SCP-1881-JP

登録日:2021/07/27 Tue 20:43:32
更新日:2023/10/30 Mon 13:18:22
所要時間:約 11 分で読めます








※個人の感想であり、効果・効能を保証するものではありません。





SCP-1881-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つ。
項目名は『※個人の感想であり、効果・効能を保証するものではありません。』。
オブジェクトクラスはSafeから異常性喪失によりNeutralizedへと変更された。
見た目はステンレス製のプレートブレスレッドだが、項目名からある程度察せられるとおり、その実態は怪しげな健康器具のようなオブジェクト。
プレートの一端には「東弊重工」の刻印がされている。



特別収容プロトコル

SCP-1881-JPはサイト-81██の低危険物収容ロッカーに保管される。
その数800個*1。初期の頃は300個存在すると考えられていた。現在は全て回収されている。一軒一軒回って説明をして記憶処理までしなければならない回収係の機動部隊はご苦労様だ……。
とはいえこの回収、例外的に東弊重工の協力が得られたからこその成果でもあるのだろう。

また、異常性が見られていた時期は、基本的には取り扱いはDクラス職員によって行われるべきとされていた。他のオブジェクトの実験と比べればマシか。
一般職員が取り扱う場合は管理責任者への申告が、実験にはセキュリティクリアランス2以上の職員による承認が必要だった。
それでも、使用は24時間以内に留めるべきとされ、取り扱い後はAクラス記憶処理も必要になる。地味に厄介なやつ。



説明

このオブジェクトを直接視認した人物(以下、対象と表現する)は軽度の生理的疲労感を訴えるようになる。
この認識災害は「4~20か月間ブレスレットを見ない」、またはAクラス記憶処理によって除去できる。

ブレスレットの内部には“β-06型認識災害ベクター”とその”接触分解機構”が組み込まれている。
このβ-06型認識災害ベクターは人工因子であるためか効果が低く、効果を現すのには複数回の接種が必要となるが、複製や除去が容易。
つまりこのオブジェクト、視認によって認識災害を起こし、着用することでそれが解消されたかのように思い込むようになるのだ。完全にマッチポンプ。
更にこの体験から対象は周囲の人間に薦めてしまうこともある。この現代社会、疲労感が抜けるなら人に薦めたくもなるのも仕方がない。

さて、オブジェクトクラスがSafeからNeutralizedへと変更された理由だが、これはSCP-1881-JPの耐用年数に因る。
このオブジェクトの本体とも言っていいβ-06型認識災害ベクターと接触分解機構の耐用年数は財団では7~9年と定義されていた*2のだが、大量製品故かその作りは簡易化され、想定された素材である希少金属が性能の低い合金で代用されているために実際のSCP-1881-JPの耐用年数は5~8か月程度と見積もられている。
あの財団の娯楽品どう見てもライトセーバーを作った東弊重工らしからぬ粗悪ぶりだが……?

また、このオブジェクトは関東地方の某ローカルテレビ局のテレビショッピングで「Dimitory 最高級品質ゲルマニウムブレスレット」という商品名で販売されていた。やぁボブ、今日はどんな商品を紹介するんだい?
放送期間内で販売された数は528個だった。



補遺1

番組放送終了を前後して、東弊重工から財団の渉外部宛に「販売されたSCP-1881-JPのサンプル」「その簡易報告書」、そして「SCP-1881-JPの回収の依頼文」が同封された小包が送られてきた。
まずはSCP-1881-JPに同封されていた説明書を引用する。

この度は本商品をお買い上げいただき誠にありがとうございます。
この説明書ではブレスレットの効能の説明や使用上のご注意などを説明させていただきます。

純度99.99%!! 驚異の高純度ゲルマニウム
本商品は純度99.99%の有機ゲルマニウムを利用しており、錆びにくく、軽く、丈夫で上品な色合いを演出します。さらに、2種類の効果があなたの健康と美貌をサポートします。

