ペンギンの問題 令和大問題編

登録日:2021/03/23 (火) 01:02:13
更新日:2024/04/07 Sun 16:16:41
所要時間:約 7 分で読めます






人気アンケート1位
アニメ化・映画化
ゲーム化・ホビー化
小学館漫画賞受賞

いくつもの栄光とかつてない歴史を刻んだ

読者待望の作品

復活





令和大問題編とは、『ペンギンの問題』の読み切り作品。

概要


コロコロアニキ2021年春号に掲載された『ペンギンの問題』の後日談を描いた漫画。
『ペンギンの問題』はコロコロコミックにおいて大ヒットを飛ばした作品であり、その実績が冒頭でアピールされている。
読者アンケート漫画の『つるセコ読者アンケート伝説』では、読者アンケートでも『爆球連発!!スーパービーダマン』と共に新作の要望が多かったことから掲載されたという事情が語られた。

作者の永井ゆうじはコロコロアニキ初参加となるが、コロコロアニキは2021年春号で紙媒体が休刊となるために「雑誌のアニキ」へは最初で最後の参加となる。
メッセージでは「久々のペン問だったので1巻を読み返したら、現在の自分との絵とのクオリティーの違いに驚いた」とのこと。
連載当時は若手だったと振り返っているが、15年も経過したら作画も大きく変化するので確かに本人でも違いに驚くだろう…。

作品内容は結構衝撃的な話。連載当時を考えると後味の悪い世界観設定で物語が開幕し、基本的にギャグはない終始シリアスな内容。
柱コメントでは現代を鋭く描くということをアピールしており、「令和大問題編」というタイトルからも分かるように令和時代の社会問題が元ネタの作品となっている。
舞台設定が恐らく2021年と思われる点から察するに『ペンギンの問題』という作品的な時系列では『+』も含めて現時点で最後の話となる(後述のような「ギャグ的に何十年間経過する」話が本編にあるが…)。

ちなみに、コロコロアニキ2021年春号の付録である歴代のギャグ漫画のエピソードが収録された別冊でもペンギンの問題が掲載された。
そちらは2010年に『週刊少年サンデー』に出張掲載した際の「将来の問題」というエピソードの再録だが、こちらのエピソード内で70年経過している。
このエピソードでは2020年に関する言及や勉学に集中したベッカムの姿が描写されているが、本作の内容を考えると皮肉な抜粋エピソードと言える…。

あらすじ


荒れ果てたコンビニに入店した木下ベッカムは、どこか薄汚い身なりで強張った表情をしていた。

誰もいない店内を物色して消費期限の切れていない栄養食を発見すると、険しい表情でそれを食べ始めた。
食事の最中にコンビニの窓にふと視線を移すと、向かいのビルの屋上に人影を発見すると動揺してビルへと一心不乱な様子で向かい、その正体がマネキンだと知ると落胆する。

落胆するベッカムは屋上から街並みを眺めるが、そこには建造物や車こそ見えるが人気のない市街地が広がる。
虚しい風が吹くとベッカムの足元には人類滅亡の危機を煽る新聞紙が流れ着いてきた。

新聞の記事を眺めたベッカムは、突如として得意ギャグだった「ごペンなさい」を空に向かって絶叫するが、その声に応じる反応は起こらない。
ペンギンの問題の世界は人類が病気によって滅亡しており、ベッカムのみが鳥類だったことで友人が次々と死ぬ中で人類を対象にした病気には感染せずに生き残った。

誰も自分に反応しない世界での孤独はベッカムの精神を蝕み始め、ついにベッカムはある行動に出る…。

登場人物


  • 木下ベッカム
本作の主人公。本編からはベッカム以外のキャラはベッカムの回想でしか登場していない。
人類を襲った伝染病はペンギンには感染しなかったようで生き延びることに成功するが、結果として世界で唯一の生き残りになってしまった。
話す相手を探しているが見つかるはずもなく、かつて自分の自慢の一発ギャグだった「すベッカム」や「ごペンなさい」を一人で披露しても当然反応を返す者がいない現実に対して精神が限界を迎え、過去の世界に戻ることを願った末に「本当に戻る」ことを思い付き…。

考察


病気や世界観に関して

ベッカムの語る「人類を滅ぼした病気」はその詳細は語られていないが、現代風刺と言う作品コンセプト的に新型コロナウイルス騒動がモチーフだと思われる。
人類は作中で見える範囲では完全に全滅しているため、感染力や致死性が相当高いウイルスだった模様。

建造物の機械がまだ作動していることや消費期限の切れていない食べ物もある点から、人類滅亡から時間はあまり経過していないと見られる。
絶望的な見出しの新聞記事やゴミが散らばる街の描写から見るに、人類は末期を迎えるに至ってそこそこ荒れていた様子。

非人間キャラはどうなった?

