ネクロン(ウォーハンマー40K)

登録日:2021/03/04 (木) 19:34:31
更新日:2024/04/03 Wed 16:25:59
所要時間:約 83 分で読めます




“目覚めの時は来たれり!”


画像出典:ArtStation Jaime Martinez氏のイラスト「Warhammer 40k - Necrons」より






ネクロンとは、ウォーハンマー40Kに登場する異種族(宇宙人)勢力の一つである。人類が誕生する以前に存在し、生ける金属「リヴィング・メタル」の体を持つアンドロイド種族で、その体は瞬時に損傷を回復する自己再生能力を持っている。
かつては銀河全域を支配していた種族であったが、ある理由を境に彼らは〈時なき墓所〉で大いなる眠りにつき、静かに目覚めの時を待っていた。そして人類が銀河に台頭し、混迷を極めていた第41千年紀の時代に彼らは再び目覚めたのだ。
そう、たった一つの目的である「かつての栄光に満ちたネクロン諸王朝を復活させる」ために。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P4,P5 イラストより


概要


この銀河には、恐るべき太古の種族がいる。彼らは墳墓惑星(トゥームワールド)の〈時なき墓所〉(ステイシス・クリプト)に埋葬されて永劫の時をまどろみのうちに過ごしつつ、この銀河が長く過酷な戦争の傷から癒える日を待ちわびてきた。
そして今、彼らは6千万年の眠りから、大いなる目的を果たすため、遂に目覚めんとしているのだ。生命体のいない辺境とみなされていた幾多の惑星では、埋もれていた太古の機械群が再び星々の間を思うがままに渡らんと、その謎めいた機能を取り戻し、ゆっくりと蘇生プロセスを開始している。
無慈悲なるネクロンの軍勢が立ち上がる時、銀河はかつてない危機に直面するであろう。

画像出典:コデックス「ネクロン5版」(codex:Necrons)表紙イラストより

【身体の特徴】
全てのネクロンたちは、血や肉で来た知的生命体ではない。彼らは「リヴィング・メタル」、すなわち生きた金属によって製造された躰(ボディー)を持つアンドロイド種族なのである。
ネクロンは内部にエネルギー反応器を搭載しており、その本体には過熱を防ぐための冷却材が常に流れている。彼らの体には破壊不能な頑丈さを有し、どれだけ甚大な損傷を受けても瞬時に自己修復する機能を持っている。
時間さえ許されるならば、切り落とされた四肢も再接合し、装甲板を編み直し、砕け散った機械部分さえも再生できるのだ。ネクロンを完全に破壊するには、その自己修復する速度を上回るほどの多大なダメージを与える必要がある。
そのような損傷を被った場合、ネクロンはあっさりフェイズアウト現象を起こす。自己作動式のテレポートビームが破壊されたネクロンを回収し、安全な〈時なき墓所〉へと転送して、その中で修復が完成する時を待ち続けることになるのだ。
他種族からすれば、ネクロンの超科学は魔法にすら見えるだろう。そんなネクロンは下等なる異種族と技術を共有する気はなく、また彼らの誇る究極のテクノロジーが思わぬ時に悪しき者たちの手に渡らないようにするため、数々の予防策を講じてきた。
斃れた兵士がフェイズアウトに失敗した場合は、自己破壊機能が作動して兵士はエメラルドの輝きを思わせる炎に包まれてその場で消滅する。敵はネクロンが単純に破壊されたのか、あるいは単に撤退したのか判別できぬまま、その場に呆然と立ち尽くしてしまうだろう。
それゆえ、敵がネクロンに対して局地的戦闘で勝利を得たとしても、ネクロン側にとっては些細な事柄に過ぎない。

【ネクロンの精神】
最下層の兵士から最高位の貴族に至るまで、全てのネクロンたちは「ネクロン王朝の復活」という大いなる目的のために邁進する。それは、全銀河を再び彼らの膝下に置くこと他ならない。
それは遥か古の時代に、ネクロンたちの精神にエンコードされた絶対の命令であり、彼らの存在の根幹をなしている原理であるため、彼らはこれを否定することができないのである。そして、ネクロンはただのプログラムで動くロボットではなく、意識をもつ機械生命体なのである。
ネクロンの上位階級に属する司令官や王といった者たちは人間と同じように自分の意思を持って行動する。一方、下位階級に属する兵士のネクロンは自分の意思で思考や行動が行えず、上位階級の傀儡として働くこととなる。
まさにネクロンは恐れや疲れを知らず、黙々と敵を葬る恐怖の兵団を率いることが可能となっているのだ。だが、墳墓惑星から目覚めたネクロンたちは、あまりにも様相の変り果てた銀河を目のあたりにし、種族の目的を達成するのは非常に困難を伴うものだと判断したのも事実だ。
墳墓惑星から目覚めた一部のネクロンはその精神に異常をきたし、またあるネクロンは他の王朝との戦いに明け暮れている。


ゲーム上の特徴

敵ユニットの攻撃が全て終了した後、ダメージを回復する能力を有する。全体的な能力から射撃に向いた勢力といえる。
代わりに移動力が少し低く、兵種ごとに得意分野が両極端なのがネックとなる。


種族の歴史


お前たちの野心は全くの見当違いだ。我らはかつて、この銀河を跪かせた。そして今再び、銀河は我らの前に膝を折るのだ。
オーヴァーロード・アカナーベク
カルデナス王朝のファエロンにしてナガサールの摂政


画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons)P28,P29 イラストより

【概要】
機械種族ネクロンは、幾多の戦いや裏切りを経(へ)て現在のような様々な王朝を抱える種族となった。しかし、ネクロンは最初からこのような機械の体を持った種族ではなかった。
そこには、自主族の抱える脆弱性の問題や「ク=タン」と呼ばれる神の存在との取引によって機械の体を得たのだ。では、彼らはどのような経緯があったのかを解説していく。

【ネクロンの起源】

現在はネクロンの名で知られることとなったその種族は、人類が地球(テラ)で産声を上げるよりも遥か昔に、無慈悲なる恒星の下で進化の一歩を踏み出そうとしていた。血と肉からなる種族、「ネクロンティール」は、有害な太陽風と放射線の嵐にさらされ続けていたため、過酷な生涯を送ることを宿命づけられていた。
その一生は短くかつ不安定であったが故に、ネクロンティールの諸王朝は、避けえぬ死の予感を礎にする特異な文化を持っており、彼らにとって現世とは、祖先らが眠る墓所に埋葬されるまでの仮住まいの場に過ぎなかったという。自らの母星上で平穏を見出すことができなかった「ネクロンティール」らは、闇雲に新天地を求め、別の惑星へと漕ぎ出していった。
彼らは「緩慢燃焼」(スローバーニング)航法によって航行する「灯の船」(トーチシップ)に〈時なき墓所〉(ステイシス・クリプト)を搭載し、他惑星への入植を開始したのだ。
少しずつではあるが着実にネクロンティールの諸王朝は遠方へと版図を広げてゆき、遂には銀河系のほぼ全域をその支配下に収めたのであった。
画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada 2」より

【第一次分離戦争】
やがて時が過ぎるうちに、ネクロンティールらは戦禍に見舞われることとなった。ネクロンティールの支配領域が拡大し多様性を増してゆくにつれ、彼らの礎であった団結が腐敗し、それまでに築き上げた版図全域で分離独立を求める内戦が勃発したのである。
最終的に、トライアークもとい〈三頭評議会〉(ネクロンティールの最高統治機関)は「団結を維持するための唯一の希望は、共通の外敵に対する闘争だけである」という結論を出した。だが、彼らに対抗できるほどの共通の外敵など、この銀河系にはほとんど存在しなかったのである。
ただ、その中でも、銀河系に誕生した最初の知的生命体である〈旧き者〉(オールド・ワンズ)たちだけは、全ネクロンティールが一致団結するに値する相手となりうる可能性があった。それまでにも〈旧き者〉らが持つ、「不死の秘密」をネクロンティールと共有することを幾度となく拒んできたため、〈旧き者〉らに宣戦布告するための正当な理由もあったのだ。
かくして〈三頭評議会〉は〈旧き者〉らへの宣戦布告を実行に移し、それと同時に、分離主義を唱える諸王朝に対し、「ネクロンティール文明に再帰属する意思を示した場合は、反乱に対する特赦を与える」と布告した。すると〈三頭評議会〉の思惑通り、〈旧き者〉らに対する勝利の予感と、それによって得られる不死の秘密が得られるのではないかという欲望に誘われた分離主義者らは、たちまち反乱を中断し、〈旧き者〉らに対する大戦争に加わった。
〈天界の戦争〉(ウォー・イン・ヘヴン)の勃発である。

【〈天界の戦争〉(ウォー・イン・ヘヴン)】
この大戦争にまつわる記録や情報は、ネクロンティールのライブラリを埋め尽くすほど膨大であったという。そして、それらの情報から共通して読み取ることかできたのは、「ネクロンティールは絶対に〈旧き者〉に対して勝利できない」という極めて単純な結論であった。
数の上で優位に立ち、科学技術の面でも遥かに高度であったネクロンティール軍であったが、銀河中に張り巡らされたワープ通路 〈網辻〉(ウェブウェイ) を駆使することに熟達した〈旧き者〉たちからには、常に戦略面で裏をかかれてしまうのであった。
その後、わずか数百年という時のうちに、ネクロンティール軍は後退に次ぐ後退を強いられ、かつての栄光は見る影もなく、隔絶して忘却された辺境へと押しやられていったのだ。屈辱的な敗北を目のあたりにして、ネクロンティールの団結に再び亀裂が走った。
この状況ではもはや、共通の敵を持つことなど、分離主義を唱える諸王朝を繋ぎ止めておく理由にはなりえない。勝てる見込みのない戦況を前にして、多くのネクロンティール王朝はむしろ積極的に和平を求め、〈三頭評議会〉に戦争の中断を訴え始めた。
だが、彼らの上に君臨する〈三頭評議会〉は、それを決して許しはしなかったのだ。このようにして、第二次分離戦争とも呼ぶべき内戦が勃発し、かつてネクロンティールが起こしたいかなる戦争余地も広範囲に渡り、また破壊的な荒廃を引き起こすこととなった。
この時点でほとんどのネクロンティール王朝は瓦解していた。これにより〈旧き者〉らはたやすく、ネクロンティール残党を一掃できる状況となり、また実際にそれを実行に移そうともしていたようだ。
一方〈三頭評議会〉は、ネクロンティール文明が風前の灯火であるという事実に直面し、いかなる手段を用いても秩序を回復しようと絶望的な試みを続けた。こうした大混乱のさなか、彼らの必死の祈りを聞きとげる存在が現れる。
ただし、その代償は想像を絶するほど高かったのだが。

【ク=タンの到来】
「ク=タン」 の名で知られる神にも等しい超エネルギー生命体が、〈三頭評議会〉の前に現れる。この時代は〈沈黙の王〉(サイレント・キング)の名で知られるネクロンティールの盟主「スザーレク」の治世であり、彼らがク=タンとどのような方法で最初の接触を果たしたのか、全く不明である。
この出来事に関する数々の記録は、どれもみな誤解を招くような、矛盾した内容ばかりであった。墳墓惑星「ソレムナス」の記録保管室(アーカイヴ)に残されたデータによると、彼らの最初の接触は偶然に近いものであり、死にゆく惑星を調査していたネクロンティールらの前に、ク=タンとの接触の機会が思いがけず訪れたことが暗示されている。
一方で、アエルダリが運営する〈方舟〉の一つ、〈黒の図書館〉(ブラック・ライブラリー)の最奥部に安置された〈悲嘆の夜の書〉によれば、〈旧き者〉に対するネクロンティールの荒々しき憎悪がク=タンが無視できないほど強い光を放って彼らを呼び寄せたという。いずれにせよ、この最初の接触によって〈星界の神々〉すなわちク=タンによる支配の影が、いくつかのネクロン王朝を覆い始めたのだ。
ネクロンティールの一部は、積極的に〈星界の神々〉から祝福を授かろうとし、ク=タンの精髄(エッセンス)を実体化させるため、「リヴィング・メタル」によって作られたク=タンを実体化させるためのボディーの鋳造を開始した。こうして、半ば忘れられていたネクロンティール神話の神々に似せた形で、次々とク=タンの実体化が果たされていったのだ。
ク=タンらは真の欲望を隠したまま、自分たちが従順な協力者であるかのように振る舞った。

【〈欺くもの〉との接触】
そしてある一体のク=タンが、〈星界の神々〉全員を代表する先触れとして〈沈黙の王〉の前に現れる。この者は、ク=タンの中でもとりわけ意図的に裏切りを働くことから後に〈欺くもの〉と呼ばれることとなる存在であったが、〈沈黙の王〉はこのク=タンの本性を未だ見抜いておらず、謁見に訪れた臣下の一人と同程度の存在だとしか認識していなかった。
〈欺くもの〉は、ネクロンティールが誕生する以前に、ク=タンと〈旧き者〉の間で起こった戦争について語り、そこでク=タンが戦争に敗れたことを告げる。また〈旧き者〉の復讐を畏れたク=タンは身を隠さねばならず、いつの日か相応しき同盟者を見出し、〈旧き者〉に対して報復を果たす望みを抱いていたを明らかにした。
そして〈欺くもの〉は 「〈旧き者〉を打倒するための同盟に了解するならば、自分とその兄弟たる全ク=タンは、ネクロンティールの望むいかなるものでも提供することを約束いたしますよ」 と提案したのである。それはすなわち、 〈三頭評議会〉が求め続けていた団結と不死が、思いがけない形で手に入るかもしれない ことを意味していた。
〈欺くもの〉は執拗に「これは、真に価値ある同盟相手だけに捧げうる、極めて貴重なご進物ですよ」と繰り返した。〈欺くもの〉は、かくのごとく語った。
果たして、この言葉の裏に隠された真実を看破てきたのだろうか?〈欺くもの〉の神性の大部分は嘘と偽りによって構成されており、彼自身ですらも自らの語る事実と虚言を見抜けないのだから。ともかく、”不死”という魅惑的な進物をほのめかす〈欺くもの〉の言葉は、藁にも縋りたい〈沈黙の王〉の心を、一瞬で虜にしたのである。
何か月もの間、スザーレクは〈三頭評議会〉や宮廷の重臣らと共に協議を重ねたが、その全ての協議を通じて異議を申し立てたのは、宮廷付占星術師の「オリカン」のみであった。オリカンは 「ク=タンとの同盟は新たなる栄光をもたらすでしょう。しかしネクロンティールの民は、それによって未来永劫に渡って呪われるのです」 と予言したのだ。
しかし欲望と野心が彼らの警戒心を塗りつぶし、オリカンの予言は退けられた。〈欺くもの〉の提案が示されてから一年後、〈三頭評議会〉はク=タンとの同盟に合意した。
この瞬間、ネクロンティールには永遠なる破滅が約束されたのである。

・・・・成されたものをことごとく目の当たりにした〈沈黙の王〉は、ついにク=タンの本性を知るに至った。そして、彼自身の名のもとに滅びの烙印を押されたことも・・・。
〈悲嘆の夜の書〉より引用

【〈生体転移〉】
ネクロンティールと〈星界の神々〉たるク=タンの間には契約が結ばれ、遂に大規模な〈生体転移〉が開始された。巨大な生体転移炉が昼夜問わずうなりを上げ、 ネクロンティールの脆弱な肉体を休みなく吸収しては、それに換わるリヴィング・メタルの頑強なるボディーを授けてゆく。
一方、生体転移炉を成す巨大機械群が咆哮を轟かせる横にク=タンらは群がり、うち棄てられるネクロンティールの肉体からほどばしる生命エネルギーを吸収して、かつてないほどに強大に成長していったのだ。スザーレクは、ク=タンが民の生命エネルギーを貪る光景を目にし、自らが犯した過ちの深さに戦慄しただろう。
多くの面では確かに、過去数十年間に比べて快適この上ない状態ではあった。間断なく催す苦痛や、いつ襲ってくるか予想すらできない臓器不全などは、もはや過去の物となったからだ。
スザーレクが得た新たな機械の体は、以前の脆弱な肉体とは比べ物にならないほど強靭であり、思考速度もまた以前より高速に、より明敏になっていた。しかしある種の空虚感に似た感覚が、彼の精神内にわだかまってもいたのである。
この説明しようのない精神的喪失感は当初、理にかなったものとは考えられられなかったが、思考を巡らせたスザーレクフは不意に、冷たい確信を得た。不死の肉体を得ることの代償とは、 ”おのれの魂を失うことに他ならなかった” のだと。
深い嘆きの中で、〈沈黙の王〉は自らの民にもたらしてしまった悲劇を直視していた。〈血肉の時代〉に存在したネクロンティールはもはや記憶の中の存在に過ぎず、彼らは魂なき種族「ネクロン」へと生まれ変わっていったのだ。
代償は確かに高かったものの、〈生体転移〉はク=タンが約束した条件全てを満たすものであった。最下層のネクロンですらも例外なく不死の祝福を授かっており、経年劣化や放射能すらも、彼らの新たなボディーを蝕むことはほぼ不可能であったからだ。
よほどの致命的損傷を被らない限り、ネクロンが破壊されることはない。さらにネクロンたちは、ネクロンティール時代には決して知りえなかっただろう、高次の一体感を得ていたのだ。
各ネクロンの精神には、〈生体転移〉の過程で 「コマンド・プロトコル」と呼ばれるコントロール機能が組み込まれ、これによりスザーレクは民から決して揺らぐことのない忠誠心を得たのである。 当初、〈沈黙の王〉は一片の迷いなくこの完全なる統合性を受け入れており、当時影響力を強め始めていた 〈渾沌〉がもたらす不浄なる変異 に対して、対抗策と成りえたからである。
時が経つにつれスザーレクは、この重荷に対して疲れを見せ始めたが、コマンド・プロトコルを断ち切れなかった。そんなことをすれば、 民は自らに降りかかった恐るべき呪いに気づき、〈沈黙の王〉に対して復讐を果たそうとする のが明白だったからである。

【階級制メカニズム】
〈生体転移〉プロセスの中には、いくつかの独裁的な階級制メカニズムが搭載されていた。その一つに、支配階層と被支配階層との間に意図的に握られた、深く大きな溝が存在する。
当時彼らの手には、 完璧な自我と個性を維持できるほどの高度なボディーを、全ネクロンティール分製造するだけの資源が残されてはいなかった。 それゆえ、 高度な機能を備えたボディーは高位の役職および彼らに従える役職に就くネクロンティールにのみ限定的に与えられることになったのだ。
職業軍人の階級に属するネクロンティールに対しては、その本分たる戦闘にのみ相応しい機能を持ったボディーが与えられた。一方、平民階級のネクロンティールには、こうした高度なボディーなどもはや残されてはおらず、非常に粗末な、自我を奪う牢獄の如き劣悪なボディーが支給されたのである。
このボディーへと〈生体転移〉された者は、 もはやいかなる喜びも感じることはなく、いかなる実体感覚すら望めない。 彼らは完全に上位者たちの意思に操られるだけの傀儡であり、上位者の命令下に置かれていない限り、行動すらもままならないのであった。
にもかかわらず、こうした平民階級用のボディーの内部には、未だ自我のかすかな瞬きが残留しており、かつて経験した過去の残響と記憶がそのネクロンをしばしば責め苛んでいる。このような苦痛にさいなまれる自我なきネクロンたちにとっては、いっそのこと死の方がまだ好ましい末路であったのかもしれない。
だが、何たる悲劇か・・。もはや彼らには、自分たちの置かれた状況を認識することすら出来ないのだ。

【〈旧き者〉の敗北】
一丸となって戦うク=タンとネクロンの前に、〈旧き者〉らはなす術もなく壊滅的打撃を受けた。ネクロンティールたちの生命エネルギーを呑み干して力を得たク=タンを阻むものは、何一つなかったのだ。
幾多の惑星が跡形もなく破壊され、幾多の恒星までもが消滅させられた。〈星界の神々〉が放つ物理法則をねじ曲げる力によってブラックホールが生成され、星系が丸ごと飲み込まれてしまうこともあったという。
ネクロンたちは遂に〈網辻〉の入口すらもこじ開け、銀河の辺境へと〈旧き者〉らを追い詰めていった。ネクロン軍は〈旧き者〉の同盟相手に包囲戦を仕掛け、敵の生命エネルギーを自分たちの神々へ捧げるために次々と収穫を行った。
最終的にはク=タンによる絶え間ない包囲攻撃と、誤って〈歪み〉(ワープ)から招き寄せてしまったおぞましき驚異の数々によって〈旧き者〉らはついには滅ぼされてしまったのだ。

【〈沈黙の王〉の反逆】
〈天界の戦争〉の終盤、スザーレクはク=タンが無防備となる瞬間を待ちわびていた。ネクロンは種族全体をスザーレクの意のままに操れたが、彼はク=タンの力が絶頂期にある今、あえて戦いを挑まなかった。
今はク=タンを倒す前にまず、ネクロンティールの宿敵である〈旧き者〉を滅ぼしておくのが望ましい。ク=タンはこの大戦の勝者になるだろうが、その座は短命なものとなるであろう・・。
何故ならば宿敵である〈旧き者〉との戦いで、ク=タンらも少なからぬ被害を受けているはず。その時こそ、全ネクロンはク=タンらに反逆するのだと〈沈黙の王〉は考えていた。
その傲慢さゆえに、ク=タンらは自らの危機に気付かなかった。そして気付いた時にはもう、全てが手遅れだったのである。
ネクロンたちは密かに、現実宇宙に充満する想像を絶する膨大な量のエネルギーを収束させて、彼らの超科学兵器に充填していたのだ。かくして放たれたエネルギーはク=タンですらも耐えきれぬほどのものであった。
だが、ク=タンは 現実宇宙を織りなす構成因子そのものでもあったため、完全に破壊することは不可能でもあった。 そのため、ク=タンの一体一体は消滅することなく、代わりに 幾千もの破片(シャード)へと形を変えたのである。
しかし、スザーレクの目的は十分に果たされていた。彼はク=タンを破壊することは不可能だと理解しており、そのうえで最善の計画を立てていたのだ。
それぞれのク=タン・シャードは、 四次元立方体の迷宮内へと収められて封印したのである。 こうしてネクロンたちはク=タンから自由となったが、勝利の代償もまた高かった。
結果として 〈三頭評議会〉全員を含む何百万人ものネクロンが、ク=タンへの反乱戦争の中で滅ぼされてしまったのだ。 〈三頭評議会〉の中で壊滅を免れたのは、 〈沈黙の王〉スザーレクただ独りであった。
しかしネクロンたちは再び、運命を自らの手中に収めることに成功したのである。

【大いなる眠り】

ネクロンたちは宿敵である〈旧き者〉もろともク=タンを打倒することに成功したものの、〈沈黙の王〉はネクロンの時代がもはや終焉を迎えたことを知った。銀河系全域まで広がっていたネクロンの版図は、ほどなくして 異種族「アエルダリ」の手に渡るもの と考えられたからだ。
アエルダリすなわち、〈旧き者〉の側で〈天界の戦争〉を戦い、それ故ネクロンとネクロン文明に対して激しい憎しみを抱くに至った種族である。〈旧き者〉は滅んだものの、アエルダリは未だ健在であり、ク=タンとの内戦で疲弊したネクロンなど、もはやアエルダリの敵ではなかった。
ただ、〈沈黙の王〉は、 あらゆる血肉からなる者の時代はやがて終焉を迎えるように、アエルダリ族の時代もやがては終わりを迎えるであろうと考えていたのだ。 そこでスザーレクは、戦禍を免れたネクロンの各都市を、〈時なき墓所〉を組み込んだ巨大墳墓複合体へと作り変えることを命じた。
彼は「この銀河を、ほんの束の間だけ、アエルダリの手にくれてやればよい」と考えたのだ。「アエルダリの生命は儚い。対して我らネクロンは永遠なる存在」。
〈沈黙の王〉が民に下した命令は 「全ネクロンはこれより六千万年の眠りに就くべし。我らがしかる後に再び目覚め、かつて失われた物全てを再建し、諸王朝の栄光を取り戻すであろう」というものである。 この命令と共に〈沈黙の王〉スザーレクフは宇宙船に乗り込み、銀河間に広がる暗闇へと漕ぎ出した。
彼だけが無しえる鎮魂、あるいは贖罪の術を探すために・・。いずれにせよ、ネクロンたちは深い眠りに落ち、永劫とも思えるほどの時が過ぎたのである・・。
画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada 2」より

【休眠中の影響】
六千万年の永きに渡って、ネクロンは眠り続けていた。〈沈黙の王〉が最後に命じた「ネクロン王朝の復興」を実行に移す機会が訪れるのを、静寂のうちに待ち続けながら。
やがて、時が過ぎゆくうちに、多くの墳墓惑星は機能不全や不運の餌食となっていた。それらの多くは些細な事故であり、墳墓惑星の「時辰計」(クロノスタット)や蘇生チャンバーといった機能に若干の乱れが発生し、意図されていた時期よりもやや遅れて墓所の活性化を開始する、といった程度の不具合に過ぎなかった。
だが一部の墳墓惑星においては、極めて深刻な事態が起こっていたのだ。墳墓惑星の〈時なき墓所〉で連鎖的な事故が生じた場合、そこで休眠状態にあった(数十億とはいかない数)少なくとも数百万体のネクロンは滅びの運命を迎えることとなった。
また、十分な防衛設備が整っていなかった墳墓惑星の中には、ネクロンへの復讐に燃える古の宿敵、アエルダリ族の攻撃を受けて破壊されてしまったものも存在するようだ。さらに別の墳墓惑星は、銀河系そのものが無軌道に進化してゆく過程で犠牲になったとも伝えられている。
地質学的に不安定な惑星は、しばしば大規模な地殻変動によって地下に眠るネクロンの拠点を破壊した。超新星化した星系の恒星が上げる”断末魔の叫び”すなわち超新星爆発によって、軌道上の墳墓惑星が爆発に呑み込まれたという事例もあったという。
また銀河のいたるところで見られたのは、探求心に満ちた生物たちが、ネクロン文明の遺物を巡って争いを繰り広げる光景であった。事実、報復心に取り憑かれたアエルダリの攻撃よりも、知識欲に駆られた下等種族による浅はかな”調査活動”のほうが、銀河規模で見るとネクロンの種族に与えるダメージが遥かに大きかったのである。

