ティラニッド(ウォーハンマー40K)

登録日:2021/03/31 (水) 21:38:01
更新日:2024/02/26 Mon 11:56:26
所要時間:約 76 分で読めます




“集合意識体(ハイヴマインド)は飢えている・・。”


画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P33 イラストより






ティラニッドとは、ウォーハンマー40Kに登場する異種族の一つである。ティラニッドは他の異種族の中でも“宇宙人”というよりも“宇宙怪獣”という呼び名の方がふさわしいだろう。
外銀河から来たティラニッドは生きた宇宙船である「生体艦」(バイオシップ)の艦隊「巣窟艦隊」(ハイヴフリート)を率いて惑星を襲撃する。降り立ったティラニッドは惑星に存在するありとあらゆる有機体を貪りつくし、生命体を抹殺する。
宇宙怪獣と聞いたら某空想科学特撮シリーズのように巨大な宇宙怪獣数匹もしくは単体が襲いかかってくると思う方も多いだろう。 しかし、ティラニッドは人間サイズの怪獣からビルほどの大きさを持つ巨大な怪獣まで数兆匹の個体が惑星全土に襲いかかってくるのだ。
いくら怪獣退治の専門家である某科特隊某光の巨人だけでは3分持たずに全滅するだろう・・。他のSF作品で例えると、あれとかこれを足して二で割った種族といってもいいだろう。
襲撃されたら最後、惑星は有機体が一切存在しない岩石の塊と化し、ティラニッドは次の獲物を求めて銀河中を襲撃し続ける。奴らの目的はただ一つ、 銀河の有機物を全て貪り喰らうことだけだ。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P4,P5 イラストより


概要



〈人類の帝国〉が異種族、異端者、そして〈渾沌〉との戦いに明け暮れている中、広漠たる宇宙の彼方、別銀河から恐るべき脅威が迫ってきた・・。かの者どもは、 〈大いなる貪るもの〉(グレイト・デヴァウァー) 〈万物の破滅〉(ドゥーム・オヴ・オール・シング) 〈歪み〉を侵食する影(シャドウ・イン・ワープ) などの異名を持つ・・。
かの怪物どもは無数の名で呼ばれ、それは銀河に生きる全ての種族がかのものどもを恐れ、嫌悪してきた。ティラニッドは“究極の外敵”であり、その姿は見るもの全てに理屈抜きの本能的な恐怖をもたらす恐るべき宇宙害獣である。
その短剣のような牙やカミソリのような鋭い爪は、人間を一瞬にして肉塊へと変えてしまう。そしてティラニッドが持つ武器である「兵器共生体」(ウェポン・シンバイオート)からは、小型の寄生生物が銃弾のように発射されて犠牲者の肉体に突き刺さると、内部から肉や内蔵を貪りつくすのだ。
ティラニッドには無数の個体種が存在するが、そのどれも例外なく完全無欠の生けし殺戮兵器として機能する。その全ての個体は獲物を殺し喰らうだけに誕生したといっても過言ではく、かの物どもらは究極の捕食生物であり、我ら人類は餌の一種として狙われているのだ。
更にティラニッドは場合によっては、協力者が敵の体制を崩壊させることも造作もない。その協力者は 「ジーンスティーラー・カルト」 と呼ばれており、知的生命体の文明を陰から侵食してティラニッドによる襲撃を支援する。
ティラニッドの全総個体数は、常人の想像を絶する規模であり、その一つの大群は惑星の表面を覆い尽くすほどの数が襲いかかってくる。そして、このティラニッド個体群(ブロッド)を統率するのは、謎の知性 「集合意識体」(ハイヴマインド) という人智を超えた存在だ。
集合意識体から発せられる命令はサイキックのテレパシーを通じて 「脳幹個体」(シナプス・クリーチャー) から各ティラニッドへと伝搬する。ティラニッドは野生生物の凶暴さを持ちながらも、まるで一糸乱れぬ兵隊のように個体群を率いるのである。
ティラニッドは他種族との意思疎通を必要としない。なぜならば、彼らにとって他種族は単なる捕食対象でしかなく、意思疎通の必要がないからだ。
そのため、 ティラニッドは、和平も、交渉も、降伏も通用せず、いかなる慈悲も期待してはならないのだ。 ティラニッドに立ち向かう時、我々に残された選択肢は二つに一つしかない。
奴らを抹殺するか、あるいは貪り食われるか。二つに一つである。
画像出典:コデックス「ティラニッド5版」(codex:Tyranids)表紙イラストより


ゲーム上の特徴



異能者(サイカー)を多く有する勢力でもあり、各ユニットの能力も個性やクセがはっきりしている。各ユニットの個性をちゃんと把握すれば大いに活躍させれるが、逆に把握していないと扱うのが難しい。
ティラニッドには指揮官枠の「シナプスクリーチャー」と兵士枠の「下位個体」が存在し、下位個体はシナプスクリーチャーから一定の範囲を保たないとペナルティが課させる。下位個体が強力なシナプスクリーチャーを守りながらいかにして活躍させるかがカギとなる。
また、編成によっては設定どおりの“数の暴力”で押し切るようなコンセプトで戦うことも可能。ティラニッドは使いこなせれば面白いアーミーだが、理解するまでが難しく、時間がかかる。
なお、別勢力のジーンスティーラーカルトとも組ませて戦うことが可能。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P3 イラストより

種族の生態


「〈帝国〉は今、忌むべき癌によって蝕まれつつある。あらゆる生命が吸い尽くされ、枯れ果てた死滅惑星のみを後に残しながら、それはゆっくりと、だが着実に〈帝国〉の内側へと進み続けているのだ。
それは思考能力を備えた恐るべき冒瀆の権化であり、想像を絶する広範囲、おそらくは銀河系規模で活動している。今の我々にできることは、生体改変を重ねたこの怪物どもの侵攻を押しとどめようと試みることのみ。
我らはこの恐怖を克服すべく、ティラニッドという呼称を与えた。しかし、ティラニッドは我々をどう呼称するであろうか?
推測し得る答えはただ一つ・・・“餌”である。」
異端審問官チェヴァック、ハールの密儀にて