作中ではベッカムが鳥類だったために人類を滅ぼした伝染病の危機から逃れたという説明がある。
しかしこの作品自体は小林ジョニーや岡本5兄弟などのベッカム以外にも知能のあるペンギン*1の個体は存在*2するため、彼らがどうなったのかという説明はない。

人間ではないリスのマイケルもベッカムの反応的に死んだと考えられるが町を見る限り虫や植物も絶滅している可能性すらあり、伝染病は鳥類に効果はなくともリスにも…もしくは 鳥以外の全て に効果があったのだろうか?。
ベッカムのいた人類滅亡の世界は2021年だと思われるため、2006年にいたリスは寿命で死んでいる(ちなみにマイケルは8歳)可能性もあるが…。ただし、舞台年月設定は常に発表時だが年齢は一定…*3だが。

時間移動に関する疑問

このエピソードは最終的に1話の冒頭に繋がっており、実際に1巻を読むと一層話が楽しめるという注釈が付け加えられている。
1話でベッカムが行っていた意味不明な様子も、今回の話ではベッカムなりに「バカバカしい日々を過ごしたい」という意図があった事が推測できるようになっている。
コロコロアニキの公式Twitterでは本作の宣伝ツイートでは結末が第1話に繋がると明言されており、令和大問題編は第1話に繋がるという所謂「エピソード0」だったと考えられる。
ただし、1話の描写とは細かい部分で以下のような相違点が発生している。

  • ショーケースから出てきたベッカムを見た親子連れが驚いているが、第1話ではアイスを買おうショーケースの中を見た際に驚いているという違いがある
  • シャルロット、マイケル、ゴードン、ポールが校門の付近で登場しているが、第1話ではこれらのキャラの姿は確認できない。単に第1話にもいたがコマで描写される範囲で映っていなかった可能性もあるが…。

このように決して無視できない第1話との矛盾点が見当たり、令和大問題編は第1話と完全に繋がっていると考えるには疑問が生まれる。
第1話が令和大問題編のラストの描写に再構成・上書きされたのだとメタ的に考えればそれまでの話ではあるが…。
令和大問題編における時間軸の移動は、以下のような様々な謎が浮かび上がる。

  • ベッカムの経歴
令和大問題編が第1話に繋がると素直に解釈しても、今度は「令和大問題編のベッカムの歩んだ歴史」という点に謎が浮かび上がる。
第1話が令和大問題編を前日談に経由して生じたエピソードと考えた場合、令和大問題編のベッカムは本編と違う経歴で仲間との日々を過ごしていた可能性も出てくる。
上述したベッカム以外のペンギンの存在に関する謎も、本編とは異なって令和大問題編の時間軸ではいなかったからと説明することが出来る。
一方で「ごペンなさい」を用いている事から、少なくともこのギャグが生まれたエピソードと同様の歴史か或いはそれに近い歴史は間違いなく経験している事になる。

  • 過去のベッカムの存在
過去の時間軸にいるはずの「2006年7月の時代のベッカム」の存在が見当たらないという点も気になるところではある。そのあとの記憶があることを考えると「2006年7月のベッカム」と「このエピソードのベッカム」が同一個体とは考えにくい。
作中では、未来からの訪問者であるベッカムがそのまま「第1話できりかぶ小学校にやってきたペンギン」として出現するという描写・説明になっている。
つまり第1話のベッカムは未来からの訪問者であり、過去介入がない場合にいたはずの2006年のベッカムという個体はどこかに消えたことになる。

可能性として考えられるのは「第1話に限りなく近いがベッカムがいない2006年のパラレル的時間軸」に辿り着き、別の世界線で第1話と同じ展開に入る場面で幕を閉じたとも考えられる。
微妙に異なる過去の時間軸に到達したとするならば、上述の描写の相違点も一応は説明が可能となる。

  • ループ?
様々な疑問などから、ラストシーンは捉え方次第では『ペンギンの問題』という作品の世界観自体が「未来で孤独に絶望した主人公が1話を完全再現しに過去に戻る」というループ構造だったとも考えられる。
しかし、この解釈では作品にあまりにも救いがない事にもなってしまう。



ぶっちゃけた話で言うと、上述したような作中でも数十年の月日がギャグ的に経過するエピソードもあったので深く考えるだけ野暮だとも思われる。
メタな話やらメチャクチャな設定やらと何でもありな世界観の作品ではあるし、そもそも令和大問題編は社会問題や感染症をテーマにした作品であり、タイムスリップ要素は重視して考えるべき要素ではないとも言えるか。
令和大問題編では本編の時間軸が連載開始時期の2006年の7月と明言されているが、実際は『+』を含めて2014年まで続いた長期連載作品だったので、その辺りから見ても今回だけの単発設定とも考えられる。
この手の「最終回からタイムスリップして第一話に戻る」話は結構よくある話だしな

それにしてもスーパーマリオッさんといい、本家コロコロでの看板キャラのコロコロアニキにおける扱いはなかなかブラックである。





追記・修正は人類が伝染病で滅亡した後にタイムマシンを作った後にお願いします。

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最終更新:2024年04月07日 16:16

*1 全て南極出身であることを告白しているが、同一種かどうかは不明。

*2 実際になおとが「この漫画喋るペンギン多すぎだろ」と思っていた模様。

*3 1話で何十年も経過する話はあるが、次回では何事もなかったのかのように若返っている。