【忘却よりの目覚め】
〈大いなる眠り〉からの覚醒プロセスは、精密さを欠いていた。覚醒プロセスは銀河全域で同時には起こらず、時期も断続的なものであったし、覚醒を果たしたネクロンたちは現実感の乏しい状態であったのだ。
ごく一部のネクロンは、内部回路やプロトコル上のエラーなどにより、当初の予定よりもあまりにも早い 「第41千年紀」(西暦40000年ごろ)の初頭に目覚めてしまった。 今後も、こうした”早すぎる目覚め”は銀河全域で生じるだろう。
最初期に覚醒したいくつかの墳墓惑星は「第30千年紀」(西暦29000年ごろ)に目覚め、〈人類の帝国〉による〈大征戦〉(グレード・クルセイド)に直面した。その後しばらくして目覚めたネクロンたちは、人類の〈帝国〉内で勃発した恐るべき内戦などを見ることになった。
いくらかの墳墓惑星は、未だに目覚める気配はない。第41千年紀の終末が近付いた今でさえも、無数のネクロンたちが墳墓の奥で覚醒の日を静かに待ち続けているのだ。
覚醒を果たしたとしても、その全機能を速やかに回復できる墳墓惑星は稀であった。甦生サイクルにおいて生じた”欠陥”はそれが小さなものでも、眠っていたネクロンたちの記憶痕跡(エングラム)内神経経路に対して、断裂化や劣化といったシステム障害を引き起こしたからだ。
ほとんどの場合、こうしたシステム障害は徐々に復元され、そのネクロンの自我や意識へと再統合されてゆくのだが、それには何十年から何百年という時間が必要となる。その復元プロセスを急ぐことは不可能で、ときには復元サイクルが動作不能になり、その場合ネクロンは自我なき状態で永遠に眠り続けるのである。
またこの銀河には、何千個もの自動化された墳墓惑星が点在している。こうした墳墓惑星の大広間には、休眠中に自我を失い自動機械と化したネクロンの大軍がうごめいているのだ。
彼らのボディーは、墳墓惑星のマスター・プログラムによって管理されており、その墳墓惑星が存在し続けるために必要な何らかの命令を与えられているという。他のネクロンたちは、このような状態の墳墓惑星群を「断絶惑星」(セヴァード・ワールド)とみなして警戒しており、その住人らを嫌悪すると同時に恐怖してもいる。
断絶惑星においいて甦生をとげるネクロンの中で、無事で眠りから目覚められるほど幸運な者は、誰一人としていないからだ。

【眠ることなき守り手】
蘇生プロセスの期間中、墳墓惑星は最も脆弱な状態となる。これらの墳墓惑星は、ネクロンの蘇生に必要とされる膨大な量のエネルギーを発生させねばならず、遥か遠い位置からでも容易にエネルギー反応を観測されてしまうため、好奇心旺盛で強欲な下等種族らを引き寄せてしまう危険性があるからだ。
しかも蘇生プロセスの初期段階においては、墳墓惑星の全戦力が全機能を正常回復させていることは滅多にない。このため、甦生初期段階における防衛任務は、「カノプテック・スパイダー」、「カノプテック・スカラベ」、そして「レイス」といったネクロンの「自動奉仕機械」(サーヴァイター・ロボット)が担う。
これらの自動奉仕機械群を指揮しているのは、墳墓惑星の「マスター・プログラム」だ。墳墓惑星が有する複雑な意思決定マトリックスは、直面したいかなる脅威に対応できる最も効率的な行動を算出する。
驚異の危険度が増せば、マスター・プログラムもそれを認識し、墳墓惑星の防衛システム機動とネクロン兵団蘇生プロセスの優先度を、状況に応じて変更するだろう。この優先変更がうまく機能すれば、侵略者を撃退するのに十分な時間を稼げるはずだ。
そしてこの時点でマスター・プログラムは、その墳墓惑星の貴族階級ネクロンらに対し指揮権限を譲与する。他種族らの都市や巣などが墳墓惑星の近隣に築かれた場合、積極的な防衛態勢を整えるべく、墳墓惑星のマスター・プログラムはこれまでに蓄積された該当種族の情報をくまなく精査し、入念な戦闘準備を整える。
この段階まで甦生プロセスが進行している墳墓惑星の貴族階級ネクロンらは、全戦力を既に覚醒させて待機させているため、それ以外の墳墓惑星に比べて急速に影響範囲を広げることとなる。「ソーテク」王朝に属する数々の墳墓惑星群は破竹の勢いで版図奪回を進めているが、その主な理由は、第39千年紀の後期に彼らの中央惑星群に押し寄せた異種族「ウルメアスィ」のコロニー建設の影響であった。
なお、これらのコロニー群は完全に破壊されている。

【復権】

覚醒したネクロン墳墓惑星の行動様式は極めて多種多彩であるため、部外者の目からは、ほとんど一貫性のないランダムなものに見えるだろう。「ネクロン・ロード」の中には、失われた支配領域や太古の宝物を取り戻すための交渉に当たらせている者もいるし、あるいは未だ目覚めていない墳墓惑星を探索する者もいる。
またある者たちは、他種族との不要な対立を避けて内政のみに目を向け、墳墓惑星内の権力闘争における勝利を追い求めたり、あるいは自らの墳墓惑星をかつての栄光に比する規模で再建しようとしているのだ。しかしながら大多数の墳墓惑星は、より攻撃的で積極的な方策を取っている。
墳墓惑星が具体的にどのような行動を取るのかについて、部外者が正確に予測することは不可能である。例えば、敬意を払うに値する敵と戦う場合、ネクロンの攻撃は古の戒律に則って、絢爛さと壮大さを最優先する戦術を取るが、それ以外の下等な敵に対しては、ありとあらゆる手段を総動員するだろう。
そのような場合は、海賊行為、暗殺、虚偽の誓約など、どれほど卑劣な策略さえも辞さないのである。これらの行動には様々な方法や規模を取りうるが、いずれも共通した一つの目標を達成せんとするものだ。
その目標とはすなわち、 「ネクロン諸王朝の再興」 に他ならない。だが最高評議会〈三頭評議会〉は失われて久しく、墳墓惑星の大半は荒廃状態、あるいは休眠状態であり、銀河系規模で全ネクロンの足並みを揃えることはおろか、ネクロンが復権を果たすための大戦略を立案することすらも不可能なのだ。
墳墓惑星の統治者たちは自助勢力を継続する必要に迫られており、彼らは状況に最も適した方策ならば、いかなる手段であろうと検索するだろう。
画像出典:ゲーム「Warhammer 40,000: Mechanicus」より

【有機的肉体への帰還】
機械の体から生物の肉体へと還ること、すなわち「アポセオシス」の希望は、多くのネクロン貴族たちを突き動かす原動力となっている。というのも、有機的肉体へと意識を再転位させる可能性については、〈沈黙の王〉の最後の布告の中でも示唆されていたからだ。
どんなに身分の低いネクロン・ウォリアーでさえも、生身だった頃の〈血肉の時代〉への回帰を切望しており、それ故かつての自分自身の姿すなわち、生命を持ち、息をして魂がこもっていた頃の自分自身の物理的形状を、これ以上傷つけたり、堕落させたりしたくないのが一般的だ。
だが、ただでさえ困難なこの探求は、〈沈黙の王〉スザーレクが人知れず姿を隠したことと、〈三頭評議会〉の後継者が明らかになっていなかったことによって、さらに複雑な問題となってしまった。結果として、多くの墳墓惑星の支配者たちは、古代ネクロン諸王朝の復興のみならず、全ネクロン内における自らの地位をさらに向上させようと機会をうかがうようになったのだ。
個人的な権力の追及や、競合者たちの思惑を正確に見抜こうとする意図が入り交じるため、ネクロン貴族たちの行動原理はしばしば不明瞭なものとなる。またそれゆえに、このようなネクロン貴族によって指揮されるネクロン兵団がどのような軍事行動を取るかは、ほとんど予測不可能なのだ。

【沈黙の王の帰還】
ネクロン王朝の多くは目覚めた後もネクロン種族のためではなく、自分の王朝のために戦っているのである。「ソーテク」、「メフリット」、「ニヒラーク」、「オグドベク」・・これらおよびその他の王朝が、現在の分裂したネクロン種族を構成している。実質的にこれらすべては〈沈黙の王〉の元に統一され、その支配に服する立場にある。
ネクロン種族が自らを劣等種族よりも優越していると信じているように、諸王朝もまたそれぞれがライバル関係にある王朝よりも自らがはるかに優越していると信じている。王朝は頻繁に同盟を結ぶが、同様にすぐさま内紛に至る事例も高い。
このため、無数の弱小王朝はより強大な王朝に吸収され、あるいは従属することが繰り返されてきた。この結果として、より多くのネクロンが常時覚醒を迎えるに至った。
覚醒したネクロンが増加するにつれ、銀河には脅威が迫ることとなった。最後の〈沈黙の王〉「スザーレク」は、銀河に帰還し、再び種族全体を統一し、再びこの銀河を統一するという野望を抱いている。
それに先立ち、彼が、銀河系に対する〈渾沌〉の驚異を永遠に断ち、劣等種族を完全に粛清するという恐るべき計画を抱いているという噂も先立っている。彼のライバルは共倒れとなるべく相争うことに腐心しており、彼の旗の下にはさらなるネクロンが集結していることを考えれば、スザーレクを止めることはもはや、遅きに失した可能性もある・・。


ネクロンの王朝とヒエラルキー


秩序。統一。服従。我らは遠い昔に、銀河の民にそれらを教えた。今ひとたび、同じことをせねばなるまい。
〈嵐の王〉イモーテク

【概要】
定命なる肉体を持っていたネクロンティール文明の頃からすでに厳密な行動規範と行動様式を備えていた貴族たちによる、絶対的な支配体制が敷かれていた。この厳密なる階級社会は、肉体から機械の体へと〈生体転移〉するプロセスの中で更に徹底的に洗練されていく。
そして、ネクロンたちが覚醒する際には、ネクロンティール文明の時代よりも複雑かつ多層化された支配体制が敷かれていたのだ。

【ネクロンの支配階級】

ネクロン貴族の中で最高位にあるのが、各王朝の支配者であり多数の星系を支配下に置く「ファエロン」たちだ。ファエロンの下の位階には、「オーヴァーロード」たちが存在し、ファエロンたちの支配領域内にある各墳墓惑星群の統治を任されている。
更にその下位には「ロード」たちが存在し、中央惑星(コアワールド)または辺境惑星(フリンジワールド)いずれか1個の統治を担う。ファエロン、オーヴァーロード、ロードの称号は、ネクロンが持つ長い歴史と伝統に深く根ざすものであり、銀河全域で共通的に受け継がれてきたものである。
オーヴァーロードやロードの周囲には下位貴族からなる「延臣団」が置かれ、兵団の指揮官となる「ネメソール」、側近団や近衛体の役割を持つ「ロイヤル・ワーデン」、敵に対する圧倒的な脅威となる「リッチーガード」、参謀的な任に就く「クリプテック」たちで構成されている。これなる「宮廷家臣団」の内部では、〈生体転移〉後も個性や人格を保持していた貴族たちによって、政治的駆け引きや陰謀がめぐらされていることが多い。
一方で、彼らに従える顧問団や、各専門分野の協議会を構成するさらに下位に連なる貴族や官吏ともなると、その称号の種類は無限にも近い多様性を持つ。ネクロン社会において多くの称号は世襲制であり、ネクロンティール時代の初期に定められたものである。
中には後の時代に作られた称号もいくつかは存在するが、それらは下位の貴族らに対する褒賞として考案されたものだ。その後、ネクロンティールの版図が拡大していき、諸王朝が用いる称号の規則について中央の管理が追い付かなくなってゆく。
その結果、それぞれの王朝は独自の数々の称号を作り出し、自らの王朝の歴史をより正当化し権威づけようとしていたのである。なお、これらの称号は大仰で長々とした称号も存在するが、低い位階を荘厳なものに見せようとするただの中身がない粉飾であった。
画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons)P18 イラストの図表を元に解説を追加

【複雑な称号制度】
このただでさえ絡み合った称号制度がより複雑になるのは、ある王朝のファエロンが、他王朝に属する惑星の支配権を獲得した際である。ここで踏まねばならない手続きは、定命の者にとって退屈極まりないものだが、ネクロンの上流階級にとってはしばしば、退屈を紛らわすための手段の一つとなる。
さらに事態を複雑にする要因として、ファエロンが退位するか破壊された場合、その後継者となった新たなファエロンは、自らの王朝で用いてきた称号名に改正するよう主張することさえあるという。この場合、宮廷内では新王朝の伝統や文化に対する異議申し立てが相次ぐことが予想されるため、新たなファエロンは自らの地位を守るために万全の注意を払わねばならない。
そのネクロンティール王朝がどれほど巨大で特異な性質をだとしても、軍団と艦隊内における称号制度は変わらず受け継がれる。例えば、ネクロンが戦場に赴く際には常に、戦場における最高司令官に対して「ネメソール」の称号が与えられる。
共通の称号制度を維持する利点は大きく、複数のネクロンの軍団同士が共闘した際はそれまで直接対面していなくとも、戦闘効率の低下や混乱を招かずに済む。また、こうした確固たる命令系統が存在するが故に、〈嵐の王〉イモーテクは滞りなくネメソールからソーテク王朝のファエロンとなれたのだ。

【ネクロンの宮廷】

全てのファエロンやネクロン・オーヴァーロードは、墳墓惑星群統治や軍事作戦決行などを補佐する「宮廷家臣団」(ロイヤルコート)を有している。一般的な宮廷家臣団は、複数のネクロン・ロードやクリプテックから構成されており、これがファエロンの宮廷家臣団ともなれば、そこにネクロン・オーヴァーロードたちが加わることも珍しくない。
宮廷家臣団となるネクロン・オーヴァーロードは、そのファエロンに忠誠を誓った者か、あるいはファエロンの血縁関係に属するものである。もはやネクロンたちにとって、血と肉は遠い過去の記憶でしかないが、血縁関係が持つ重要性は今なお失われていない。
各ネクロン・ロードらも、より小規模の家臣団を持つ。自らの家臣団を持たないのは最下位の貴族だけに限られるが、それでも彼らは称号を持たぬ部下の中から多少の知性を有した者らを集めて補佐団を作り、上位の貴族が持つ家臣団を模倣している。
彼らの知性にはいささかの不安が伴うため、この補佐団は正式な宮廷家臣団に比べればみすぼらしいまがい物でしかない。しかしながら、その家臣団がどれほど粗末なものであれ、上意下達の厳格な規則が重要となる戦場においては、家臣団を全く持たないよりかははるかに効率的に戦闘を進められるはずである。
画像出典:コデックス「ネクロン5版」(codex:Necrons)P13 イラストの図表を元に解説を追加

【ネクロン兵団】
宮廷家臣団の規模は、政治的地位や威光を誇示するうえで極めて重要だが、ネクロン貴族の軍事的地位すらも決定づける。宮廷家臣団が大規模であればあるほど、自分がより高い位階に属し、多くの兵を指揮下に置けることを意味するのだ。
どれほど高位のネクロン貴族であっても、宮廷家臣団の助け無くして軍を指揮しようとする場合、小規模な密集兵団程度を指揮するのが限界だろう。これに追加される可能性がある戦力としては、失われて久しい最高機関〈三頭評議会〉の護法官であった、「〈三頭評議会〉・プラエトリアン」の残党ぐらいだろう。
〈三頭評議会〉・プラエトリアンは特定の王朝に属さず、彼らがその時点で重要視している王朝のネメソールと、自らの意思で共闘姿勢を見せるのだ。あるいは、殺戮と破壊の約束を結ぶことで、デストロイヤーたちを誘い出し、自らの軍のために戦わせることも可能だろう。
クリプテックたちは利益供与の継続をほのめかせば、支援を承諾するに違いない。ただ、どれほど絶望的な状況に置かれた貴族であっても、あの堕落せし「フレイド・ワン」に支援を求めることはためらわざるを得ないはずだ。
もっとも、屍臭にまみれたこの怪物たちは、支援を求められたかどうかに関わらず、彼ら自身の目的で勝手に戦闘に加わってくるのだが・・。ネクロン貴族が権力の位階の階層を上がれば上がるほど、その貴族が影響を及ぼせる兵士の数や質も向上する。
極めて高位の貴族ともなれば、全軍に直接命令を下さずに、宮廷家臣団に意思を伝え、自分の代わりに全軍を指揮するだろう。高位の貴族は、宮廷家臣団を指揮し、宮廷家臣団は更に下位の兵士たちを指揮する。
どれほど小規模な墳墓惑星であろうと、少なくとも40人の下級貴族が存在するため、彼らを支配するネクロン・オーヴァーロードは最低でも百個のネクロン・ウォリアー兵団を動員できる計算になる。

【ネクロンの統率】
ネクロンの支配者たちの大半は、ともすれば政治闘争や秘密工作に傾倒しがちな家臣たちをまとめ上げる最良の方法が、 “共通の敵に対する団結だ” ということを熟知している。ネクロン兵団が戦場へと進軍する際、意志強固で知識と経験に富む指揮官たちは、絶対君主の持つかけがえのない軍事資産となるのだ。
下位貴族は戦場における野戦指揮官として活躍する。ロイヤルワーデンは頼もしき副官や、場合によっては外交使節さえ務めることもある。
一方、クリプテックは王朝の兵団の維持と管理を委ねられており、戦場では超常的なテクノロジーによって敵を無力化し、兵団の作戦行動を支援する。ネクロン貴族の秩序を維持つするもう一つの要因は、戦場の内外に存在する「トライアーク・プラエトリアン」だ。
別名を、〈沈黙の王の手〉とも呼ばれる彼らは、古の法と戒律を体現し、またネクロンにそれらの遵守を強制する、墳墓惑星の序列構造外の存在である。その権限は、〈三頭評議会〉によって授けられており、あらゆる名誉と法を裁く。
その権威に対しては、ファエロンですら表立って異を唱えることはできない。だが、通常は、プラエトリアンの戦場における彼らの振る舞いは非常に抑制されている。
戦闘が開始されると、「重力変異パック」で戦場の上空に移動し、そこから戦場全体を俯瞰して敵の動向を分析する。ごくまれに、彼らは敵の知性を評価し、古代の規範に則ってその敵を「名誉ある存在」とみなす場合があるが、ひとたびそのような宣言がなされると、ネクロンの貴人たちはいら立ちを募らせることになる。
デスマークやヘックスマーク・デストロイヤー、あるいはフレイド・ワンのような、不名誉な手段で対象を殲滅する戦力の投入を禁じられてしまうからだ。とはいえ、結局はプラエトリアンがそうした敵に対して示すのも「害虫より多少ましな存在」といった認識に過ぎない。
彼らもいずれ上空から降下して、粛々と「名誉ある」敵の掃討戦に加わることに変わりないのだ。

【デストロイヤー・カルト】
ネクロンの軍勢を構成するいくつかの組織には、ネクロンの貴族たちからは、侮蔑の対象となっているものもある。その中でも最も重要なのは、 「デストロイヤー・カルト」 と呼ばれる破壊者の教団だ。
ネクロンには、種族全体を蝕む狂気の系譜が数多くみられるが、デストロイヤーの虚無的な殺戮嗜好は極めて重篤であり、その発生率もますます増加している。デストロイヤーは、個人的な野心や欲望、あるいは希望といった概念を一切持たず、 代わりに有機生命体の根絶のみをひたすらに希求する、憎悪の陥穽にはまりこんでいる。
その価値観は、激情というよりも、冷徹に演算された概念であるかのようだ。反重力スレッドからのボディーと重火器を装備した「ローカスト」から、腕に刃を装備した「スコーペク」や下劣な「オフィディアン」に至るまで、彼らには多数の下位カルトが存在する。
その全員に共通するのが、有機的生命体の抹殺に最もふさわしい各自が考える形態へと、己がボディーを交換したいという、クリプテックに対するただ一つの要請だ。ネクロンの貴族は、そんなデストロイヤーを重用すべき突撃兵とみなしているが、決してそれ以上の信頼を彼らに対しては寄せてはいない。
デストロイヤー自体の殺戮衝動が他の兵に伝染するという問題のみならず、彼らが生命体を絶滅させた後、いったい誰にその武器を向けるのだろうかという、不吉な疑問に対する答えを創造したくないからだ。

【フレイド・ワン】
同様に、フレイド・ワンもネクロン社会における恐怖と忌避の対象とされ、ドラザークの〈骸の王国〉と呼ばれる、おぞましき辺境へと追いやられている。彼らは皆、ク=タンの〈皮剥ぐ者〉「ルルアンドゥ=ゴール」の死の呪いに苛まれている。
身も心も歪に変異したフレイド・ワンは、戦場で流される血の臭いに引き寄せられて、普段彼らが潜んでいるおぞましき領域から、現実空間の帳を切り開いて出現し、ネクロンの敵に襲いかかるのだ。どの王朝も無残に変貌したこの同胞たちを忌避しているが、すでに戦闘に入った戦場へと前触れなく出現するフレイド・ワンを押し留める術は、皆無に等しいのが実績だ。

【王朝の記号文字(グリフ)】
貴族階級から平民階級に至るまで、全てのネクロンは古のネクロンティール諸王朝のシンボルマークである 「〈三頭評議会〉のアンク十字」 のもとに結び付けられる。それぞれの王朝はこれに加えて独自の記号文字(グリフ)を持ち、形を変えずに受け継がれてきた。
貴族たちはデスマスクの表面、武器の装飾、意匠などに自らの王朝の記号文字を帯びており、聖所の印章としても使用された。尊大極まるごく一部の貴族たちは、〈三頭評議会〉のアンク十字の代わりに自らの王朝の記号文字を配し、自らの権勢を誇ったという。
むろん、これは〈三頭評議会〉が定めた厳格な様式と伝統に明らかに反する行動である。王朝の記号を完全な形で見に帯びることを許されたのは、最高位の貴族たちだけで、より下位の者たちは、記号文字のごとく一部分だけを帯びて、自分がその王朝に属してかつ自らの地位がさほど高くないことを示さねばならなかった。
また、〈天界の戦争〉の中で滅びてしまった王朝に属する者や、遥か昔に犯した罪の咎で地位や権力をはく奪された者たちや一握りの貴族たちは、記号文字を一斉身に帯びていない。記号文字を身に帯びていない貴族は皆、その理由を問わず、他の者たちから不信感に満ちた目を向けられる運命にある。
それに対し、ネクロンの一般兵、すなわちネクロン・ウォリアーやネクロン・イモータルたちは基本的に、際限なく浪費できる資源の一部のように見なされている。そのため一般兵には、特定王朝の誇りある血統との関係を与える価値はないと考えられているのだ。
ただ、一般兵のデスマスクや装甲の塗装面などには、しばしば、彼らが忠誠を捧げてきた王朝の要素が見られるという。対照的に、モノリスやドゥームズデイ・アークなどの戦闘用大型兵器には、しばしば王朝の記号文字が描かれている。
これらの大型兵器は特定の貴族が所有する特別な兵器であるとみなされ、それを操作する一般兵たちよりも高い地位を与えられているようだ。

ネクロンの墳墓惑星

【概要】
この銀河に生きる無数の種族によって、ネクロンの復活は、暗黒の銀河に潜む驚異の一つとしか認識されていない。人類の〈帝国〉においても、ネクロンの理解はほとんど進んでおらず、その脅威の規模を正しく把握しているのは、ほんの一握りの者たちだけだ。
ネクロン社会は厳格な階層構造を成しており、それは墳墓惑星内においても同様である。各墳墓惑星は3つの分類があり、位階が高い順から「王権惑星」、「中央惑星」、「辺境惑星」に分かれる。
それらの墳墓惑星内は”典型的な”物などは存在しない。各墳墓惑星では、その支配者の嗜好が、大規模な軍事行動の傾向から採用される建築様式、あるいは称号の名称などの些細な点に至るまで、まんべんなく反映されるからだ。
その一方で、これらの墳墓惑星全ては、共通した一つの大義のもとに結び付けられている。その大義とは、古の諸王朝を再興させること、およびネクロンをこの無知蒙昧なる銀河の”正統なる支配者”として返り咲くことに他ならない。

【王権惑星】
墳墓惑星の中で、最も重要な役割を果たすのは、「王権惑星」(クラウンワールド)であり、ネクロンたちが支配する全惑星の中で最も古く、また最も栄光に満ちた場所だ。
ネクロンティールも諸王朝及び惑星群は、王権惑星を中心として統治されている。王権惑星は、その支配領域内のあらゆる星々から税収と貢能によって支えられており、かつての銀河における権力中枢であった。
無論、王権惑星には膨大な量の財政資源が流れ込むため、その貴族たちは最も信頼性の高い〈時なき墳墓〉(ステイシス・クリプト)を建造することが可能だったのである。結果として、王権惑星の住人たちは眠りのうちに幾星霜の時を過ごし、周辺環境の悪化による影響を被ることなく、良好な状況を保ったまま時の流れを超えることが出来た。
逆に言うと、銀河系規模の大災害によって王権惑星が失われるような事態が起これば、それはネクロンにとって悲劇的損失といわざるを得ないのである。

【中央惑星】
王権惑星に次いで重要な惑星は、王朝の中心部を形成する「中央惑星」(コアワールド)群だ。中央惑星の支配者たちは必然的に王権惑星を収める摂政らの直近の血縁者であったため、物理的に遠く隔てりがちな王朝内の各惑星においても、高い忠誠心による結びつきが維持されていた。
王権惑星に匹敵するほど偉大にして強大なる惑星は中央惑星の中には存在しなかったものの、全盛期の中央惑星群が侮りがたい軍事力を備えていたのもまた事実であり、長い年月の災厄を耐え抜いた中央惑星は、第41千年紀の現在でもなお十分な軍事力を持っている。

