ハムナプトラ/失われた砂漠の都

登録日:2021/11/6 (土曜日) 0:42:10
更新日:2024/01/22 Mon 23:30:05
所要時間:約 9 分で読めます





アナクスナムンーッ…


砂は立ち上がり 天は裂ける!


いま、恐るべき力が甦る……


概要


原題は『the mummy』(ミイラ)。1999年に公開された米映画。

監督は『ザ・グリード(映画)』で知られるスティーヴン・ソマーズ監督・脚本。
『ミイラの幽霊』と同様の、『ミイラ再生』のリメイク作品である。

古代エジプトを舞台に、ザ・グリードにインディ・ジョーンズと映画コンゴの要素を加えたエジプト一大冒険娯楽活劇である。
ミイラに襲われる隊員のシーンなどはトラウマと称されるが、レイティングと監督がソマーズということもあって、
剣で刺されようが銃で撃たれようが流血シーンは無く、殺害されるシーンも直接は写さないなどの配慮がなされており、家族みんなで楽しめる作品となっている。
ただ2作目と違い本作の元凶は完全にヒロインにあるので見る人を選ぶかもしれない。

本作が大ヒットしたことにより、続編や派生作品が多く作られた。
続編の『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』は、前作よりも遥かにパワーアップしたVFXで制作されただけでなく、
登場人物も前作より大幅に増え、復活したイムホテップだけでなく新たなる敵・スコーピオンキングも参戦しての三つ巴が描かれ、こちらも大ヒットした。
また、映画版とは異なる世界観の『ハムナプトラ ジ・アニメイテッド』シリーズ、外伝スピンオフ映画『スコーピオン・キング』なども作られ、
どれもエジプト舞台の傑作揃いとして高い評価を受けている。

ただ、完結編となる『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』は、舞台がエジプトから中国になっていること、
『2』までエヴリン役を務めたレイチェル・ワイズが降板し、代役としてマリア・ベロがエヴリン役を務めていること、
監督・スタッフが総入れ替えされていることから、『ハムナプトラ』の続編としては賛否が分かれている。



物語

今から3000年前、古代エジプトはセティ1世の時代。
ファラオ・セティ1世に仕える大神官イムホテップは、王の愛人であるアナクスナムンと禁断の恋に落ちるが、
それが王に知られてしまい、その仲を疑われた二人はセティ1世を剣で刺殺。

イムホテップはアナクスナムンに後で蘇らせることを約束して逃亡し、兵に追い詰められたアナクスナムンは剣で腹部を刺して自害。
死者の書を手にしたイムホテップは、配下の僧らと共に死者の都・ハムナプトラに向かい、アナクスナムンの蘇生の儀式を執り行うが、
その完遂を目前にしたところで、彼を追跡していた王の兵団が乱入したことで蘇生の儀式は失敗。イムホテップも配下の僧らと共に捕らえられてしまう。

王の愛人と密通するどころか、それを咎めた王を殺害した大罪人たるイムホテップと、配下とはいえ彼に協力した僧らには当然ながら重い罰が下された。
罰として、配下の僧たちは生きながらにしてミイラにされ、イムホテップには「あまりの残酷さ故にこれまで一度も行われていない」という『ホムダイ』が掛けられることとなり、
自分を信じて自害したアナクスナムンの蘇生も叶わないまま、イムホテップは死すらも許されずに『ホムダイ』に掛けられて石棺に封印された。

それから遥か未来の1926年。
敗残兵でカイロ刑務所で死刑を待つ身であった元フランス外人部隊のリック・オコーネルは、カイロ博物館の職員であるエヴリンとジョナサン兄妹に救い出される。
彼らによると、『ハムナプトラ』への道案内を頼みたいとの事であったが…


登場人物


リチャード・オコーネル
演:ブレンダン・フレイザー 吹替:森川智之(ソフト版)/堀内賢雄(日テレ版)
本作の主人公。通称リック。美形かつ筋肉質で勇猛果敢なアメリカ人傭兵。
3年前に外人部隊として遊牧民との戦闘に敗北するも、ハムナプトラの超常現象に救われた過去を持つ。