画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P28 イラストより

【概要】
ティラニッドは、人類が今まで遭遇したあらゆる異種族(ゼノ)の中でも、最も異質な存在として恐れられている。彼らは究極の捕食生物であり、この銀河に存在する全有機物はティラニッドにとっての餌なのだ。
いや、より正確に言うとティラニッドにとってあらゆる有機物は、新たなティラニッドを生むための資源に過ぎないのである。この銀河では、どんな種族であっても、栄養源となるものを摂取しなくてはいけない。
ティラニッドも例外ではなく、かの物どもはまるで 農作物に群がるイナゴの大群のように、行く手に阻む者をすべて喰らい尽くしながら進む、銀河規模の害虫のような生命体なのだ。 ティラニッドによって狙われた惑星は、凶暴な大量の個体群にその全土を覆われ、地表に存在するありとあらゆる生物資源を貪り食われてしまう。
【ティラニッドの起源】
ティラニッドは我々の住む天の川銀河で誕生した種族ではなく、外銀河から到来してきた異種族である。「ティラニッド」という名前自体も種族自身が名乗っているわけではなく、 〈帝国〉が初めて遭遇した惑星「ティラン」にちなんで名付けられた。
彼らがなぜやってきたのかという理由としては、第41千年紀(西暦40000年頃)から約1万年前に起こった〈ホルスの大逆〉に遡る。忠誠派の「アイアンウォリアー」兵団のスペースマリーン「バラバス・ダンティオク」は、総主長の「ロブート・グィリマン」と「ライオン・エル・ジョンソン」を救うため、惑星「ソーザ」にある謎の遺物「ファロス」を暴走させてしまう。
その結果、ティラニッドはこの天の川銀河に向かって襲来してきたという。そして、ティラニッドは銀河間の虚空を渡る間は冷凍休眠状態に入っており、数千年かけてこの銀河へと到来し、休眠から目覚めた後に様々な種族に対して大規模な捕食が開始された。
各ティラニッドの巣窟艦隊は地球(テラ)から発せられる〈星辰波〉(アストロノミカン)に引き寄せられて襲来している。ティラニッドはいつ生まれ、どの銀河からやってきて、どのようにして進化を遂げたのかは全て謎に包まれている。
【不滅なる飢え】
ティラニッドは知的生命体のように、版図拡張、復讐のための清算などの理由で惑星を攻撃することはない。ティラニッドは居住のための惑星や領土を必要としないし、 そもそも感情という概念を持っているかどうかすら疑わしいほどだ。
かの物どもらは本能に従い、 果てしない飢えを満たし、良質な生命体を吸収するために惑星を攻撃する。 ティラニッドが惑星を攻撃する際は、その全個体が唯一絶対の目標を達成するために完璧な状態で統率される。
その目標とは、標的惑星に存在する全有機体と生物資源の速やかなる摂食に他ならない。ティラニッドは基本、宇宙空間に生息する種族であり、惑星の地表へと降下してくるのは、その惑星を攻撃し、貪り喰う時だけである。
【巣窟艦隊(ハイヴフリート)】
ティラニッドの 「巣窟艦隊」(ハイヴフリート) を構成するのは、不気味な触手を持つ何千もの宇宙艦艇である 「生体艦」(バイオシップ) だ。これらの生体艦は、1隻1隻が途方もなく巨大な生命体であり、その内部には無数の下位個体群がうごめき、内臓じみた個体培養房の中で次々と新たな個体を生み落としている。
各生体艦の中で産生された「個体群」(ブロッド)は、その親である生体艦のみに奉仕し、また各生体艦も、自らの所属する巣窟艦隊にのみ奉仕するのだ。巣窟艦隊が侵攻してくるルートは触手と呼ばれており、その数は一本の時もあれば、巣窟艦隊によっては数本の触手を伸ばしてくることもあるという。
〈帝国〉の「生物学賢人」(マゴス・バイオロジス)らは、ティラニッドによる惑星侵攻を詳細に分析し、分類してゆく中で「個々の巣窟艦隊がそれそれの固有の意図を持ち、他の巣窟艦隊と餌を奪い合っているかのように思える」という結論を導き出した。各巣窟艦隊は自給自足が可能であり、固有の攻撃パターンや得意な戦法を持つと同時に、特定の外敵に対抗するため独自の戦闘個体を有することがわかる。
しかしながら、その根本にある事実は、あまりにも難解であり、常人の想像力を遥かに超えている・・。我々の銀河で観測されているすべての巣窟艦隊は、ただ一つの超巨大巣窟艦隊から分岐した、大規模な 「分遣艦隊」(スプリンター・フリート) の一つに過ぎないのだ。
そしてその中心には、すべての分遣艦隊と巣窟艦隊の中心には、ただ一つの、計り知れざる知性が存在する・・。それこそが、「集合意識体」(ハイヴマインド)に他ならない。
【集合意識体(ハイヴマインド)】
集合意識体とは、全ティラニッド個体をサイキック的な力によって統制していると考えられる、謎めいた存在である。集合意識体が存在するからこそ、無数のティラニッドたちは、まるで統合思念を持つ一つの生物かであるかのように、整然とした協調行動が取れるのだ。
言い換えるならば、集合意識体とは、 数兆を遥かに超える規模のティラニッドの意識が統合された、単一の知性体なのである。 個々のティラニッドを見てみると、一部には極めて高い知性を持ち、論理的思考が可能な個体もいるが、残る大部分のティラニッドは、人間レベルには遠く及ばない低い知性しか持ち合わせていない。
これらの「下位個体群」は、ハイヴマインドの意思を成し遂げるためのいわば“道具”に過ぎず、それぞれがきわめて単純な行動のためだけに産出されており、またそれが各個体種の存在意義でもある。
つまり、小型の下位個体群のほとんどは、自我や思考といったものを持たず、単一の行動目的を果たすためだけに生み出されているのだ。より大型で高等な個体になると、その知性は増し、極めて限定的ではあるが、状況判断に基づいて行動する権限すらも委ねられている。
だがもちろん、そのティラニッド個体がどれだけ行動決定権を持っていようとも、常に集合意識体の大いなる医師が優先されることに例外はない。集合意識体からの直接的な影響を受ける度合いは、「ティラニッド・ウォリアー」や「ハイヴタイラント」といった高等な個体種になるにつれて増大してゆく。
それゆえ、これらの個体種は、周囲のティラニッド個体群とコミュニケーションを取る能力が与えられている。ただ、彼らの用いるコミュニケーション手段とは、 言語によるものではなく、本能的なテレパシー能力の一種と呼ぶべきものだ。
彼らはテレパシー能力を用いて、集合意識体の命令を周囲の個体群へと伝播させるのである。「脳幹個体」(シナプス・クリーチャー)とも呼ばれる、これら指揮個体によって率いられたティラニッドの大群は、単一の知性から下されたサイキック的命令によって強制統率され、一糸乱れぬ完璧な協調行動を取る。
だがその反面、脳幹個体が殺されると、集合意識体と下位個体群を繋ぐサイキック的なリンクが途切れてしまい、下位個体群の大半は統制を欠き、野蛮な本能行動しか取れなくなってしまうのだ。このリスクを回避するため、大規模なティラニッドの群集団においては、指揮系統である脳幹個体が単体ではなく複数体存在するのが一般的だ。
かの物どもは複数の脳幹個体間で網の目のようなサイキック的通信網を形成し、統率力の安定化と強化を図っている。
【群集団を構成する怪物たち】
巣窟艦隊が持つ全ての宇宙艦艇とその武器は、巨大なおぞましき生命体でもある。ゆえに、消費したエネルギーを補い、巣窟艦隊の規模を成長させるには、 〈侵食〉 と呼ばれるプロセスによって標的惑星の生命体から搾り取らなくてはいけない。
ティラニッドは機械文明を持たず、その代わりに、他種族が持つ兵器、弾薬、燃料、道具といったのもを、すべて高度に進化した独自の「生体工学」(バイオエンジニアリング)によって造り出してしまうのだ。このため、ティラニッドに対抗しようとする他種族の司令官たちは、この銀河では到底考えられないような難問を突き付けられる。
たとえば、生体艦によって構成される巣窟艦隊は、機械によって造られた宇宙艦艇とは異なり、いっさいの電磁波的シグナルを発しないため、その接近を早期に察知することは極めて困難である。大抵の場合、ティラニッドの巣窟艦隊は、もはや手遅れという距離になってから、ようやく単純な光学式レーダーによって発見されるのだ。
ティラニッドの軍勢は、特定の戦闘方法に特化した・・いや、そのためだけに存在するといっても過言ではない数々の恐るべき個体群によって形作られているからだ。これらの戦闘個体群は、きわめてライフサイクルが短いため、巣窟艦隊の必要に応じて即座に産出され成長する。
このため、たとえいかなる戦況に直面しようとも、巣窟艦隊は常に最適の戦闘個体群を大量に産み出し、敵を圧倒することができるのだ。
【ナーヴァル】
宇宙を航行するティラニッド巣窟艦隊は、〈歪み〉航法を用いて移動を行わない。ティラニッドたちは、星系と星系を隔てる広大な宇宙空間を移動する場合のみ、亜光速レベルでの高速航行が可能である。
この高速航行を可能たらしめているのが、〈帝国〉から 「ナーヴァル」 と呼称される、ティラニッドの特殊生体艦だ。ナーヴァルは、巣窟艦隊を成す他の生体艦に比べれば、遥かに小型で巨大生体兵器としての役割を与えられていないので、外敵からの攻撃に対する対抗手段をほとんど持っていない。
代わりに、ナーヴァルの艦隊は比較的分厚い甲殻装甲によって固く守られている。また、ナーヴァルの感覚器官は極めて鋭敏で、艦体表面に備わる単分子構造のトゲの数々は、様々なシグナル情報を広範囲でキャッチし解析できる、高性能通信装置の役割を果たしている。
そして、ナーヴァルはこの超感覚器官を用いて、きわめて微弱な 「重力場シグナル」 さえも感知できるのだ。つまり、ナーヴァルは想像を絶するほど離れた宇宙空間に浮かぶ星系の存在を、感覚的に察知することが可能なのである。
さらに、詳細な原理は不明であるが、 ナーヴァルと周囲の生体艦が航行するための安定した「重力場トンネル」を形成し、その内部を亜光速航行するという。 いうまでもなく、この重力場トンネルの有効距離は、きわめて長大だ。
しかし、この特殊航法は、強力な重力場が発生している領域では使用できない。目標惑星の微弱な重力場シグナルよりも遥かに強い重力場シグナルが近隣に存在すると、ナーヴァルの形成する重力場トンネルが乱されてしまうからだ。
このため、目的星系へとある程度まで接近したら、巣窟艦隊はこの亜光速航法を止め、より確実で単純な推進力に切り替えねばならない。このため、時には数年、あるいは数十年単位で、巣窟艦隊の襲来が予想よりも遅延することがあるのだ。
亜光速航法と通常航法を切り替えながら接近してくるため、移動スピードは当然のことながら〈歪み〉航法よりも遅いが、不安定な〈歪み〉空間を用いるよりも遥かに信頼性が高い。巣窟艦隊は、銀河のいかなる場所へでも、じわじわと着実に接近してくるのだ。
特殊生体艦ナーヴァルは、更に副次的な効果も発生する。ナーヴァルによって重力場トンネルを形成された標的惑星では、巣窟艦隊の接近する前から、地震や津波が起こったり、恒星のフレア活動に影響が見られたりといった、自然災害が頻発する可能性が高いのだ。
これらの自然災害は、標的惑星を守る敵に大きな被害を与え、巣窟艦隊の接近までに、敵はこれらの災害への対処で手一杯となる。むろん、これはティラニッドにとって 実に好ましい副産物である・・。
【分遣艦隊(スプリンター・フリート)】
巣窟艦隊は時に全滅を免れるために、一部の艦隊を小規模の艦隊に分割して逃亡を図ることがある。これらは 「分遣艦隊」(スプリンター・フリート) と呼ばれ、巣窟艦隊に比べれば小規模だが、平和な宙域の防衛力に乏しい惑星にとっては、極めて深刻な脅威となりうる。
巣窟艦隊クラーケンの侵攻によって防衛力を疲弊させた惑星は、その後も長い年月に渡って分遣艦隊との戦闘を続けているのだ。ティラニッド分遣艦隊がこの銀河から完全駆逐される日が来るとは、到底考えられない。
各分遣艦隊を構成する生体艦の数は、わずか数十隻前後だが、惑星を〈侵食〉することもでき、仮に豊富な生物資源を有する惑星を〈侵食〉した場合、さらに大きな脅威へと成長する可能性も高い。事実、こうした分遣艦隊の中には、すでにかなりの規模へと成長している例もある。
新種の巣窟艦隊「メガロドン」も、元は巣窟艦隊クラーケンの派生した分遣艦隊であったが、以降成長を続け、現在でもなお人類の版図を荒らし続けているのである。ティラニッドが、これらの小規模な分遣艦隊を使って銀河中心部の防衛状況を探っているのは、疑いようもない事実である。
ティラニッドが経験した全ての戦闘は、集合意識体の計り知れざる知識の中に、獲物の情報として蓄積されてゆく。もしかすると、分遣艦隊を銀河中心部に送り込むことこそが、巣窟艦隊クラーケンの真の目的だったのではないだろうか?
しかし、これを肯定するとは、集合意識体が極めて計算高い知性と戦略的思考を持ち、敗北すらも将来的な勝利に結びつけられるという、人類にとっては最悪の推論にもつながるのだ。
【大いなる貪るもの】
現在のところ、〈帝国〉の銀河で最もティラニッドによる攻撃が活発化しているのは、銀河の外縁部にある「東部辺境宙域」(イースタンフリンジ)である。この宙域では、すでに数千もの惑星が、ティラニッドの攻撃によって「死滅惑星」(デッドワールド)へと変えられた。
しかも、ティラニッド巣窟艦隊が銀河上に伸ばす恐るべき触手は、年々銀河の外縁部から〈帝国〉の中心部へと接近しつつある。「現在の攻撃はあくまでも、まだ触手の先端部が我々の銀河へと侵入してきたに過ぎず、外銀河の虚空からは、さらなる脅威が迫りつつある」との推測もなされているのだ。
集合意識体の計り知れざる意志は、この銀河に途方もない数のティラニッドを集結させ、彼らを休眠状態から呼び覚まし、 “捕食”、“成長”、“生存” という本能行動によって全てを貪り食わせようとしているのだ。今、この銀河に生きる全ての種族が、ティラニッドの真の脅威を認識すべき時である。
ティラニッドを止めることができなければ、この銀河には死滅の運命しか残されてはいない。

襲撃段階


ティラニッドが標的惑星を攻撃する際には、段階的なプロセスが存在する。
  • :襲撃開始まで数百年前(標的惑星にジーンスティーラーカルトが流行った場合)


画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada II」より

ティラニッドの先兵であるジーンスティーラーの「総主教」(パトリアーク)が標的惑星に降り立ち、住人に寄生生物を植え付け、総主教のテレパシーによって意のままに操られてしまう。その寄生者がジーンスティーラーとの第一世代の子供である「ハイブリッド」を産み、更にその子孫が他の住人と交配し、さらなる寄生者を増やす。
増えていったジーンスティーラーや寄生者たちはやがて、カルト教団である「ジーンスティーラーカルト」を秘密裏に立ち上げ、その信者を密かに増やしてゆく。そして、後に惑星で蜂起を起こすための準備を何十年、何百年もかけて行う。
これと同時に、総主教のサイキック的な力が〈歪み〉のビーコンのような役割を持ち、ティラニッドの巣窟艦隊が標的惑星へと引き付けられるようになる。
  • :襲撃開始まで数か月


画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada II」より

ティラニッドの巣窟艦隊が標的惑星へと近づいた時、惑星では異変が生じる。標的惑星の住民たちは、 「〈歪み〉を侵食する影」(シャドウ・イン・ワープ)現象 に襲われ、息が詰まるほど重苦しく不吉なサイキック的シグナルが発せられる。
そのシグナルは、逃れえない究極の恐怖を警告する、強力なビーコンの様でもあり、サイキック的感受性を持たない者たちは、 理由不明の耐えがたい戦慄がもたらされる。 逆に高いサイキック感受性を持つ種族や、人間の「異能者」(サイカ―)にとっては このシグナルの発する恐怖の度合いが何十倍にも増大する。
それらがもたらす狂気により、場合によって異能者らは、狂人へと変り果ててしまうのだ。このようにして、ティラニッドが接近する気配が標的惑星に対して恐るべき狂気と絶望を蔓延させるのである。
ティラニッドが近づいてきた影響はそれだけではない。 「〈歪み〉を侵食する影」現象が発生した惑星は、他の惑星との連絡が取れなくなってしまう。
〈帝国〉は星々で連絡を取り合う星間通信網は、「精神伝達官」(アストロパス)と呼ばれる、通信能力に特化した異能者によって構築されている。もし、「〈歪み〉を侵食する影」現象が発生した場合は、精神伝達官らはサイキック能力を発動できなくなり、 他の惑星との通信手段を失ってしまう。
そうなった場合、標的惑星は孤立無援の状態に陥り、ティラニッドの襲来に対して援軍要請などを送ることなど不可能だ。それに加え、ティラニッドの巣窟艦隊が近づいたその周辺の星々は、星間通信網が完全に沈黙し、その周辺がどのような状態なのかを全く把握することができなくなってしまうのである。
もし惑星にジーンスティーラーカルトの教団が存在したならば、その状況はさらに悪化する。惑星ではジーンスティーラーカルトの信者たちが武装蜂起を開始し、 惑星の体制を転覆させるための大反乱を各地で起こす。
そして、来るべき神であるティラニッドたちに惑星を捧げるため、惑星防衛軍などの軍事組織や政府組織といった障害となる組織を排除するのだ。
  • :襲撃0日目