【辺境惑星】
最後に、重要性において第三位を占め、王朝の中央惑星群に加えられるほど高い位置を有さない惑星が「辺境惑星」(フリンジワールド)群である。辺境惑星の多くは貧しく、王朝の中心部からも物理的に遠く隔たっていた。
王権惑星群に対する貢納も、もっぱら肉体労働に限ったものしか提供できず、中には流刑地として利用されていた辺境惑星も存在する。また中には、かつて王朝の中央惑星の一つに数えられていたが、他王朝に征服されて新たな支配者の領域に組み込まれたために、その地位を貶められて辺境惑星となってしまったものも存在するという。


主な王朝



画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P14,P15 イラストの図表を元に解説を追加

【概要】
あらゆるネクロンは、古代ネクロンティール王家のいずれか、すなわちネクロン王朝のいずれかに属している。かつて、王朝への忠誠は純粋に家系や伝統に基づくものであったが、今やそれは征服とプログラミングによる強制的な中世に取って代わられた。
ネクロン貴族は誰しも共通の慣習や高貴さを有してはいるが、彼らは皆自我と個性を保っているため、より上位のネクロンによって強制されでもしない限り、一致団結することは滅多にない。したがって、近隣のいくつかの惑星群が同一の王朝に忠誠を捧げていたとしても、それぞれのネクロン・ロードやネクロン・オーヴァーロードは、所属王朝の伝統に完全に従っているわけではなく、各人の持つ個人的な目的や気まぐれによって行動を起こしているのだ。
ク=タンが到来する以前には、何百ものネクロンティール王朝が存在した。強大な政治力と軍事力を振るい続ける王朝がある一方で、かつての栄光の残響のごとく衰退し滅んでいった王朝もある。
〈分離戦争〉、〈生体転移〉に対する反乱戦争、〈天界の戦争〉、そして〈大いなる眠り〉などを通じて、幾千万もの王朝が滅んでいった。現在の銀河にどれほどの王朝が生き残っているのかを言い当てるのは不可能だが、大まかな数としては数百、あるいは数千といったところだろう。

  • 「スザーレカン王朝」

「〈沈黙の王〉の王朝」


【概要】
この王朝はかつて別の名称で知られていたものの、〈生体転移〉時にその名称はメモリーから消去されている。あるいは、その消去はスザーレク自身の精神コマンドによってなされたものなのかもしれない。
スザーレカン王朝の臣民が知るのは、最後の〈沈黙の王〉が自王朝より誕生したのは、自王朝がネクロン種族最大規模を誇っていたことと、そしてスザーレクの言葉によって自王朝が種族中、卓越した存在であると告げられたことのみだ。だが、スザーレクの「コマンド・プロトコル」が失われた今、他のライバル王朝たちはその根拠に対する疑いを抱いている。
スザーレカン王朝が覚醒した時期は、他の王朝に比べ、近年になってからだ。彼らの支配した惑星は銀河系規模の厄災によって散逸しており、特にM18の〈歪み〉の嵐「アスモデール」の発生は、彼らの版図を襲った災害の中でも最大規模のものとなった。
宇宙に生じた異変であれ、アエルダリ族の執拗な探索であれ、スザーレカン王朝の惑星を見出す者はすなわち、王朝の災禍となったのだ。さらに言えば、アエルダリ族だけが古来よりの宿敵というわけではなかった。
スザーレクのコマンド・プロトコルから切り離された後、スザーレカン王朝への燃え盛るような憤怒と共に覚醒していたネクロン王朝も少なくなかったからだ。スザーレカン王朝が自らの上位に立つ根拠を詰問する者たちから、〈天界の戦争〉における恐怖の元凶としてスザーレカン王朝を非難する者たち、また、かくも長きに不在によって種族に衰退をもたらしたことを責める者たちに至るまで、複数のライバル王朝が、激情と怨嗟とに基づく敵対的な姿勢を見せていた。
それに加え、いくつもの劣等種族が墳墓惑星に対する興味を抱き始めていた。かつて誇っていた戦略的、軍事的能力を遺憾なく発揮できるか否かが、今やスザーレカン王朝存続の試金石となっている。
【スザーレカン王朝への服従】
生き残ったものの、彼らは四面楚歌の状態であったが、彼らは、自らの優越性を頑なに信じ続けていた。かの王朝の貴族たちは、〈沈黙の王〉が帰還し、彼らの忠誠心に報いてくれるという予言を熱烈に信じていたのだ。
ライバル王朝の多くは、これが真実となる可能性を恐れた。彼らの疑問は次のようなものだった。
もしもスザーレカン王朝が支援するに値せぬ輩だったならば、なぜトライアーク・プラエトリアンは、かの王朝が自らの大義に沿うかのように進んでかの王朝と同盟し、なぜ彼らのクリプテックは、他の王朝よりも優れた武器を製造し、ボディーの装甲を強化し、強大な戦闘兵器を操ることが出来たのか?
それは単に、スザーレカン王朝が、最高水準のクリプテックを登用しているから、あるいはスザーレカン王朝の墳墓奥深くに横たわる再生修復施設が、最高の水準で効率的に機能したから、というだけせ説明のつくものではなかった。これは、ネクロンの機械精神の深部に埋め込まれた、理性を超越した何かであり、スザーレカン王朝に組み込まれた、従属王朝の間にも同様の特性が現れ始めたのである。
それは、臣民たちが長きにわたる時代を耐え忍べるようにと、〈沈黙の王〉が授けた、最後の祝福だったのかもしれない。少なくとも、スザーレカン王朝のファエロンはそう主張している。
【〈沈黙の王〉の帰還】
今、〈沈黙の王〉スザーレクが帰還したことによって、彼が統べていた王朝は自らの正統性を堂々と主張し始めた。更に、古の秘宝と恐るべき威力を秘めた超兵器の数々を起動した従属王朝は、〈沈黙の王〉の対エンピリアン・マトリックスの発動領域から敵を引き剥がすために度重なる攻撃に及んでいる。無数の弱小王朝はすでにスザーレクの名の下に同盟を結び、あるいは進んで吸収されゆくありさまだ。
結局のところ、〈沈黙の王〉の意思に反してまで我を張ることに、何一つ意義はなかった。混迷と不協和の横行するこの時代に、覚醒を果たしたネクロンの貴族たちは、種族統一の機会を見た。
そして、圧倒的な支配者の重圧を感じ、それに屈することで己が未来を担保してゆく決断に踏み切ったのだ。そして、従属を拒んだ結果、想像できるのは新たな恐怖のみだったということもまた、ネクロン貴族たちの大部分に共通していた事実だった。

画像出典(アイコン):Warhammer Community 2020/6/25の記事「Who Are the Szarekhan Dynasty?」より(2021/03/02閲覧)

  • 「ソーテク王朝」

「鎮まらざる嵐」


【概要】
ソーテク王朝は何より2つの要素によって知られている。すなわち敵の軍勢を分解する際の無慈悲なる効率性と、王朝を支配する「ビザンティン階級」である。ソーテク王朝は急速な勢いでいくつもの下位王朝を吸収、合併、征服しており、こうして支配下に置かれた王朝は、新たな歯車としてソーテク王朝の軍事力に貢献することとなる。
〈嵐の王〉イモーテクの鋼鉄の意思の下で団結せしソーテク王朝は、他の王朝とは比べ物にならないほどの軍事力と目的意識を有しているのだ。王権惑星「マンドラゴラ」より進軍せしイモーテクの軍団は星々を超えて広がり、さらなる惑星をこのファエロンの統治下に引き入れている。
ソーテク王朝の前には他のネクロン王朝すらも屈し、この復活せし大国の属国に加わっている。「セケムタール」従属王国のオーヴァーロード・ナスザールや、「ホース」従属王国の「セレスティウム・エムリート」、そして「アリンマロック」従属王国のオーヴァー・ロード・スザーローンは皆イモーテクの掲げる理想に従い、イモーテクが作り上げる新たな版図の中で自分の地位を確立せんと互いに競い合っている。
【ソーテク王朝の野望】
銀と冷たいエメラルドの輝きに彩られしソーテク王朝の軍団は、東部辺境宙域(イースタンフリンジ)の星々に次々と進行している。焼き払った他文明とともにイモーテクの軍勢は休むことなく進軍し、征服とネクロン種族の再統一という〈嵐の王〉の理想を推し進めている。
イモーテクの望みは、ネクロンの民を新たに作り替え、”全てのネクロンを自らの支配下に置くことにある。”当初、このファエロンの望みは必要性から生まれた。イモーテクが目覚めた時、彼の墳墓惑星は内戦によって分裂していたのだ。
イモーテクは陣営を選ぶのではなく、競争相手をことごとく下し、自ら墳墓惑星の権力を纂奪した。そして現在、ソーテク王朝の影響力とイモーテクの権力が増すにつれ、かつてネメソールに過ぎなかった〈嵐の王〉は自らを”ネクロン復権の立役者”としてみなすようになってきている。
【他種族との関係】
復活せしネクロン諸王朝の中でも最も強大である故、他種族が最も頻繁に遭遇するのもまたソーテク王朝である。特に〈人類の帝国〉にとって、ソーテク王朝はネクロンの種族そのものと同義として扱っており、この王朝がネクロン全体を統括し、他の王朝は単なるその分派に過ぎないのだという誤解が蔓延している。
東部辺境宙域に本拠地を持つ「タウ・エンパイア」はソーテク王朝を新興勢力の一つとみなしており、全面戦争を行うよりも同盟締結の可能性を模索している。イモーテクの野望が実現してしまえば、太古の驚異が再び銀河に蘇るということを認識している「アエルダリ」族にとって〈嵐の王〉はネクロンという厄災そのものの象徴であると言えよう。
ソーテク王朝が多くの敵に囲まれており、そのいずれもが強力であるということをイモーテクは十分理解している。軍事力の身では勝利の革新が得られない敵と遭遇した際、この類まれなる戦略家は別の武器を用いて銀河を支配下に置こうとする。
彼が星々を進む時、それに先んじて恐怖の影が行く手を覆うだろう。イモーテクが征服せんと望んだ惑星は荒れ狂う嵐に包まれ、超自然的な雷雲に襲われる。
〈嵐の王〉を討伐せんと歩みを進めた軍勢は影の中に忽然と姿を消し、恐怖の伝説はますます大きなものへと育っていくのである。イモーテクはその恐るべき名声のみだけでも星系を降伏させることが可能である。
彼らはイモーテクの軍勢によって殲滅されるよりは、ネクロンの奴隷として生きることを選んだのだ。こうしてソーテク王朝の拡大は衰えることなく続き、イモーテクは銀河の完全なる支配へのさらなる一歩を進むのである。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P14 イラストより

  • 「メフリット王朝」

「恒星を刈る者」


【概要】
メフリット王朝は、恒星すらも破壊するほどの強大なる過去の栄華と、炎にって敵を撃滅する特異な専門分野を有している。彼らの栄光の多くは過去に滅び去ってしまったが、メフリット王朝は今もなお強力無比なるエネルギーを充填し、これを解き放つ科学技術を兼ね備えている。
無慈悲なる惑星殺しとして知られているメフリット王朝は、〈天界の戦争〉において日輪の処刑者の役割を担っていた。「クリプテック」の繊細なる操作によって構成のエネルギーを奪い取り、メフリット王朝のファエロンは超高速で射出される「スーパーノヴァ」によって星系全体を滅ぼした。
〈沈黙の王〉によってメフリット王朝の軍勢が召集されるのは、多くの場合、種族や惑星が特に反抗的な態度を示した場合であり、その都度メフリット王朝はその殲滅能力をいかんなく発揮し続けてきた。他王朝のファエロンの多くは、メフリット王朝のこうした戦法を、古の戒律からの逸脱だとみなしていたが、しかしメフリット王朝が勝利を積み重ねていったことは紛れもない事実であり、この王朝は瞬く間にその権力と存在感を増していった。
不幸なことに〈大いなる眠り〉の緩やかな時の中で、メフリット王朝の栄華はその多くが失われてしまった。かつて彼らの名声を支えていた惑星破壊兵器はその多くが破損し、あるいは虚空に失われ、さらに中核惑星の多くも今や存在しない。
なかでも最も大きな損害は、アエルダリの暗殺者によってファエロンたる”永遠なる者”キーレクを失ったことだろう。ファエロンの死によって生じた権力の空白期間は、メフリット王朝のオーヴァーロードの多くを権力闘争へと駆り立てた。
しかし中には王朝の外部に対する征服へと目を向けるものも居ないわけではない。中でも”壮絶なる”ザラシューサは故郷たる星系の荒廃を見て取り、かつての威光を取り戻さんと決意した。
彼は自らの軍勢を率い、かつての版図の再征服へと乗り出したのだ。まもなくこの銀河はメフリット王朝の恐怖が再来したことを知ることになるだろう・・。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P16 イラストより

  • 「ネフレク王朝」

「暁をもたらす者」


【概要】
ネフレク王朝は光そのものに対する変身を追い求める王朝である。彼らの金属製の身体は純粋なエネルギー光線へと変換され、星々と一体化することが可能なのだ。
ネフレク王朝の王権惑星は、銀河系中心に集中しており、恒星からの光を豊富に受けられる星系を多く擁していることから、空を満たす壮麗なる太陽光が無尽のエネルギー源として機能している。光冠の黄金杯とも言うべきこれらの太陽光エネルギーを存分に利用することで、ネフレク王朝は自らの軍勢を強力な転移ビームによって光速に近い速度で他の星系へと送り届けることができるのだ。
ファエロン・シルフェクも他のネクロンと同様、王権惑星にて眠りから目覚めた際に、人格機構の損傷によって狂気に取り憑かれていた。彼は間もなくして恒星への異様な執着に取りつかれるようになり、困惑する宮廷家臣団に対して、恒星の灼熱に身を沈め、これと一体化すると宣言するに至る。
主君の狂気をなだめるため、ネフレク王朝のクリプテックたちはシルフェクのために、生体金属の一種である「メタゴールド」で作られたボディーを開発した。機体に搭載された先進的な超科学的プロセスによってシルフェクは純粋な光へと姿を変えることができるようになり、以降シルフェクは自らを展開の神が受肉せし存在であると考えるようになった。
この”黄金の躰”はシルフェクの最も信頼厚き家臣にも送られ、この王朝の高位のオーヴァーロードは一時期に生ける光へと変身することが出来るようになった。更には最も下位のウォリアーでさえも、機体内に埋め込まれたメタゴールドの痕跡を活性化することにより、恐るべき速度で戦場を移動できるという。
ネフレク王朝はこの光体化を永続させるための秘密を追い求めているが、今のところは突き止めるには至っていない。この謎を解明するためであれば、彼らはいかなる犠牲も喜んで捧げるだろう。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P17 イラストより

  • 「ニヒラーク王朝」

「永劫の守護者」


【概要】
威厳と荘厳さに満ちたニヒラーク王朝の軍勢は、自らの版図を断固として守り抜く備えだ。41千年紀末期になってようやくこの王朝は自らの版図拡大を模索し始め、ゆっくりと、しかしながら着実に、征服戦争を計画している。
ニヒラーク王朝の版図を侵攻せし者に災いあれ。古の時代、この王朝は巨大な財宝惑星をいくつも建立し、それらの惑星には千を超える文明から略奪した財宝の数々が納められていたという。
だがニヒラーク王朝が〈大いなる眠り〉から目覚めしとき、その強大であった版図は廃墟と化していた。この惨状を見て取り、ニヒラーク王朝は残されていた全ての戦力と宝物を王権惑星「ゲーデン」に集めた。
現在、彼らは用心深くかつての栄光の残滓を護り、あらゆる侵入の試みを跳ね除けている。ニヒラーク王朝のクリプテックたちは近年、自身の王朝の国境付近に奇妙な巨大構造物を建造し始めたが、その目的は未だ謎に包まれている。
ニヒラーク王朝が収集せし宝物の数々の素晴らしさは、他のあらゆる王朝の宝物殿を全て足し合わせてもなおそれを凌駕するとさえ言われており、彼らが戦場で用いる装備の素晴らしさもそれを証明している。傲慢さや誇りと共に、ニヒラーク王朝のオーヴァーロードたちは自らの豊かさと軍事力を誇示することに余念がない。
彼らはクリプテックに命じて兵のボディーに貴重なターコイズや宝石の数々を埋め込ませ、さらにしばしば貴重な宝石を帯び、古の勝利と栄光を思い起させる戦闘兵器に搭乗して戦いに赴く。
ニヒラーク王朝にあまた存在する財宝の中でも「イィスの予見者」の貴重さは群を抜いている。これはある異種族の最後の生き残りであった予見者の首を保存したものである。
神経回路共振器を用いてこの予見者の精神を覗き込むことで、オーヴァーロードは自らの民の未来を垣間見ることができるのだ。ほとんどの場合これは避けがたい戦いを映し出し、ニヒラーク王朝は軍団を招集してこれに備えるのである。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P18 イラストより

  • 「ノヴォク王朝」

「深紅の狩人」


【概要】
ノヴォク王朝は他よりも遅い時期に覚醒を果たした王朝であるが、しかし血塗られた戦争を経ることに、その覚醒は加速を続けている。ノヴォクの戦士たちは流血の儀式によって活性化するため、彼らによって血の深紅は成功の証である。
緒戦において、ノヴォク王朝の密集兵団はよろめいた遅い足取りで戦場を進むだろう。しかし近距離での戦闘が始まると、ノヴォクの戦士たちはかつて行った流血の儀式の記憶を取り戻すのだ。
敵から流れた血飛沫を装甲や顔に浴びることで、彼らはあたかも生者であるように超自然的な活力と決意を持って戦うようになるだろう。”月殺し”として知られるオーヴァーロード・ガルメクのもとでノヴォク王朝は急成長を果たした。衛星を破壊し、それによって惑星の重力を変動させるという戦術により〈大いなる眠り〉以前からガルメクは名声を博していた。
ガルメクの軍勢の中核をなすのは、ノヴォク王朝が何千年もの昔に束縛したク=タン・シャード”深紅の神”である。このシャードは常に”深紅の王”として知られる恐るべきオーヴァーロードによって指揮される。
望まぬ隷属を強いられているこのク=タンは戦場へと不気味に進むと、信じられぬほどの力によって圧倒的な破壊をもたらすが、決して”深紅の王”の命令にそのまま従うことはないという。ノヴォク王朝については、近年では荒れ狂うグリーンスキンとの戦争が知られている。
オルクの果てしない惑星侵攻は、ノヴォク王朝の王権惑星「ドールVI」にとって深刻な脅威となっていたのだ。”深紅の神”によって何体もの「いくさ頭」が存在そのものを抹消されたことで、戦場に残されたオルクたちは誰に従って戦っていたのかすら思い出せぬまま大混乱に陥ったという。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P19 イラストより

  • 「ソクト王朝」


【概要】
流れるように変化を続ける「ヴォイドリフト」”ハイラキイの深淵”の中に、ソクト王朝の中核惑星は隠されている。これらの惑星は巨大なる王権惑星「メホシュタ」の周囲をゆったりと周回しており、さらにこれらの中核惑星の周囲をより小型の重武装小惑星兵器が公転している。
スパークを放つ青色のエネルギーに包まれた、大陸ほどの大きさを誇る結晶質のソクト王朝巨大墳墓は、周囲のヴォイドリフトから放射線エネルギーを吸収しているのだ。頭上の空は波打つ暗闇に覆われ、時おり青色の彗星が輝いている。
敵に死をもたらすために「停滞墓所」からソクト王朝の軍勢が現れる時、その鈍い金属の頭蓋は頭上の星を反射してサファイア色に輝くという。この強力な放射線を利用して、ソクト王朝のクリプテックたちは兵士たちの武器に放射線投射装置を内蔵している。
この装置によって、ソクト王朝の兵士たちは目や「ガウスフレイヤー」、果てはそのボディーに生じた亀裂から青い光を放ち、生身の身体を持つ敵を衰弱させるのである。ソクト王朝の軍勢が戦役へと赴く時、ハイラキイのヴォイドリフトに蓄えられし血も凍るようなエネルギーそのものが真に恐るべき武器と化すのである。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P20 イラストより

  • 「カルノヴォク王朝」


【概要】
ティラニッド集合艦隊の襲来によって蹂躙されたカルノヴォク王朝の軍勢は、東部辺境宙域の端で頑強に踏みとどまっている。彼らの墓所の多くはこの異種族に蹂躙され、墳墓惑星の多くも、足元に厄災が眠っているは夢にも思わぬ〈帝国〉の愚かなる入植者たちによって荒らされてしまったのだ。
現在この王朝は残った戦力を結集しつつある。こうした不幸を生き延びることが出来たのは真の強者のみであり、ロードやオーヴァーロードが些細な違いを脇において協力体制を築いたことで、一見ちぐはぐなカルノヴォク王朝の陣容は、実際には精強極まりないものだ。
破壊されし中核惑星群に敬意を評し、カルノヴォク王朝のネクロンは”終わりなき夜”の色を身にまとう。翡翠色のエネルギーを武器に充填するとともに、暗い青色を頭部と肩、そして武器に用いられるのだ。
王朝内部の位階が高ければ高いほど、こうした色の占める度合いは大きくなり、ファエロンたるソーエクのボディーはほとんどすべてが宵闇の青に覆われている。王たる彼のボディーは陰に包まれており、ごく僅かな指の動きに応じてテレポートを行うことが可能であるという。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P20 イラストより

  • 「ネクジスト王朝」


【概要】
ネクジスト王朝は、傷つきし壮麗さと、不屈の誇りによって知られている。古の時代にファエロンであった偉大なる征服者たる”束縛者”「オブリス」は、〈三頭評議会〉の法を厳守しなかったため彼らの怒りを買った。
それゆえ巨大なオルクの〈いくさだァァァア!〉(グァァァグ!)がネクジスト王朝の王権惑星「モービウス」を襲った時、〈三頭評議会〉は他の王朝が救援に向かうことを禁じたのである。オルクによる侵攻を撃退することには成功したものの、激しい戦いによってモービウスは荒廃し、ネクジスト王朝はかつて有していた壮麗さの大部分も失われてしまった。
それ以来というもの、ネクジスト王朝は誇りや真理といった、他の同族が重んじる概念を忌避するようになり、伝統的な王朝色であった黄金と紫を、黒く汚れた銅色に置き換えることで、その冷笑主義を体現している。彼らは傷ついた遺産を守るためならば卑怯な手から残酷な手に至るまで文字通りいかなる手段にも訴えることで知られており、彼らはネクロン文明の一員ではあるものの、他の王朝からは無価値な野蛮人も同然とみなす。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P21 イラストより

  • 「オグドベク王朝」


【概要】
遥か昔、オグドベク王朝はその支配層の補佐役であったクリプテックたちと協定を結んだ。何千年にもわたり、オグドベク王朝とクリプテックたちは技術的な共生関係を維持し、彼らはオグドベクの中核惑星群に存在する莫大な天然資源を提供する見返りとして、版図をより拡大するために必要な戦闘兵器やカノプテック兵器群を受け取っていたのである。
当初は小規模な勢力とみなされていたがクリプテックたちであったが、時と共にその影響力は無視できないほど大きなものとなっていった。オグドベク王朝のファエロンたる”黒き星”「アナスローシ」はその偏執的な気質によって知られているが、あるいは宮廷家臣団の大半を占めるクリプテックたちの優れた行いによってそう見えるだけなのかもしれない。
常に彼の周囲にはカノプテック兵器の大群が控えており、彼の軍勢が故障した際にもすぐさまこれらを再建できるようになっている。更にアナスローシスの墳墓施設は三層からなるバックアップシステムを備えており、その能力は〈大いなる眠り〉の過程においていかんなく発揮された。
オグドベク王朝が目覚めし時、車両や戦闘兵器、更には末端のウォリアーに至るまで、墳墓内のすべての機能が滞りなくただちに活発化したのである。それ以来彼らは目覚ましい拡張を続けている。

画像出典(アイコン):コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P21 イラストより


戦闘教条


軍団は、我らが持つ機械の中で最も精巧なるもの。軍団を成すそれぞれの構成要素(コンポーネント)には、どれだけ小さなものであろうと、必ず機能(ファンクション)が備わっている。想定された理想的なパラメータの範囲内で行動する限り、お前に敵など存在しない。だがこのパラメーターを逸脱して行動を取る時・・お前の軍団は敗北を喫するであろう。
〈嵐の王〉イモーテク

【概要】

ネクロンの諸惑星にも序列があるように、墳墓惑星が有する軍勢にもそれぞれ上下関係が存在する。同様にネクロンの宮廷家臣団も、各墳墓惑星の摂政を中心として網の目のような政治的関係が張り巡らされている。
クリプテックはネクロンの謎めいた機械兵器を製造及び管理を行う。一方、〈三頭評議会〉のプラエトリアンらは”沈黙の王”の執行者としてオーヴァーロードらを監視している。これらの下で、あたかもファエロンの双腕のようにして、ネクロン兵団と戦闘兵器群が存在するのである。
墳墓惑星の支配者は、自らの意を成し遂げる上で配下のウォリアーやイモータル、そしてトゥームブレイドといった戦力を用いることになるが、一方でリッチーガードやデスマークといったより専門性の高い戦力はより慎重に運用され、注意が必要な敵のみに用いられる。それに対して、モノリスやドゥームズデイ・アークといった強大なる破壊兵器は通常、消耗戦や敵の強固な抵抗があるまで予備戦力に留め置かれる。
こうした兵器はを投入するようなことがあれば、物質を原資分解するほどの火力によって敵軍は瞬く間に一掃されるだろう。
画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P11 イラストの図表を元に解説を追加

【ネクロン軍の構成】
ネクロン軍を構成する軍の最大単位は超次元軍集団(テッセラリオン)と呼ばれる。超次元軍集団は数個の軍団(デキュリオン)で構成され、更に軍団は数個の兵団(レギオン)で構成されている。
形式上、兵団は10個密集兵団(ファランクス)で構成され、各密集兵団は10体のネクロンで構成される。各兵団は2個の歩兵隊に分けられ、それぞれがネメソールの宮廷家臣団から派遣されたヴァルガードによって指揮される。
兵団はウォリアーやイモータル、およびリッチーガードやデスマークといったより希少な戦力で構成されるが、場合によってはオーヴァーロードが思うがままにこれらを組み合わせて兵団を編成することができる。

