタールの要請によって実行に移されたラインハルトによる新領土行幸の際には首席随員として参加。元々以前より叛意を疑われていたロイエンタールの噂に陰謀を感じていたが、惑星ウルヴァシーに立ち寄った際に夜襲を受けコルネリアス・ルッツ上級大将らと共に逃走。途中、ラインハルトを庇い背中や右腕を負傷し、更に殿を務めたルッツが死亡してしまう中で何とか生還する。
この功績からジークフリート・キルヒアイス武勲章を授与され、更に元帥号を授与されるもこれを固辞に、代わりにロイエンタール元帥の助命を求めかけている。
その後は負傷した身でありながらラインハルトに随行している。

ラインハルトとヒルデガルド・フォン・マリーンドルフの結婚式に参列。その後、旧同盟領内で未だ起こり続けている混乱を収めるべくパウル・フォン・オーベルシュタイン元帥に実戦部隊指揮官として随員すると、オーベルシュタインの草刈りによって生じた対立でフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト上級大将がオーベルシュタインに殴りかかる事件が発生。彼の謹慎により一時黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェン・レイター)の指揮代行を任じられる。
シヴァ星域会戦では後衛を指揮するも、ラインハルトが昏倒すると旗艦ブリュンヒルトへ招集される。イゼルローン共和政府軍が艦内部に侵攻し、ユリアン・ミンツがラインハルトの目前にまで迫るのを見守った。
ラインハルトが皇帝病により死去すると、勅使としてユリアン達に報告した。また遺言によって同僚ら5名と合わせて帝国元帥に昇進し、獅子の泉(ルーベンフルン)の七元帥の一員と称される。

■[能力]■
まず非凡である事は疑いようも無く、毒舌と皮肉屋が勢揃いしているヤン艦隊の面々が揃って彼を評価している辺りからも能力の高さが分かる。
特に難局や劣勢時の粘り強さは特筆で、鉄壁ミュラーの異名を体現するように防衛戦では他の追随を許さない。
そのため中盤以降の戦役では最後衛を任されるような場面が多く、華麗さこそ無いものの背中を任せるにこれ以上の人材はいないというラインハルトの判断が予想できる。
また指揮能力も優秀で、イゼルローン宙域から撤退する際は敗残兵を負傷しながら立派に纏め上げる手腕を持つ。

■[人物]■
髪と瞳の色がどちらも砂色で、左肩が過去の戦闘の負傷でやや下がっているのが特徴。

ラインハルトの陣営で最も年齢が低い将官ではあったが他からの信頼は厚く、下に見られたり嫉妬を向けられるような描写も無い*1
ただ当初は若さ故の生意気さや血気に逸る描写も幾つか見られ、戦場を通して冷静さや温和さを得ていたような側面も見られる。
第8次イゼルローン要塞攻防戦ではケンプ司令官に対する嫌疑やヤンに対する憎悪が見られたが、次第に戦況を見渡せる冷静さや強敵に対する敬意を持てる武人らしさを得られた。
バーミリオン会戦では、それらの経験から、危地の際は旗艦を捨てるも止む無しという柔軟な思考を持つようになり、一方で同会戦で旗艦からの離脱をよしとせずミュラーが来援していなければ戦死していたであろう、ラインハルトとの対比となった。
また温和で誠実な性格はラインハルト旗下の陣営であればこそ育まれたものだと思われる。正論だが他人に対し配慮を知らないオーベルシュタインの言動に家訓からか大声で悪口を言ったり掴みかかるなど傍若無人なビッテンフェルトと異なり不満を感じつつ語気を強める程度に収めたり、ロイエンタール叛逆の最中は親友であるが故に庇い立てしがちなミッターマイヤーに代わり助命や尋問をするなど緩衝材の役割を担っている。
ヤンもラインハルトの功績の一つに彼を登用した事を上げているほど。

