天竜八部衆

登録日:2011/05/11 (水) 23:23:09
更新日:2023/08/01 Tue 10:52:17
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■天竜八部衆


天竜八部衆(てんりゅうはちぶしゅう)とは、大乗仏教の成立過程で取り込まれた外教(げきょう=他宗教)の神々(護法善神)の総称。
特に仏教が誕生したインドの神々が殆どを占める。
尚、二次創作等で扱われる場合には八部衆にそれぞれの代表を立てた八人の神々として扱い四天王の眷属(配下)とされる場合も多いが、
これは『仁王護国般若経疏(にんのうごこくはんにゃきょうしょ)』に依る異説であり、本来は部族自体の総称をこう呼んでいた。
しかし、有名な国宝・阿修羅像で知られる奈良・興副寺の八部衆像は天部に五部浄(ごぶじょう)、竜部に沙羯羅(しゃかつら)、夜叉部に鳩槃荼(くばんだ)、
摩喉羅迦部に畢婆迦羅(ひっばから)を当てて八体の独立した尊格として紹介している(同寺『濫觴記(らんしょうき)』の記述に依る)。


【八つの種族】


(梵名:ディーヴァ)

(てん)はインド名ディーヴァを漢訳した存在。
ここに入るのは、亜神的存在であるデーヴァターであって、ヒンドゥーのディーヴァ(神)ではない、とする説もあるが、ディーヴァである、として紹介されている場合が多い。
インド神話に於ける神々の事で、大乗仏教に於ける尊格の内「○○天」と付いている存在は全てここに入る。
護法善神の代表格であり、元来のヴェーダやヒンドゥーの豊かな神話毎取り込まれている尊格も多い。
有名な尊格には梵天(ブラフマー)、帝釈天(インドラ)、弁才天(サラスヴァティー)、閻魔天(ヤマ)等が居る。
尚、彼らヒンドゥーの神々はインド対岸の仏教国であるスリランカでは悪魔とされる為に、中国から日本にかけての地域では逆の伝わり方をしているのだと云える。
呪術を教義の一つとして尊ぶ密教に於ては天部諸尊は強大な神通力と祟りをもたらす存在として信仰が捧げられている。
尚「ディーヴァ」は「デビル」の語源ともされる。


(梵名:ナーガ)

(りゅう)はインド名ナーガを漢訳した存在。
インドの人面蛇身の地方神ナーガが仏教に取り入れられた姿である。
尚、竜の文字はナーガの姿になぞらえて生まれたとされる俗説がある。
大海に住み、雲を呼び雨を降らす魔力を持つとするナーガの伝説を引き継いでいる為、仏教に於ける竜もまた水神である。
ヒンドゥーではアスラ同様に悪役として登場する。
有名な物に「法華経」に登場する「八大龍王」が居る。


夜叉(梵名:ヤクシャ)

夜叉(やしゃ)或いは薬叉はインド名ヤクシャを音写(当て字)した存在。
元来はヒマラヤ地方の空を飛ぶ精霊の類であったが、これがヒンドゥーに於てアスラ同様の悪魔として取り入れられた後にその性格毎、仏教に入った。
夜叉に近い存在として羅刹(らせつ=ラクシャーサ)があり、これらは単に悪鬼の類の名称としても語られる。
尚、四天王の一角にして七福神の一人として知られる毘沙門天(クベーラ)はこのヤクシャの王に起源を持つ。
名称が近い事から関連付けられたのか、大乗仏教に於ける思想上の尊格である薬師如来の眷属である十二神将もまた夜叉であると云う。


阿修羅(梵名:アスラ)

阿修羅(あしゅら)はインド名アスラを音写した存在。
アスラとは「天(神)にあらざる者」と云う意味であり、ヒンドゥーに於ける悪魔を指すが、
元来はヴェーダ時代のインドの神々はアスラであったとも云い、仏教の尊格にも伝承中のアスラの名を持つ存在も多い。
興副寺像の三面六臂の国宝・阿修羅像は有名。
元来は古代の光明神であり、ペルシャのアフラ・マズダとの関連も囁かれる。
詳細は当該項目参照。


■乾闥婆(梵名:ガンダルヴァ)

乾闥婆(けんだっぱ)はインド名ガンダルヴァを音写した存在。
頭に獅子冠を頂く姿で顕される。
元々はペルシャ地方の芸術に通じた精霊だと言われ、飛天(アプラサス)=天女とは同族。
ヒンドゥーでは神々の飲料である神酒(ソーマ)を守る役目を担っていたとされ、水から生まれたとされる。


■緊那羅(梵名:キンナラ)

緊那羅(きんなら)はインド名キンナラを音写した存在。
ヒマラヤに住む音楽に通じた精霊であったとされる。
ヒマラヤの王であるクベーラ(毘沙門天)の眷属たる楽神と云う性格は仏教でも同じ。
美しい歌声を持つ鳥の神格化と言われながらも、インドでは馬頭で顕される。


迦楼羅(梵名:ガルーダ)

迦楼羅(かるら)はインド名ガルーダを音写した存在。
大鷲等の猛禽類を神格化した尊格で、ヒンドゥーの最高神の一柱であるヴィシュヌの乗り物にして眷属でもあるガルーダが仏教に取り入れられた。
金翅鳥(こんじちょう)、食吐悲苦声(じきとひくしょう)とも漢訳される。
ヒンドゥーでは猛禽類が毒蛇(コブラ)を常食する姿からナーガ族と敵対し、彼らの天敵とされる事もある。
インド神話ではインドラをも凌ぎ、ヴィシュヌに匹敵する力を持つと云うヴィシュヌ派の神話もある事からか、
仏教に於ても障害を取り除く戦闘神としての信仰が強い。
仏教では鳥面に翼を持つ武人の姿であり、天狗のイメージの原型になったとも。


■摩喉羅迦(梵名:マホラガ)

摩喉羅迦(まごらが)はインド名マホラガを音写した存在。
ナーガ(竜)がコブラ等の毒蛇を神格化した存在なのに対して、
大腹胸行(腹這いで地を行く)、大蠎(大きな長虫)と呼ばれる事から解る様に大蛇を神格化した存在だと考えられる。
何故か仏教では音楽神の性格が与えられている。



【仁王護国般若経疏】


ここでは「仁王護国般若経疏」に依る八部衆の記述を紹介する。
前述の様に四天王の配下として、それぞれ二体ずつの尊格が割り当てられている。


■東方 持国天

▼乾闥婆
▼毘舎遮

■南方 増長天

▼鳩槃荼
▼薜茘多

■西方 広目天

▼竜
▼富単那

■北方 多聞天

▼夜叉
▼羅刹

これらは個別の尊格の名であり、各々の属する氏族の代表と云える。

【八大龍王】

前述の竜部で説明した『八大龍王』の名称も紹介する。

▼難陀龍王
▼跋難陀龍王
▼娑迦羅龍王
▼和修吉龍王
▼徳叉迦龍王
▼摩那欺龍王
▼阿那婆達多龍王
▼優鉢羅龍王

他に有名な龍王としては不動明王の利剣に巻き付く倶利迦羅龍王……等が居る。



追記、修正は仏陀に帰依してからお願い致します。

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最終更新:2023年08月01日 10:52