【密集兵団(ファランクス)】
ネクロンの軍勢を構成するのは、圧倒的な数のネクロンウォリアーによる、尽きることのなき密集兵団(ファランクス)だ。自我もなく、無機的なほど従順なウォリアーたちは、無慈悲なる主によって浪費される。
ネクロン貴族たちは、ウォリアーのボディーに施された装飾が、ウォリアー自身の敵から身を守ることよりも、彼らの指揮官の威光を戦場で十分に示しているか否かという点を気にしている。ウォリアーの密集兵団には絶え間ない指示が不可欠だ。
もし指示が不足した場合、彼らはその場に留まって、一番近くにいる敵にひたすら射撃を繰り返す以上のこと行えなくなってしまう。だが、適切な指示を与えられたウォリアーの密集兵団は、敵を足止めしたり、塵になるまで集中砲火を浴びせたり、強烈な反撃を抑止したりするのに十分な、高い火力と耐久性を備えている。
大半のネクロンの軍勢は、ウォリアーの密集兵団を、より練度の高い自我を持った兵たちの精鋭部隊で支援する。強靭で、戦術的柔軟性に富むイモータルの戦闘集団や、デスマーク部隊による強襲など、戦略的に専門家された多様な軍事資産が費やされるのだ。

【支援戦力】
ファエロンの密集兵団や強力な兵器群の下には、支援戦力が存在する。これらは王朝の正式な戦力というよりは、むしろ同盟軍に近いものだ。
これらの中でも特筆すべきは、デストロイヤー・カルトとフレイド・ワン・パックである。多くの場合信用に値せず、更に危険なほどの狂気に蝕まれているデストロイヤーは、戦場での破壊的な働きによってのみ存在を許されている。
同様にフレイド・ワンも、召集されたかどうかにも関係なく戦場に姿を現す呪わしき存在だ。最後に、こうしたネクロン文明にふさわしくない不適格者よりもさらに下位に存在するのが、束縛されしク=タン・シャードである。
惑星すらをも破壊するほどの力を有しているにもかかわらず、こうした星神らが奴隷よりもさらに下の地位に留め置かれていることは、ファエロンに大いなる満足感を与えている。


主要キャラクター

  • 「〈沈黙の王〉スザーレク」

ネクロン諸王朝の至高なる支配者


【概要】
最後の〈沈黙の王〉、〈星々の神の粉砕者〉、〈旧き者〉の覇者、〈団結をもたらせる者〉、〈三頭評議会の最後の盟主〉、〈永久なる栄光の笏の担い手〉・・・。これらはネクロン全種族の支配者、スザーレクに捧げられた膨大なる称号の、ほんの一部に過ぎない。
彼の尽きざる称号は、栄光に満ちている。だが、その栄光が、彼の内なる闇によって穢されていることを知る者は、皆無に等しい。
最後の〈沈黙の王〉スザーレクに匹敵する強大なヴィジョンと力、そして深い叡智の持ち主は、銀河系にはほとんど見出せまい。〈生体転移〉の悪夢の如き移行期間に、新たな種族として生まれ変わったネクロンたちの中で、最新にして最強のボディーを得て甦ったのは、誰でもなくスザーレクだった。
彼の神経システムと感覚構造は、完全に一致して機能している上、血や肉からなる構造体がエミュレートする以上に高度な正確性を備えている。彼が機械のボディーを得て己が力とした超精密性は、通常の知的生物が到達可能なレベルを遥かに凌いでいる。
その動作は優雅にして円滑であり、威風堂々たる存在感と、比類なきカリスマ性を備えている。スザーレクはもはや、いかなる精神的、肉体的な疾患に苦しむことはない。
彼自身の意識は、彼が支配する臣民たちに比べ、はるかに正確にオリジナルの個性を保持しており、彼が長らく支配者の地位にあったことは幸いだったと言えよう。また、彼らは〈大いなる眠り〉を脅かした災害や、その後に多くのネクロンを脅威に追いやった、再生プログラムの変調も免れている。
【王の決意】
とはいえ、己が決断によって、臣民たちが永遠の煉獄へと投げ落とされてしまったことに気付いて以来、このすべてにスザーレクは苦しんでいる。何千年にもわたる膨大な時を重ねてなお、この呵責は〈沈黙の王〉にとって身を斬り刻むような罪悪感に変わり、彼の胸に残り続けているのだ。
その悲嘆と恐怖は、〈生体転移〉を経験したあの日以来、彼の機械精神の中に一瞬一瞬が完璧な形で保存されている。どれほど強靭な耐性を誇る生物であれ、これほどまでの精神的負担によって、狂気や自己破壊衝動の犠牲となる可能性は、決して低くなかった。
だが、〈沈黙の王〉スザーレクは、真の意味で生物を超越していた。彼の抱える痛苦は、彼を破壊してはいなかった。
そうする代わりにこの呵責は、彼をして、ある単一の目的を抱いた、恐るべき存在へと磨き上げたのである。〈沈黙の王〉は、臣民と銀河系のために、ある計画を立てていた。
その計画を遂行するにあたり、彼は絶対の正義であり、揺らぐことのない裁定を下す、機械の神に他ならなかった。スザーレクの意思は、恒星に超新星爆発をもたらし、幾多の惑星に隕石を投じて滅びをもたらす。
彼の意思は時間そのものごとく、満ち引きを重ねる潮流のごとく、不可避なるものとなった。〈沈黙の王〉は、同胞に対する己が裁定への、究極の贖罪以外に何一つ求めてはいない。
そしてこの贖罪を阻む者は何者であれ、彼の怒りから逃れられないだろう。
【〈沈黙の王〉の計画】
スザーレクは、常に悲壮な贖罪の念に沈んでいたわけではなかった。〈天界の戦争〉が終局を迎え、最後のク=タンが破壊された時、彼は、ネクロン種族がもはや、これ以上戦い続けることが出来る力が残っていないことを理解していた。
〈旧き者〉の従僕たち、同盟者たちは、未だに臨戦態勢を維持し、苛烈なる報復をもたらそうとしていたため、スザーレクは、種族全体に〈大いなる眠り〉につくことを命じたのだ。武力衝突と時間の経過によって、遠未来における敵の力は、今よりもはるかに弱まっているだろう。
時至れば、ネクロンは永き眠りより目覚め、不死なる兵士と超兵器群により目覚め、不死なる兵士と超兵器群によって銀河系を再び掌握し、内部抗争を一掃する。そしてスザーレク自身の贖罪となる〈生体転移〉の逆転を行うのだ。
だが、〈沈黙の王〉は、〈眠り〉の過程に自らを加えなかった。彼は都市と見まごうばかりの超巨大戦艦〈忘却の凱歌〉に乗り込み、流浪の旅に出たのである。スザーレクは自らの王朝の多くを伴って、銀河系間の虚空に旅立った。
停滞空間墳墓に埋葬された状態の乗組員と防衛部隊は、定期的に覚醒し、巨大戦艦に駐屯して、航行の安全に備えた。星々の間隙で〈沈黙の王〉が何を求めていたがのかは不明だ。
〈嵐の王〉「イモーテク」や「ザラトゥサ」のように、スザーレクが自分の犯した罪から逃れようとして出奔したのだ声高に避難する者たちもいたし、スザーレカン王朝のファエロン、アスモテップやニヒラーク王朝の宮廷家臣団のごとく、〈沈黙の王〉には窺い知れぬ深謀遠慮があるのだと信じる者たちもいる。
中には単なる推測に過ぎぬものもあるが、スザーレクは銀河腕の果てまで赴き、虚空の闇の中で〈生体転移〉の回復方法を探ってさえいたのは事実だ。彼はあるいは、完全に別の銀河系に移動し、そこで、臣民たちの非運を解決する術を見出そうとしていたのかもしれない。
【スザーレクの謎】
真実を知る者は、スザーレクただ独りだ。このほかにも〈沈黙の王〉の周囲には、ことのほか謎が多い。ネクロンたちは、己が果たして真実を知っているのか否か、確たる自信をもって答えることが出来ない。
スザーレクはもともと、どの王朝から生まれたのか?〈生体転移〉以前の彼が敷いた体制は?彼が銀河系に戻ってきたのは、正確にはいつなのか?かつてスザーレクの宮廷占星官だった「予言者オリカン」のような存在でさえ、機械意識内の記憶と自身の感覚との奇妙なギャップを覚えている。
さらに不穏な点を指摘するならば、ネクロンは、この種の疑問の答えを求めて意識を集中できないという事実が存在する。スザーレクの半生は歴史の闇に隠されている。
隠された空白は長大な期間に渡るが、少なくとも彼は、この銀河に再び戻ってこようと考えていた。〈沈黙の王〉は、ティラニッドの驚異から王朝を救うために、放浪を中止したのであった。
一説によれば、銀河系の間隙に広がる暗黒の中を、彼が後にしてきた銀河系を目指して航行する、休眠中の巣窟艦隊(ハイブフリート)と遭遇したのだという。ネクロンが〈生体転移〉を逆行し、「アポセオシス」を実現する前に、ティラニッドが銀河系のあらゆる生物を喰らい尽くしてしまったならば、全てが無に帰すのではないか?
更に悪い状況としては、仮にスザーレクの民が、究極の〈生体転移〉アポセオシスを行うタイミングで、ティラニッドが餌食を求めて襲来したならば、いかなる破局が生じるのか?恐らく、純粋な利他主義と、今度こそ民の救済を果たさんとする決意の下に、スザーレクは〈忘却の凱歌〉を回頭させ、遥か彼方にきらめく、彼がかつてよく知っていた星々へと急いだ。
この伝承は不完全なものだ。スザーレクが見たものが本当は何だったのか、どのくらいの規模だったのか、至る所に脅威が偏在することを確信したのはなぜなのか?彼はどのようにして無限の広さを持つ宇宙で、銀河系に侵入を試みるティラニッドを偶然発見するに至ったか?
いくつもの疑問が先立ち、スザーレクの動機を疑う声が、宮廷家臣団の中でも対抗意識を公然と示す者たちから上がった。その疑問を長い間抱き続けたものは皆無に等しかったが、〈三頭評議会〉の近衛たちはそこに目を光らせ続けた。
【〈沈黙の王〉の帰還】
このような不安や懸念はしかし、赫々たるスザーレクの前ではたやすく燃え尽きてしまう。〈沈黙の王〉の前に立った者は、どれほど彼の意思に疑念を抱くものであっても、ただちに彼の意思の熱烈なる代行者へと変貌すると言われている。
民の前に公然と姿を現したスザーレクは、迅速な奉仕によって高い忠誠心を証明した。小王朝の二人のファエロンを選んだ。〈輝ける〉ハプタットラと〈影なる手〉メソフェットを昇格させて、新たな〈三頭評議会〉を形成し、彼らの兵団をスザーレカン王朝の軍勢に組み込んだのだ。
古の戒律に則り、彼らは「星のファエロン」、「剣のファエロン」と呼ばれ、スザーレクの強大なる〈支配者の玉座〉へと加わって、〈評議会〉の意思を伝えることとなった。二人のファエロンが、まるで玉座と一体化したかのような印象へと変わり、また昇格以来、ぴたりと同期した口調で二人が新たな命令を伝えていることに注目した者たちも、少なからずいた。
だが小規模な王朝のファエロンが〈三頭評議会〉への昇格を果たしたとなれば、変化はもっともなことだ。そして、もし彼らが何ら疑いを持たずにスザーレクの計画を支持しているというなら、これは既に、何千年という準備期間が費やされた包括的な計画だったはずであり、今更そうした疑念を素直に抱く者たちなど、いるはずもなかった。
【スザーレクの玉座】
どれほど低く見積もろうと〈最後の三頭評議会〉の強大な軍事力を疑う余地はない。スザーレクの玉座は、ク=タンの一種「ナイアドラ=ザッタ」の破片を閉じ込めた檻で強化され、彼のマントは「ク=タン・シャード」の鋭利な骸体で形成されている。
〈永久なる栄光の笏〉を通じて〈燃え盛るもの〉自身の焔は増幅され、絶対的な破壊力を持つビームを放つ。同じエネルギーは〈玉座〉に搭載された「搬送波発生装置」を活性化し、周囲の兵士たちを一致協力させ、進軍を促し、さらにスザーレクの玉座の上部に内蔵された「ノクティリス・ビーコン」へと送られる。
このビーコンは、〈歪み〉の不浄なるエネルギーを退けるだけでなく、〈網辻〉(ウェブウェイ)を縦横に走る現実宇宙を織りなす綛糸を引き裂き、〈沈黙の王〉に、一時的な「ドルメン・ゲート」を提供して、銀河系の遠く離れた領域へも素速く移動可能な力を与えている。スザーレクのエネルギー兵器によって吹き飛ばされなかった敵は、さらなる危険にさらされる。
ハプタットラが星の杖から中性子球の突風を放つと、メソフェットは塵の大鎌を振るい、その刃が閃くたびに犠牲者を焦げた粒子の渦巻く雲へと変える。スザーレクを直接攻撃可能な距離まで接近した敵は、〈玉座〉に搭載された強力なジェネレイターから放たれる強烈なエネルギーを叩きつけられ、なす術もなく膝を屈する。
自律的に標的へと命中するような打撃でさえ、損害を及ぼすことはほとんどない。〈沈黙の王〉とその従者たちは、敵の攻撃力を分散し、それらを無効化する「時空位相フィールド」に包まれているのだ。
一対のトライアーク・メンヒルがスザーレクの玉座を周回する間中、スザーレクの玉座は、トライアークの強大な力を導き出すこともできる。各装置の共鳴に焦点を当てることにより、スザーレクは破壊的な消滅ビームを放つことが出来るのだ。
これは非常に強力なエネルギー兵器であり、怒りに燃える神の放つ槍に例えられている。神の憤怒を受けた者は、声一つ残さず消え去るのだ。

画像出典:ゲームズワークショップ公式通販サイト「Szarekh, The Silent King」 商品画像より(2020/03/02閲覧)

  • 「〈嵐の王〉イモーテク」

お前たちが、この銀河を一万年にもわたって支配したというのか。取るに足らぬ、虫けらごときの存在であるということわれの眼前で証明したお前たちが。・・この過ちは、正視に耐えぬ・・まったくもって失望させてくれるものだな・・。
〈嵐の王〉イモーテクから、当代大将帥(ハイマーシャル)ヘルブレヒトへ シュレディンガーVIIの攻防にて


【概要】
ソーテク王朝のファエロンで、野心に溢れる戦術家として知られている。〈沈黙の王〉スザーレクが長きにわたる旅から〈三頭評議会〉に帰還したが、イモーテクは彼に対して憤慨しており、〈沈黙の王〉の代わりにネクロンたちを統べ、銀河をその手に治めようとせんと野心を燃やしている。
〈大いなる眠り〉から目覚めた〈嵐の王〉こと「ネメソール・イモーテク」は、醜い混乱の状態に陥った自らの墳墓惑星を目の当たりにした。惑星「マンドラゴラ」は長期間に渡り無傷のまま現存したが、その代わりネクロンたちの際限のない野望によって呑み込まれていたのだ。
かの休眠帰還〈大いなる眠り〉の間にいくらかのネクロンは滅亡したが、この王権惑星のファエロンもまたその一人で、残された貴族階級の者たちは異種族の侵攻を難なく退け、後にファエロンの座をかけて争い続けたのである。それから十年間もの内戦が続き、各陣営は明確な勝利を収められなかった。
またこの内戦中、惑星マンドラゴラにおける高位の貴族たちの覚醒は抑制されていた。いずれの陣営も、これ以上戦争相手が増える事を臨む者はいなかったからだ。
このような混迷の中で、イモーテクもまた内戦がマンドラゴラを引き裂くまで目覚めさせられることないかに思えた・・。だが、王位を狙う貴族の一人がある作戦を立案したことで、状況は変わる。
この貴族は、かつての名将を目覚めさせ、自らに従属させることを目論んだのだ。名将イモーテクを従属させられれば、勝利は確実だろう、と。
だが、こうして目覚めたイモーテクは自らを取り巻く無法と混乱に騒然とし、激しい憤怒に包まれた。王権惑星マンドラゴラを復興させるには、速やかに内戦を終結させる他に打つ手無しと考えたイモーテクは、いずれの陣営にも属するを拒否したのである。
そして彼は、自らの軍団を招集し、王位を狙う貴族らを次々と撃破し、自分自身がマンドラゴラの王座に座ったのだ。こうして新たなファエロンとなったイモーテクは、自らの領域内におけるあらゆる内部抗争を禁じた。
権力闘争は時間と労力と資源の無益なる浪費に過ぎない、と宣言したのだ。当初、この法律を快く受け入れる貴族たちはいなかったが、彼の王権と布告を無視した者らに対する断固たる処断を行い続けたことで、たちまち惑星マンドラゴラにおける規範として定着していった。
この鋼鉄の法と、近隣惑星における迅速な軍事的成功の数々により、イモーテクの地位は揺るぎない盤石なものとなってゆく。王座に就いたその日から現在に至るまで、イモーテクにとっての真のライバルは、王権惑星「ギドリム」の老将「ネメソール・ザンドゥレク」のみである。
ただ、この老将の忠誠心に疑いようはなく、またその機知と才覚が混濁していることも疑いようがないため、実質上イモーテクにとっての大きな脅威となっていない。
【戦闘教条】
イモーテクは偉大な戦略家であり、おそらく、この銀河史上最も有能な戦略家の一人に数えられるだろう。イモーテクが指揮する戦役は、惑星単位と違い、星系(システム)または星域(セクター)レベルで同時に展開される極めて大規模なものだ。
イモーテクが攻撃を仕掛ける際、敵はそれが本格的な攻勢なのか、それとも陽動作戦に過ぎないのかを判断するのはおそらく不可能だろう。これらの強襲作戦には全て、展開中の敵軍を圧倒できる十分な戦力が注意深く配備されている。
そのため、敵は全滅覚悟で決死の反攻を繰り広げるか、あるいは増援要請するしか手立てが無い。しかもイモーテクの作戦は、常に敵の行動を数手先を考慮しており、敵がどちらの行動を起こしても、最終的にはイモーテク側が戦役を有利に運べてしまうのだ。
事実、〈嵐の王〉が立案する戦闘計画は万能で、幾重にも仕組まれたフェイント攻撃とカウンター戦術、およびその他の偶発的な作戦の数々によって構築される。戦役の中で特定のフラグが立つか、あるいは何らかのパラメータが閾値を超えることによって、これらの作戦が自動的に実行されてゆく。
イモーテクの方法論は謎めいた神秘的なものに見えるかもしれない・・。「なぜイモーテクは、未来に起こる物事をこれほどまで正確に予測できるのか?」と。
だが実のところ、彼の戦略はただ極限まで精緻を極めた確率論と論理的思考、そして敵の思考パターンに対する狡猾な理解力によってのみ構築されているのだ。
【恐怖の軍団】
ソーテク王朝のファエロンとして、イモーテクは途方もなく膨大な軍事的リソースを思うがままに行使すること可能だ。彼が必要とあらば、ソーテク王朝の全軍を展開することすら不可能ではない。
だが、〈嵐の王〉イモーテクは敵、(すなわち他の知的生命体全て)の数が極めて膨大であり、軍事力だけでは勝利できないないことも承知している。このためイモーテクは、ネクロン軍が使用する多数の兵器の中でも”恐怖”こそが最も効果的なものであると考えるようになった。
そして、恐怖戦術の効果を最大限発揮させることにかけて、彼の右に出る者はいない。彼の軍団は嵐が吹き荒れる暗黒の空の中を進軍し、重く垂れこめた雷雲からエメラルド色の雷光が走る中、敵軍に破壊をもたらすのだ。
この嵐の中へと突き進んだ敵は、闇の中に呑み込まれ、戦闘終了まであらゆる通信が不可能となり分断されてゆく。幸運にもこの嵐から逃れられた敵兵士も、新たな恐怖と混乱を仲間たちに伝搬させてゆくだろう。
最悪の場合、これらの生存者たちの体内には「ブラッドスウォーム・ナノスカラベ」がインプラントされ、体内の血液がもたらす温度によってビーコンを発し、徘徊中のフレイド・ワンの群れを誘導することとなる。
【〈嵐の王〉の弱点】
もし、〈嵐の王〉に弱点があったとすれば、過剰に強い自尊心を持つ彼自身であろう。しばしば、敵の中で高位の司令官は、戦闘で敗北したとしてもあえて逃され、イモーテクに対する無力感を抱いたまま生きることとなる。
自分に歯向かった愚かさを下等種族の精神により強く刻み込むために、見せしめとして敵司令官の肉体の一部が切り落とされることも珍しくない。手か足を一本奪うのは、イモーテクが最も好む方法だからだ。
しかし、生き延びた敵司令官たちは〈嵐の王〉の戦略について僅かな知識を入手しする。彼らの中でも極めて勇敢な者たちは、〈嵐の王〉の侵攻に立ち向かうのだという決意を固めてしまう恐れもある。
「ブラックテンプラー」戦団のハイマーシャル「ヘルブレヒト」などがその典型例であり、彼は〈嵐の王〉を数回追い詰めかけているが、ヘルブレヒトが勝利をつかむ日はまだ遥かに遠いようだ。事実として、イモーテクは一切の感情を無くした冷静な戦略家として作戦立案する一方で、自らの武勇を相手に誇示したい尊大で自信過剰な側面も持つ。
また、自身が好敵手と認めた相手に対しては、栄光ある一騎打ちを挑まずにはいられない衝動を持つ。この一騎打ちに勝利したイモーテクは、相手に敗北を思い知らせるための証として敗北した相手の右手を切り落とすのだ。
これらの特徴は、〈大いなる眠り〉によって誘発された、問題行動の一種と考えられる。イモーテクは記憶痕跡(エングラム)への損傷によって個人的な武勲を追い求めるようになってしまった希代の大戦略家なのか、それとも天才じみた戦略的思考を偶然にも授かった好戦的な戦士か?真実がどちらかはさほど大きな問題ではない。
いずれにせよ、もしイモーテクが敗北を喫する日が来るとしたら、その敗北は卓越した戦略家の手よりも、彼よりも優れた戦士の手によってもたらされるのは明白だ。また、〈嵐の王〉の構築する戦略の背後には、完全無欠のロジックがあり、敵軍が彼に対して有利を勝ち取りたいならば、自らの論理的思考を捨てるほかない。
大部分の敵にとってこれは想像を絶するほど困難だが、生まれついてのならず者の異種族、「オルク」たちは、息をするほど簡単に論理的思考を捨てられるという。このため、この銀河に存在する様々な下等種族の中でも、特にオルクたちや〈渾沌〉の軍勢に対してイモーテクは激しい嫌悪感を抱く。
イモーテクがどれだけ緻密な戦略を練っても、無秩序なグリーンスキンや〈渾沌〉の狂気に対して勝利を収められることは可能性が極めて低いためだ。だが、彼はオルクに対する完全勝利を切望し、またそうあらねばならないと考えている。
イモーテクの目標の一つは、この銀河から完全にオルクを駆除することだからだ。〈嵐の王〉は「下等なる現住種族らの血によって銀河を洗い清め終えた後にのみ、ネクロンの新たな支配の時代は訪れん」という信念に対して揺るぎない自信を抱いている。
【ソーテク王朝の版図】
もし、イモーテクが敗北する事態が起これば、ネクロンにとって極めて大きな打撃なる。イモーテクが治めるソーテク王朝は、他のネクロン王朝と比べても比較に出来ないスピードで急成長を遂げているからだ。
現在、ファエロンたる彼の領土には八十個もの墳墓惑星が存在し、更にその五倍の数の他種族惑星が直接的または間接的な貢ぎ物をイモーテクに捧げている。また、イモーテクが戦役によって破壊した他種族の文明は、計測できないほど多い。
確かに版図は、現在の銀河全域に広がる〈人類の帝国〉や、かつて絶頂期にあった古代ネクロン文明に比べれば、微小なものに過ぎないだろう。特筆すべきは、彼がこの偉業をたった二百年たらずで達成したことになる。
しかし、急激な発展には代償も存在するものだ。イモーテク率いるソーテク王朝も、他勢力の注意を引き始めている。
惑星「マクラーグ」においては、「ウルトラマール」星域の北辺でネクロンの活動が活発化しているという報告が、ウルトラマリーン戦団長「マルネウス・カルガー」の耳に届けられた。アシュルヤーニの〈方舟〉の一つである「イアンデン」の先見司たちもまた、〈方舟〉の進行方向に存在するネクロンの驚異を、そして後方から迫る異種族ティラニッドの驚異を同時に感じ取っている。
異種族勢力の一つである「タウ・エンパイア」でも、不穏な力が接近しつつあるという噂が広まっているようだ。しかし、タウ・エンパイアは通常通り、ネクロンを脅威ではなく、新たな〈大善大同〉の機会とみなしているようだ・・。
ソーテク王朝がこれらの諸勢力と全面戦争に入るのは、もはや時間の問題だ。これらの強大な勢力のうち、二つ以上と多角的な同時戦闘状態に入った時、イモーテクは天才的戦略家としての真価が試されることとなるだろう・・。