粗暴で口も態度も悪いが、これは実は演技であり、根は正義感の塊のような善人。
劇中でも、悪人だろうが自分を裏切ったベニーだろうが救おうとする。

「これはどうだ、ニャー」
「あばよベニー」

エブリン・カナハン
演:レイチェル・ワイズ 吹替:石塚理恵(ソフト版)/田中敦子(日テレ版)
本作のヒロインでカイロ博物館職員のイギリス人美女。母親はエジプト人のハーフである。
好奇心と冒険心旺盛のドジッ娘であり、最初は嫌っていたが徐々にリックに惹かれていくツンデレ。

彼女が意図してやったわけではないが、本作で起こった騒動の引き金を引いた、いわば「全ての元凶」ポジションである。

「ア…メノファス!」

ジョナサン・カナハン
演:ジョン・ハナー 吹替:田原アルノ(ソフト版)/中尾隆聖(日テレ版)
エヴリンの兄。真面目な妹と違い風来坊でお調子者の三枚目プー太郎。
ただし妹想いで口八丁で射撃の達人でもある。

肝心な時にしか役に立たない男。

イムホテップとの戦いでは古代エジプト語の解読に四苦八苦し、上記の通り「肝心な時にしか役に立たない」ため、ある意味戦場を一番引っかきまわしている。
また、続編ではこの時わからなかった古代エジプト語が妹の窮地を救うカギになる。

「鳥だよ! コウノトリだ!」

アーデス・ベイ
演:オデッド・フェール 吹替:谷口節(ソフト版)/大塚明夫(日テレ版)
太古からハムナプトラを監視・守護しイムホテップの復活を防いできた戦闘部族「メジャイ」の戦士で部族のリーダー。
普段はガイドをして生活しているらしい。
凄腕の剣士で堅物だが、飛行機を目にしてはしゃぐなど意外にお茶目な面もある。

ハムナプトラへの不法侵入者であるリック達とは当初敵対していたが、イムホテップ復活に際し彼らと共闘。

「常にアラーのご加護を」

ベニー・ガーバー
演:ケヴィン・J・オコナー 吹替:檀臣幸(ソフト版)/岩崎ひろし(日テレ版)
軍隊時代のリックの部下。3年前の戦闘中に彼を見捨てて逃げた事もある臆病な小心者で、なおかつ本性は狡猾で自己中心的な小悪党。
それでも「部隊の中では唯一友と呼んでも良い男」と、リックからはさほど嫌われてはいなかった。
ハムナプトラでリックと再会してからしばらくは行動を共にしていたが、イムホテップ復活後は保身のために再びリックを裏切ってあっさりとその軍門に降るが…

イムホテップ
演:アーノルド・ヴォスルー
セティ1世に仕える大神官だったが、王の愛人アナクスナムンと報われぬ恋に落ち、それに気付いて詰問してきた王を謀殺。
あらすじにある通り、彼女と結ばれるために禁断の儀式に踏み切り、成功まであと一歩のところまで辿り着きながら、
王の兵団に儀式を妨害された上、『ホムダイ』にかけられて石棺に封印され、死すら許されないまま永く苦しみ続けていた

劇中では、エヴリンが『死者の書』の呪文を唱えた事により封印から解放され、現代に復活する。
『ホムダイ』には、呪いに掛けられた者を死すら許さずに永遠に苦しめる代わりに、もしも解放されたなら呪いを掛けられた者を強化する副作用があったため、
エヴリンに『ホムダイ』から解放されたイムホテップは、この世の武器では倒せない最強のミイラとなった。

蘇生当初は不完全な状態であり、まさしく干からびたミイラであった上、冥界の監視者である猫を恐れていたが、
リック同様、エヴリンの護衛で来ていたアメリカ人グループの一人の眼球と舌を奪ったのを皮切りに次々と人間を取り込んでいき、
彼らの生気と水分を吸収していったことで生前の姿を取り戻し、完全に復活した。
完全復活後はあらゆる者を寄せ付けない無敵の存在となったが、『アメン・ラーの書』が唯一の弱点となる。
彼の襲撃シーンはトラウマ満載。

本作の悪役であるが、生前も、『ホムダイ』に掛けられてからも3000年間ずっとアナクスナムンを愛し続け、
完全復活後には真っ先に彼女を蘇生しようとするなど、恋愛に関しては非常に一途な男といえる。
禁断の恋に落ちた結果許されざる罪を犯し、永年に渡る生き地獄に堕とされたという状況だけ見れば、
因果応報とはいえ、哀しき悪役と呼べるかもしれない。