画像出典:deviantart 「lathander1987」氏のイラスト「Anti Tyranids」より

標的惑星へと接近したティラニッドの巣窟艦隊はまず、衛星軌道上からその地表へと無数の個体群(ブロッド)を投下し、地上に戦闘個体を展開する。それは巨大な嚢(のう)状の胞子である、「マイセティック・スポア」を雨のように投下させ、地上に激突した衝撃でその殻が破られる。
その中からは恐るべき戦闘個体の群れが次々と溢れ出て、その個体群はやがては 巨大な「群集団」(スウォーム)を形成し、餌を求めて押し寄せてくるのだ。 その一方で標的惑星の空は無数の胞子で赤く染まり、やがて翼を持つ飛行個体群が黒雲のごとく押し寄せてくる。
巣窟艦隊の戦闘個体群によって形作られるティラニッドの軍勢は、標的惑星に住む原生生物の抵抗を排除することに特化した存在だ。彼らは〈侵食〉の最終段階前開始前に地上を排除し、「摂食個体群」が安全に〈侵食〉行動を取れるようにする役目を担っている。
激しい飢えに突き動かされるティラニッドの大群は、まるで無力な家畜か何かを屠殺するかのように、標的惑星の原住生物たちを殺戮してゆく。しばしば、原生生物との戦いの中で、地上に展開するティラニッド個体は数十億単位で消費されるため、それを補うだけの個体を間断なく産生しなくてはならない。
故に、ティラニッドの巣窟艦隊は休むことなく有機体を吸収せねばならず、生物資源がより豊富な惑星を優先的に標的とするのである。この時、ジーンスティーラーカルトの狂信者たちは神たるティラニッドの来訪を祝福し、その無知なる幸せに浸りながらこの先自らがどうなるかも知らずに、来訪したティラニッドと共に戦うのだ。
  • :襲撃9日目
ティラニッドの規模は落下地点から約200Kmに拡大し、「惑星防衛軍」、及び「帝国防衛軍」に重大な脅威をもたらす。
  • :襲撃13日目
ティラニッドは降下地点からその規模が約700Kmに拡大する。惑星の水源に侵入を行う。
  • :襲撃37日目
ティラニッドの規模は遂に降下地点から半径2000Km以内の地域を支配し、バソリスティックが半径5000km まで蔓延する。
  • :襲撃48日目
ティラニッドの個体数が急増し、約2.5日ごとに個体数が倍増する。
  • :襲撃50日目
巣窟艦隊の主力が到着し、約15億の「生体艦」(バイオシップ)が到着する。標的惑星から脱出しようとする宇宙船は、巣窟艦隊によって即座に阻止されてしまう。
  • :襲撃51日目


画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada II」より

バイオマスの一次消費が開始される。51日目までには惑星に存在する抵抗勢力は概ね排除されており、もはや住民はなす術はない。
繁殖船が着陸し、中から「リッパースウォーム」が大群で襲いかかってくる。摂食個体群の中でもっとも一般的かつ膨大な個体数を誇るのがリッパースウォームであり、その大群があらゆる抵抗手段を失った惑星全土を津波のごとくなめつくしながら、戦闘個体群によって死骸へと変えられた全ての動植物を、ただひたすらに喰らい尽くす。
おぞましいことに、リッパ―たちは丸々太ると、 巨大な「有機体溶解プール」の中へと自発的に飛び込むという習性を持っている。 有機体溶解プールの中身は、煙突状の“巨大吸収塔”を通じて、巣窟艦隊をなす生体艦の一つに吸い上げられる。
その一方で、勝利の歓喜に湧き上がるジーンスティーラーカルトの狂信者たちは、彼らの遠き同族であるティラニッドの抱擁を受けることを熱望する。しかし、彼らが腕を広げるとその四肢はティラニッドらに引き裂かれ、体は喰らい尽くされる。
ティラニッドの真の目的を始めて知った信者らは教団の愚かさを知り、 信者らには絶望と速やかな死が与えられる。
  • :襲撃80日目
巣窟艦隊の生体艦は大気圏上層部に降下し、大気の回収を開始する。大気圧の低下は海の沸騰を招き、生体艦は気化した水分を吸収する。
海は枯れると、大地のプレートテクトニクスに変化が生じ、惑星の火山活動が活発になってしまう。この段階に入れば〈侵食〉が完了し、その惑星に存在した全生命体が切り刻まれ溶解されて巣窟艦隊に吸収されると、ティラニッドたちは次なる餌を求めてその惑星を離れる。
後に残されるのは、あらゆる生命の死に耐えた不毛な荒野が残った「死滅惑星」(デッドワールド)だけだ。
  • :襲撃100日目
救難信号を受信した「帝国海軍」(インペリアル・ネイビー)の艦隊は、もはや滅んでしまった死滅惑星に到着する。もはや後の祭りだ。


惑星ディランの死


我らはこの脅威を克服できぬ。人類はこの脅威を生き延びることなどできぬ。
侵攻からわずか1日で、この惑星は無数の爪と牙を備えた個体群の大波によって覆い尽くされたではないか。一個体を殺そうとも、すぐに十個体がその後に続く。
かの種族の個体は無限・・。この推論が事実ならば、我ら人類は苦痛に満ちた死を迎える破滅の定めにある。
地獄の炎よりも恐るべき、貪欲で飢えたるものどもによって、我らの文明は破壊され、貪り食われるのだ。
死だ! 機械神よ、救いたまえ! 死が、すぐそこに!
賢人(マゴス)ヴァ―ナックが残した最後の言葉


画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P8 イラストより

【概要】
正式な記録として残されているティラニッドと人類のファーストコンタクトは、745.M41(西暦40745年)の初頭、〈帝国〉版図の東の果てにおいて接触が行われた。この時点で〈帝国〉は、銀河の東から到来する異種族の脅威に対して何も予備知識を持っておらず、それ故に警戒態勢も敷かれていなかった。
もしかしたら、この銀河で人類よりも古来から生きてきた種族の中には、ティラニッドの襲来を事前に察知していた者がいたかもしれないが、少なくとも彼らは、“成り上がり者”である〈人類の帝国〉にたいして、何ら助言や警告を与えようとはしなかったのだ。
【不穏な暗示】
やがて、巣窟艦隊の接近を暗示する不気味な情報の数々が発見され始める。それまで数十年間、人類の探査隊は、銀河東部の果てに位置する 惑星「ティラン」 の「ティラン・プリムス」基地を拠点として、周辺宙域に浮かぶ星系の調査にいそしんでいた。
この調査の中で、ある怪現象が確認され始める・・。調査の初期段階では「美しく豊かな植生に恵まれている」と分類されたはずの惑星が、再度調査に訪れてみると、焼け焦げた大地とごつごつした岩だけの不毛な惑星に変わり果てている、という自体が多発したのだ。
これらの惑星では、高等生物はおろか、極めて単純なバクテリアに至るまで、ありとあらゆる生命が死滅していた。しかし、この報告を受け取った「帝国行政府」(アドミニストラトゥム)の探査長官は、何ら手を打とうとはしなかった。
「銀河は広大にして無辺であり、この程度の奇妙な謎など、無数に存在している。」というのが、彼らの見解だったのだ。無論、帝国行政府の迷宮のごとく入り組み硬直化した巨大な官僚機構であることも、分速かつ適切な対処を阻む障害となったのだろう。
【謎の異種族】
忠実なる惑星ティランの探査拠点基地からは、これら死滅惑星についての情報が、その後も継続して報告され続けた。巣窟艦隊は、密かに、しかし着実に、惑星ティランへと接近していたのだ。
銀河間を隔てる虚空を超えたばかりの巣窟艦隊は、長い銀河間航行の中で失ったエネルギーを補給するため、高等生物の文明が存在しない野蛮で生命力にあふれた辺境の惑星だけを狙い、“触手”の先端でこれらを〈侵食〉しながら、ゆっくりと我々の銀河へと這い進んできた。そしてついに、いくつもの惑星を貪りつくして力を取り戻した外銀河の怪物たちは、満を持して、惑星ティランへと襲いかかったのである。
かくして惑星ティランは巣窟艦隊の攻撃を受けた最初に人類の惑星となり、 この惑星名からかの種族に“ティラニッド”という呼称が与えられることとなったのだ。 思いがけない幸運から、惑星ティランの惑星防衛基地は、ティラニッドの接近を事前に察知していた。
死滅惑星の謎を調査に向かっていた探査艇の一隻が、ティラン星系の外縁部で大量の未確認宙航物体を発見したのだ。この探査艇は、未確認宙航物体群に接近しすぎたため、肉塊状の宇宙機雷による攻撃を受けていたが、どうにか追撃を振り切り、重大な警告を届けるためにティラン・プリムス基地へと帰港した。
その数日後、惑星ティランに対し、巣窟艦隊「ベヒモス」による総攻撃が開始されたのである。
【巣窟艦隊に対する備え】
惑星ティランの大洋に浮かぶティラン・プリムス基地は、難攻不落の要塞として知られていた。古き火山島群の奥深くに築かれたこの基地は、海洋惑星ティランに住まう、凶暴な水棲怪物たちの直接攻撃に耐えられるほどの堅牢さを有するのみならず、惑星外からの脅威に対抗するだけの装備も有していたからだ。
ティランは人類の既知銀河の東の果てに浮かぶ惑星であり、〈帝国〉の領内にある他の惑星からも遠く離れて孤立していたため、好戦的な異種族や宇宙海賊らの攻撃を退けるための、前哨基地としての役割も期待されていたからである。ティランの防備は万全と思われていた。
ティラン・プリムス基地には、「セラマイト鋼」のサイロと「ヴォイドシールド」で守られた四門の巨大な「惑星防衛レーザー砲」が備わり、衛星軌道ににらみを利かせていた。さらには、三十六門の「対空砲撃用オートキャノン」と「ラスキャノン」、ティラン・プリムス基地を十重二十重に防備する「防衛要塞ネットワーク」、そして数々の「プロテウス級掩蔽壕」群が、戦闘準備を万端に整えていたのだ。
惑星ティランを防衛するのはティラン惑星防衛軍だけではない。ティラン・プリムス基地の長官を任されていた賢人「ヴァ―ナック」を護衛する「スキタリ」の私兵団や、「サンダーボルト戦闘機」で構成される前三個航空団、三隻の「エンデヴァー型宇宙巡洋艦」、さらには外敵の侵攻から人類の版図を守る「帝国防衛軍」の一個歩兵連隊が、惑星ティランの防衛にあたっていたのだ。
これは〈帝国〉辺境の前哨基地にとっては標準規模の、申し分のない戦力である。 事実、この防衛力を持って惑星ティランは、これまでに百回近い外敵の侵攻を退けてきた。
それゆえ〈帝国〉は、外銀河より襲来した新たな脅威に対して、 ティラン・プリムスが全くの戦力不足である ことを、この時点では想像だにしていなかったのである。
【巣窟艦隊の初撃】
巣窟艦隊を成す生体艦の最初の数隻が衛星軌道上に姿を現すと、たちまちティランの惑星防衛レーザー群から、激しい対宙砲撃が開始された。それから一時間以上にも渡って、激しい嵐に包まれたティランの空には、目もくらむような爆発が立て続けに発生し、ティラン・プリムスの砲撃主たちは片時も休むことなく迎撃射撃を繰り返した。
やがて、防衛レーザーの冷却システム群が白熱を開始し、オーバーヒート寸前となった頃、巣窟艦隊の第一波はようやく衛星軌道上から退却を開始したのである。おそらくは、ここで必要以上の自信を勝ち得てしまったのだろう。
賢人ヴァ―ナックは巡洋艦隊に出撃命令を下し、退却してゆく巣窟艦隊を追撃し、これを撃破しようと試みた。だがこの作戦は、すぐに多くな過ちであったことが明らかになる。
宇宙空間に漂う猛烈な胞子の雲を抜け、敗走する巣窟艦隊を追ったティランの巡洋艦隊は、そこで恐るべき事実に気付く。ティランの衛星軌道上に接近してきたティラニッドの艦艇数十隻は、巣窟艦隊の氷山の一角に過ぎず、胞子の雲の先には船を超える生体間の群れがうごめいていたのである。
しかも、惑星ティランから十分な距離を取ったと見るや、敗走していた数隻の生体艦が一斉に方向転換し、ティランの巡洋艦隊に向けて反撃を開始した。ティランの巡洋艦隊は、まんまと罠に引き寄せられてしまったのだ。
【宇宙空間での死闘】
最初に轟沈したのは、巡洋艦「エンペラーズ・フィスト」(皇帝陛下の拳)である。この巡洋艦は、小型の生体艦から放出された大量の群集団によって、その船体をズタズタに引き裂かれた。
巡洋艦「ライチャス・フューリー」(正義の怒り)も、敵の攻撃を辛うじて持ちこたえていたが、最終的には無数の巨大触手によってその艦首をつかまれ、大型の生体艦の牙だらけの口の中へと呑み込まれてしまった。最後まで残った巡洋艦「ソード・オヴ・ウォリアー」(戦士の剣)は善戦し、惑星ティランに緊急警告を送信するまでの時間を辛うじて稼いだが、この通信が完了する前に、巨大なヒルのごとき形状を持つ個体群輸送ポッドを撃ち込まれてしまう。
ブリッジ部やデッキ部へと迫ったポッド群は、ソード・オヴ・ウォリアーのアダマンチウム鋼の隔壁を食い破り、数百体以上のジーンスティーラーたちを直接巡洋艦内部へと送り込んだ。それから数分もたたないうちに、ソード・オヴ・ウォリアーの乗組員たちは一人残らず虐殺され、宇宙空間を漂う幽霊船へと変り果てたのである。
【数の暴力】
〈帝国〉の巡洋艦隊を撃破した後、巣窟艦隊は再び惑星ティランの衛星軌道上へと帰ってきた・・。ティラン・プリムス基地の対宙対空砲撃システムをもってしても迎撃できないほどの、圧倒的戦力を伴って再び惑星ティランを襲撃したのだ。
数千を超える規模の「マイセティック・スポア」が次々と投下され、また惑星防衛レーザーによって撃墜された生体艦のうち数百隻以上も、惑星ティランの大洋に着水することで大破を免れる。そして間もなく、ティランの海洋生物たちを退けたティラニッドの第一波がティラン・プリムスの火山島群へと上陸を開始したのだ。
ごく短時間の間、帝国防衛軍の一斉射撃は、水際で群集団の上陸を食い止めることに成功した。彼らの中には、異種族(ゼノ)との戦闘に熟達したカタチアン連隊の古参兵たちが迎えられており、不屈の戦いぶりを見せたからである。
激しい雨の中、屈強なカタチアンの士官(オフィサー)たちは的確な命令を矢継ぎ早に飛ばし、的確な集中射撃で、迫り来る異種族の大群を狩り取っていった。小型個体群の体を包むキチン質の外皮や甲殻は、「ラスガン」から放たれる粒子弾に対してはまずまずの守りを見せたが、防衛拠点から放たれるオートキャノンの砲撃には、なす術もない。
ホーマゴーントやターマゴーントの大群は、ラスガンの一斉射撃とオートキャノンの砲撃によって撃退され、周辺は無数のティラニッドの死骸によって埋め尽くされた。激しい雨が降り続く中、上空ではサンダーボルト戦闘機が嵐の中を猛スピードで飛行し、落下する「マイセティック・スポア」を撃墜しては、次なる攻撃目標へ向けて飛び去ってゆく。
そんな中、北に位置する惑星防衛レーザーの一基が突如沈黙した。数千体を超えるガーゴイルの大群が、地上からの猛烈な迎撃射撃も意に介さず、捨て身の強襲攻撃を仕掛けてきたのだ。
防衛レーザーの発射口から強大なる粒子砲撃が繰り出されるたびに、無数のガーゴイルが消し炭へと変わったが、それでも彼らは恐れを知らずに攻撃を続け、遂にはその死骸と消し炭で発射口を詰まらせたのである。続いて、東の惑星防衛レーザーも沈黙。
一体の「カーニフィックス」が鋼鉄製の防壁を突進によって貫通し、内部に展開していた守備隊を蹴散らした後、防衛レーザーの冷却システムを粉砕したのだ。上空で善戦を続けていたサンダーボルト部隊も、エンジン部に胞子が詰まって墜落するか、あるいは「ハーピー」の攻撃によって叩き落されていった。
こうして、一つ、また一つと防衛拠点の灯りが消え、遂にはティラン・プリムス基地内にまで、マイセティック・スポアが落下を始めたのである。
【群集団の勝利】
それからわずか一時間後、ティラン・プリムス基地は壊滅寸前の状態まで追い込まれていた。掩蔽壕ネットワークは次々と群集団に呑み込まれるか破壊され、惑星防衛レーザー群も完全に沈黙していた。銀河でもっとも過酷な環境の一つとされる死の惑星「カタチアン」から集まった、 この銀河で最も屈強でかつ熱烈なる戦士を自認するカタチアン連隊の勇士たちですら、持ち場を捨てて激しい雨の中へと逃走し始める・・。
どこにも逃げ場など存在しないというのに。
いたる所で、孤立した掩蔽壕などの防衛拠点がティラニッドの大波によって呑み込まれ、孤立無援の抵抗を続けていた。彼らは勇敢な・・・あるいは愚かな・・・士官たちの命令に従い、最後まで奮戦を繰り広げたが、抵抗むなしく、それらの拠点も一つ一つ順番に陥落してゆく。もはや、残された〈帝国〉側の拠点は「司令掩蔽壕」(コマンドバンカー)のみ。
しかも、大型個体群の痛烈な攻撃によって、司令掩蔽壕の防壁は陥落寸前の状態にあった。賢人ヴァ―ナックには、生き残った僅か数台の監視カメラの映像を通じて、無数のティラニッドの大波が彼のティラン・プリムス基地を蹂躙してゆく光景をただ見守ることしかできない・・。
かつては荘厳だった彼の基地が、徹底的に破壊されてゆく光景を。もはやこれまでか・・。
いよいよアダマンチウム鋼の最後の防壁が突き破られ、群集団が司令掩蔽壕内部へとなだれ込んできた。帝国防衛軍の兵卒とスキタリたちは火炎放射器を用いて抵抗したが、ティラニッドの大群は燃え盛る炎をものともせずに押しよせ、圧倒的兵数差でこの最終防衛ラインを突破する。
ホーマゴーントの個体群が中央指令室に侵入してくると、ヴァ―ナックは皇帝陛下に捧げる最後の祈りを唱え、あるスイッチを押した・・・。ティラン壊滅の全てが収められた「データコデックス」を、基地深くへと隠すためのスイッチを。
それが彼の最後の抵抗であった・・。
【クリプトマンの誓い】
数か月後、「死滅惑星」(デッドワールド)と化した惑星ティランを、 異端審問官(インクイジター)「クリプトマン」 が訪れ、廃墟と化したティラン・プリムス基地の地下からヴァ―ナックの遺したデータコデックスを発見する。このデータコデックスの発見が、その後のクリプトマンの運命を決定づけた。
惑星ティランの運命を知った彼は、その生涯をティラニッドとの闘争に捧げることを誓ったのだ。 もし、クリプトマンが惑星ティランを訪れなければ、ティラン・プリムス基地が辿った運命は、それから千年以上にも渡って謎のままだったかもしれない。
死滅惑星ティランの地表を始めてみたクリプトマンは、激しい衝撃を受けたという・・。そこには、かつて緑にあふれた美しい海洋惑星の面影など、何一つ残っておらず、水分は一滴残らず吸収されて枯渇し、植物という植物は死に絶えていたからだ。
クリプトマンが偶然にもデータコデックスを発見し、その内容を精査したことによって、惑星ティランを襲った驚異の全貌が明らかとなった。もはや一刻の猶予もない・・。
そう悟った彼は、不運にも最初の餌食となった惑星ティランの名から、襲撃してきた異種族を「ティラニッド」と命名し、ただちに警鐘を鳴らすべく死滅惑星を後にしたのである。