画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons)P32 イラストより

  • 「イルミノール・スゼラス」

不死と不死身とは、似て非なるもの。されど、その類似性は十分に高い・・。
イルミノール・スゼラス
ザントラゴラの密議団(コンクレイヴ) クリプテックの予言者の長


【概要】
〈生体転移〉の研究者で、兵器や人体を改造する依頼が彼に続々舞い込んで来る。彼は自らの研究に生きた異種族を捕獲し、それを実験体として使用して研究を進めるという・・。
星界の神ク=タンは確かに〈生体転移〉の恩恵を与えてくれたかもしれないが、それを実用化したのはスゼラスである。その時スゼラスは、これを究極進化へと繋がる何段階かのうちの、最初の段階であると考えている。
彼の望む究極進化とは、血肉や金属の体を持つ生物ではなく、純粋なエネルギーから形作られた神へと近づくもので、長い探求の旅路である。その日が到来するため、スゼラスは自らの機械の体を限界まで酷使するだろう。
少なくとも肉体を失ったことで、彼は睡眠が不要となり、その他の肉体を持つ限界や弱みや迷いを千種類ほど捨て去ってしまったのは確かだ。
【スゼラスの研究】
スゼラスは生命の神秘を解明するための研究を続けている。彼が恐れるのは、生命の秘密さえも知らずに、力の劣るみすぼらしい神になり果てることだ。
この数百年間、彼は生命の謎を解くのにあと一歩の段階まで迫ったが、そのたびに真実は彼の前から逃げてしまうのだった。もしかすると、大宇宙にはロジックでは解明不能な要素が存在するのかもしれないし、あるいは単純に、生命の神秘を理解するには研究者が生身でなければならず、不死者には不可能なのかもしれない。
理由はどうであれど、魂の秘密は永遠にスゼラスの手に及ばない場所にあるのだ。そしてこの現状が、彼が絶対に認めようととしない真理の一つなのである。
だが、時にスゼラスは、自らの研究をしばし中断し、他者の興味に応えるための研究を行わなければならない。代金として、彼は絶え間ない被験体の供給を求める。
また、自らの望む生命体を入手するための最も効率的な方法として、彼は捕虜の取引に対する優れた専門知識を有する。彼は生命の秘密を解き明かすのだという妄執に取り憑かれているが、自身の知識はそれだけにとどまらず、兵器改造技術やネクロン機体の改造技術もまた、他社の追随を許さないほど優秀だ。
スゼラスは異星の生物たちを対象に、形状や生体機能などを深く調査し、これらから学んだ知識を、ネクロンが有する様々な兵器や機械を改造する際に活用しているのだ。そしてスゼラスが施すこれらの改造を、彼の同業者たちの多数は、ひどく不快なものだと評価している。
彼は「ヴーズセイル」の蜘蛛型生物が持つ複眼を切除解剖することにより、更に高度な光学式照準装置を開発する手掛かりを得たし、また「アンプル」が持つキチン質の外皮を分子レベルで模倣した結果、より強固で効果的な装甲の組成を解明することが出来た。この二つの例はあくまでも一例に過ぎない。
スゼラスは同様の最先端技術を、これまでに何千種類も開発した実績を持つ。
【アエルダリ族に対する執念】
スゼラスの才能を求める需要は多く、しばしば彼は、依頼主に対する報酬を自らで決めることができる。そしてそのような場合、彼はいつも通り、自らが指定した惑星に対して被験体収穫のための襲撃を求めるだろう。
あらゆる被験体の中で特にスゼラスは、アエルダリ(その中でもアシュルヤーニ)の被験体を得ることに喜びを感じている。何故ならアシュルヤーニのアエルダリは、この銀河に暮らす他のどんな生命体より複雑で興味深い実験結果が得れるからだ。
しかし、確実な軍事的利益を得られるのでない限り、進んでアシュルヤーニの警戒領域を侵犯するネクロン・オーヴァーロードは皆無だ。スゼラスにとってアシュルヤーニ、最も貴重でかつ入手困難な実験動物なのだ。
よって、アシュルヤーニに対して攻撃が行われる場合、スゼラスはまず間違いなく軍勢の第一波に参戦するだろう。これは捕獲したアエルダリの中で最も上質な獲物を自らの手で最初に選別するためであり、また依頼主に報酬を誤魔化されないようにするためでもある。
【被験体の末路】
あえて詳細を明かそうとは思わないが、ひとたびスゼラスに実験動物として捕獲された犠牲者は、恐るべき末路を辿る。惑星「ザントラゴラ」の地下墳墓にある暗く血みどろの研究室の中に放り込まれ、苦痛に満ちた末路を迎えることになるだろう。
スゼラスの実験手術が死体に対して行われることはほとんどなく、彼は、 自分の捜し求めている答えは、生者の中にのみ隠されていると信じているからだ。 ステイシス機器を用いた貯蔵庫には、被験体が生存したまま保存され、一連の実験が終わるまで意識はしっかり保たれる・・。
被験体の苦痛を麻痺させることのないまま・・。実験動物がどれほど悲痛な絶叫を上げても、スゼラスの精神に影響を及ぶことはないだろう。
彼は下等生物が上げる鳴き声などに対して、微塵の親近感も持たないからだ。単純にスゼラスは、この不快な雑音が止むまでの間、自らのオーディオ・レセプター機能をシャットオフするだろう。
回転する解剖器具を無表情に見ながら、彼は黙々と被験体を分子レベルまで切り刻んでゆくのである。

画像出典:Warhammer Community 2020/4/24の記事「Illuminor Szeras – What We Know」より(2021/03/02閲覧)

  • 「〈予言者〉オリカン」

時もまた我らが武器の一つなり。何もせずとも、ただ敵が腐り果てるのを待てばよいのだから。
〈予言者〉オリカン


【概要】
オリカンは熟達せるアストロマンサーであり、星辰の配列から未来に起こる出来事までを計算することが出来る予言者だ。 彼はアエルダリの〈失墜〉や人類の勃興、そして〈ホルスの大逆〉やティラニッドの襲来といった歴史的事件を、それらが起こる数千年以上前から予言していた。
さらに注意深く星の動きを調査すれば、オリカンは艦隊の航路、個人の運命、戦役に参加している軍団が取る戦略など、より微細な出来事さえも予言できるのだ。これらの内容には、銀河の情勢を激変させる重要性は無いが、あらかじめ予言で知ることにより、予見者自身の運命を大きく変える可能性があるのだ。
数々のクリプテックはオリカンの研究成果を活用しているにもかかわらず、彼を心から信頼している者は極めて少ないだろう。クリプテックたちは皆、彼の優れた才能を嫉妬してでのことではなく、疑いようのないほどオリカンの「テクノ・ソーサリー」に熟達していることを認めている。
オリカンが他の者たちから胡散臭がられている理由は、彼があらゆる貴族に対してあざけるような冷笑的な態度によるものである。彼はいつもその瞳に彼のみぞ知る陰謀を秘めた鋭いまなざしを宿しているのだ。
実際、多くのオーヴァーロードたちが、このオリカンが見せる沈黙の横柄さに対して、何らかの罰を下したいと考えているようだ。しかしながら、オリカンの礼を欠いた振る舞いによる不利益より、彼の優れた技能によって得られる利益のほうがはるかに大きく、短絡的にオリカンを罰するといった行動はあまりにも無分別であるとも考えられている。
さらに、彼らがオリカンを罰することなどまず不可能だ。オリカンは、政敵たちが企てる陰謀を、彼らがそれを実行する前からすでに見抜いており、それらの陰謀を逆に利用して自らの利益を得ることなど実にたやすい。
そして、オリカンの手による変更は、その陰謀を企んだ張本人に対して致命的な未来をもたらすことが極めて多い。
【時系列逆行】
しかし、卓越したアストロマンサーにもかかわらず、オリカンの予言が常に的中するとは限らない。予測不可能な出来事がオリカンの計算を狂わせ、綿密に構築された彼の陰謀を崩壊させてしまうことあるのだ。
中でも特に彼をいら立たせている事象は、〈歪み〉航法の要素である。〈歪み〉航法による無法と混乱の渦は、オリカンの計算され尽くした予見と真っ向から対抗するものだからだ。
こうした不安定要素が介在する際、オリカンは自らの計画と名声を守るため、時空を操る「クロノマンシー」の能力の使用を余儀なくされる。普段は使用を控えているこの能力によって、オリカンは自らの時系列を逆行し、陰謀に修正を加えるに適切な過去のある一点に出現する。
そして、未来に起こる出来事に即した形で、自らの陰謀を修正するのだ。これには通常、干渉要素となる事物を何らかの方法で破壊するという手段が取られるだろう。
例を一つ上げると、あるオリカンの予見で、惑星「ヘリオスVI」に築かれた帝国宇宙軍のドックヤードは、迫り来るオルクの「スカルラック」氏族による〈いくさだァァァア!〉(グァァァグ!)を防衛できないことになっていた。しかし、スペースマリーンの「シルバー・スカル」戦団第四中隊による目障りな介入によってこれが覆された。
そこで、数週間前へと時を遡ったオリカンは、このスペースマリーン中隊がネクロン軍によって奇襲を受けて壊滅寸前の状態に陥るよう手はずを整え、予見通りにヘリオスVIが破壊されるよう仕向けたのである。これによりネクロン軍は、ヘリオスVI周辺の星域を奪還が可能になったが、オリカンにとってそれよりも重要だったのは、予言者としての名声を守れたことであった。
【逆行の弱点】
ただ、オリカンにとってクロノマンシーによる時系列逆行は、出来る限り避けたい最終手段と考えられている。何故なら、過去へのオリカンの介入による影響で、予測不可能な出来事が未来に起こりうるからだ。
実際、先ほどのヘリオスVI事変にオリカンが介入したことによって、未来が大きく変更された。あの後、スペースマリーン各戦団である「デス・スペクター」戦団、「ハウリング・グリフォン」戦団、そして「シルバー・スカル」戦団の生き残りを含む五個以上の戦団が復讐のためにラザール星系へと集結し、その墳墓惑星を完膚なきまでに破壊してしまったのだ。
この副次的結果は、オリカンの意図したものではなく、全く予測できないものだ。この墳墓惑星破壊の背景にオリカンの関与があったことは、未だ誰も知りえないが、少し間違えれば自体は大きく変わっていたことだろう。
それゆえ、オリカンは極めて慎重にかつ用心深く行動することにより、自らの時系列逆行操作を他人の目から隠し続けている。クロノマンシーは他のクリプテックたちも研究している科学分野だが、オリカンに匹敵するほどの技術を持つ者はいないので、オリカンが何か怪しい行動を取った場合、その疑念は何百倍にも膨れ上がるだろう。
千の千年紀にも及ぶ準備と計画がようやく結実しようする今、疑念こそはオリカンが最も望まぬ要素だ。そして、星辰が正しい位置に並んだ時、いよいよオリカンは自身が持つ真の運命と向き合うことになるだろう・・。
【明日の杖】
オリカンの持つ杖は、現在の0.5秒先の世界に存在する。ゆえにこの杖は、敵が反応し回避動作を開始する前にその体を貫いているのだ。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P41 イラストより

  • 「〈無限なる者〉トラザイン」

素晴らしい!新たなコレクションとして所蔵するにふさわしい品だ!
〈無限なる者〉トラザイン


【概要】
トラザインは歴史とアーティファクトと事件の蒐集家だ。彼が住まう墳墓惑星「ソレムナス」の地下には数え切れない規模の広大な地下貯蔵室が存在し、極めて貴重かつ荘厳なテクノロジーの数々が保管されている。
帝国技術局のテックプリーストがあれば誰しもうらやむであろうこの貯蔵庫の存在を知ったら、たとえ近隣の仲間の命を犠牲にしてでも惜しくないと考えるだろう。ソレムナスの地下貯蔵庫には、ありとあらゆる種類のアーティファクトや聖遺物が治められている・・。
例をあげれば、名高きアシュルヤーニの〈方舟〉「アルタンザール」の幽骨「クワイヤ」、腐敗装置が施された〈帝国〉の正教会首座「セバスチャン・ソア」の首、などなど。これはごくわずかなものに過ぎない。
そして今でも、蒐集物の数は増え続けている。この世界の歴史は留まることなく進行し続けおり、彼はそのペースに遅れぬよう、常に収集の努力に余念がない。
だが、不運にも、ごく一部の惑星はトラザインが求めるアーティファクトや聖遺物を寄贈することを頑なに拒んでいるという。これらの惑星に住まう有力者たちは、歴史の荒波に護られたトラザインの貯蔵室に自らのアーティファクトを展示することを拒み、それらを所持して私物化しているのだ。
このような場合、取られる処置は限られており、 トラザインは自らの軍団を率いて、そのアーティファクトを奪って保護するのだ。 要は強奪である。彼の行く手を阻む者は、「精神撃滅の杖」で容赦なく打倒される。
仮に、実力行使の結果で、惑星や星域が破壊されたとしてもそれは詮無きことである。
【ソレムナス・ギャラリー】
ソレムナスの貯蔵庫に保存された驚異の品々の中でも特に印象的なのは、トラザインが価値を認めた歴史を再現する曲がりくねった「特別展示室」の数々だろう。その規模は、再現する場面によって変化し、〈方舟〉「イドハラェ」における最後の最高評議会を再現するような小規模なものから、ドラガスの大虐殺を再現する極めて大規模なものまで、実に多種多彩だ。
しかも、この色鮮やかなギャラリーを構成するそれぞれの像は、ただの彫像ではない。神秘のテクノロジーによる「ハードライト・ホログラフ」と変性させられた生命体なのだ。
これらの像の内部には、その歴史的瞬間に登場した本人、即ち重要人物その人がそのまま保存されている。彼らは歴史的な勝利や敗北を迎えた瞬間の姿勢で凍り付き、その偉業を成した証として、文字通り永遠に"生きた彫像"として展示されるのだ。
しかし、「永遠に続くものなど存在しない」という真理は彼を悲しませている。その一例として、「カノプテック・レイス」の動作不良、ギャラリーの天井崩壊などの原因によって、これらの像の破壊、破損することがある。
そうした事態の中で最も悲劇的なのは、あまりにも詮索好きな〈人類の帝国〉の異端審問官に使える側近たちとトラザインに従える戦士の間で起きた銃撃戦である。異端審問官の側近は後に鎮圧され、今では展示品として飾られている。
もし内部でこのような戦闘が起これば、トラザインは激しい失意と欲求不満に駆られるだろう。一時期は新たな歴史の蒐集を中断し、破壊された像の代替品を探しに行かなければならなかった。
もちろん、像の代替品が効くのはごくわずかしかないが、トラザインが納得いかない破損物をギャラリーに保管し続けることは無理だ。もし、これらの破損したハードライト・ホログラフの中でその役目を代替するに値するものが存在するとしたら、仮にそれが再現性の面から多少違っていても、トラザインはその代替品を入手しようとするだろう。
彼は歴史を忠実に再現するよりも、あくまでも"歴史のスペクタクル感"の再現に力を注ぎ、細かい点には目を向けないのだ。ひとたび展示品の入れ替えを決めれば、トラザインは驚くほどの速さで作業に取り掛かり、戦場から居住惑星までありとあらゆる場所で代替品を探し出す。
損害の規模にもよるが、僅か数体の生命体を手に入れるだけならば、航空機「ナイト・サイズ」の編隊を低空飛行させて拉致すればいいだけだ。しかし、これが惑星総人口の何割を大規模に拉致するならば、拉致作業や目録作成などに多くの人出が必要になるだろう。
【同族、異種族からの扱い】
トラザインの興味に対して警戒しない墳墓惑星は存在しないだろう。トラザインは「貴重なアーティファクトの保護と扱いにかけては、自分以外のネクロンと同じ異種族ぐらい信用ならない」と考えている。
すなわち、トラザインは、他種族の持つアーティファクトと、同族であるネクロンが所持するアーティファクトには、その状況に大差はないとみているのだ。結果として彼はしばしば、墳墓惑星に存在するアーティファクトを保護という名の強奪活動を行わなければならない。
このため、一部の墳墓惑星からはトラザインは”受け入れ難い人物”(ペルソナ・ノン・グラータ)としてみなされているようだ。例えば、彼は〈嵐の王〉の本拠地である惑星「マンドラゴラ」の地下墓所に対して立ち入り禁止されており、これを破った場合は死刑になるが、これはかつて「破壊者の杖」を密かに持ち出そうとしたのが原因だという。
また、ネクジスト王朝の墳墓惑星「モービウス」では彼はまだ歓迎を受けているが、歓迎する側は「トラザインの労力がネクジスト王朝に直接利益をもたらす場合にのみ」来訪を許可し、厳戒態勢に近い状態で彼を迎えた実例もある。こうした警戒が付き物ゆえに、トラザインがその名を名乗って銀河を旅することは滅多にない。
【偽りの旅人】
彼はいつも偽名を名乗り、その正体を隠している。 ただ残念なことに彼は、慎重に決めるべき偽名を、古代ネクロン神話や伝説的人物名などから簡単に拝借するだけだが、トラザインがアーティファクトを保護する前に その正体がばれることは滅多にない。
これは、他の貴族階級のネクロンたちの知識や視野が狭いため、トラザインの偽装すら見破れないという理由があると思われる。偽る対象がオルクの惑星や、タウ・エンパイアの家紋惑星、人類の入植惑星でも、トラザインが交渉を行う場合にはいつでも精神束縛を施した手先が代理人として用いられ、彼自身の正体は秘密のまま取引が行われる。
トラザインは〈帝国〉におけるローグトレーダーや異端審問官が、自分の行動に対して強い関心を抱いていることは自覚しているようだ。それでも、〈帝国〉の複雑な歴史は、トラザインのような蒐集家の興味をそそる対象としてやまない。
確かに彼は、下等な知性と機知しか持たない人類などに、自分の計画や陰謀が暴かれることはないだろうと自負しているが、それでもトラザインは偏執狂的なまでに疑り深いので、常に細心の注意を払って交渉を行っているのだ。
【トラザインの能力】
トラザインは代理人を介して、調査任務や戦役を実行する。 トラザインは代理となる体を持つネクロンに乗り移ること能力を持つのだ。
たとえ、代理の体が深刻なダメージを受けても、トラザインの精神は”本体”となる自分の体に戻るか、あるいは別の体にへと乗り移ることが出来る。トラザインの代理人として選ばれたネクロンは、自分が乗り移られたことを即座に気付くことはできない。
トラザインが乗り移るのにふさわしいのは、ネクロン・ロードやネクロン・オーヴァーロードの位階に属するものが多いが、仮に体を乗っ取られたとしても、彼らはその事実に気付いていないのである。体を完全に支配する必要がある際には、たとえ対象がどのような相手でも、トラザインはいとも簡単に乗っ取りを行ってしまう。
トラザインに精神を操られている間は、元の精神は抑制され、その体はトラザイン本人の体を複写するようにして瞬時に外見が変形してしまうのだ。この能力によってトラザインは、銀河に溢れる様々な脅威から身を守りつつ、アーティファクトを保護するための旅を続けれるのだ。
【現状】
しかし、このように注意深く計画を練る日々は、もはや過去の物となった。銀河に戦乱が巻き起こり、アーティファクトが納められし寺院や市街が、時には種族全体が混乱の渦に呑み込まれていくからだ。
故にトラザインは、これまでもより遥かに容易に、保存する価値のある様々な物事の目録を作り、アーティファクトの保護活動にいそしむことが出来るようになった。トラザインが収集活動を始めて数え切れないほどの年月が経過したが、近年ではいよいよ、ソレムナス兵団ならび全戦力を動員可能になったという。
これにより、適切かつ詳細な文化学的調査を行っている間、無知で野蛮な種族たちの攻撃から調査対象となる惑星全てを守ることが可能となった。すでに二十個ほどの〈帝国〉諸惑星が、トラザインの軍団によって制圧され、その住人は彼の忠実なる下僕らによって奴隷化されているのだ。
ソレムナス兵団による侵攻は留まることを知らない。
【精神撃滅の杖】
この風変わりな杖の真の起源を知る者はトラザイン以外にいないが、他の者たちが噂するところによると、この武器には行方不明となって久しい〈旧き者〉らのテクノロジーが用いられるらしい。精神撃滅の杖を用いて敵を殺すと、犠牲者の肉体からは超常的なショックウェーブが放たれ、周囲にいる全生物に対して、犠牲者は死に際に感じたものと同じ精神的ショックを与える。
この杖はトラザインの様な者にとっては理想的な武器といえるだろう。彼は無駄な肉弾戦によって体力を浪費することを軽蔑しているからだ。
精神撃滅の杖さえあれば、彼は必要な時だけ、最小限の決定的な一撃を放てばよいのである。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P42 イラストより

  • 「ネメソール・ザンドゥレクとヴァルガード・オビロン」

我輩の頭痛の種は、我輩に敵なす者どもが、自身らの敗北と自身らの劣等性との相関を理解できぬことだ。どうやら、愚かしさというものは、永遠に消えぬものであるらしい。戦争と同じように。
ソーテク王朝のネメソール・ザンドゥレク


【概要(ザンドゥレク)】
ネメソール・ザンドゥレクは、かつて銀河最高の名将の一人として数えられているネクロン・オーヴァーロードで、〈嵐の王〉からの信頼も篤いネメソールとして知られている。彼の大征服戦役が始まるまでの間、惑星「ギドリム」は銀河の辺境に浮かぶ、取るに足らない場所の一つだったが、ザンドゥレクの活躍により、十二もの星系を鋼鉄の法によって支配する惑星となったのだ。
現在、惑星ギドリムはソーテク王朝に組み込まれたが、それでもザンドゥレクは今なお偉大な英雄の一人として知られている。これはある意味当然の結果であり、近年ギドリムは覚醒した王権惑星の中でも急速な版図拡大している惑星の一つで、ザンドゥレクの軍団は東部辺境宙域にて大きな影響力を持っている。
天才的な軍事能力を維持してはいるものの、〈大いなる眠り〉の中で記憶痕跡にダメージを負ってしまったザンドゥレクは、この現実を真実とみなしていない。彼の意識は遠い過去にとらわれたまま、彼自身が”自らの王朝を荒廃させた分離戦争の時代に居る”と勘違いしているのだ。
ザンドゥレクは 自分は今もなお、分離戦争を戦い続けている生身の体を持つネクロンティールの戦士であり、反乱を企てる諸王を討ち取り、失った版図を取り戻そうとしている。 いわゆるボケ老人。彼の脳内ではオルク、アエルダリ、人間などの軍隊は存在していないこととなっており、これらは全て、彼の愛する王朝を破壊せんとするネクロンティールの叛徒として見ている。
このため彼は、全ての敵に対してネクロンの伝統的戦闘様式プロトコルで立ち向かう、数少ないネクロン・オーヴァーロードの一人だ。他者の目からは下等な異種族に見えたとしても、ザンドゥレクの目からは全てネクロンティールに見えるため、ネクロンティール間の戦闘では禁じられていた「デスマーク」や「レイス」といった暗殺部隊投入を、彼はあらゆる戦略において避けようとする。
ただし、彼の家臣はこうした戦略を取ることに一切のためらいを感じない。また、彼は可能な限り敵将を殺さずに生け捕りにして、”名誉ある捕虜”として扱うため、彼の王宮では家臣たちの驚きと怒りが収まることがないという。
【家臣からの反応】
事実、ザンドゥレクの王宮には、この老将を権力の座から追放したくてたまらないネクロン・ロードが大勢いる。彼らは「ザンドゥレクの乱心は、彼の持つ優れた武勇と采配を差し引いても、なお大きすぎる欠点である」とみなしているのだ。
しかしながら、ネメソールの地位にふさわしく、ザンドゥレクは国王殺しの陰謀に対して抜け目なく守りを固めている。彼の居室である地下墓所には数々の罠が仕掛けられ、近衛として強大なる「リッチーガード」の三個兵団を侍らせ、更には四十人もの毒見役を従えている用意周到さである。
もっとも、彼がその口を使って豪勢な食事を味わっていたのは、遥か遠い昔のネクロンティールの頃ではあって今では意味はない・・・。そしてこのどれよりも強力な見方を彼は有している。
それこそが彼の補佐官にして守護者兼介護人であるヴァルガードのオビロンに他ならない。
【概要(オビロン)】
オビロンは、ザンドゥレクが挑んだ最後の戦役である、「ヤーマの沼地」で繰り広げられた泥臭く実り多い連戦にて、彼の忠実なヴァルガードとして仕えた。そしてこの戦役依頼、オビロンは日常時から戦闘時まで、揺るぎない忠誠心と共に彼の補佐として奉仕してきたのだ。
彼の主君とは異なり、オビロンは自分たちがもはや生身の体を持つ存在ではないことをしっかり認識している。彼はザンドゥレクの精神を現実に戻そうと試みたが、もはや遥か昔にあきらめてしまった。
彼の主君の頭脳にいかなる障害が起こったのかは定かではないが、いずれにせよ、ザンドゥレクが負った損傷はあまりにも大きかったのだ。その代わり、忠実な従者であるオビロンは、ザンドゥレクの奇行によるありとあらゆる未解決の問題に目を光らせている。
その主なものが、捕まえた”名誉ある捕虜”たちを、脱走を図ったという名目で抹殺しておくことだ。これに加え、増長し始めた王宮内のネクロン・ロードたちを黙らせるか、あるいは処すのもオビロンの務めである。
【幽歩の外套】
オビロンが纏うこのマントは、ギドリムの最も熟達せるサイコマンサー、“影のマトリックスの”「ダゴン」によって開発された、「闇のウェール」の改良版である。一言命令を下すだけで、このマントはオビロンを戦場のいかなる場所へも瞬時に運ぶ。
これによって、オビロンはいついかなる時もザンドゥレクの横に立つことができるのだ。
【オビロンの政戦】
戦場におけるザンドゥレクの指揮能力が、ほとんど本能レベルで研ぎ澄まされているのと同様、オビロンは惑星ギドリム内での政争において、鋭い直観力を持っている。ギドリム内で企てられるいかなる陰謀も、機が熟す前に必ずオビロンによって察知されてしまうだろう。
そして察知するやいなや、彼はただちにその陰謀に終止符を打つのだ。その手段は、オビロンがそれをどれだけ他の者たちに印象づけるかによって大きく異なる。
中でも、陰謀の首謀者に対して、公開決闘を行うことは、オビロンが最も好むやり方だ。彼は刀剣の扱いに優れており、生体転移以前から伝説として名高い技能を有する。
悠久の時を経た現在も、その技能はほとんど衰えていない。また時には、恐怖の効果を持続させるため、陰謀の首謀者を予告なく突然行方不明にしてしまうこともある。
手段を問わず、これまでオビロンが何百回もの自分の力を証明してきたが、それでも何十回に一度は、増長した新たな貴族が現れ、ギドリムのオーヴァーロードに対して謀反を企てようとするのが常だ。
そんな中オビロンは、ヴァルガードとして自らの役目に大いに満足しているのである。ギドリム内部のみならず、他の惑星や、ネクロン以外の勢力からも、オビロンこそは玉座の影にいる真の支配者なのではないかと注目されているかもしれない。
だが、オビロンのザンドゥレクに対する忠誠心は、一点の曇りもない完璧なものだ。彼はヴァルガードとしてザンドゥレクに使え続ける以上の報酬はいらない。
自らの主君の権力を利用して支配したい欲望は、オビロンの中には一遍もないのだ。
【ザンドゥレクとオビロンの連携】
戦役に赴いたザンドゥレクとオビロンは、難攻不落の連携を見せる。ザンドゥレクが一対一の白兵戦で後れを取ることは滅多になく、彼はそれよりも自分の長所である采配能力を活用し、軍団を指揮することに注力することを好む。
ザンドゥレクの記憶は混濁しているが、その指揮能力は全く衰えていない。彼の鋭いまなざしの下で戦う時、ギドリム軍は敵の戦略に対して瞬時に反応し、それを的確に応じるような動きを見せる。
戦場に存在する一瞬の機微を読み、攻撃態勢と防御態勢を即座に切り替えてしまう。徹底的に吟味され選択された、極めて少ない命令を出すだけで、ザンドゥレクは敵軍の側面をついて孤立させ粉砕し、敵の波状攻撃を無効化し、砲撃陣地を蹂躙してしまう。
これは全て、ザンドゥレクが持つ戦局を読む力によるものである。敵軍にどれほど熟達した古参兵がいたとしても、ザンドゥレクは全ての戦術を読み、全ての技能をカウンターされ、ぎこちない新兵のような戦いぶりを見せてしまう羽目に陥るという。
一方のオビロンは、自らの「ウォーサイズ」を振るって最前線で戦い、千の戦役を戦い抜いてきた戦士にふさわしい正確な戦いぶりを見せる。さらに、どれだけ物理的距離が離れていたとしても、オビロンは常にザンドゥレクから目を離さない。
オビロンに与えられたボディーガードとしての役目は、他のあらゆる任務より重要だからだ。ザンドゥレクの身に危機が迫るならば、いついかなる時であろうとオビロンは主君の傍らにいるだろう。
【明日は我が身】
オビロンの忠誠心が篤いことは、ギドリムのネクロン・ロードたちに実に喜ばしいことである。ネメソール・ザンドゥレクの傍らで戦いたいと考えるネクロン・ロードは、ほとんどいないからだ。
ある者は、ザンドゥレクが絶え間なく語り続ける、遥か遠い昔に戦った戦争の懐古談と現在進行中の戦役との間にみる関連性についての繰り言について我慢ならないと訴える。また他の者たちは、その横でザンドゥレクの傷ついた精神を目の当たりにするたびに、これはいつの日か自分にも起こりうる事だという考えが沸き上がって、再び「ステイシス・スリープ」に入らねばならないほどの状態に陥ってしまうのだという。
自分の記憶痕跡に何らかのダメージが生じたとしても、それをはっきりと認識できるネクロン・ロードはいないだろう。自分が無意識のうちに取る異常行動について、えてして本人は何ら気付かぬものなのだ。
ザンドゥレクが自らの身をもって証明しているように・・。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P44 イラストより