  • 有機ゲルマニウムイオンが体内に浸透、循環します。これによって体内の酸素循環の活性化を促し、老廃物を体外に排出するデトックス効果が働きます。
  • 人肌で温めることによりブレスレットから微弱なマイナスイオンが発生します。マイナスイオンは生体電流に作用し、神経への負荷を緩和します。

こんな方には特にオススメ!!
疲れが気になる方、便秘気味の方、肩こり・頭痛にお悩みの方、生理痛にお悩みの方
(それぞれの症状に悩む人々のイラストが挿入されている)

使用上のご注意
  • 水に濡らした状態で長時間放置いたしますとゲルマニウムイオン流出の恐れがあります。水や汗でぬれた場合はよく拭き取ってお使いください。
  • 50度以上の高温下で保管いたしますと、マイナスイオンの過放出によりブレスレットの効果が薄れる恐れがあります。冷暗所で保管してください。
  • ブレスレットを強く引っ張ると破損する恐れがあります。無理に力を加えないでください。
(擬人化されたブレスレットが目を回しながら水に流されるイラスト、太陽の下で汗をかいているイラスト、横方向に引っ張られているイラストが挿入されている)

ご質問などあればフリーダイヤル 0120-███-███ までご連絡を!
限定300個! 追加で購入するならイマしかナイ!!


初期に300個存在すると思われていたのはこの説明書からだろう。実際は800個もあったわけだが。

また、東弊重工からの回収依頼文を大まかに要約すると、「こんな悪質な商品を販売した覚えはないし、こっちの信頼問題に関わるから大急ぎで回収したいんだけど手が足りないから手伝って! 財団さんこういうの得意でしょ?」とのことである。
財団はこの小包から東弊重工の本拠地を割り出そうとしたが失敗したので、「まあそういうものがあるなら」と収容に動き出したところ、それを察知した東弊重工から会いに来たのか話し合いによって協力規定を結ぶこととなった。
以下にSCP-1881-JP収容に関する特別協力規定の文面を引用する。

一、本規定は、SCP-1881-JPの迅速かつ正確な収容を最大の目的とする。
一、SCP-1881-JP収容活動下における、SCP財団(以下、甲)と東弊重工業株式会社(以下、乙)間での敵対行為を禁止する。
一、SCP-1881-JPに関して得た情報は、甲と乙それぞれの渉外部を通して互いに共有する。
一、甲に所属するエージェントを主体として機動部隊く-10"屑鉄屋"を編成し、SCP-1881-JPの収容を行う。
一、SCP-1881-JP収容活動の必要経費は乙が全面的に負担する。

普段は財団から逃げ回る東弊重工だが、今回ばかりは協力関係を結び、必要経費も全面負担を買って出た。これは本気だ。
因みに、収容完了後はこの規定は適用されないため、本件の後からは再び財団との追いかけっこをしている。



補遺2

財団はこのオブジェクトを販売していた企業、有限会社「Dimitory」を発見するに至った。
そして確保作戦により、全社員7名を確保し、未販売の商品在庫のブレスレット250個を回収した。
この会社の取締役である高橋氏へのインタビューを要約すると、「製造は布袋軽工業に依頼した。早く安く商品を納品すると言っていた。刻印も“HOTEI”と彫られているはずだった。布袋の営業は楢崎、その上司は大江という男だった」ということだった。
また、最初は東弊重工に依頼していたらしく、「弊社にだって企業理念はある。そんな詐欺まがいの片棒を担ぐことはできない」と断られたそうだ。

この布袋軽工業について調査した結果、そんな企業は存在しないだけではなく、営業の男の名前である“楢崎”も偽名であることが判明した。
東弊重工によると、楢崎と名乗っていた男は“東弊重工土木建築技術部”に所属する蛇島という男であり、蛇島氏は行方不明となっていた。
また、彼の担当する廃棄資材がSCP-1881-JPの制作に用いられた可能性が高いことが明らかとなった。
だが、大江という男については特定には至らなかった。
……大江といえば思い当たるものがあるような。