マクラーグの攻防


新手のハイヴタイラントが一体、乱戦の中に突き進んできた。すると一瞬のうちに、群集団全体の性質が、完全な変化を遂げたのだ。
侵攻からわずか1日で、この惑星は無数の爪と牙を備えた個体群の大波によって覆い尽くされたではないか。一個体を殺そうとも、すぐに十個体がその後に続く。
それまでティラニッドたちを突き動かしていた狂乱は、初めからなかったかのように、どこかへ消え去ってしまった。そこに残されたのは・・これまでとは比べ物にならないほど狡猾で、底なしの悪意を感じさせる全く別物の群集団だった。
その瞬間に、わしは悟ったのだ。この戦闘が敗北に終わることを。
ウルトラマリーン戦団 軍曹(サージェント)テリオン


画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P15 イラストより

【概要】
746.M41(西暦40746年)に惑星マクラーグへ侵攻してきた巣窟艦隊「ベヒモス」が、ウルトラマリーン戦団を中心とした帝国軍との激しい激戦を繰り広げた戦役であり、恐るべきティラニッドに勝利した数少ない事例の一つである。巣窟艦隊「ベヒモス」が惑星「マクラーグ」へと迫ってきたとき、既に人類はティラニッドに対する迎撃準備を開始しており、 ティラニッド側もそれに気づいていた。
この惑星は、これまで巣窟艦隊ベヒモスが餌食にしてきた、銀河辺境の「開拓惑星」(フロンティアワールド)や、防衛能力に乏しい「採鉱惑星」(マイニングワールド)などとは、明らかに別格の存在であることを。そう、惑星マクラーグこそは、「ウルトラマール」星域(セクター)の心臓部であり、スペースマリーンで最も有名な 「ウルトラマリーン」戦団の拠点惑星(ホームワールド)であり、〈帝国〉の銀河東端部を守り続けてきた難攻不落の砦なのだ。
ティラン・プリムス基地にて、異端審問官クリプトマンがティラニッドについての貴重なデータを回収していたおかげで、惑星マクラーグは巣窟艦隊の接近に備え、迎撃態勢を取ることができていた。当時のウルトラマリーン戦団長(チャプターマスター)にしてウルトラマールの統治者である、偉大なる「マルネウス・カルガー」戦団長は、全精力を傾けて、ただでさえ堅牢な惑星マクラーグの守りをより一層固めていたのだ。
聡明なるカルガーは、事の重大さを正確に把握していた。この戦いは、彼の治める星系(システム)をかけた戦いなどではない・・。
仮に、巣窟艦隊ベヒモスがマクラーグの守りを突破すれば、 〈帝国〉はこの先数百光年に渡って、ティラニッドの侵攻を防ぐ機会を得られず、その間に存在する全星系が餌食にされてしまうということを。 巣窟艦隊が惑星マクラーグに接近する頃、人類側は盤石なる布陣を敷き終えていた。
衛星軌道上に浮かぶ「スターノヴァ級武装宇宙ステーション」の火力を支援すべく、数十隻規模の巨大な「戦闘艦」(バトルバージ)が隊列を組む光景は、もはや壮観以外の何物でもない。さらに、ティラニッド巣窟艦隊の星系到着に先立つこと数週間前から、マクラーグ支援協力を呼び掛けていた。
この呼び声に応え、ウルトラマリーン戦団が保有する戦闘艦隊と並び、「ウルトラマール防衛艦隊」(ディフェンスフリート)の「重巡洋艦」(ヘヴィクルーザー)隊、さらには多少なりとも攻撃能力を有する大小さまざまの「商業船」(マーチャント・シップ)や「私掠船」(プライヴェイティア)といった民間船までもが、マクラーグを守るために集結を果たしていたのだ。ある船は金のために、またある船は純粋に皇帝陛下のために、そしてごく少数の船は、カルガーに対して熱狂的な忠誠を誓い義勇に燃える乗組員たちによって、その操舵室と動力室を乗っ取られていた。
惑星地表部の守りについても、何ら抜かりない。ウルトラマリーン戦団が厳重な防衛ラインを幾重にも構築し、マクラーグ惑星防衛軍の精鋭たちが、これら超戦士たちの横で守りを固めていた。
さらにカルガーは、不測の事態が起こった場合、全戦力を南北両極の極点要塞に退避させ、援軍到着までそこに立てこもり、 持久戦を続けるための準備までも整えていたのだ。
【惑星マクラーグ完全包囲さる】
もし、この時惑星マクラーグへと侵攻したのが他の敵だったなら、このあまりにも厳重な防衛態勢を見て、恐れをなしたに違いない。だが、ティラニッドは違った。
巣窟艦隊はいっさいの躊躇も遅延もなく、予測通りにマクラーグへと接近してきたのだ。 生体艦に次ぐ生体艦が、衛星軌道上の防衛ラインを突破すべく波状攻撃を仕掛け、そのたびに次々と撃墜されていった。新手の生体艦の波が押し寄せるたび、「打撃巡洋艦」(ストライククルーザー)隊と武装宇宙ステーションから猛烈な一斉砲撃が繰り出される。
だが、ティラニッドは退かない。防衛線を抜けた生体艦の生き残りがマイセティック・スポア群を投下するという捨て身の戦法を取って、少しずつ、しかし着実に、マクラーグ地表へと群集団を送り込んでいった。
短時間ではあるものの、カルガー率いる連合軍は、ティラニッドによる本格的な惑星強襲を水際で押し返すことが出来ていた。地上に降下してくるティラニッド群集団が徐々に数を増す中、人類側の地上戦力は防衛線を巧みに後退させることで、攻め寄せる群集団を撃破することに成功していたのだ。
だが、カルガーの伝説的采配をもってしても、この抵抗戦は長くは続かなかった。カルガーが前線を北極へ向けてじりじりと後退させる中、「シロッコ」宇宙港の地下下水道網から、潜伏していた無数のジーンスティーラーが一斉に飛び出してきた。
ウルトラマリーン戦団はボルトガンの斉射でこれを迎え撃つも、全滅させるまでにかなりの数の守備隊と宇宙船パイロットが虐殺されてしまった。このたった一回の強襲で、カルガー側の惑星脱出シャトルはその大部分が使い物にならなくなってしまったのである。
カルガー側には、まだ十分な「サンダーホーク強襲揚陸艇(ガンシップ)」が残っており、ウルトラマリーン戦団の輸送や物資補給に役立てることはできたが、彼の連合軍の大半を占める義勇兵たちには、支援戦力が決定的に不足していた。やむを得ず、カルガーは「コールド・スティール・リッジ」と呼ばれる山岳地帯で、ティラニッドとの最初の正面決戦を繰り広げる。
【スウォームロードの強襲】
コールド・スティール・リッジの攻防が開始されるまでに、ティラニッドはカルガー軍との間で何度となく大規模な地上戦を経験しており、これらの戦いの中から、集合意識体(ハイヴマインド)はカルガーの取る戦術パターンの多くをすでに学習していた。そして、 マルネウス・カルガーこそが、ティラニッドの侵攻を阻む最大の障害であることを悟った集合意識体は、カルガーを抹殺するために、最も危険で恐るべき個体を送り込んだ・・。
それが、後に〈帝国〉の記録の中で “スウォームロード” と呼称されることとなる、強力極まりない一帯のハイヴタイラントである。スウォームロードは、いわば集合意識体に仕える“歴戦の猛将”だ。
これまで、この指揮個体は我々の銀河および外銀河を舞台に、無数の大戦争を戦い抜き、そして無数の防衛軍を高度な戦術によって打ち破ってきたのである。惑星「サンドロス」や「ティラン」の最終攻勢を率いたのも、このスウォームロードであったと考えられている。
敵の裏をかき、これを包囲殲滅するというスウォームロードの戦術は、人類との戦闘を重ねるたびに、その狡猾さを増していた。そして集合意識体は、この戦術の集大成を、コールド・スティール・リッジの攻防でマルネウス・カルガーにぶつけようとしていたのだ。
スウォームロードが戦場に姿を現す直前まで、〈帝国〉側はティラニッドの大波をどうにか凌ぐことに成功していた。確かに圧倒的な個体数ではあるものの、荒れ狂うティラニッド群集団には戦術も何もなく、ただ闇雲な突撃を繰り返すだけであったからである。
だが、スウォームロードが現れたことで、全てが変わった。 それまで原始的な怒りによって突き動かされていたティラニッドたちが、 突如として、精密機械のように正確で秩序だった行動を取り始めたのだ。
手始めに、防衛線の左側面を守る守備隊の足元から、凍てつく地面を割って「レイヴェナー」たちが出現してきたかと思うと、たちまちその個体数は肉の壁と呼ぶにふさわしい規模にまで達し、左側面を守っていた義勇軍を完全に孤立させた。ウルトラマリーン第二中隊(セカンドカンパニー)がレイヴェナーの大群に斬りこみ、錐のごとく突き進んだが、すでに時遅し・・。
義勇軍はホーマゴーントの大波に呑まれ、切り刻まれ、その死体を貪り食われた後だった。ウルトラマリーンたちは左側面の守りを突破してきたホーマゴーントたちを炎で浄化すべく奮闘したが、その隙に、スウォームロードは真の標的に対して容赦ない攻撃を繰り出す。
スウォームロードの真の狙いはアストラ・ミリタルムが誇る巨重戦車(スーパーヘヴィタンク)「ベインブレイド」、〈ヘラの誇り〉を排除することにあった。ウルトラマリーンたちの注意が左側面に引き付けられたのを見るや、スウォームロードはカーニフィックスの大群を前進させ、強大なる巨重戦車〈ヘラの誇り〉をズタズタに引き裂いた。
防衛線の右側面に陣取るカルガーは、険しい表情を浮かべながら、スウォームロードの狡猾な戦術と、〈ヘラの誇り〉の破壊を見届けていた。カルガーはカーニフィックスの大群に対して逆突撃を仕掛け、これを迎え撃ちながら、ティラニッドが先ほどまでの野蛮な獣の群れではないことを肌で感じ取る。
その理由の一つが、雪崩だ。スウォームロードが現れる前であれば、盲目的に突き進んで来るだけのティラニッド群集団は、しばしば雪崩に呑まれて全身を阻まれていたが、スウォームロードが現れてからは、巧みに雪崩を避けながら攻撃を仕掛けてくるようになっていたのである。
それから数時間もたたないうちに、スウォームロードの作戦の全貌があらわになり始めた。ガーゴイルやハーピーなどの飛行個体群が上空から襲いかかり、生き残った義勇軍部隊を包囲殲滅してゆく。
しかも彼らは、軍曹や士官などを優先的に攻撃し、人類側の命令系統を効果的に破壊し始めたのだ。 連携攻撃も更に精度を増す。
「バイオヴォア」による遠距離砲撃によって人類側の隊列が乱れたところへ、「マウロック」や「トライゴン」などが地底から出現し、容赦ない奇襲攻撃を加えた。カルガーとウルトラマリーン戦団は苛烈に戦い、手薄な防衛線を強化するために休むことなく動き続けるという、まさにスペースマリーンだからこそできる活躍をつづけたが、兵力差による不利はもはや覆し難い。
しかも、カルガーがどれほど優れた戦術を繰り出しても、 スウォームロードによる統制を受けたティラニッド群集団は、たちまちその戦術を学習し、それを打ち破るべく適応してくるのだ。 決着の時が近いと見たのか、いよいよスウォームロードはカルガーに対して挑戦的な唸り声をあげ、「タイラントガード」と「ティラニッド・ウォリアー」を護衛として引き連れながら、自らも乱戦の中に突き進んできた。
【カルガーの危機】
戦団長が危機にさらされたのを見たウルトラマリーンたちは、カルガーを守るべく、一斉に駆け寄ろうとする。だが、彼らはいつの間にか、下位個体群によって包囲され、身動きが取れなくなってしまっていた。
防衛線の左側面に積み重なったホーマゴーントの死骸の山の下には、いまだ数百体以上のホーマゴーントたちが潜み、この好機を待ち続けていたのである。ホーマゴーントの攻撃的な本能は、スウォームロードによって一時的に押さえ込まれ、休眠状態に陥っていたのだろう。