  • 「〈放浪者〉アンラキール」

我は気まぐれに破壊を振りまくことなどないし、進んで邪悪な行いを成すつもりもない。ただ単純に、お前とお前の同族たちが、我の行く手を塞ぎ、それがお前たちの完全駆除を招くこととなったのだ。我の手を煩わせた、お前たち自身の愚行を呪うがよい。
〈放浪者〉アンラキールから、タウの導師「アゥン=タニイール」へ「カ=マイス」の〈収穫〉に先立って


【概要】
各地を放浪しながら、まだ目覚めていないネクロン王朝を目覚めさせ、侵略者に対して共闘を行う銀河の旅人。 その評価は種族内でも賛否両論であり、彼は自らの使命を淡々と遂行していく。
本来の機能を完全に回復させて、自意識を保ちながら「ステイシス・スリープ」から目覚めるネクロンは、ごくわずかである。ほとんどの者は、長いまどろみから精神が脱しきれてないまま目覚めるため、判断力や思考力が完全にオンラインになるまで手間取ってしまう。
だが、アンラキールは違った。休眠から目覚め、彼は既に完全な精神状態を取り戻していたし、その心には目的意識がはっきりと宿っていたのだ。
彼の目的、 それはネクロン諸王朝の再団結である。 彼は他のネクロンの君主のように自分の名声や地位のために戦うのではなく、全ネクロン種族のために戦いを続けているのだ。
〈沈黙の王〉の帰還が彼の耳に入ったならば、アンラキールは間違いなく彼をネクロン種族団結を図る救世主として彼の名の下に馳せ参じていただろう。これを自らの宿命としてとらえ、アンラキールは自らの墳墓惑星「ピルルイア」で追うべき全責任を辞し、軍団を率いて星々の海へと漕ぎ出したのだ。
しかし、アンラキールがかつて惑星から惑星を渡った時代から比較して、銀河のありようはあまりにも大きく変化していた。旧時代に作られた座標図は、もはや銀河の現状とは一致しない。
破壊された惑星、〈歪みの嵐〉によって孤立してしまった惑星、さらには時空のかなたに消え去ってしまった惑星までまる。また、仮に惑星が座標図通りに残っていたとしても、地殻変動や隕石衝突などによって、地下に隠された墳墓自体が失われている可能性があるのだ。
中でもアンラキールにとって最悪なのは、休眠状態にある墳墓惑星が、下等生物によって支配されていたという事例であった。
【侵略者に対する憤怒】
アンラキールは、自らの目的のために新たな戦争を引き起こすといった野心をほとんど持ち合わせていない。彼の率いる軍団は、誰彼かまわず敵に対して攻撃を仕掛けられるほどの大規模な戦力を有していないからだ。
しかし、未だまどろみの中にある墳墓惑星に到着し、その地下墓所が破壊され資源などが略奪しているのを発見したアンラキールは、たちまち憤怒の虜となるだろう。いうまでもなく、これは略奪を働いた罪人らにとって破滅の兆しである。
それがローテクどもの居留地であろうと、オルクの〈いくさだァァァア!〉(グァァァグ!)であろうと、タウや人間であろうとアンラキールが取る反応はただ一つだけ・・。即座に断固たる全面戦争を仕掛け、もし墳墓惑星に残存勢力が存在するなら、それらと共闘して侵略者たちに対する報復戦争を挑むのである。
ただ、アンラキールが訪れる墳墓惑星の全てが、このような緊急事態に直面しているわけではない。いくらかの墳墓惑星は、若き種族らに気付かれぬことなく残り続けている。
しかしこの銀河は、詮索好きな種族であふれかえっており、そうした手付かずの墳墓惑星は少なく、また互いに遠く離れているのだ。
【アンラキールに対する反応】
墳墓惑星を覚醒させるか、あるいは侵略者の驚異から解放し終わると、アンラキールは自分の軍団のために一定数の兵士を差し出すように、救助した墳墓惑星に要求する。この要求が断られた場合、アンラキールは自らの戦利品を獲るために実力行使に訴えるか、あるいは巧妙な手口によってそれを奪い取っていくだろう。
覚醒させたばかりの墳墓惑星は、混乱と無秩序によって覆われているのが常であるため、そこから兵士や武器を徴収するのはたやすい。アンラキールが訪れた墳墓惑星ごとに、彼に対する評価が大きく異なっている理由は、こうした恩の押し売りに近い支援が原因となっているのだ。
多くの貴族たちは、アンラキールを 「至高なる高潔さの化身であり、全ネクロンのために自らの個人的な地位と権威を捨て去った偉大な戦士」 と評している。しかし、その一方で 「アンラキールは主君を持たぬ下劣な盗賊の最たるものであり、未だ休眠中である墳墓惑星にとっては、この銀河にうごめく他の数々の驚異とまったく同様の、極めて深刻な脅威である」 と評されているのだ。
アンラキールは本人はどうかというと、墳墓惑星から快い支援を望んではいるが、戦力不足という差し迫った必要性が全てにおいて優先されてしまう。なにしろ 彼の率いる軍団は、侵略者に対する戦役の中でいつも消耗して大きな被害を受け、常に完全壊滅の瀬戸際に立たされているからだ。
もし助力や支援が得られなければ、彼の大いなる理想はたちまち潰えてしまうからだ。
【アンラキールの軍団】
戦場において、アンラキールは常に「ピルルイアン・エターナルズ」と呼ばれる一団と共に戦う。彼らは、アンラキールが大いなる使命のために行動を起こし始めた時から共に戦い続けてきた。
大規模なイモータル兵団の残存戦力だ。この年経ることなき古参兵たちは、自らの主に対して揺るぎない忠誠を示し、また主の目的を果たすため恐ろしいほど効率的な殺戮を繰り広げる。
しかし、このイモータルたちの力も、アンラキールの前では霞んで見えるだろう。アンラキールは強靭なる意志力によって自らの軍団を指揮統制しているのみならず、この精神の力を使って、敵の射撃目標補足システムを混乱させ、敵兵器のコントロール権限を一時的に乗っ取ることが可能なのだ。
アンラキール軍に戦いを挑む敵は皆、自陣後方からの射撃にも神経を尖らせねばならないだろう・・。

画像出典:ゲームズワークショップ公式通販サイト「Anrakyr the Traveller」 商品画像より(2021/03/04閲覧)


兵種


我は奴隷戦士らに機知や機転など求めぬ。彼の者らに必要とされるのは戦闘能力と、我が無窮なる栄光のために死ぬことのみ。最も慈悲深く、最も有能なる統治者のみが、その下僕らを主体性という名の責め苦から解放できるのだ。・・お前は同意せぬのか?
“無敵なる者”サスザール
サーネク王朝のファエロンにして王朝惑星ザペネクの最高司令官


画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P32,P33 イラストより

  • 「ネクロンロード/ネクロン・オーヴァーロード」

【概要】
貴族階級に属するネクロン兵団の指揮官。その地位にふさわしく、ネクロン諸王朝の貴族階級にあった者たちが受けた生体転移プロセスは、 平民階級が受けたものよりもそれよりも明らかに高度なものであった。
貴族階級が得た新たなボディーは、平民らのものに比べてはるかに強靭で、高耐久性に加え、「記憶痕跡回路」(エングラム・サーキット)を内蔵していたため、下級のネクロンよりも遥かに豊富な知性と人格を宿すことが出来たのだ。多くのネクロンは、〈大いなる眠り〉から目覚めて再び姿を現した時、かつての個人的な記憶は失い、鈍愚な怪物のような知性しか持ち合わせていなかった。
これとは対照的に、ネクロン・ロードやネクロン・オーヴァーロードたちは、休眠中に何らかの外敵損傷を被らない限り、かつて持っていた人格や記憶などが全て保ち続けていたのだ。一個の墳墓惑星には、数十人、時には数百人もの貴族が休眠している。
だが、これらの中で一番の上位の権力を持つのはわずかに一人。中央惑星群あるいは辺境惑星群において、この役目を担うのはネクロン・ロードだが、王権惑星及び重要度の高い中央惑星群には、摂政としてネクロン・オーヴァーロード(大貴族)らが存在する。
また、絶対王君であるファエロンたちは、自らの王権惑星に君臨し、そこから自らの王朝に属する全惑星を統治する。(ファエロン>ネクロン・オーヴァーロード>ネクロン・ロード)
【貴族たちの政戦】
墳墓惑星の貴族たちの間で、政治的な内紛は日常茶飯事である。墳墓惑星の中では常に、気が遠くなるほど長く緩慢なペースで腹黒い陰謀が企てられているのだ。
機械の体を持つアンドロイド的な性質ゆえ、ネクロンたちは打算的な行動パターンを取りやすい。よって、仮に王位を狙うものがいたとしても、成功よりも失敗の確率が高い間は、表立った行動を見せることほとんどない。
同様に、オーヴァーロードが下位の者から挑戦されたとして、この挑戦者に対して即座に勝利する可能性が無いと判断した場合は、オーヴァーロードが戦わずして降伏することも珍しくない。降伏したオーヴァーロードは、その後数十年から数百年間、低い地位から自分が失った地位を取り戻すために下剋上の機会を辛抱強く待ち続けている。
しかし、極めて大きな戦利品を入手できる場合などには、権力闘争がしばしば表面化することもある。こうした事態が起こると、その墳墓惑星にいる貴族たちは自分の忠誠心や野心に従っていずれかの陣営に参加することとなるだろう。
また一部の者たちはどちらの陣営にも加わろうとせず、可能な限り長く静観を決め込もうとするはずだし、あるいは忠誠の見返りとして代価を要求する者たちさえいる。
【ネクロンの内戦】
墳墓惑星での内戦は常に、古代ネクロンティール文明において用いられたルールに則って行われる。その時点で主権を握っている側が、いくつかの様式的戦闘と戦力編成、そしてこの戦闘内でのルールを提示し、挑戦者側がこれに合意するのだ。
生体転移が行われる以前、このような様式的戦闘は数百万人単位の殺戮を引き起こし、数日から数週間で決着した。だが現在では、ネクロンが持つ驚異的な自己修復機能の影響で、 明確な勝者が現れないまま数年から数百年の間、戦局が膠着してしまうことも珍しくない。
これこそが、どれほど向こう見ずで権力に飢えた貴族階級のネクロンでも、全面的な権力闘争を可能な限り避けたがる理由である。
【戦場におけるネクロン貴族】
あらゆる戦闘において、貴族階級のネクロンは同族らと共に戦場に立って戦う。彼らはネクロン諸王朝の遺跡内へと侵入してくる異種族の不届き者らに対抗すべく、何百個もの戦役を同時に指揮するのだ。
大半のネメソールは、下等なる異種族どもに対して、名誉ある様式的戦闘を持って臨もうと考えもはしないだろう。彼らの目からしてほとんどの異種族は、可能な限り高い効率性とわずかな仰々しさをもって駆除すべき害虫のように見ているからだ。
例えば、アシュルヤニに代表される、高度に進歩した種族らも、ネクロンから見れば同等とみなす価値もない下劣な勢力である。よって、これらの下賤な敵に対してネクロンたちは、暗殺や奇襲など、ネクロン貴族階級同士では禁止されている戦術も、ためらいなく行使するのだ。
ただし、敵の文明度をどの程度とみなしたかに関わらず、ネクロンの支配者たちは可能な限り自ら戦場に立ち、最も過酷な戦闘が展開している場所から、家臣や下僕たちを指揮しようとするだろう。こうすることで、彼らは周囲にいる同格たちに対してのみならず、銀河全域の敵勢力に対しても、自らの優位性を示すことが出来るからである。
ネクロン・ロードやネクロン・オーヴァーロードが自らの戦装束をまとって戦場を闊歩すれば、よほどの強靭な敵や狡猾な敵でない限り、生存の望みは皆無である。彼らの装甲は敵戦車の砲撃にも耐え、彼らの金属製の筋肉は骨を粉々に砕いてしまうほど強い。
そのうえ、彼らは古代ネクロンティール文明の神秘的な武具さえも用いる。例をあげれば「ウォーサイズ」や「タキオン・アロー」に代表されるような、驚異的破壊兵器の数々だ。
ただし、貴族階級のネクロンたちが持つ強大な武器は、こうした物理的とは違い、彼らの精神の中にこそあると言えよう。ファエロンほどの強者になると、ほとんど信じがたいほどの精神力を持ち、周囲の下僕らに対して自らの燃え盛るような決意の意思を分け与え、あらゆる敵に対抗できるほどの強固な兵団を構築するのだ。

画像出典:コデックス「ネクロン7版」(codex:Necrons) Overlordイラストより

  • 「ロイヤルワーデン」

【概要】
ロイヤルワーデンは主君の意思が王朝の大軍勢によって遂行されるよう計らう役割を持つ。彼らはその論理回路によって指揮下の軍勢の戦略を最適化することができるのだ。
彼らは思考の独立性を保持しているものの、リヴィング・メタル製の脳に組み込まれたプロトコル故、その忠誠が揺らぐことはない。ロイヤル・ワーデンはガウス・ブラスターをその手に、密集兵団への命令を下す。

画像出典:Warhammer Community 2020/06/13の記事「Warhammer 40,000 Preview – What’s in the Box?」より(2021/03/02閲覧)

  • 「クリプテック」

【概要】
クリプテックは、銀河全域で秘密裏に活動する「密議団」(コンクレイヴ)のメンバーであり、科学技術者でもある。彼らの目的はただ一つ、ネクロンの持つ奇怪な科学装置群の研究と維持を進めることである。
クリプテックらは、次元不協和、物理的特異点操作、原子核変化、元素変容を始めとして、物理法則に反するような科学技術の数々に熟達しているという。多くの場面で、クリプテックらの行使する力は、他種族の異能者(サイカ―)と呼ばれる者たちの力に酷似しているように見えるが、根本的に原理が異なる。
彼らは、異能者のように変異した精神を用いて〈歪み〉を制御しているのではなく、宇宙の根本を成す力の数々を神秘的科学技術によって操っているだけなのだ。
【密議団とクリプテックの地位】
それぞれの密議団は、「サイコマンシー」、「プラズマンシー」、「クロノマンシー」など、全部で十万種類近く存在するといわれている「テクノ・ソーサリー」のいずれか一分野に特化した研究を進めている。密議団は元々、銀河全域にいるメンバーたちの間で、情報や専門的助言を交換するための組織だったが、クリプテックたちは、ネクロン社会の他のあらゆる構成要素から分断され、滞留していったのだ。
現在まで生き残っている各密議団は、慣習の力によってではなく、より実用的な理由から維持され続けている。各王朝の権力構造内において、クリプテックたちは公的な位階を持っていないが、それでも彼らの影響力はすさまじく強い。
ネクロンティールの貴族たちは元々、自分たちが使用するテクノロジーの動作原理について深く興味を持たなかったが、この傾向は永い時の経過によって次第に薄れ始めている。クリプテックたちの力は、貴族たちが無視してきたこの科学技術を基にしてきた。
「カノプテック・スパイダー」や「カノプテック・レイス」、「カノプテック・スカラベ」などの兵器は彼らによって操作されているのだ。その原理に関心を向ける貴族階級のネクロンは数少ないが、それでも墳墓惑星を支える数々のインフラを最大限に活用するには、クリプテックらによる定期的な保守作業を必要とする。
万が一、保守作業をないがしろにしまえば、クリプテックらは定期的な保守作業を中断し、自ら持つ技術には相当の敬意が必要なことを貴族らに主張するだろう。いかに誇り高く尊大なオーヴァーロードでも、自らの兵団と武器を取り上げられてしまえば、おとなしく非礼についての謝罪を行うしかない。
しばしば、ネクロン・オーヴァーロードの中には、信頼が置けて知識も深いと思われるクリプテックを雇い入れ、自らの王宮に仕えさせる者もいるようだ。だがこのような判断は、政治的なリスクを高めさせてしまう。
王宮に迎え入れられたクリプテックには、既に自らに仕えている他のネクロン・ロードに忠誠を誓っている家臣たちから、敵意や反感を買うことにつながるという。とはいえ、クリプテックが有する優れた知識や技術を自らの手中に収めることの利点は、それによるリスクを大きく上回ると考えられている。
【クリプテックの野心】
クリプテックの野心を抑制するには手段はひとつしかない。他のクリプテックとすげ替えること示すことだ。
王宮に迎えられたクリプテックは、しばしば自らの地位を忘れて増長することがあるため、この場合ネクロン・オーヴァーロードは自らの政敵に仕えている別の扱いやすいクリプテックを報酬などで引き寄せて、現在のクリプテックと交換してしまう。ただ、下手をすればさらに複雑な事態を招くこともあるという・・。
クリプテックは自分と同じ密議団に属する他のクリプテックとすげ替えられることは絶対に認めないが、ライバル関係にある他の密議団のクリプテックであれば、喜んでその申し出に応じる。またこうした策略やそれに対するさらなる策略が、即座の衝突を招くことはないが、クリプテック同士のライバル関係や密議団同士のライバル関係を、さらに激しいものにするだろう。
仮に衝突が起こった場合、二人のクリプテックの間では、テクノ・ソーサリーを用いた一対一での決闘が行われる。敗者となったクリプテックは、極めて悲惨な運命を迎えるであろう。
例をあげると、「液体アダマンチウム」に変化させられたり、宇宙に対して1ナノ秒の位相不一致を起こしたり、微小な中性子物質に代えられて銀河の藻屑となったり、などである。
【クリプテックの役目】
王宮に迎え入れられたクリプテックには、その墳墓惑星での仕事に加えて、惑星外にも頻繁に赴く義務が与えられる。一般的にオーヴァーロードに仕えるクリプテックは、戦役が継続中である限り、「稀少合金パワーコア」、「光線収束クリスタル」などを戦場で優先的に略奪する権利を得ることが多い。
このような契約は、双方にとって有益なものだ。まず、クリプテックが本来の仕事を実行するには、こうした原料や物質が大量に必要である反面、墳墓惑星内の資源は有限だからだ。
またオーヴァーロードの視点から見ても、これらの原料によってクリプテックがテクノ・ソーサリーの力を最大限発揮させられるのであれば、実に都合が良い。テクノ・ソーサリーの力は凄まじい。
その手に握った杖をわずかに動かすだけで、大地を震わせて敵軍の足元に地割れを起こし、大気そのものを発火させて霊魂を奪う闇の雲を召喚し、更には生ける稲妻を天空から叩き落すのだ。これらはまさに神々の武器であり、クリプテックの行く手をあえて阻もうとするのは、神々の如き力を持つ敵だけであろう。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P39 イラストより

【クリプテックの種類】
クリプテックたちは様々な種類が存在し、研究するテクノ・ソーサリーの諸学派は極めて多彩でかつ広範である。クリプテックの種類はいかの分類が存在する。
【テクノマンサー】
クリプテックの中でも「テクノマンサー」は戦場においてネクロン部隊とカノプテック機体を強化、修復する能力を有している。テクノマンサーの中には「カノプテック・クローク」を用いて自分の力が必要とされる場所へ素早く移動するものもいれば、カノプテック制御ノードから放たれる「ナノスカラベ・ビーム」によって遠方から味方を強化する者もいる。
【エーテルマンサー】
エーテルマンサーは大気を操るクリプテックで、学派〈嵐の先駆者〉(ハービンジャー・オヴ・ストーム)に所属する。エーテルマンサーは上空に渦巻く嵐に対して命令を下せる。
彼らは敵陣に向けて雷撃を叩き落したり、荒れ狂う突風をぶつけたりできるのだ。
【サイコマンサー】
サイコマンサーはクリプテックで最も恐るべき化学を研究しており、学派〈絶望の先駆者〉(ハービンジャー・オヴ・ディスペアー)に所属する。この学派に所属する熟練のサイコマンサーたちは、最も引く手あまたである。
彼らは巧みな人心操作者であり、幻惑と強烈な光によって獲物の精神の原始的な生存本能を刺激し、いかに進化した感覚器官さえも乗っ取ってしまう。精神を操る彼らの能力が正しく用いられれば、戦闘が開始される前から敵軍の戦意は粉々に打ち砕かれるであろう。
【クロノマンサー】
クロノマンサーはエネルギーを操るクリプテックであり、学派〈永遠性の先駆者〉(ハービンジャー・オヴ・エタニティー)に所属する。彼らのとるすべての行動は、予見された未来の知識の基づいているのだ。
彼らは未来に起こるあらゆる出来事についていくらかの知識を持っているため、〈永遠性の先駆者〉に心からの信頼を寄せる者は極めて少ないという。「悠久の杖」と「崩壊の杖」によって時間の流れを遅めたり、あるいは速めることで時間そのものを武器にする。
彼らは「時渡りの外套」によって敵の時間をわずかに氷漬けにすることで敵の攻撃を混乱させ、「クロノメトロン」によって味方の時を速めることが可能なのだ。
【プラズマンサー】
プラズマンサーは不安定極まりない殲滅者の特徴を持つクリプテックであり、学派〈嵐の先駆者〉(ハービンジャー・オヴ・ストーム)に所属する。彼らはエネルギーを他の形に束縛するのではなく、ありのままの形で武器として用いる。
彼らのボディーから放たれる不安定な稲妻は付近の敵を破壊し、身振り一つで焼けつくような爆発を同じエネルギーから巻き起こすことができる。
【ジオマンサー】
ジオマンシーと呼ばれる科学分野の熟達者であるジオマンサーは、〈変性の先駆者〉(ハービンジャー・オヴ・トランスモグリフィケーション)に所属する。この分野はかつて、錬金術の名でも知られていた。
ジオマンサーらは、物質をある状態から別の状態へと変性させるための様々な技術をマスターしており、それには無生物に対して意識を吹き込む技術も含まれているという。

  • 「クリプトスロール」

【概要】
クリプテックの中には、奴隷やボディーガードとしてクリプトスロールを伴っているものもいる。背の曲がった不気味な存在であるクリプトスロールは、真の知性を有する存在ではなく、クリプテックの意思によって束縛された被造物であり、彼らはそのリヴィング・メタル製の機体と恐るべき近接武装によって主人を護衛するよう論理的に強制されている。

画像出典:Warhammer Community 2020/06/13の記事「Warhammer 40,000 Preview – What’s in the Box?」より(2021/03/02閲覧)