「アナクスナムーン!!」

アナクスナムン
演:パトリシア・ヴェラスケ
セティ1世の愛人である王女。かなり露出度が高い格好をした前髪ぱっつんの美女。
その立場から、本来であれば王以外は肌に触れることすら許されない彼女とイムホテップが禁断の恋に落ちたことが全ての始まりであった。
あらすじにある通り、自分たちの関係に勘づいた王をイムホテップと共謀して殺害した後、
蘇生することを約束して逃亡したイムホテップの言葉を信じ、自ら囮となって命を絶った。

終盤、イムホテップの儀式でミイラに魂を宿す形で復活。
完全な肉体を取り戻すべくエブリンに襲い掛かるが、最終的に衛兵のミイラ達の手により、かつて自分がセティ1世にしたの同じように滅多刺しにされて二度目の死を遂げた。

セティ1世
演:アーロン・イパール
古代エジプトの王。
あらすじにある通り、愛人と側近の両方に裏切られた不憫な人であるが、死後に兵団が遠征してイムホテップ達を一網打尽にしていた事からそれなりに人望があったようである。
次回作では「意外な因縁」が明かされた。


★スカラベ
古代に生息していた肉食性の甲虫。
自分よりも遥かに巨大な人間にも全く躊躇うことなく襲いかかる凶暴性を持ち、鋭い角と口で皮膚を突き破って体内に侵入して肉を食い荒らす。
『ホムダイ』は、包帯で全身を拘束された受刑者を閉じ込めた棺にこのスカラベを投入し、生きながらにして全身を喰われる苦痛を味わわせるというもので、
これが「残酷すぎて今まで一度も執行された事が無い」理由のひとつでもある。

一匹だけなら体内に侵入されても、ナイフで摘出したり、その後に銃で撃つなり踏みつぶすなりで対処できるものの、
おびただしい数の群れを形成して襲いかかってこられると、すぐに逃げるしか有効な手段は無い。
逃げ遅れて食いつかれたが最期、人間などひとたまりもなく一瞬で骨と皮だけにされてしまう。
また、スカラベをブルーゴールドに擬態させ、それを盗もうと人間が手にすると、
盗人にブルーゴールドの中からスカラベが襲い掛かるという、トラップめいたモノも登場している。

本作を象徴するモンスターと言っても過言ではないトラウマ製造機。『遊戯王』にも、このスカラベをモチーフにしたモンスターが登場している。
ちなみに、史実の古代エジプトにも『スカラベ』と呼称された虫は存在するものの、これはタマオシコガネ…いわゆる「フンコロガシ」の事であり、
その糞を転がす様から太陽の運行を司る聖なる虫として信仰の対象となっていた。
言うまでもないが、本作に登場するスカラベはシデムシやクワガタの要素を盛り込んだと思われる架空の存在であり、
古代エジプトはもちろん、現実のエジプトや世界各地に生息するスカラベことフンコロガシはこんなヤバい虫ではないのでご安心を。

★配下のミイラ達
かつてイムホテップに仕えており、生きながらにミイラにされた僧たちの成れの果て。
現代に復活したイムホテップの命ずるままに戦闘員ポジとしてリック達の前に立ちはだかった。
ミイラの割には表情豊か。オコーネルの雄叫びに叫び返したり、自分の首を切り落とされたところをお手玉したりとコミカルなやつもいる。

また僧侶とは別に、ハムナプトラに葬られた衛兵たちのミイラも存在。
のろのろとした僧侶ミイラとは対照的に、生前を思わせる……どころか生前以上の俊敏さと膂力を備える。

余談

作中に登場するセティ1世は実在した第19王朝のファラオ。
かの有名なラムセス2世(ギリシャ表記だとオジマンディアス)の父親である。
イムホテップは流石に実在しないが、その名前はセティ1世の時代より1000年以上前、第3王朝時代の神官の名前に由来する。

主演のブレンダン・フレイザーは本シリーズ終了後にHFPA元会長によるセクハラ被害やプライベートでの不幸で精神的に病んでしまい表舞台から遠ざかることになる。
しかし、2022年公開の「ザ・ホエール」にてアカデミー主演男優賞を受賞し、奇跡のカムバックを果たした。



「奴はこの世の武器では追記修正できん」

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最終更新:2024年01月22日 23:30