スウォームロードがカルガーへと突撃しかけたのとほぼ同時に、この伏兵たちも休眠状態から脱し、目の前のウルトラマリーンたちに飛びかかっていったのである。眠りから醒めた獣たちは、「ボルトガン」の一斉射撃にも「フレイマー」の炎にも臆することなく突き進む。
ホーマゴーントの個体数は、ウルトラマリーンたちを圧倒できるほど多くはなく、しばらくの間足留めをするのが精いっぱいだったが、それだけでもスウォームロードにとっては十分だった。ウルトラマリーンの主力部隊が足留めされているうちに、スウォームロードはカルガーに白兵戦を挑み、満身創痍の状態へと追い込んでいたからである。
傷ついた戦団長を守るべく、近衛である「尊厳の守り手」(オナーガード)たちが割って入り、冷たい光を放つ「ウルトラマールの斧」を振るって、戦団長とスウォームロードの間に距離を保っていたが、彼らの劣勢は火を見るよりも明らかだった。ここでようやく、衛星軌道上に待機する戦闘艦「オクタヴィウス」から急発進したサンダーホーク強襲揚陸艇部隊が戦場に到着した。
彼らはまずコールド・スティール・リッジに群がるティラニッド群集団を「ターボレーザー」と「ヘヴィボルター」で攻撃して時間を稼いでから、そのうちの三機が血みどろの戦場に着陸して、生存者を脱出させようと試みた。これによってオナーガードたちは、手負いのカルガーを安全な場所まで避難させることに辛うじて成功したが、オナーガードの長である「アロイジウス」がスウォームロードの前に単身立ちはだかり、その身を犠牲にして戦団長を守らなければ、カルガーの命も危うかったであろう。
アロイジウスが力尽きて地面に膝をつき、スウォームロードの振るう四本の「ボーンソード」によって切り裂かれる中、カルガーを載せたサンダーホークは辛うじて戦場から飛び立つことに成功した。この過酷な戦場からは生還できたのは、僅か数十名足らず。
ウルトラマリーンたちの活躍によってカルガーは生還し、再び全軍を指揮できる状態まで回復したが、ウルトラマール義勇軍はもはや壊滅寸前であった。マクラーグ南北の両極点要塞は、独力で戦い抜かねばならない状態に置かれたのだ。
【宇宙空間の戦い】
マクラーグ地表部で想像以上の苦戦を強いられる〈帝国〉側だったが、宇宙空間での戦いは、さらに絶望的な様相を呈していた。巣窟艦隊の攻勢第一波によって、荘厳なる戦闘艦「カエサル」が総攻撃を受けたのだ。
カエサルは、その猛烈な火力をもってしても、「ラムスマイター・クラーケン」の大群を全滅させることはできず、骨質の巨大な“杭”を何本もその艦体に打ちこまれてしまっていた。攻勢第三波では、カエサルの轟沈によって手薄となった守りを抜けて、ティラニッドの小型生体艦「ヴォイド・フィーンド」が蟲の大群のごとく攻め寄せ、民家船で構成された商業艦隊を壊滅させた。
第九波が押し寄せる頃、武装宇宙ステーション「スターノヴァ」は虚空に漂う残骸へと変り果て、その内部も血まみれの墓場と化していた。第十二波の到着をもって、マクラーグ衛星軌道上の防衛線は、ほぼ完全に壊滅。
ごくわずかの〈帝国〉艦艇が生き残っていたが、彼らは残された戦力を無駄にせぬよう、自暴自棄な反撃を試みずに、懸命にも防衛線から後退していた。かくして、惑星マクラーグの防備は丸裸となり、ティラニッドにとって〈侵食〉されるがままの状態となってしまったのである。
勝利を確実なものとすべく、ティラニッド生体艦群から無数のマイセティック・スポアが投下され、南北の両極点要塞へと降り注いだ。ティラニッドによる惑星侵攻は、衛星軌道上の守りを全て追い払ったことで、いよいよ第二段階へと進んだのだ。
しかし、宇宙空間での戦いは、まだ終わっていなかった。一刻も早く全軍の指揮を執るべく、最低限の応急手当以外の処置を拒んだカルガーが、残された人類側の全艦艇に反撃の号令を下したのである。
巣窟艦隊はマクラーグを全方位から包囲すべく戦力を全て分散させていたため、カルガーは残された全戦力を結集させて、これらの生体艦に対して各個撃破の戦いを挑むべしと宣言したのだ。
【反撃】
カルガー側の艦隊が反撃に転じたことに気付くと、既に相当数の戦力を地上に投下し終えていた巣窟艦隊は、人類側の注意を南北極点要塞から宇宙空間に引き寄せるべく、じわじわとマクラーグ衛星軌道上から撤退を始めた。集合意識体の狙い通り、カルガーは餌に食いつき、マクラーグ星系の縁に浮かぶ「環状惑星」(リングワールド)の「キルケ―」まで巣窟艦隊を追撃する。 これが、マクラーグの攻防の勝敗を分けるターニング・ポイントとなった。
ティラニッド側も、人類側も、作戦は同じだった。 キルケ―付近で、敵艦隊に不意打ちを食らわせることである。
やすやすと敵の罠に落ちるカルガーではなかった。彼は、到着が遅れていた「帝国宇宙軍戦闘艦隊」(インペリアルネイビー・バトルフリート)の「テンペストゥス」とのコンタクトにようやく成功し、 これと連携してティラニッド巣窟艦隊を挟み撃ちにしようとしていたのだ。
一方、ティラニッド側も、 かなりの数の生体艦で構成された副艦隊を、キルケ―の輪の中に潜伏させていた。 最初に罠を発動させたのは、ティラニッド側である。
カルガーの小規模な艦隊を叩き潰すべく、方向転換した主力艦隊とキルケ―の輪から飛び出した府艦隊で、一気にこれを包囲したのだ。だが、ティラニッド側の一方的優勢もここで終わった。
〈歪み〉空間を抜けて現実宇宙へと 次々とワープアウトしてきた戦闘艦隊テンペストゥスが、眼前のティラニッド巣窟艦隊に対して猛烈な一斉砲撃を加えたからだ。 罠にはまったのは、人類ではなくティラニッド側だった。
しかし、戦術の面で有利を得たとはいっても、ティラニッド巣窟艦隊の戦力は圧倒的で、カルガー艦隊と戦闘艦隊テンペストゥスの戦力を合わせても、とても太刀打ちできないほどの規模である。しかも、ティラニッド側は罠にかかったことなど少しも気にせず、それどころか苛烈な攻撃を加えてきたのだ。
この歴史的艦隊戦で、人類が辛くも勝利を収められたのは、 巨大宇宙戦艦「ドミヌス・アストラ」の英雄的犠牲があったからこそと言えよう。 その艦体をティラニッドの生体艦によって無惨に貫かれ、強酸によって溶かされ、またデッキ内を無数のジーンスティーラー個体群によって強襲されたドミヌス・アストラは、もはやこれまでと覚悟を決め、〈帝国〉の栄光がために自爆作戦を決行したのだ。
手負いのドミヌス・アストラは、ティラニッド巣窟艦隊の心臓部へと突き進み、その強大なる「ワープ・エンジン」を爆発させた。皇帝級宇宙戦艦の壮絶な自爆によって形成された「渦」(ヴォーテックス)は、ドミヌス・アストラの残骸と共に巣窟艦隊の大部分を呑み込み、一瞬にして忘却の彼方へと消え去ったのである。
【極点要塞の死闘】
同じ頃、マクラーグの地表では、ウルトラマリーン戦団がその伝説的武勇の真価が問われていた。第一中隊に属する古参のウルトラマリーンたちが、ウルトラマール義勇軍の残存勢力を率い、極点要塞で粘り強く守りを固めていたのだ。
彼らは全ての塹壕や防壁でティラニッドを迎え撃ち、そこが持ちこたえられなくなる最後の瞬間まで戦い続け、少しずつ極点要塞の内部へと退いていった。だが、マイセティック・スポアの一斉投下によって増援を得たティラニッドらは、兵力面で〈帝国〉側に圧倒的優位を誇っており、ハイヴタイラントによる統制のもとで、各群集団は人類側の守りを次々と突破してきていたのだ。
南極点要塞では、俊敏なるターマゴーントの大群によって「ダヴィデ防衛線」が突破され、〈帝国〉側は要塞深部への退却を余儀なくされていた。カーニフィックス個体群が強化コンクリートの防壁を突き崩し、要塞内部へと続く侵入ルートをこじ開けると、そこからホーマゴーントとガーゴイルの大群が要塞内部へと雪崩のように押し寄せていた。
要塞深部に立てこもるウルトラマリーンたちは、射程距離の短い重火器(ヘヴィウェポン)に頼るしかなく、一方でティラニッド側は、一個体が倒されてもすぐにその倍の個体が現れて飛びかかってくるという物量作戦によって、じわじわとその包囲を狭めてゆく。最終的に、南極点要塞を守る戦士たちは、その最深部に位置する〈天使の砦〉(フォートレス・オヴ・エンジェル)まで退却し、ここで命を懸けた最後の抗戦を繰り広げることとなる。
北極点要塞の戦況は、更に絶望的だった。北極圏での攻勢を率いていたのは、あのスウォームロードに他ならず、コールド・スティール・リッジでこの怪物が見せた策略と、カルガーを破ったほどの戦いぶりについて、既にこの極寒の北極まで報告が届けられており、そこに立てこもる〈帝国〉側を恐怖で打ちのめしていた。
こうした包囲戦において、しばしば恐怖は、いかなる物理攻撃よりも強力な武器となる。北極極点要塞の守りを率いていたのは、ウルトラマリーン戦団第一中隊の中隊長(キャプテン)「インヴィクトゥス」。彼は勇敢かつ機転に優れた名指揮官で、戦士としてはカルガー卿その人に次ぐ実力を持っていた。
インヴィクトゥスは持てる力をすべて使って北極点要塞の防衛を試みたが、強大なるスウォームロードに打ち勝つことはできなかったのだ。宇宙空間の戦いで勝利を収めたカルガー艦隊がマクラーグへと取って返す頃、北極点要塞の最深部にある惑星防衛レーザーサイロの冷却薬剤貯蔵エリアで、生き残った第一中隊の滅殺者(ターミネイター)とジーンスティーラーたちの間で、最後の死闘を繰り広げられていた。
【巨獣倒れる】
事実上、巣窟艦隊ベヒモスの驚異は、環状惑星キルケ―の戦いですでに終わりを迎えていたといえる。あとは、惑星マクラーグが生き残るのか、それとも死滅するかだけだ。
ウルトラマリーン戦団第三中隊と第七中隊が、殺戮によって変り果てたマクラーグの両極点に降下すると、人類とティラニッドの死体が無数に積み重なり凍土すら見えないほどの有様で、そこかしこに壮絶な戦闘の爪痕が残されていた。第三中隊は廃墟と化した南極点要塞の最深部へと進み、リクターたちが潜伏する暗い回廊の中を抜けて、僅かな生存者たちを救出する。
一方、北極点要塞の廃墟では、ただ独りの生存者も確認することはできなかった。中隊長インヴィクトゥスと彼に率いられた第一中隊の滅殺者たちは、極点要塞の心臓部で互いの背中を守るようにして円陣を組んで戦い、壮絶な玉砕を遂げていたからである。
かくして、巣窟艦隊ベヒモスの脅威は去った。 だが、戦団長カルガーが支払った犠牲は、あまりにも大きい。
ウルトラマリーン戦団は、 戦団の存続すら危ぶまれるほどの深刻な損害を受け、ウルトラマール義勇軍および「防衛艦隊」(ディフェンス・フリート)も、ほぼ全滅を遂げていたからだ。 「巣窟艦隊ベヒモスは、 集合意識体が送り込んできた触手の一つに過ぎぬ。いつの日か必ず、さらなる脅威が惑星マクラーグを襲うであろう。
戦団長カルガーの頭には、確信にも近い予感があった。また、惑星マクラーグには相当数のティラニッド個体群が潜伏していた。
特に、北極大陸にはかなりの数の個体群が潜み、集合意識体によって 次なる攻撃命令が下される時を待ち続けている。 公式の記録によると、スウォームロードはマクラーグの攻防の中で抹殺されたこととなっているが、北極点要塞の廃墟内で、 それらしき死骸は確認されていない。
マクラーグの攻防終結から数年後、北極圏の荒れ地をさまよい、無垢なる臣民を襲っては貪り食う、巨大な怪物のうわさがささやかれるようになった。スウォームロードはあの激戦を生き延び、惑星マクラーグの荒野に、今なお潜伏しているのであろうか?
その真実が明らかになるまでは、少なくともあと数十年の時間が必要である・・。