  • 「ネクロン・ウォリアー」

【概要】
ネクロン・ウォリアーたちは、墳墓惑星の諸軍団において冷たき心臓部を成す歩兵である。彼らは慈悲も感情も持たぬ恐るべき兵士たちであり、まさに死の先触れとしてふさわしい。
彼らの反応はきわめて正確だが、遅く緩慢でもある。また、彼らの細く強靭な四肢にはへこみや腐食がみられ、表面には古びたジョイント部から滲み出すオイル状の液体によって薄く覆われている。
ネクロン・ウォリアーたちの動作はぎくしゃくと不格好であり、そのうえ頻繁にシナプス回路に不具合を起こし、つまずいたりよろめいたりする。事実、ネクロン・ウォリアーの中でも特にみすぼらしい外見をしているのは、その目に輝く光をチカチカと点滅させており、認識能力もひどく散漫し、まるで歩く死体の一種に見えるだろう。
ネメソールの指揮下にある他の戦力とは異なり、ネクロン・ウォリアーは自律的に動ける兵ではない。彼らは指揮官の絶対的意思に完全に隷属しているのだ。
指揮官から単純明快な行動方針を与えられない限り、ネクロン・ウォリアーたちはの戦術的認識能力はほぼ無いに等しい。特定の命令を与えられてない場合、彼らは密集陣形(ファランクス)を取って自動的に防衛ルーチンに沿って行動する。
正確無比なるガウス銃器の一斉射撃で、敵の攻撃を退け続けるのだ。ネクロン・ウォリアーたちは、絶対に言葉をしゃべらないため、彼らの戦闘行動は全て沈黙と静寂のうちに行われる。
言語の発音などという贅沢な機能は、機体の設計段階から既に削除されていたのだ。 ただし、重度の損傷を受けると、電子的変調音の絶叫を上げる。
まるで正者たちが上げる苦痛の叫び声の奇怪なパロディーのようだ。この断末魔の絶叫が、他のネクロンたちに警告を行うための意図的な機能なのか、それともネクロン・ウォリアーたちがわずかに残った自我が忘滅の恐怖におびえてあげる反射的な行動なのかは、もはや誰にもわからない。
【沈黙の行進】
洞察力や直観力には欠けるが、その代わりネクロン・ウォリアーたちは耐久力と断固たる決意を持つ。ひとたび命令を受け取ると、彼らは命令のみに盲目的に従い、いかなる疑念も抱かずに黙々と自らの使命を全うするのだ。
しかも、それぞれのネクロン・ウォリアーたちは、かなり大きな損傷を被ったとしても戦闘を続行できる。四肢を切断しようが、首をはねる程度では、彼らの前進を止めることは不可能だ・・。
彼らのボディーに備わった高度な自己修復メカニズムによって、ものの数分で戦闘に復帰してしまうのだ。彼らは現実の事象をほとんど認知できていないが、ネクロン・ウォリアーたちは決して恐れ知らずの兵ではない。
彼らの中では動物的本能はすでに消滅したか、あるいは無意味な概念となっているが、それでもその精神の片隅では未だに"わずかな自己防衛欲求"が残っている。ネクロン・ウォリアーの近くに危険が迫る際は、しばしばこの本能が危険を認識するよう彼らに促すのである。
自らの生存本能からくる危険認識回路の動作を停止させることに成功すれば、そのネクロン・ウォリアーはどんな危険な状況でも戦闘を継続できるだろう。例えば、猛爆撃下の洗浄や、あるいは地雷原の中など、明らかに機体が破壊されるだろう過酷な状況下でも、彼らは何ら躊躇もなく行進するのだ。
【過酷なる現実】
ネクロン・ウォリアーたちが機知や自我にかけている理由は、〈生体転移〉のプロセスの副作用によるものである可能性もある。まだ、ネクロンティールが存在した〈肉体の時代〉において彼らは、戦士ではない職工人や商人、農夫や書記などといった下層市民だったのだ。
そんな彼らは戦争の怪物へと造り変えられてしまい、貴族階級や戦士階級のような入念で精密な〈生体転移〉は望まれなかっのだ。〈生体転移〉が原因で彼らの自我や機知が失われてしまった可能性があり、最初から貴族階級らが意図的に下層市民らの自我や機知を奪って奴隷戦士に仕立てあげたのではないかとも言われている。
また、後に訪れる永遠の闘争において奴隷的な戦士が必要不可欠だと考えられたという説も存在する。貴族階級に従える忠実にして不屈なる歩兵軍団を造り上げるために・・。

画像出典:コデックス「ネクロン3版」(codex:Necrons)表紙イラストより

  • 「ネクロン・イモータル」

【概要】
イモータルはネクロンティール軍における最精鋭部隊であり、疲れを知らぬ金属のボディーとともに生まれ変わった歴戦の古参兵たちである。かつて、ネクロンたちがこの銀河を始めて征服した際、彼らは無数のイモータル兵団による猛攻に次ぐ猛攻を仕掛ける戦法を取った。
数百年以上にも渡って、イモータル兵団はネクロン文明における銀河征服を阻む者すべてに罰と滅びを与えていった。〈天界の戦争〉の終盤において、数兆体以上のイモータルが破壊され、かつての栄光はもはや見る影もないが、それでも未だに数百万体以上のイモータルが現在も自らの墳墓惑星で隔世の時を待ち続けているという。
銀河再征服へと乗り出す時を待ちわびながら。
【戦闘教条】
墳墓惑星軍の突撃部隊(ショックトループ)であるイモータルたちは、ネクロン・ウォリアーたちよりもバリエーションに富んだ反応能力を持つ。彼らはかつて得た戦術的、戦略的経験の大部分を、今なお維持しているからだ。
事実、機械のボディーと頭脳を得たことによって、イモータルの能力は研ぎ澄まされ、衰えることなく効率的かつ正確無比な戦闘を行えるようななったのだ。イモータル密集部隊には、自由裁量権が与えられており、ゆえに彼らが使用可能なすべての戦術と策略を駆使して、任務を達成することが出来る。
ただ、これはイモータルに弱点が存在しないというわけではない。イモータルの持つ弱点の中で最も顕著なものとして、彼らに学習能力がなく、新たな形の戦闘に適応できないことである。
滅多にない例だが、古代ネクロン文明の戦術を適用しないでイモータルを投入した際は、彼らはその戦況に最も近似性が高いものと思われる対抗戦術を選択するだろう。しかし、その戦術がどれだけ有効かは度外視されてしまう。
幸運にも、そういう事例はきわめて少ない。どれだけ科学技術が進歩しようとも、彼らの戦術思想は〈天界の戦い〉の時代から大きく変化していないのだ。
【理解力なき兵士】
彼らの音声は平坦で、無機質で、感情の欠片もこもってないが、イモータルは会話機能を有している。彼らの音声は、オーヴァーロードたちの空虚な声よりも、遥かに無感情で魂なき声色だ。
これにより彼らは、上位のネクロンに対して戦況をより正確かつ客観的に報告でき、ネクロン・ウォリアーらに対して命令を下し、最前線における戦闘効率を大幅に向上させることもできる。これらの特徴を別にすれば、イモータルたちの高度な会話能力は限定され、適切な情報を伝達すべき際に、しばしば論理と手順を際限なくループする状態に陥ってしまう。
また、自らの理解能力限界を超える質問や、あるいは理解不能な概念が会話に存在した場合、イモータルは単純に何も返答もない。長大にして荘厳なる演説や修辞的な独り言は、偉大なるネクロン・オーヴァーロードのみが許された特権なのだ。
逆に考えれば、戦闘開始に先立ってネメソールが行う演説は気が遠くなるほど長く、イモータルが理解できない高等な内容を含まているので、イモータルたちは内容を理解せずに、ネメソールを見つめたままこれを聞きとげる。こうして無駄な演説を終えて命令が下され終わると、イモータル部隊はやっと動き出し、戦闘へと身を投じるのだ。
【装備品】
イモータル部隊には対応力には欠けてるものの、彼らはそれを補って余りあるほどの火力と耐久力を有する。イモータルのボディーは、ネクロン・ウォリアーよりも強固な装甲で守られており、ヘヴィボルターやアサルトキャノンの一斉射撃を受けても、雨粒のごとくはじき返す。
これらの射撃は、彼らに引っかき傷をいくつか付ける程度にすぎない。もしイモータルが大きな損傷を受けて斃れたとしても、彼らの中に備わっている自己修復システムにより、下位のウォリアーよりもさらに精密かつ効率よく回復していくのだ。
イモータル部隊が繰り出す反撃を受けてもなお立っていられる敵は、ほとんどいないだろう。「ガウス・ブラスター」の射撃は一撃で、ほぼ全ての種類の装甲を貫通し、敵の肉をはぎ取るからだ。
イモータル部隊が接近するほどガウス・ブラスターの一斉射撃の間隔は短くなってゆき、至近距離に近づいた場合には近くの物陰に隠れる以外に防ぐ手はないだろう。しかし、遮蔽物に隠れた程度ではイモータルの猛攻を生き残れはしない。
彼らは放つガウス・ブラスターの射撃は、遮断物や岩すら消し炭に変えてしまう。その背後に隠れている敵もまた灰塵と化し、戦場をを吹き抜ける風に乗って飛ばされてゆくだけだ。

画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons)P48 イラストより

  • 「リッチーガード」

【概要】
古の時代において、リッチーガードたちは貴族階級の近衛であり、「決して堕落せぬ高潔なる魂を持ち、全身全霊をかけて自らの務めにうちこむ者たちである」と讃えれていた。こうした主張の一部は誇張されたプロパガンダだったが、確固たる事実に基づいていたのもまた事実である。
確かにリッチーガードらは、一般の兵士よりも強い忠誠心を捧げているが、彼らもまた人間的な弱さを持つ定命の存在に過ぎない。しかし、肉体を捨てた今の彼らには、主の命令を逸脱する可能性など微塵も残されていない。
〈生体転移〉時に行われた記憶痕跡の入念な操作により、絶対的な忠誠を可能とした。各リッチーガードは、特定の貴族あるいは特定の王朝に属する全貴族が下す命令に対して忠実に従うようプログラムされたのだ。
これに加え、リッチーガードは自我の大部分を維持しており、ファエロンや同格の貴族が危険にさらされると考えられる状況において、彼らの代役として「密使」(エミッサリー)や「副官」(ルテナント)の役割を果たす最高の人材といえる。
【高性能なボディーと装備】
彼らは貴族階級のネクロンたちの間で用いられるのと同等の重装甲機体をもつため、外見的特徴は極めて威厳に満ち溢れる高圧的な姿である。彼らがこのようなボディーを与えられるのが許されているのは、ごく実用的な理由に過ぎない。
ボディーガードである彼らが十分頑強なボディーを持っていなければ、貴族階級のネクロンたちを守り通せないからだ。また、リッチーガードが持つ重装甲機体は荘厳なまでの尊大さを放ち、貴族らに挑もうとする敵は、彼らを無視することはできない。
リッチーガードたちの姿は、あらゆる戦場において最激戦地で姿を見る。これは、司令官を守るリッチーガードの周囲が、常にネクロン軍の再集結地点となる場合や、司令官を討ち取ろうとする敵は、彼らの部隊を優先的に攻撃目標としなければならないからだ。
ネクロン軍の大部分と同様、リッチーガードの武装も様式と伝統に則った形で厳密に決められている。リッチーガードの多くは、自らの主が持つ武具庫から直々に賜った重厚な刃を持つ「ウォーサイズ」を装備し、これをリッチーガードの持つ強力な筋力で振るうと、貫通できない装甲はないと言っても過言でなない。
より強い影響力を持つネクロン・オーヴァーロードは、大規模なリッチーガードの密集部隊を配備しており、その装備は「ハイパーフェイズ・ソード」や「ディスバーション・シールド」をとなることが多い。この組み合わせは、ウォーサイズよりも攻撃力に乏しいが、その分ディスバーション・シールドが持つバリアー展開機能によって築かれた強固な防衛ラインですらも、少しづつ確実に切り開いて前進する。
彼らの耐久力は圧倒的であり、たとえ包囲攻撃用の砲弾や、衛星軌道防衛レーザーを撃ち込まれても、リッチーガードたちを全滅させることは容易くはないだろう。
【戦闘教条】
装備に関わらず、リッチーガードたちは闇雲な攻撃を数回繰り出すことを嫌い、計算され尽くした必殺の一撃で敵を仕留めることを好む。また自らのボディーは、そのような必殺の一撃を繰り出す好機が来るまで耐え忍ぶだけの耐久性を有すると確信も持っている。
下級のネクロンと違って、リッチーガードたちは血染めの務めにプライドを持ち、そして喜びさえも感じているのだ。一部のリッチーガードはあまりにもプライドが強すぎ、不正確で無様な攻撃を繰り出してしまった場合に、周囲の仲間たちに許しを請うことさえあるという。
このため、戦闘の喧騒の中で武器を大上段に構えたまま直立不動の姿勢で立ち尽くし、必殺の一撃をを繰り出す好機をしばし待つリッチーガードもいるという。そして、リッチーガードに好機が到来すると、手に持った刃を振りかざし、何物にも遮れぬ必殺の円弧を描きながら、敵の手足や首、あるいは胴体を真っ二つに切断するのだ。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P48 イラストより

  • 「デスマーク」

【概要】
数え切れぬほどの千年紀に渡り、デスマーク部隊は貴族階級のネクロンたちに、狙撃手や暗殺者として仕えてきた。デスマークたちは、生身であったころから既に、「冷酷なまでの正確さと忍耐力を持つ」と高い名声を勝ち得ていたのだ。
そして今、疲れと無縁である金属の体を持つデスマークたちは、〈血肉の時代〉よりも遥かに危険な存在と化している。デスマークたちは、イモータルやネクロン・ウォリアー同様、ネクロン軍の一部を成しているものの、この部隊の投入には伝統に則った厳密な制限が存在している。
デスマークたちは、暗殺と奇襲を得意とする刺客(エージェント)であるため、ネクロン貴族同士の戦争にこの部隊を用いてはならず、また、"敬意を払うに値する敵"にも使用が禁じられている。幸いにも、ほとんどの異種族はネクロンから見たら無価値で下等な相手であり、中にはその価値を証明する敵もいるかもしれないが、それまでの間は下賤な相手としてみなされるだろう。
またデスマーク部隊に遭遇してなお生存し、この暗殺部隊の情報を仲間に伝えられるような敵司令官は、ほとんど存在しない。よって、ほとんどの伝統的で前例主義的なネメソールたちは、遭遇するほぼすべての異種族らに対してデスマーク部隊を躊躇なく投入できるのだ。
たとえ、ネクロン側から"敬意を払うに値する"と認められたとしても、その敵がすでに死体と化していれば、もはや意味はない。所詮、死体は死体であって、それによって敵が何らかの恩恵を得られることはまずないのである。
【戦闘教条】
戦闘開始時、デスマークがネクロン軍の主力部隊と同時に戦場へ展開されることは滅多にない。その代わり、彼らは物質世界から一歩わき道に逸れた場所に立ち、超次元の地下牢(ウブリーチ)の中から戦況をうかがっている。
ここはいわば、過去と現在の狭間にまたがって存在するポケット状の次元空間であり、デスマークたちは必要とあらばこの空間に何日間も待機し、出撃の好機を待つのだ。ネクロン軍の司令官によって、混戦の真っただ中に召喚されることも時にはあるが、ほとんどの場合、戦場への到着タイミング決定はデスマークたち自身の判断にゆだねられている。
生体転移以降も、デスマークたちの狩猟本能はほとんど鈍っておらず、多くのネメソールは彼らのこの力を信頼しているからだ。超時空の聖域から、デスマークたちは敵が使う情報通信チャンネルの目的座標を傍受し、敵軍のテレポート誘導光源や衛星軌道上からの降下兵がどの座標に到着するかなどを容易に分析する。
これによって彼らは、敵司令官の戦力配置や増援到着位置の裏をかくことができるのだ。攻撃目標を決定し、その座標トラッキングが完了したら、デスマーク部隊は超次元の地下牢を抜け出し、音もなく戦場へ現れる。彼らが姿を現すのはたいてい、攻撃目標に対して遮断物なく射線を通せるような、高台や廃墟の上などだ。
ここからデスマークたちは獲物に対して、「ハンターズ・マーク」を照射する・・。デスマークの名の由来ともなっているこの照準マークは、不気味な緑色の光輪(ヘイロー)として、敵の頭の周囲に出現するだろう。
この光輪は五つの次元に渡って煌々と輝きを発するため、獲物がどれだけ遠くに逃げようと、またどんな手段を使って逃げようとも、もはやデスマークの追跡をかわすことはできない。通常、このマークが永遠に残留することはなく、たいていは一時間程度で消失するが、一時間という時間はデスマーク部隊が狩りを完遂するには十分すぎるほど長い時間なのだ。
事実、攻撃目標にされた敵部隊は、ハンターズ・マークの照射から数秒ほど生きていられれば十分幸運といえるだろう。ほとんどの敵は、デスマークたちが持つ長銃身のシナプス破壊狙撃銃の射撃によって、一瞬にして壊滅状態に陥るからである。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P50 イラストより

  • 「フレイド・ワン」

【概要】
フレイド・ワンは死体漁りの怪物として知られている。彼らは〈天界の戦争〉の終わりを発端とする、ある恐るべき狂気の犠牲者なのだ。
フレイド・ワンに降りかかった呪いは、ク・タンの一つである〈皮剥ぐもの〉「ルルアンドゥ=ゴール」の置き土産ともいえる。かつてネクロンがク・タンに叛旗を翻した際、他の兄弟たちは破片に変えられたのだが、〈皮剥ぐもの〉は完全に消滅させられた。
だが断末魔の瞬間に、〈皮剥ぐもの〉は裏切り者のネクロンらに対して恐るべき呪いをかけ、彼らの精神を自らの飢えの残響によって汚染したのである。それから途方もない年月が過ぎ去ったが、〈皮剥ぐもの〉の呪いはまだ表面化せず、誰もその存在には気づいていなかった。
ようやく呪いが現れ始める頃、これに感染したネクロンたちはすでに銀河の隅々へと旅立ったため、彼らは意図せぬ形で狂気の疫病を無数の惑星へと拡散してしまったのである。 〈皮剥ぐもの〉の呪いに冒されたネクロンは、緩慢な拷問のごとく正気を蝕まれてゆく。
【恐るべき呪い】
呪いに冒されたネクロンはやがて、肉を持つ敵の血みどろの死体にまみれることを楽しむようになり、皮や筋肉などの不快な戦利品を敵から奪って身に着けたいという欲求に駆られるようになる。狂気が進行するとにつれて、感染者は戦場に転がる死体を貪りたいという衝動を抑えきれなくなるだろう。
むろん、彼らは死体の肉を食べたり、吸収したりすることはできない。代わりに、敵の血液を自らの装甲外骨格の継ぎ目にしみこませ、その足を鮮血のプールへと浸すのだ。
無意味と知りつつも、こらえきれない飢えを満たすため、血を貪ろうとしているのである。感染者には間もなく、外見の物理的変化が生じてしまうだろう。このネクロンのボディーは歪み、荒廃し、更には機体機能やプロトコルにまでもひずみが生じる。
最終的に、呪われしネクロンは姿を消してしまう。得体の知れぬ衝動に襲われた彼らは、人類の知らぬポケット状の次元空間に引き込まれ、フレイド・ワンの巨大な納骨堂のごとき宮殿の中を永遠にさまよい続けるのだ。
【戦闘教条】
他のネクロンたちは、フレイド・ワンが媒介する疫病を恐れ、彼らを忌避している。そのため、感染を疑われたネクロンは、それを蔓延させ始める前に追放されるか、あるいは破壊されるだろう。
だが、どれだけ事前に注意を払っていても、すでに戦闘が開始された戦場にフレイド・ワンの一団が合流してくることは、避けようがない。フレイド・ワンたちは、いつでも現実空間に実体化できるからだ。
彼らはちと虐殺の臭いに引き寄せられるようにして、荒涼たる異次元空間から姿を現す。フレイド・ワンが戦術に則った攻撃を繰り出すことは滅多にないが、「今が即座に攻撃を仕掛けるべきタイミングかどうか」を判断すべき知性は持ち合わせているため、攻撃目標が無防備な姿をさらすまで密かに追跡を続けようとする。
フレイド・ワンたちが敵の風下にいる場合、腐りゆく肉の臭いが濃くなるため、この戦法はより効果が高まるだろう。そして攻撃のチャンスが訪れると、フレイド・ワンたちは一瞬の躊躇なく敵に襲いかかり、甲高い狂気の機械音を発しながら歪んだ鉤爪で獲物を切り裂くのである。
敵が逃げ出した際、フレイド・ワンがこれを追跡することはまれであり、他の新たな犠牲者を血祭りにあげようとすることが多い。また、敵の抵抗が極めて激しい場合、フレイド・ワンたちは迷わず退却を選び、物陰に飛び込んで姿を隠し、より容易に倒せる獲物が見つかるのを待つ。
【オーヴァーロードからの反応】
多くのオーヴァーロードたちは、フレイド・ワンが戦場に出現することで得られる有利を受け入れようとしない、また、フレイド・ワンが引き起こす想定外の行動に対して、わざわざ自らの戦闘計画を変更しようとはしないし、仮にしたとしてもごくわずかな修正である。
フレイド・ワンの戦力は確かに極めて有効ではあるものの、戦闘が終了次第、生き残っているフレイド・ワンを全て処刑するように命令するオーヴァーロードも少なくない。だが、残念ながら、簡単に処刑できるのは、極度に狂ったフレイド・ワンのみである。
他のフレイド・ワンは腐肉の神殿に戻るべく、超次元の横道へと逃げ込んでしまうからだ。奪ったばかりの戦利品でその身を飾り、鮮血を全身から滴らせながら・・。

{画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P53 イラストより

  • 「トライアーク・プラエトリアン」

【概要】
ネクロンの諸王朝において、プラエトリアン(護法官)らはトライアークが敷いた支配体制を維持する役目を負い、戦争や政治が古の戒律に則っていることを確実なものとする。このため、プラエトリアンは政治的身分階層の外に立ち、支配者たちの振る舞いや行動が古き法令に背いていないか同化を監視し矯正する権利と力を有しているのだ。
彼らの監視対象には、ロードやオーヴァーロードだけでなく、ファエロンまでもが含まれているという。同時に、トライアーク・プラエトリアンには、更に高次の責務が課せられてもいる。
それはネクロン諸王朝を滅亡から守ることであり、王朝の法と戒律が闇の中に消え去るのを防ぐことだ。この点において彼らはかつて大きな失敗を犯した。
あらゆる意味において、またあらゆる観点において、ネクロンの諸王朝は〈天界の戦争〉の時代に破壊されたからである。この時代、トライアーク・プラエトリアンたちは最前線に立って戦ってたが、彼らの奮闘もむなしく、迫り来る破滅を押しとどめることはついにできなかったのだ。
この恥辱が、生き残ったプラエトリアンたちの上に重くのしかかり、彼らを次々と逃避的な休眠状態へと追いやる。〈天界の戦争〉の最後の火花が散り終わることには、最後まで戦い続けていたトライアーク・プラエトリアンたちも、銀河北辺にあるネクロンティールの古き権力の座へと撤退していた。
【栄光なき逃亡】
アエルダリの反撃から自らを守るために。隠された要塞の中で、トライアーク・プラエトリアンたちは来るべき未来の構想を練った。「これからな何千年紀先になるかわからぬが、いつの日か必ずネクロンは、再びこの銀河を征服するために打って出るだろう・・。その時には、我らが再び古き戒律を行き渡らせねばならない。」と。
十分な試験が行われていない「ステイシス・テクノロジー」には高い失敗の可能性がつきまとうこと、そして自分たちよりも先に休眠状態に入ったプラエトリアンたちは永遠に目覚めることはないだろうと知っていた彼らは、ネクロンとしての正体を隠し、銀河全域を広く放浪し始めた。数え切れないほどの野蛮な惑星で、彼らは恐ろしい外見を持つ神々のようにふるまったのだ。
彼らはネクロンティール文明の法や戒律を、疑うことを知らぬ無垢な現在種族たちに与え、自分たちにとって理想的な形へとその惑星の社会や文化を作り替えていった。完全にトライアーク・プラエトリアンたちの教えを受け入れて残ったのはごく少数の文明だけであり、それ以外の多くは戦争屋自然災害によって崩壊するか、あるいは復讐に燃える〈方舟〉「アレイトック」の強行偵察部隊によって滅亡させられた。
アレイトックのアエルダリたちは、これによってトライアーク・プラエトリアンの企みが完全に打ち砕かれたであろうと確信したが、それにもかかわらず、以降の長い時の中で、断片と化したトライアークらの智慧と天文学はネクロンが一度も訪れたことのないような星にまで広がり、そこで生き延びたのである。
【挽回の時】
現在、ネクロンたちの覚醒が進んでいる中で、トライアーク・プラエトリアンたちは今こそかつての失敗を拭い去る好機だと感じている。彼らは銀河全域を旅し、墳墓惑星から墳墓惑星を渡り、ばらばらになってしまった古代ネクロン諸王朝の断片をつなぎ合わせようとしているのだ。だが、銀河は想像を絶するほど広大であるため、そのプロセスは極めて長く、気が遠くなるほど歩みの遅い計画になるだろう。
しかも、ネクロンの惑星座標情報の多くは失われて久しい。それでもトライアーク・プラエトリアンは、この遠大なる探索をやり遂げるために十分な忍耐力と、またそれを必ずややり遂げて見せるという燃えるような決意を抱いている。
ひとたび墳墓惑星と接触が持たれ、新たな王朝としてまとめ上げられると、その惑星の永続性を確かなものとするために、トライアーク・プラエトリアンの兵団が派遣される。その王朝の社会プロトコルを管理し、惑星の防衛にあたるため。
このため、フォーメーションを組んだトライアーク・プラエトリアンたちの姿は、惑星奪還戦争の中だけでなく、侵略者に対する墳墓惑星防衛戦争の最前線でも頻繁に目撃される。仮に、プラエトリアンによる支援を拒否できる状態だったとしても、あえてそれを行うようなネクロンの貴族はいないだろう。
悠久の時を経てもなお、トライアーク・プラエトリアン部隊の戦闘能力はほとんど鈍っていないからだ。
【戦闘教条】
トライアーク・プラエトリアンが戦闘の第一波に加わることは稀である。彼らはまず、「重力変異パック」を使って戦場の上空を浮遊する事を好む。
これから彼らは戦場を観察し、どこで自分たちが介入すれば最も大きなインパクトを戦況に及ぼせるかだけではなく、敵の行動そのものを注視するのだ。トライアーク・プラエトリアンたちも、他種族を下等なものと軽蔑してかかるネクロンの一般的な気質を有してはいるが、彼らは他のネクロンよりも長きにわたってこれらの敵を観察し続けてきたため、しばしば一部の生物を"敬意を払うべき敵"であると讃え、これに対して戦う時は太古の戦闘戒律に則らねばならないと宣言する。
このような宣言は、ネクロン軍の司令官をしばしば苛立たせるだろう。プラエトリアンによる法や戒律のきめ細かい運用は、戦闘を実行するうえで障害となりうるからだ。
だが、トライアーク・プラエトリアンの発言をあからさまに却下できるようなネメソールは極めて大胆で向こう見ずな者といえるだろう・・。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P55 イラストより