また、高橋氏は「ブレスレットに刻印されていたのは“HOTEI”だった」という証言から、時間経過によって刻印が“HOTEI”から“TOHEI”に変化したのだと思われる。
というのも、東弊重工が「弊社の開発した[削除済]腐食機構を応用すれば、十分に可能である」との見解を示しているからだ。うーん、身から出た錆……。



補遺3

SCP-1881-JPの異常喪失後、東弊重工から以下の文書が財団に届けられた。

1995年1月08日

SCP財団
渉外部様

東弊重工業株式会社
渉外部長
樫目 公彦

不当表示を含む商品の販売について

謹啓

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は弊社の事業にご理解とご協力を賜り、篤く御礼申し上げます。

 さて、この度は弊社が販売したとされる商品が不当な表示を含むものであったことについて、ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした。当方で原因を調査しましたところ、一部の社員による技術の流出と、それを悪用した如月工務店と名乗る建設業者による、弊社に対する悪質なネガティブキャンペーンが原因であると判明しました。
 お恥ずかしながら、弊社も如月工務店も日本国の憲法、法律に基づく団体では無いため、法廷での係争による解決は望むべくもありません。ですが、今後はこのようなことが無いよう、情報管理の徹底と福利厚生の充実に努めることで、このような事態の再発防止の対策とさせていただく所存でございます。多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

 略儀ではございますが、取り急ぎ書中をもってお詫び申し上げます。どうか今後とも変わらぬご指導のほどよろしくお願いします。

謹白


まさかの如月工務店の名前が出てきた。
しかも「東弊重工を貶めるためにSCP-1881-JPの製造と販売を行った」と東弊重工側は見ているようだ。
財団はこの文書は信頼回復目的のものと見て、複数の団体に郵送したと考えている。
しかし、如月工務店が(この文書を認知しているかは不明だが)何らかの行動を起こしたことは確認されていない。
そしてやっぱりこの書類からの東弊重工本拠地の特定は失敗した。

この文書、そして今回の件について、日本支部理事・稲妻は以下の様に述べている。大切なお話なのでしっかり聞いてもらいたい。

SCP-1881-JPが販売されたことで、東弊重工の得意先の中には彼らに不信感を抱いた者も存在するだろう。それは怪しげな商売に手を出したからかもしれないし、粗末な技術力を見せつけられたからかもしれない。「東弊重工という企業がものづくりにかける情熱や誠意自体は本物であり、その点においては彼らは被害者でないか」と、職員の中にもある種の同情の念を示す者すらいるという。実に嘆かわしい限りである。

そもそも、東弊重工の証言が必ずしも全て真実であるとは限らない。
東弊重工、如月工務店ともにその目的の真意は今もって不明だが、如月工務店にとって東弊重工が邪魔な存在であるならば、逆もまた然りだ。どうして「東弊重工が自社の失敗を隠蔽するために如月工務店の存在を利用した」と言い切れないことがあるだろうか。ましてや、互いにとって目の上のたんこぶである財団の情報を得るために、東弊重工と如月工務店が最初から共謀している可能性すら存在するのだ。

いずれにせよ、要注意団体の発言を鵜呑みにするのは危険であるし、ましてや寄る辺にするなど言語道断である。SCP-1881-JPに限っては財団と東弊重工の目的が偶然にも一致した。だから協力関係を築いた。それだけのことであり、彼らが異常存在を製造・販売するならば、彼らは財団の敵となる存在だ。

我々の行動原理はあくまで財団の理念であり、それは異常存在の確保、収容、保護である。努々それを忘れてはならない。

──日本支部理事 稲妻


つまり、「要注意団体を信用しすぎるな」ということである。
今回こそ協力したものの、財団と要注意団体はやはり理念が異なる。
要注意団体そのものはどれも華々しいが、あくまで「確保、収容、保護」の理念は忘れずに。



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CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1881-JP - ※個人の感想であり、効果・効能を保証するものではありません。
by Utsuki_K
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最終更新:2023年10月30日 13:18

*1 800個の内実験中に26個が壊されている。

*2 この記述は1994年当時のもので、2018年現在では50年程度となっている