主な巣窟艦隊



画像出典:コデックス「ティラニッド5版」(codex:Tyranids)P13 イラストより

【概要】
銀河系を襲ったティラニッドの巣窟艦隊(ハイヴフリート)は数種類確認されている。それぞれの巣窟艦隊は異なる特徴や生態系を持ち、同じティラニッドでも別パターンの行動を取る。
巨大な生体艦(バイオシップ)を数え切れない数量の規模で率いており、次々と命溢れる惑星を貪りながら銀河を渡っていく。

  • 「ベヒモス」

【概要】
人類が初めて遭遇したティラニッドの巣窟艦隊てあり、745.M41にて確認された。巣窟艦隊ベヒモスによる東部辺境宙域(イースタンフリンジ)への攻撃は、後続の巣窟艦隊による侵攻と比べれば規模の面でこそ劣るものの、この宙域に浮かぶ数百もの星系に多大なる混乱と破壊を引き起こした。
巣窟艦隊ベヒモスの侵攻ルートを解析すると、巧妙な戦略さは全く感じられず、激しい飢えに突き動かされるようにして、ただ人類の銀河外縁部を猛烈な速度で強引に突き進んだという印象を受ける。後続の巣窟艦隊は、ベヒモスと比べるといずれもその動きは慎重で、さほど重要とも思えない惑星をまず襲い、生物資源を十分吸収してから、満を持して強大な抵抗が予想される惑星を攻撃するという行動パターンを取った。
しかし、巣窟艦隊ベヒモスの行動には慎重さは全く見られず、その無謀なる前進が、この最初の巣窟艦隊を結果的に破滅させる原因となったのだ。巣窟艦隊ベヒモスは、狂乱した手負いの野獣のごとく猛進し続け、東部辺境宙域に無数の破滅と苦悶をまき散らした。
やがて、そのあまりにも無謀な前進によって、巣窟艦隊ベヒモスの生物資源消費量は、吸収可能な生物資源量を上回ってしまったのである。巣窟艦隊ベヒモスの“背骨”は、マクラーグの攻防において完全に粉砕された。
ウルトラマリーン戦団の拠点惑星マクラーグは、圧倒的物量で迫る巣窟艦隊ベヒモスに対して伝説的な抵抗を繰り広げ、その生物資源貯蔵器官をことごとく破壊し続けたのだ。そして最終的に、急激な生物資源枯渇状態に陥った巣窟艦隊ベヒモスは、自らを〈侵食〉し自滅するという壮絶な最期を遂げたのである。
しかし、ベヒモスの脅威は完全に去ったわけではない。ウルトラマール星系には、まだ巣窟艦隊ベヒモスの残党であるティラニッドが、各惑星の洞窟に潜伏している。
そして、ジーンスティーラーによる汚染も密かに進行しており、巣窟艦隊ベヒモスの脅威は未だ完全に一掃されていないのだ。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P13 イラストより

  • 「ナーガ」
【概要】
801.M41(西暦40801年)に初接触し、「ウルメアスィ連盟」の外縁部に位置する植民惑星のうち三つが〈侵食〉された。およそ二百年近くに渡って、〈帝国〉は巣窟艦隊ナーガを「巣窟艦隊ベヒモスの触手の一本が、飢餓状態に耐えかねて銀河の虚空を荒々しくのたうち回っているに過ぎず、やがて休眠状態に陥るだろう」と誤認していた。
だが実のところ、ナーガは独立した巣窟艦隊の一つであり、〈方舟〉のアエルダリからは「シャイ=ナイド」(永遠に渦を巻き続ける蛇)の名で認識されていた。こうした誤認も無理はなく、巣窟艦隊ベヒモスの壊滅からおよそ二百年後に、巣窟艦隊クラーケンが襲来するまで、硬直化した官僚機構である「帝国行政局」(アドミニストラトゥム)内の大多数は「ティラニッドの脅威は既に去った」と判断し、新たな巣窟艦隊がこの銀河へ襲来してくる可能性を否定していた。
更に巣窟艦隊ナーガによって攻撃を受けたのが、〈帝国〉領内でも辺境に位置する惑星ばかりで、その被害も小規模だったため、この誤認識に拍車をかけた。巣窟艦隊ナーガによって攻撃を受けた人類の惑星の中で、深刻な脅威にさらされていたのは、「ヴィダール」星域の東端部に浮かぶ「イバリック」星団の惑星群のみであった。
しかも、巣窟艦隊ナーガの侵攻に合わせて、荒々しい〈歪みの嵐〉が当該領域に吹き荒れ、イバリック星団を数百年に渡って通信途絶状態に追い込んだのである。〈歪みの嵐〉が晴れると、イバリック星団の惑星群はその生物資源を根こそぎ貪り食われており、巣窟艦隊ナーガもいずこかへと消えていた。
巣窟艦隊ナーガの侵攻は、〈帝国〉にさほど大きな被害をもたらしていない。巣窟艦隊ナーガの侵攻ルート上に浮かぶ人類の惑星は少なく、それよりもむしろ異種族(ゼノ)の惑星の方が多数存在したからだ。
〈方舟〉のアエルダリは、この巣窟艦隊の攻撃によって、二つの「乙女の星」(メイデンワールド)と、七つの「還源惑星」を失っているし、この他にも三十を超える弱小異種族の文明が滅亡している。また、巣窟艦隊ナーガは銀河平面の南寄りからこの銀河に侵入してきたため、銀河南東部で勢力を増していた「タウ・エンパイア」の力を削ぐことにもなった。
このため、巣窟艦隊ナーガを滅ぼすうえで、 〈人類の帝国〉はほとんど主体的な行動を起こしていない。 イバリック星団の一件が、〈帝国〉に多少の防備増強を促した程度だ。
巣窟艦隊ナーガを滅ぼしたのは主に、「アシュルヤニ」こと〈方舟〉のアエルダリたちである。 〈方舟〉「マラン=タイ」、「イアンデン」、「イドハラェ」から結集したアシュルヤニ艦隊が、巣窟艦隊ナーガに激しい攻撃を加え、ほとんどアエルダリ側に損害を出さないまま、これを消滅させることに成功したのである。
確かに巣窟艦隊ナーガは、ティラニッド巣窟艦隊の中では最も小規模な部類に属するが、ここで忘れてはいけないのが 「全ての巣窟艦隊は、計り知れざる集合意識体の意志によって、何らかの役目を帯びて造り出されている」 という事実である。巣窟艦隊ナーガはアエルダリによって抹消されたが、消滅するまでにこれまでティラニッドが遭遇したことのない様々な生物資源に接触し、そのサンプルデータを巣窟艦隊に提供したはずなのだ。
巣窟艦隊ベヒモスがそうであったように、巣窟艦隊ナーガもまた、集合意識体がこの銀河の防衛態勢を調べ、学習するために放った尖兵に過ぎない可能性がある。巣窟艦隊ナーガの侵攻によって、集合意識体は、人類だけでなくアエルダリの精神と肉の味をも試し、この銀河に存在する生物資源についてさらなる理解を深めたに違いないのだ。