【デストロイヤー・カルト】

  • 「ローカスト・デストロイヤー」

【概要】
ローカスト・デストロイヤーは、狂気にまみれた殺戮の申し子だ。彼らは 「この銀河から、あらゆる生命の灯火を消す」 という抑えがたい渇望に支配されており、それが彼らの持つ唯一の存在意義でもある。ローカスト・デストロイヤーは境界線や忠誠心といったものに関心を持たず、また無垢なる者と堕落せし者を区別することもない。
全生命体がデストロイヤーの敵であり、そして全生物がデストロイヤーの獲物なのだ。ローカスト・デストロイヤーは墳墓惑星の他の住人と比べて実に異様な存在だが、その理由は、彼らを蝕む暴力的な狂気だけではない。
狂気に関していえば、デストロイヤーは劇的ではないにせよ、〈大いなる眠り〉の中にあるネクロンの多くには狂気が宿っているのだから。(こうした狂気はネクロンの奇行を少し悪化させるぐらい)狂気に加えてデストロイヤーは、ボディーの形状に対する執着がないという特徴を持つ。
一般的なネクロンの多くは、血が通った生身の体への回帰を切望しており、今の人型の体を維持したいというのが主な考え方だ。一方、デストロイヤーにとっては最も重要なものは殺戮であり、そのためならばすべてを犠牲にする。
彼らは、殺戮の務めを果たすためであれば、「リパルサー・プラットフォーム」のために脚を除去したり、腕部にガウス・キャノンの制御装置を組み込んだりするのだ。ボディーのみならず、デストロイヤーはターゲットロックの精度や弾道予測の精度を上げるためであれば、退化した感情を切り捨ててニューロンを繋ぎ直すことさえ平然とやってのける。
ただ、これはデストロイヤーが恐れを感じないという意味ではない。退却は戦力の保存という説明をつけることも出来るが、それでも退却は退却である。デストロイヤーであろうとも自衛本能を喪失することはできず、時に彼らは自衛本能の命ずるがままに逃走を行うのだ。
【王朝内の立ち位置】
デストロイヤーの台頭に関して憂慮すべきなのは、貧しい辺境惑星から高貴なる王権惑星まで、ほぼすべての墳墓惑星に渡って彼らが存在しているということである。これは、この特殊なる狂気の形が、全ネクロンの滞在意識に存在する何らかの命令によって突き動かされている可能性を示している・・。
恐らくこれは、生体転移が施された時にク=タンによって埋め込まれたものであろう。一方これは「ネクロン社会の全階級からデストロイヤーが現れるという可能性がある」ということを意味してはいない。
というのも、これほどまでに残酷なる決意を持って虚無主義を受け入れるには、下位のネクロンには認められていない”人格の自由”がある程度必要となってくる。それ故、デストロイヤーは例外なく、イモータルやリッチーガード、そして時にはデスマークの中から現れるのだ。
こうして現れたデストロイヤーのほとんどは、墳墓惑星の外れへと放逐され、ローカスト・ロードとその家臣団によって支配される孤立した要塞に住まうこととなる。
【戦闘教条】
デストロイヤーの破壊への執着心は恐ろしいほどに凄まじく、あらゆるネクロンの軍団にとって貴重な戦力となるであろう。デストロイヤーは他のネクロンに対して、(たとえどの位階のネクロンであっても)服従するという性質を持ち合わせてはいないが、どんな戦役においても敵を効率的かつ残虐に屠ってゆく彼らの戦闘能力は、この欠点を補って余りあるものだ。
慎重で狡猾なネメソールであれば、この歪んだ殺戮戦士たちを自らの作戦に強制的に従わせようという無駄な試みはせず、代わりにデストロイヤーたちに思うがまま戦わせ、それに沿って自らの戦略を組み立ててゆくだろう。付近に生命体が存在することを察知している限り、デストロイヤーの悪意はそれらを破壊することだけに向けられ、命令や戦略といった自分とは関係ない事柄には一切興味を示さないからだ。
敵を視界にとらえるやいなや、デストロイヤーたちは味方の存在をほとんど(あるいは全く)考慮に入れず、最適化された独自の撃滅行動パターンを開始する。ガウスウェポンによる長距離射撃を一斉に放ち、その後至近距離へと接近し、黒焦げになったクレーター内にうごめく生存者らを徹底的に駆逐してゆくのだ。

画像出典:コデックス「ネクロン8版」(codex:Necrons)P52 イラストより

  • 「ローカスト・ヘヴィ・デストロイヤー」

【概要】
デストロイヤー・カルトは殺戮への最適化のためならば自らの機体をどのように変化させることもいとわない。ローカスト・ヘヴィ・デストロイヤーは反重力のソリのような機体によって戦場に滑り進むと、上肢に備え付けられた「ガウス・デストラクター」もしくは「エンミティック・エクスターミネイター」によって遠距離から敵を撃滅する。
画像出典:Warhammer Community 2020/06/13の記事「Warhammer 40,000 Preview – Beyond the Box」より(2021/03/03閲覧)

  • 「ローカスト・ロード」

【概要】
彼らはローカスト・ロードと呼ばれ、自らを忘滅(オブリビオン)の先触れとみなしている。通常のローカスト・デストロイヤーよりも高い知性を持ち、恐ろしき武力を誇る狂信的な破壊者たちだ。
全てのネクロンが、意図されていた通りに〈大いなる眠り〉から目覚めたわけではない。〈時なき墓所〉の故障や不備などの理由によって、長い時の流れの中で機械の体が少しずつ朽ち果てていったり、あるいは記憶痕跡回路の一部が腐食してしまった者も存在するのだ。
この他に、「フレイヤー・ウイルス」に感染し、鮮肉の味を求め続けるだけのネクロンもいる。また、物理的には問題ないものの、精神面で回復不能なダメージを負った状態で眠りから目覚めてしまったネクロンさえもいるのだ。
自らが魂無き存在へと堕ちてしまったことに対して激しく怒り、やがて絶望したこれらのネクロンたちは、その心を虚無主義(ニヒリズム)によって支配されやすくなる。 ローカスト・ロードはただ、全ての生者に対して死の抱擁を与えることだけを望むようになるのだ。
彼らの中でも、ローカスト・ロードは特に熱狂的な者たちだ。その理由はおそらく、彼らが通常のデストロイヤーよりもはるかに高い知性を維持し、それを駆使して彼らは銀河全域へと生者討伐に乗り出すためである。
彼らには共感能力が完全に欠如し、ローカスト・ロードたちが行う殺戮は恐ろしく効率的だ。ごく一部のネクロンたちは未だ、慈悲や憐れみといった概念を本能レベルで理解する能力を維持しており、彼らの中でも特に高い知性を持つ者は、それらの概念を知性的に把握することが可能である。
だが、ローカスト・ロードたちにそういった特徴は微塵も見られない。彼らは遥か遠い昔に、 あらゆる共感能力を捨て去り、怪物同然の存在となったからである。
もし、ローカスト・ロードが敵を捕虜にすることがあっても、そこに敬意や同情は無く、あくまでも効率を高めるためだ。捕虜は他の生者を引き寄せる餌として使うなどの、千通りもの方法で活用できることを彼らは知り尽くしている。
この銀河には大量殺戮を繰り返す独裁者らであふれかえっているが、その中でもローカスト・ロードは真に恐怖すべき暴君として異彩を放っている。他の独裁者らは、自らの快楽や邪神への供物のためなどの理由から殺戮を行うが、ローカスト・ロードにとってはただ単純に、血の聖戦ことが自らの選んだ道と考えているのだ。
彼らの演算的思考の中では、喜びなどという感情は無意味であり、神から授かる褒賞もまた、生身の生者らの脆弱性を助けるための無価値な概念でしかない。
【他のネクロン・ロードからの反応】
事実、あまりにも躊躇なく機械の抱擁を受け入れようとするローカスト・ロードたちの行動には、ネクロン・オーヴァーロードでさえも困惑を覚えるという。オーヴァーロードたちの多くは「この虚無主義者らは、銀河から全有機生命体を抹殺し終えた後、やがて我ら同族にさえも攻撃を加えてくるのではないか」と危惧しているのだ。
結果として、ローカスト・ロードの大半は疎外され、異端視されている。彼らは地位や称号をはく奪され、ネクロン文明の外縁部や周辺を放浪し続けるのみ。
さもなくば、彼らの持つ熱狂と狂気が、他のネクロンにも影響してしまう危険性があるのだ。
【戦場におけるローカスト・ロード】
戦場において、ローカスト・ロードは極めて手ごわい敵となるだろう。彼らの物理的な強大さはオーヴァーロードたちにも匹敵する。
また多くの者は、射撃武器よりも「ウォーサイズ」や「ヴォイドブレイド」といった白兵武器を好む。ローカスト・ロードらは、いわば恐るべき殺戮職人であり、乱戦の中に身を投じることにより、さらに効率的な血の収穫を上げようと考えているのだ。
ローカスト・ロードの繰り出す攻撃には、芸術性など微塵もない。彼らの振るう攻撃の一撃には、ただ純粋なる効率性への追求だけが存在する。
ただ奇妙なことに、こうした理由から、ローカスト・ロードの攻撃がしばしば”意図せぬ壮観さ”を導き出してしまうこともあるようだ。例として、三体の敵と戦闘する際は、三回の斬撃を繰り出すより、一発の斬撃でまとめて三体を殺戮する方が迅速かつ効率的であると計算し、また計算通りの攻撃を精確に実行する。
下等種族はおそらく、リスクが高すぎるなどの理由により、このような戦い方を避けることだろうが、彼らはそうしたリスクも計算した上で恐るべき確実性を持って行動する。全てのディティールを完璧にかつ、綿密に計算し尽くせば、それには恐れるリスクなど微塵も存在しないのだ。

画像出典:コデックス「ネクロン5版」(codex:Necrons)P31 イラストより

  • 「スコーペク・ロード」

【概要】
スコーペク・ロードはその高貴なる出自からかけ離れた存在に堕しており、殺戮への執念がその心と体を歪めている。彼らは三脚の脚部で歩き、「エンミティック・アナイアレイター」によって獲物を粉砕する一方、その爪と刃は戦場から真紅の収穫を狩り取る。

画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons)表紙イラストより

  • 「ヘックスマーク・デストロイヤー」

【概要】
ヘックスマーク・デストロイヤーはかつてデスマークであった。この背中の曲がった怪物は、待ち伏せする捕食獣のごとく異次元空間から出現し、逃れ得ざる射撃の嵐を解き放つ。
独立した視覚照準装置と最適化された射撃パターンによって、獲物がその狩りから逃れることは不可能なのだ。

画像出典:Warhammer Community 2020/08/20の記事「Warhammer Preview Online: Shadow, Iron & Broken Realms」より(2021/03/03閲覧)

  • 「スコーペク・デストロイヤー」

【概要】
スコーペク・デストロイヤーは獲物を殺戮するために、圧倒的な威力を持つ近接兵装を好む。一見すると戦場に不釣り合いなその三本足の姿は無謀な旋回を繰り広げながら敵の戦列を突破し、「ハイパーフェイズ・ブレイド」で切り刻む。
その攻撃を避けたり受け流すことはほとんど不可能だ。

画像出典:コデックス「ネクロン9版」(codex:Necrons) P25イラストより

  • 「オフィディアン・デストロイヤー」

【概要】
他のネクロンとは異なり、オフィディアン・デストロイヤーは作業機械であるカノプテック・レイスやおぞましきフレイド・ワンの能力を、殺戮に最適化された自らの機体に積極的に取りこんでいる。熱狂的な暴力性と次元転移エネルギーによって固いフェロクリートさえも掘り進むと、彼らは思いもよらぬ場所から奇襲を仕掛け、獲物をバラバラに引き裂くのだ。

画像出典:ゲームズワークショップ公式通販サイト「Ophydian Destroyer」 商品画像より(2021/03/03閲覧)


ク=タン・シャード


我は星々の滅びすら目にしてきたのだ。定命の者よ。神そのものが屈し、打ち砕かれ、奴隷となる姿もな。それでも汝は抗うというのか?
メルフリット王朝のオーヴァーロード、ラクラス

【概要】

ク=タンシャードは、絶大なる力を誇った〈星界の神々〉の成れの果てである。 彼らはネクロンによる反逆を生き延びた、いわば"神々の破片"だ。
以前とは逆に、彼らはネクロンに奉仕するエネルギー体へと成り下がってしまった。ク=タン・シャードの大半は、かつての被支配者に対して絶対的隷属を強いられており、ネクロンの命令なしでは行動すら取れない。
ク=タン・シャードが反逆したり、制御機能が不具合を起こした場合、ただちに二十安定(フェイルセーフ)機能が自動的に起動し、そのク=タン・シャードを墓所へと呼び戻す。ネクロンが危機的状況に陥り、その力を再び必要とされるまで、彼らは墓所で非活性化されて何世紀にも渡って眠りにつく。
これらの予備装置が用意されているのにもかかわらず、ネクロンたちは戦闘でク=タン・シャードを使用するのにはかなり慎重な姿勢を取る。逃げ出す可能性はほぼ無いが、それでも可能性はゼロではない。
よほどの危機が迫った時のみ、ネクロンたちは四次元立方体の迷宮を開き、ク=タン・シャードを再び戦場へと解き放つ。
【ク=タン・シャードの特徴】
弱体化し、束縛された状態にもかかわらず、ク=タン・シャードが無限に近い力を持つことに変わりない。彼らはエネルギーの爆風を生み出し、下等種族の精神をコントロールし、時の流れを変え、敵を別の現実へと放逐することが出来るのだ。
ク=タン・シャードの能力に限界を与える要素は二つだけ・・。彼らの想像力(ただし、想像力は無限大)と、破片となった時に失ったおぼろげな記憶である。
どのク=タン・シャードも、全能であった時代の記憶を完全に有してはいないが、同時にそのいずれもが当時の個性と傲慢さを引き継いでいる。彼らは、少しの身振りだけで戦車をどろどろの融解液に変えてしまう力を持つが、皆がそのような単純な行動を取るわけではない。
彼らは破片となる前の始祖がそうしたように、他の個性的な手段を取る。戦車の操縦者を原始的なアメーバにまで退化させたり、あるいは操縦者を欺いて混乱を起こしたりなどで、状況を解決させようとするのだ。
ク=タン・シャードを倒す唯一の方法は、そのエッセンスが閉じ込められたリヴィング・メタル製の〈骸体〉(ネクロダーミス)を破壊することである。〈骸体〉が破壊されると、ク=タン・シャードはまばゆいエネルギーの光となって爆発し、銀河の風に乗って四散するだろう。
【隷属されしク=タン・シャード】
ク=タン・シャードは実に過酷な運命に苛まれている。ネクロンティールを欺き、彼らの魂を貪り喰らったこれなる存在は、かつては強大な力を振るう星々の神であった。
スザーレクは、想像を絶するほど膨大な宇宙のエネルギーを利用した兵器によってこれなる存在を粉砕し、報復を果たした。だが、ク=タン自体が、現実宇宙を構成する要素その物と不可分であったため、完全に破壊することは不可能だった。
ク=タンは、以前の強力な力の残響を宿した、微細な破片「ク=タン・シャード」ど化したのだ。だが、破片とはいえ依然として侮りがたい力を秘めていたため、スザーレクはク=タン・シャードを「テッセラクトの迷宮」と呼ばれる超次元の牢獄に封印した。
ク=タンを兵器として戦場で開放する際、クリプテックはその超常的テクノロジーの枷を用意し、知性のない獣のような状態のク=タン・シャードを、まさしく獣のように追い立て、主の意のままに使役する。無論、ク=タンがその枷を食い破られて自由を獲得することも皆無ではない。
その時は、ネクロンとその敵の双方に、筆舌に尽くし難い破滅が訪れるのだ。
【ク=タンの伝説】
現在、ク=タン・シャードの多くがネクロンに隷属しているのは事実だが、それは〈星界の神々〉すべてを支配しているわけではない。ク=タンのような存在が銀河のあちこちで発見されている噂はあるが、それらの多くは単に不可解な力を行使する霊的存在に過ぎないとされる。
事実、そのような霊的存在の正体が何であれ、観察者が未熟な場合や軽信しやすかったり、単に未熟であった場合はそれをク=タンと認識してしまうものだ。こうした誤情報の錯綜は、生き残っているク=タンの数に関して大きな混乱を与え、その影響はアエルダリにも及んでいる。
〈黒の図書館〉(ブラックライブラリー)に収められた記録は、ウルスェに残された記録と矛盾しているし、さらにこれはアレイトックに保存された記録とも食い違っているのだ。存在するク=タンが四柱や四千柱かもしれないし、その間かもしれない。
しかし全てのアエルダリは「〈帝国〉が保有する知識の断片は、あまりにも不完全で支離滅裂であるため、たとえ新たな発見があっても、その発見ごとに真実から遠く離れてしまうだろう」という共通認識を持っている。ク=タンの存在する証拠を探そうとする者はだれであれ、それを簡単に見つけることが出来ても、それは客観的な証拠ではなく、観察者の願望や嗜好を含めた主観的なものになるからだ。
【ク=タンの弱点】
無敵の力を誇るク=タンを従えればもはや敵なしと思われているが、彼らにも大きな弱点が存在する。それは〈歪み〉(ワープ)を理解できないことである。
〈渾沌の領域〉から引き出される〈歪み〉の力は、ク=タンの力を弱めさせ、〈歪み〉の中では生き残ることが出来ない。特にク=タンは魔術師やサイカ―の影響を受けやすく、彼らにとっては脅威となっている。
また、この唯一の弱点を取り除くため、ク=タンらは永遠に〈歪み〉を遮断する計画を持っていたこともあったという。

画像出典:キャンペーンサプリメント書籍「Shield of Baal: Exterminatus」 The Darkest Rage イラストより

【主なク=タン・シャード】

  • 「“欺くもの”メフェトラン」

【概要】
“欺くもの”の名を持つク=タン・シャードは、恐るべき種族の中でも最も欺瞞にたけた存在である。策略や欺瞞、嘘を用いて自らの目的を達成することを楽しむ。
メフェトランという名はネクロンティールらが名付けた名で、彼らはク=タンと自主族の橋渡し役として期待されていた。彼はク=タンの種族を代表し、〈沈黙の王〉と取引を行って種族全体を〈生体転移〉へと仕向けたのだ。
彼は〈天界の戦争〉の末期に粉砕され、拘束具の如き〈骸体〉に拘束された今もなお、“欺くもの”の欠片は致命的な真実と紛らわしい虚偽を混合した発言を行う。定命の者たちの感覚で、虚偽と真実を見抜くことは不可能である。
【固有の力-宇宙的狂気】
“欺くもの”のク=タン・シャードは、その力を用いて犠牲者の意識の中に広大かつ恐怖に満ちた宇宙の真理を流し込み、最も強い意志の持ち主でさえも瞬時に、回復不能の狂気へと駆り立てる。

画像出典:コデックス「ネクロン3版」(codex:Necrons) イラストより

  • 「“夜をもたらすもの”アザゴロド」

【概要】
“夜をもたらすもの”として知られているク=タン・シャード。その痛みと死に対する愛は記念碑的であり、苦しみと絶望をもたらす生きた神である。
アザゴロドは惑星エネルギーを喰らっていたが、後に彼は惑星エネルギーよりも人間の生命エネルギーの方がはるかに優れた食料として気付き、彼の敵となる人間は次々と美味なる餌として次々とエネルギーを喰らい尽くした。
そのため、敵はその身が彼の前に晒されたとき、命のエッセンスそのものが搾り取られることになる。かつてこのク=タンは“逃れえぬ刃”アザゴロドと呼ばれており、その幽鬼の如き姿、陰の頭巾をまとい輝く鎌を振るうその姿は、銀河のあらゆる原始文化の伝説において死の象徴として登場したという。
【固有の力-死の眼光】
シャードの目と開かれた口から放たれた暗黒のエネルギーは、敵を焼け焦げた骨の山に変え、その上に霜を降らせる。

画像出典:コデックス「ネクロン3版」(codex:Necrons) P28イラストより

  • 「“虚ろの竜”マグラドラス」

【概要】
“虚ろの竜”として知られているク=タン・シャードで、アエルダリの神話で「ヴォイドドラゴン」とも呼ばれている。それは物質宇宙のマスターであり、実質無敵の戦士として知られていた。
神話では不具の鍛冶神「ヴァール」のタリスマンを首にかけた際に、ヴォイドドラゴンの弱点となる光がこぼれて敗北したという。ヴォイドドラゴンが戦場に降臨すると、周囲の空気をひずんだ電気の叫びで満たす。
“虚ろの竜”は身振りひとつで下等種族の戦闘兵器を破壊し、そこから生じる崩壊エネルギーを、まるでブラックホールの重力井戸のように吸い上げることで、自らの揺らめく肉体の糧としているのだ。
【固有の力-流電の嵐】
このク=タンが尊大に手を伸ばすと、周囲の空気は怪物的な唸りで満たされ、敵はうろたえて逃げ惑う。その恐るべき音は次第に高まってゆき、遂には鮮緑色の雷光の嵐となって爆発して、触れるあらゆるものを破壊していく。

画像出典:ゲームズワークショップ公式通販サイト「C'tan Shard of the Void Dragon」 商品画像より(2021/03/03閲覧)

  • 「トランセンデント・ク=タン」

【概要】
ネクロンによって束縛されしク=タンの欠片は、生体兵器としてネクロンに仕える。そうした欠片の中でも最も大きな力を有するのがトランセンデント・ク=タンだ。
トランセンデント・ク=タンは、純粋な元素エネルギーが炸裂したク=タンであり、数十個から数百個のシャードの集合体から成り立つ。その力はシャードの総数を遥かに超えるという。
そのあまりの強大さ故、通常はネクロンの技術の全てを使用して無力化措置が施されている。その宇宙的な力が解き放たれた時、現実空間そのものが引き裂かれることとなる。
しかし、その力はネクロンにとっても敵にとってもかなり危険であり、まさに諸刃の刃として機能する。

画像出典:ゲームズワークショップ公式通販サイト「Obelisk & Transcendent C'tan」 商品画像より(2021/03/03閲覧)

【ク=タンが顕示せし力】
ク=タン・シャードは、現実をもゆがめてしまう力を持つ。彼らの能力は多種多様であり、それらは彼らの親と呼ぶにふさわしい存在が振るっていた力を思い起こさせるようなものだ。
  • 反物質のメテオ
このク=タン・シャードは荒れ狂う反物質のオーブを練り上げ、これを敵中へと投じる。

  • エントロピーの接触
ク=タン・シャードの腐りきった抱擁が敵に触れたとたん、みるみるうちに金属が腐食してゆく。

  • 死の凝視
邪悪なるエネルギーでその目を赤く燃え上がらせたク=タン・シャードは、周囲にいる者たちの生命力を吸い取ってゆく。

  • 大いなる幻影
ク=タン・シャードは欺きの魔力を編み、ネクロン軍の真の位置が明らかになるのを防ぐ。

  • 世界を形作りしもの
歪められた岩がきしんだ音を立てながら粉砕され、ク=タン・シャードの敵の頭上から大岩が降り注いでる。

  • 炎の欠片
ク=タン・シャードは赤々と燃え上がる黒い物体を生み出し、そのまま敵に投げかける。

  • 星界の焔
ク=タン・シャードの身振りと共に、天から黒き焔の柱が地面に伸び、敵を飲み込んでいく。

  • 自我を持つ特異点
このク=タン・シャードの存在は重力場を不安定にさせ、エンジンやテレポートビームの動作、〈歪み〉を用いた移動などを妨害する。

  • 超自然の灰燼
渦巻く暗黒の雲がク=タン・シャードを敵の目から覆い隠す。

  • 星霜の矢
因果の流れを一時的に変化させ、直後に再構築することによって、ク=タン・シャードは時が始まる前の暗闇へと敵を投げ込むことができる。

  • 星降りの空
冷たき宇宙の深奥にて輝く美しき光球は、近付くにつれて荒々しき隕石となり、轟音と共に降り注ぐ。

  • 超次元の雷撃
ク=タン・シャードは、広げた手のひらからバチバチと音を立てるエネルギーの稲妻を投げ放つ。

  • 地殻粉砕
自然界がク=タン・シャードの存在に強い嫌悪感を抱く。このク=タン・シャードが周囲に存在すると、まるで現実を繋ぎ止める物理的法則が崩壊するかのように、大地が身もだえし、振動する。


各種兵器とビークル

ネクロンの軍勢は、下等種族らには魔法のようにも思える高度な科学技術を有している。それらを利用した様々な兵器やビークルを用いて敵に大いなる滅びを与えるのである。
恐るべきネクロンの兵器群についてはこちらを参照されたし。


小ネタ

ネクロン族の設定は5版頃から大きく変わっており、4版までは星界の神々「ク=タン」に現代でも支配されて戦う種族だった。
そのため、王朝設定や個々の上位ネクロンが意思を持つ設定などは5版から変更されて追加されたものとなっている。

我々が不在の間に、下等種族が一体何を成し遂げたというのか。かの者らの業績がいかに哀れなもので、その戦略がいかに粗雑であるか。かの者らはあまりにも愚かであるゆえに、自らが壮大なる宿命に向かって前進しておると錯覚しておる。かの者らの文明などは、ネクロンティールの栄光ある歴史の脚注で僅かに記されるに過ぎん。
〈嵐の王〉イモーテク

追記・修正を行う際は、生体転移を済ませてからお願いいたします。

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最終更新:2024年04月03日 16:25