妙にプライベートでは他将校の噂や珍事に巻き込まれる風にある。沈黙提督の異名を持つエルンスト・フォン・アイゼナッハの、指を三回鳴らすと角砂糖を入れたカップ半分程度に淹れられた珈琲が音速で出てくるという不気味な状況に二度も出くわしているし、オーベルシュタインが飼っている老犬のために夜中に肉屋に鶏肉を買いに行く姿を目撃し仔細も知っていたという。
そんな彼を誰が呼んだかゴシップミュラーと一部のファンからはあだ名される。

一方で彼自身のプライベートについては謎が多く、作中を通して恋人がいる描写はほぼない。中尉時代に手痛い失恋をしたことが語られる程度。
ロイエンタールの漁色を「彼が女性を独占しているから私には回ってきません」と皮肉っているなど、いちおう興味はあるようである。

作者曰く14人兄弟の家に生まれて育ったらしい。順序は不明。

■[部下]■
  • オルラウ
参謀長。ミュラーより年上で、血気に逸る彼を制止する姿が見られた。

  • ドレウェンツ
副官。

  • グスマン
リューベック艦長。撃沈の際に艦と運命を共にしようとするがミュラーに拒否され共に艦を脱出し、後に新旗艦パーツィバルの艦長に任命されている。

  • オーブリー・コクラン
自由惑星同盟のリューカス星域にある補給基地の司令官。民需物資を守るために部下の反対を押し切って降伏したが、利敵行為を問われ極地の収容所に収監された。
ミュラーは彼を長年覚えており、ラグプール刑務所流血事件で解放された後に幕下に加え、主計監に任命している。
歴史の皮肉を描写する銀英伝の中でも特に顕著な人物の一人であり、彼が早期に降伏したためにミュラーはラインハルトの危機に間一髪で間に合っている。
つまり自由惑星同盟の滅亡を間接的に大きく後押ししてしまったわけであり、彼の小さな善行が結果として民主主義の衰退を招いてしまった。
この結果に、後に専制主義者の幕僚として招かれた彼がどんな心境を吐露したかについては語られていない。

  • ラッツェル
大佐。ミュラーとは旧知の仲であり、恐らく士官学校の同期だったと思われる。
元はレンネンカンプの部下でバーラトの和約体制下で退役したヤンの監視役を務めていたが私怨にも等しい上司のやり方に反発し、同盟要人の密告で陥れられそうになるヤンを擁護するも聞き入れられなかった。
ミュラーと共にヤンと直接会話をした数少ない帝国軍人で、ミュラー麾下に加わった後はヤンの葬儀にも同行している。


■[乗艦]■
  • リューベック
最初期より旗艦としていた戦艦。バーミリオン会戦での猛攻に耐え切れず撃沈してしまう。

  • ノイシュタット
リューベック撃沈後に搭乗した戦艦。だが間を置かずこの戦艦も撃沈したため、他へ移る事となる。

  • オッフェンブルク
ノイシュタット轟沈後に搭乗した戦艦。描写は無いがここからも移動しているため、撃沈したものと思われる。

  • ヘルテン
バーミリオン会戦で最後に搭乗した旗艦。ようやくここで落ち着きを得ている。

  • パーツィバル
ローエングラム王朝初の竣工した最新鋭旗艦級戦艦。デルタ翼機のような形をしているのが特徴的で、戦艦ブリュンヒルトに似た白亜の塗装をしている。特筆すべきはビーム砲を容易くはじき返すほどの高い防御力であり、ウォルフガング・ミッターマイヤーに乗り心地を聞かれた際に、顔を輝かせながら「極上です」と絶賛したほど。


■[余談]■
ユリアン・ミンツを呼ぶ際に『ヘル・ミンツ』と言っているが、これはドイツ語のヘル(Herr)で英語のミスター(Mr)に相当する。
帝国ではドイツ語表記が主体となっているためこの呼び方をしたのだろう。決して地獄(Hell)では無い事をここに注釈する。



ヘル・ミンツ。卿と私とは、どちらが幸福なのだろうか。
卿らはヤン・ウェンリー元帥が亡くなられるまで、追記・修正を知らなかった……。

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最終更新:2023年12月14日 14:27

*1 ランテマリオ会戦直前には直前にイゼルローン攻防戦での敗退があったこともあり、ゾンバルトやトゥルナイゼン達から露骨に追い抜きの対象に見られていたが