  • 「ゴルゴン」

【概要】
巣窟艦隊ゴルゴンは、比較的小規模な巣窟艦隊であり899.M41(西暦40899年)に初接触した。ただ、巣窟艦隊ゴルゴンは、どの巣窟艦隊と比べても引けを取らない、生体改変レベルでの圧倒的な進化速度を有し、 新たな環境や戦況へと驚くほど速やかに適応する能力を持っていた。
巣窟艦隊ゴルゴンはおよそ二年間にまたって、タウ・エンパイアの版図を荒らし回り、他のどの巣窟艦隊も見せたことがないような、驚異的な進化スピードと幅広い個体種を見せたのである。巣窟艦隊ゴルゴンの新たな攻撃の波が押し寄せるたびに、前回の戦闘から学習した特定の敵や環境に対応するために、完璧な生体改変を受けた新たな個体種が迎えられていたのだ。
敵や環境に合わせ、急速に戦士個体種を生体改変するという性質は、おそらくすべての巣窟艦隊がもともと備える能力であろう。ただ、巣窟艦隊ゴルゴンの場合は、外的要因がその能力をさらに活性化させた可能性がある。
彼らの主敵となったタウ・エンパイアは、ティラニッドに負けず劣らず活動的な新興勢力であり、環境適応能力も極めて高い。もちろん、タウの適応力はティラニッドのように生体改変や肉体的な急速進化によるものではなく、 日の出の勢いで発展する科学技術に根ざしたものだ。
それでもタウ・エンパイアは、ティラニッドがこれまで戦ってきた人類やアエルダリとは、全く異質の敵だった。タウ・エンパイアは、〈人類の帝国〉のように古臭く非効率的な戦闘教条を頑なに守り続けたりはしないし、また謎めいた不可思議な力を使いこなすアシュルヤニとも戦闘方法が根本的に異なっていたからである。
このため巣窟艦隊ゴルゴンは、〈帝国〉やアエルダリなどと戦う場合よりもはるかに急激な速度でその肉体を進化させ、タウ・エンパイアの適応能力を上回ろうとしたのだろう。
【生体と科学技術の進化競争】
タウ・エンパイアの版図内で、巣窟艦隊ゴルゴンとの戦闘が、次第に激化していった。攻撃側のティラニッドと防御側のタウも、敵の出方をうかがい、それに対応した戦術を取ることに徹した。
両陣営とも、相手の弱点を探り合い、敵の作戦を妨害することで有利に立とうとしていた。しかし、タウ側がいくら新たな戦術を繰り出しても、そのたびにティラニッドは新戦術に適応してその打開策を打ち出してきたのだ。
タウの「パルスライフル」に対して、ティラニッドらはその甲殻装甲を再構築して、パルスライフルの一斉射撃にも耐えられるほどの防御力を得た。それに負けじとタウ側もパルスライフルに改良を加え、新たな施策兵器などを次々と導入していったが、ティラニッドはすぐにこれらの弱点を発見して急速な生体改変を成し遂げていった。
だが、巣窟艦隊ゴルゴンの驚異的な対抗進化は弱点をはらむことにもなった。巣窟艦隊ゴルゴンの進化速度は確かに早いが、 進化適応できていたのは再産生しやすい小型の下位個体群のみで、それらに頼らざるを得なかった。
そのため、 再産生に時間がかかる大型個体種は進化適応についていけず、その数は他の巣窟艦隊に比べてもかなり少なかった。 この弱点に気付いたタウ側は、大型個体種を集中的に狙い、次第に戦局はタウの優勢へと傾いていった。
【奇妙な同盟】
巣窟艦隊ゴルゴンに対抗する数週間は、「家門惑星」(セプトワールド)である「ケルシアン」が舞台となった。このケルシアンは〈帝国〉との係争地の一つであり、かつては帝国防衛軍(アストラ・ミリタルム)のケイディア第XVIII軍団(アーミー)との交戦状態に入っていた。
しかし、ケイディア第XVIII軍団を指揮する代卿(キャステラン)「クラスク」は、ティラニッドが惑星ケルシアンがある「ケルシア星系」に接近してきたことに気付くと状況は一変した。タウ・エンパイアとケイディア第XVIII軍団は、一時的に共同戦線を張って共に巣窟艦隊ゴルゴンを迎え撃つべく戦ったのだ。
巣窟艦隊ゴルゴンは見事撃退されたが、この戦いの後、代卿クラスクはすぐさま「あれほど些細なティラニッドの脅威に苦戦し、駆除できずいるところを見ると、タウは実に軟弱で劣等な種族としか思えぬ」と宣言する。クラスクは、 巣窟艦隊ゴルゴンの恐るべき対抗進化能力と、それを打ち破ったタウの力を何一つ理解していなかったのである。
クラスクが発表したタウに対する主観的過ぎる誤った認識は、後に勃発するかの「鉄鎚戦役」(アイアンハンマー・キャンペーン)の引き金となり、史上最大規模の〈帝国〉とタウ・エンパイアの全面戦争が開始されることとなる。
【万物を襲う影の予兆】
こうして撃退された後も、巣窟艦隊ゴルゴンによる侵攻は、タウ・エンパイア内にティラニッドに対する根強い警戒心を残し続けた。巣窟艦隊が壊滅する直前、三隻の生体艦が離脱し、外銀河の虚空へ向けて逃げ去ったことも、この不安を助長したことだろう。
これらの生体艦には、巣窟艦隊ゴルゴンがタウ・エンパイアとの戦闘で学習した全ての情報が収められており、その中にはタウが用いる兵器についてやタウ人の肉の味、そしてその将来的な潜在能力までもが含まれていたと考えられている。生き残りの生体艦は、「コー=ウォ=ヴァナン」の艦隊が辛抱強くこれを追跡しており、新たに迫ってくる巣窟艦隊へとその情報が受け継がれていくものと信じ込んでいるようだ。
そのため、タウ・エンパイアの未来は、彼の双肩にかかっているといっても過言ではない。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P36 イラストより

  • 「クラーケン」

【概要】
巣窟艦隊ベヒモスが人類の銀河に襲来してから約二百年以上、〈人類の帝国〉はティラニッドのもたらす脅威とはほぼ無縁であった。むろん、この空白期間中も、銀河にはいくつかの巣窟艦隊が侵入してきたが、それらによって被害を受けた惑星の大部分は、人類ではなく異種族の惑星だったため、よほどティラニッドの研究に熱心な者か、あるいはティラニッドを恐れるあまり妄想症になってしまった者以外は「ティラニッドの脅威は既に終結した」と信じ込んでいたようだ。
だが、真実は違っていた。
990.M41(西暦40990年)の初頭、新たな巣窟艦隊クラーケンは、その触手を人類の銀河へと深々と伸ばしていた。孤立した辺境の惑星群は、ティラニッド襲来の報告すらも出せぬうちに、たちまちこの新たな巣窟艦隊によって〈侵食〉されてしまった。
巣窟艦隊ベヒモスが、巨大な一塊の艦隊となって押しよせてきたのに対して、巣窟艦隊クラーケンは、 より小規模な艦隊による触手を何本も形成し、広範囲の惑星群を多方面から同時に攻撃したのである。 この攻撃方法により、巣窟艦隊クラーケンは〈帝国〉の総攻撃を受けて壊滅する恐れがなくなったばかりか、攻撃範囲を広げることによって “〈歪み〉を侵食する影”現象の効果を従来の十倍以上にも高めることができていた。
ほぼ一晩のうちに、星系全体通信途絶状態に陥り、救援を求める精神感応官らのメッセージは〈帝国〉中央に届けられることなく消えていった。こうして、現在の状況を示す手がかりを一斉残さないまま〈帝国〉領内の惑星が次々とクラーケンの触手に絡めとられていったのだ。
また、脱出艇によって宇宙空間へ逃げ出すことに成功したごくわずかの生存者たちも、〈歪み〉空間の乱れによって、目的地から数百光年以上も離れた場所へ放りだされてしまう事態が続いた。このため、巣窟艦隊襲来の噂が、〈帝国〉全域で噂されるようになったのだ。
「風に乗って飛散する無数の有毒胞子によって、惑星の空が黒く染め上げられた」「廃墟と化した市街を、巨大個体群が歩んでいた」「首都はわずか数時間のうちに壊滅してしまった」など、信じがたい山上の数々が語られ始めた。
【多方面同時攻撃開始】
銀河規模で見ると、巣窟艦隊クラーケンの行動は、多数の独立した艦隊が、全長数千光年にも達する広大な規模の戦線で、同時攻撃に出たようなものだった。侵攻ルート上にあっても攻撃を受けず無視された惑星もあれば、孤立し滅ぼされるがままになった惑星もあり、あるいは予期せぬ攻撃を受ける惑星もあるなど、巣窟艦隊クラーケンの動じた貼る攻撃を精確に予想し、人類側が連携の取れた防衛線を展開することは極めて困難だった。
やむなく、〈帝国〉は戦線が穴だらけになることには目をつむり、戦略的に重要度が高い工業惑星(フォージワールド)や過密惑星(ハイヴワールド)のみに戦力を集中させることにした。それ以外の惑星については、住民を事前に避難させることか、さもなくば見捨てるしかなかったのである。
だが、闇の中にもわずかな希望の光は輝いていた。いくつかのスペースマリーン戦団は、これらの見捨てられた惑星の臣民たちを救うべく、決然たる戦いを挑んだからである。
「ラメンター」戦団、「サイス・オヴ・エンペラー」戦団などがその筆頭であり、彼らはその勇敢な活躍の代償として、戦団の存続が危ぶまれるほどの多数の戦死者を出した。中でも「ナイト・オヴ・エタニティ」戦団は、一連の戦いの中で完全消滅してしまったと推測されている。
他の諸戦団も、孤立した触手を狙って攻撃を加え、時には大型生体艦に対する強襲乗船をしかけ内部からこれを爆発させるなど、スペースマリーンならではの戦法で巣窟艦隊クラーケンの脅威に対抗した。
しかし、〈帝国〉がどれほどの抵抗を見せようとも、ティラニッドの数は圧倒的であり、その触手は人類の銀河を覆い隠すようにして広がり、じわじわと銀河中心部へ向かって押しよせてきたのだ。
【巣窟艦隊クラーケン壊滅】
アエルダリやスペースマリーンたちの奮闘によってもはや、巣窟艦隊クラーケンの主力は壊滅し、小規模な分遣艦隊がいくつか残されるのみとなった。巣窟艦隊クラーケンを壊滅させたのは〈方舟〉「イアンデン」のアエルダリたちであると共に、惑星「イチャールIV」を防衛したウルトラマリーン戦団でもある。
アエルダリと〈帝国〉は、お互いが全く意識せぬまま、外銀河の驚異に対して銀河の別の場所で共同戦線を張っていたのだ。もし、クラーケンがイアンデンを攻撃していなければ、ウルトラマリーン戦団はイチャールIV戦役に勝利することはできなかったであろう。
その逆も然りである。どちらかが欠けても巣窟艦隊を止めることができず、そうなっていれば、クラーケンはこの銀河全域を喰らい尽くしていたに違いない・・。

画像出典:コデックス「ティラニッド6版」(codex:Tyranids)より

  • 「ヨルムンガンド」

【概要】
999.M41(西暦40999年)の後期、大提督(ハイ・アドミラル)「ヴォルティゲルン・ハンロス」は、巣窟艦隊ヨルムンガンドとの全面戦争を開始する。後に「暗黒星雲の攻防」と呼ばれるこの戦いはこの時点で、ヨルムンガンド接近の情報は、すでに東部辺境宙域全域に広まっていた。
銀河辺境部にて、他種族との争いと長らく無縁だった〈帝国〉領惑星の数々は、再びティラニッドの脅威にさらされることとなったのである。ヨルムンガンドは、初めから独立した巣窟艦隊ではなく、侵攻の初期段階で防衛力の乏しい惑星をいくつも〈侵食〉したことで急成長した代規模な巣窟艦隊なのである。
これまでの巣窟艦隊とは異なり、ヨルムンガンドはいかに生物資源豊富な大型の惑星を発見しても、 そこが厳重に防衛されている場合、すぐには攻撃を仕掛けず、念入りに様子をうかがった。 巣窟艦隊ヨルムンガンドは「タラシ星域」全域に大蛇のごとく広がり続け、とぐろのごとき輪を描くと、内部の惑星から獲物を逃さぬようにじりじりと攻撃の好機を求めたのである。
最初の攻撃から二年も経過しないうちに、巣窟艦隊ヨルムンガンドは、タラシ星域全体を完全封鎖していた。タラシ星域内の数百もの惑星群が、ヨルムンガンドのとぐろの内部に閉じ込められてしまったのだ。
この状況は三か月以上にもわたって続き、しなやかに這いよる大蛇の如き巣窟艦隊ヨルムンガンドの軌跡が、タラシ星域にゆっくりと描かれ、緊張だけが静かに高まってゆく。この間、巣窟艦隊ヨルムンガンドは敵から攻撃を受ければ反撃したが、それ以外の大きな行動は取らず、その意図は他種族の目からまったくもって推測できない状態だった。
だが、突然、何の前触れもなく、外銀河からの虚空を超えて届いた“ささやき声”によって命じられたかのように、巣窟艦隊ヨルムンガンドのとぐろは狭まり、内部に捕らわれた惑星群を強く締めあげ始めたのである。
【狡猾なる降下戦術】
ヨルムンガンドは、 他の巣窟艦隊のような単純な惑星包囲攻撃を好まず、より狡猾で安全な戦法を取ることが多かった。 実際ヨルムンガンドを構成する生体艦が、標的惑星の衛星軌道上に侵入してくることは、極めて稀だった。
その一例として、ヨルムンガンドの生体艦群は、アステロイドや宇宙船舶の残骸などをつかみ、これを標的惑星の地表めがけて投げ落とすという、極めて高度な攻撃を見せたのである。標的惑星の防衛軍は、まさかティラニッドがこれほどまで高等な攻撃手段を用いてくるとは想像もできず、衛星軌道上からの猛爆撃を受けて大損害を被った。
更に降下する残骸にマイセティック・スポアを潜ませることにより、安全にかつ大量に戦闘個体群を地上に降下させることができた。そして、巣窟艦隊が十分な戦力を地上に投下し終えると、今度は集合意識体が密かに地下へと潜伏していた個体群に対して地上への攻撃を指示する。
それと同時に、衛星軌道上に待機していたティラニッド群集団を満載した「群生艦」(ハイヴシップ)を地上に降下させ、地上と上空からの挟み撃ちによって敵は次々と虐殺されていった。
【破滅の種はまかれた】
様々な人類の惑星で、巣窟艦隊ヨルムンガンドに対する抗戦が繰り広げられており、惑星「セフィラックス」と惑星「メギア」は激闘の末、奮戦も虚しく滅ぼされてしまう。しかしそれは、巣窟艦隊ヨルムンガンドによって滅ぼされた無数の惑星のごく一部に過ぎない。
巣窟艦隊ヨルムンガンドの壊滅から約十年が経過した後も、〈帝国〉はヨルムンガンドがもたらした荒廃のごく一部しか把握できていない。撃破されはしたものの、ヨルムンガンドは、人類の銀河に二つの大きな懸念を残した。
ひとつは“心理的影響”であり、ヨルムンガンドの侵攻は今まで銀河東端部から襲来してきたのと異なり、北寄りの銀河からの襲来してきたことによって、銀河の全方位に警戒対象を広げなくてはいけないという意識を持たせた。もう一つは、より直接的で物理的な“破滅の種”である。
巣窟艦隊ヨルムンガンドの無数の落とし子たちは、百を超える惑星の地底で、今なお眠り続け、目覚めるべき時を待ち続けているのである。いつの日にか、ヨルムンガンドは再び復活し、その憤怒でこの銀河を切り裂くことであろう。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P34 イラストより

  • 「リヴァイアサン」

【概要】
第41千年紀の末期である997.M41に、最後にして最大規模の巣窟艦隊が、遂に人類の銀河に襲来した。集合意識体は、以前に送り込んだ各巣窟艦隊からこの銀河についての知識を深め、それらの知識を基にして、新たな巣窟艦隊リヴァイアサンを造り出したのだ。
巣窟艦隊リヴァイアサンがとった戦略は、人類の銀河に多大なる衝撃と戦慄をもたらした。これまでの巣窟艦隊の大部分は、外銀河の虚空を超えた後、まず東部辺境宙域へと侵入し、そこから銀河中心部への侵攻を試みた。
ところが、巣窟艦隊リヴァイアサンは、東部辺境宙域に入らず、 銀河平面に対して垂直に下降しながら前進し、銀河平面の“下”から触手を伸ばしてきたのである。 巣窟艦隊クラーケンやヨルムンガンドのように、全戦力を結集させて一点集中突破を試みるのではなく、巣窟艦隊リヴァイアサンは艦隊の触手を広範囲に分散させ、多方面から同時攻撃を繰り出してきた。
巣窟艦隊リヴァイアサンの初撃によって滅ぼされた惑星数は、数え切れないほど多い。〈帝国〉がこの予想外の攻撃に気付くことができたのは、数々の幸運と、異端審問官クリプトマンの明晰なる頭脳の助けあってのことだ。
しかし、巣窟艦隊リヴァイアサンの戦略を知ることができたとしても、〈帝国〉がこれに対抗するための防衛力を結集させるには、少なからぬ時間が必要であり、その間に巣窟艦隊リヴァイアサンの触手は、銀河の内部にまで達しようとしていた。
巣窟艦隊接近の前触れとして、“〈歪み〉を侵食する影”現象が多方面で同時多発し、精神感応による通信ネットワーク網がそこかしこで切断されてゆく。死滅惑星へと変わる惑星数は、刻一刻と増加している。
現在、〈帝国〉は巣窟艦隊リヴァイアサンの進行速度を少しでも遅延させるために、様々な時間稼ぎの戦術を試みているが、その効果のほどは薄く、ティラニッドの脅威は増大する一方である。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P25 イラストより

  • 「ハイドラ」

【概要】
巣窟艦隊ハイドラの触手は、外銀河の虚空を渡り終えて休眠状態を脱し、天の川銀河で活動を再開したばかりだ。銀河東端の渦巻腕(スパイラルアーム)付近でいまだ休眠状態であった巣窟艦隊ハイドラと最初に遭遇を果たしたのは、「毒爪の陰謀団(カバル)」のデュカーリたちであった。
彼らは巣窟艦隊が無力であることに気付くと、これを破壊しようとせず、その中で最も大規模な生体艦内に潜入を試みた。陰謀団の「ハモンキュラス」に、新種の実験材料を提供するために、潜入を行ったのである。
しかし、デュカーリたちの予想以上に巣窟艦隊は遺物の侵入に敏感に反応し、生体艦群が次々と目覚め始め、艦内に侵入した海賊たちは、これを守る無数のティラニッドによって一人残らず虐殺されてしまった。残された「毒爪の陰謀団」の艦艇は、ただちに退却を試みたが、小型生体艦群によって行く手を阻まれる。
彼らは一隻の生体艦を撃破してもすぐに二隻の生体艦が現れるという状態に追い込まれ、最終的には陰謀団は全滅をとげた。巣窟艦隊ハイドラは、まどろみから揺り起こされ、薄目を開けようとしているところだ。
飢えに突き動かされる新たな巣窟艦隊は、銀河中心へ向け速度を上げている・・。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P35 イラストより

  • 「クロノス」

【概要】
銀河を分断した〈大亀裂〉が生じた後、第42千年紀に確認された巣窟艦隊である。通常、ティラニッドらは 〈渾沌の領域〉に住まうディーモン達が実体化しそれらを捕食しても栄養を摂取することはできない問題を抱えている。
そのため、ティラニッドの各巣窟艦隊は〈歪みの嵐〉やケイオスディーモンによる現実宇宙への侵攻に頭を悩ませており、 〈渾沌〉に関係する惑星や宙域を意図的に避けている。 しかし、〈大亀裂〉から銀河内に〈歪み〉の穢れた力が流れてきており、その勢いは年々増加傾向を辿っている。
この状況に対抗するため、集合意識体は巣窟艦隊クロノスを造り出したのである。巣窟艦隊クロノスは集合意識体との強い結びつきにって“〈歪み〉を侵食する影”現象によって、サイキック的に敏感な敵に苦しみを与え、群集団が姿を現す。
この現象によって敵側が混乱している間に、何千、何万という戦士個体種は敵を撃破するために、有機ミサイルの嵐を放つ。巣窟艦隊クロノスのティラニッドらは、残忍な戦術を好むために近接戦闘を好む。
また、巣窟艦隊クロノスは〈歪みの嵐〉による分断を利用し、無防備で孤立無援となっている人類の居住惑星などを狙って襲撃を行う。クロノスはそういった状況うまくを利用して急成長を遂げている。

画像出典:コデックス「ティラニッド8版」(codex:Tyranids)P37 イラストより

  • 「ティアメット」
【概要】
第35千年紀にこの銀河内へ定着したと思われる巣窟艦隊。既知のティラニッドとしては、この銀河に到達した最古の巣窟艦隊の可能性がある。防衛を重視し、ごく最近になるまでティアメット星系から積極的な行動を見せなかった。しかしながら謎めいた生体構造物を作り出そうとしているとされ、近年帝国の一派や方舟イアンデンの予見者達は懸念を抱いているという。


戦闘教条

【概要】

標的惑星の攻撃が始まると、〈侵食〉に向けてあらゆる敵を排除すべく、巣窟艦隊は数えきれないほどの個体群を産出する。跳躍能力に秀でた「ホーマゴーント」、俊敏なる「ターマゴーント」、翼を持つ「ガーゴイル」などは、決して高い知性を持つとは言えない単純な戦闘個体だが、おぞましいほどの大群をなして押しよせれば、敵の防衛拠点を圧倒できるだろう。
これらの下位個体群だけでは排除できないほど敵の抵抗が激しいと判断した場合、集合意識体は更に大型で凶悪な個体種を投入し始める。巨大な脳髄を持つ「ゾアンスロープ」は、強大無比なる〈歪み〉エネルギーの猛爆を放ち、肉も金属も区別なく一瞬にして焼き払い破壊する。
辛うじて生き残った敵も、獰猛なる大型個体種「カーニフィックス」の突撃を受け、鉤爪で薙ぎ払われ、巨体に踏みしだかれるだろう。「トライゴン」や「レイヴェナー」は、地底にトンネルを掘って敵防衛施設の背後へと回りこみ、地中から突然姿を現して敵を攻撃する。
翼を持つ大型個体種「ハーピー」が上空から胞子爆弾を次々と投下し、「ティラノフィックス」は「兵器共生体」(ウェポン・シンバイオート)の巨砲を用いて長距離射撃を繰り出す。戦場の要所要所には、「ハイヴタイラント」や「ティラニッド・ウォリアー」などの脳幹個体が配置されてサイキック的なネットワークが構築され、集合意識体の命令と周囲の下位個体群へと行き渡らせている。
脳幹個体の知性と群集団指揮能力が無ければ、下位個体群は野蛮な本能行動しか取れなくなってしまうからだ。

画像出典:コデックス「ティラニッド6版」(codex:Tyranids)より


ジーンスティーラー・カルト


【概要】
ティラニッドの一種である「ジーンスティーラー」に寄生された亜人のカルト集団。ティラニッドの先兵として、寄生された人間に惑星を乗っ取らせる
彼らは人類含む知的生命体(以下:犠牲種)の領域の隠れた場所で神であるティラニッドを崇め、自分の配下を何十年という年月をかけて着実に増やしてゆき、密かに信者や寄生者を増やしていく

画像出典:ゲーム「Battlefleet Gothic: Armada 2」より



個体種

【概要】
ティラニッドには様々な個体種が存在し、種類によって明確な役割が決まっている。これらの個体種は膨大な数の群れを成し、敵軍に容姿なく襲いかかってくるのだ。
驚異のティラニッド個体種の詳細についてはこちらを参照されたし。


兵器共生体(ウェポン・シンバイオート)と形質変異(バイオモーフ)

【概要】
ティラニッドには他種族で「ウォーギア」に当たる「兵器共生体」(ウェポン・シンバイオート)を備えている。ティラニッドには数多くの兵器共生体を備えており、 弾丸から武器まで全てが生きた武器である。
また、形質変異(バイオモーフ)と呼ばれる性質が付与されれば、その個体種に新たな能力が追加される。
数々の特徴を持つ兵器共生体についてはこちらを参照されたし。


小ネタ

  • 「ティラニッドの元ネタ」
たぶん見たら察すると思うが、ティラニッドのデザインは有名な画家「H・R・ギーガー」の作品から影響を受けている。ジーンスティーラーの元ネタはもちろんエイリアンのゼノモーフである。

  • 「有名ゲームの元ネタ」
オーバーウォッチ、ハースストーンでおなじみ「ブリザードエンターテイメント」の名作RTS「スタークラフト」シリーズに出てくる種族である「ザーグ」の元ネタは実はティラニッドである。

追記・修正は巣窟艦隊を撃破してからお願いします。

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最終更新:2024年02月26日 11:56