タップ/Tap・アンタップ/Untap

登録日:2021/11/17 Wed 22:21:00
更新日:2023/12/26 Tue 18:23:24
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「タップ/Tap」及び「アンタップ/Untap」とは、世界初のTCG『Magic the Gathering』でカードの状態をあらわす用語である。

MtGをはじめとしたTCGでは、カードがどのような状態であるのかを表すために様々な手法がとられる。
カードの位置や向きを変えたり、カウンターやマーカーを使用する場合が多い。
タップ・アンタップは、カードの向きを変えることで状態をあらわす手法の一つである。



タップ

タップとは「縦長のカードが横向きになっている状態」または「横向きにすること」を指す。

タップになっている状態(以下タップ状態)を表すには、カードを傾ける必要がある。
この際「右向きに90度」傾けるプレイヤーが多い。後述する「タップ・シンボル」で右曲がりの矢印が使われていることが要因だろう。
公式ルールでは傾ける向きについては書かれておらず、実際は左向きでも良い。
一方で傾ける角度については「ほぼ90度」と決められているのだが、そこまで厳密に守られているわけでもない。
実際に『MtGA』では、90度よりも明らかに浅い傾き(&タップ・シンボルがカード表面に浮かぶこと)で表示されている。
とはいえテーブルトップではカードの角度があまりに浅いとアンタップ状態と勘違いされたり区別しにくくなることもあるので、しっかり傾けておこう。
反転カードでなければ180度反転させても……いや、さすがにダメだろう*1

カードがタップ状態になる出来事としては、
  • 攻撃に参加する。
  • タップ能力を使用する。
  • 「タップ状態で戦場に出る」(通称:タップイン)と自ら指定のあるカードを場に出す。
  • 「相手のカードをタップさせる効果」や召集など、他のカードの効果でタップする。
といったことでタップ状態になる。主に「攻撃済み」や「使用済み」を表していることが多い。
他のTCGをやっていると勘違いしやすいが、ブロックする際にはタップ状態にはならない。
フレーバー的には「攻撃や魔法を使用して、疲れていたり魔力が切れていたりする」といったところか。

タップ状態になったカードは攻撃やブロックに参加できず、またタップ能力を使用できない。
一方でタップ能力でない起動型能力は使えるし、戦場にいるときに常に機能する常在型能力はタップ状態であっても失われることはない*2
ただし「アンタップ時のみ常在型能力を得る/失う」カードは存在するので注意。

「カードをタップ状態にする効果」を持つカードは、殺傷を嫌い無力化という選択肢を取る、敵と戦わないために無力化という手段を選ぶに多い。
白は同時に「相手が行動(タップ)したことを因果応報として裁く」フレーバーとしてタップ状態のクリーチャーを除去できるため、白の能力でタップ→タップされているので対象にして除去というマッチポンプをやらかすが。

タップ能力

タップすることによって使用する起動型能力は「タップ能力」と呼ばれる。
初心者は混同するかもしれないが、タップ「させる」能力では無いので注意。そちらは「タッパー」と呼ばれる。

タップ能力はクリーチャーだけでなく、あらゆるパーマネントが持ちうる。
特に土地はほぼ持っている。MtGにおいて当たり前のように行う「土地をタップしてマナを生み出す」行為も立派なタップ能力である。

タップ能力には召喚酔いルールが適用されるため、速攻を持たないクリーチャーは戦場に出たターンには自身のタップ能力を使えない。
ただし他のカードのコストとしてタップすることは可能。
機体がある環境では、搭乗のために戦場に出して即タップという光景がよく見られる。

タップ能力であることを表す右回りの矢印のシンボルは「タップ・シンボル」と呼ばれている。wikiなどでは(T)と表記される。
昔の表記のように丸の中にTだったが、英語圏以外の人が分かりにくいという事で矢印に変更になった。



アンタップ

アンタップとは「タップしていないカードの状態」または「タップ状態のカードを縦に戻すこと」を指す。

タップされていない状態(以下アンタップ状態)になれば、再びの攻撃やブロック、タップ能力の使用ができるようになる。
アンタップはターン初めのアンタップ・ステップで行えるほか、カードの効果やアンタップ能力によっても行える。

「アンタップ状態にする効果」を持つカードは、時を速めて疲れを癒すというフレーバーからか青、生命力を操り活気を取り戻すに多い。
青はタップ・アンタップの両方に秀でており、どちらかを任意に選べるカードも多く存在する。
また凍結や睡眠など、長い時間稼ぎをするというフレーバーから
  • 「次のターンのアンタップ・ステップにアンタップしない」という長期間の無力化
  • 付いている間永続的にタップ状態にする=実質無力化するオーラ・エンチャント
なども多い。

アンタップ能力

「反転」をテーマとしたエキスパンション「シャドウムーア(SHM)」では、タップ能力と対になる「アンタップ能力」が登場した。
タップ能力とは逆にタップしているときにのみ使用可能で、アンタップ状態となることで効果が発動する。
うまく使えば、「攻撃→アンタップ能力発動→ブロック」と警戒のように使用することも可能。
しかし前述のようにタップしていなければ発動できず、また全てのアンタップ能力にはマナの支払いも含まれている。

「アンタップ・シンボル」のwikiなどでの表記は(U)……とされているのは青マナシンボル*3であり、実際には(Q)が使われる。
「『Untap』のどこにQがあるんだよ」と思うかもしれないが、単に他で使われず以降も使われる可能性が低いかららしい。

「タップ能力」と異なり、以降は「モダンホライゾン・シリーズ」に登場したのみでほとんど登場しない不遇の能力である。
「アンタップ・シンボル」が「タップ・シンボル」と見分けが付きづらいのが原因とされる。
一応全く出ない黒歴史というわけでもなく、『スト2』コラボにて波動拳コマンドと形が似ているのでリュウがこの能力を持っていたりした。

ちなみにホリデーギフトカード*4には(T)(Q)(T)(Q)(T)をコストにするカードがある。
実はこれ、厳密には「コスト支払い時に支払い可能な状態でなければいけない」というルールに引っかかってそのままだと起動不能だったりする。
まあ銀枠扱いのカードなので、ホリデーギフトカードの奇跡によって支払い可能という判断が出ている。最終的にはタップ状態となる。



関連能力

警戒/Vigilance

このクリーチャーは攻撃してもタップしない。
タップに関する最も有名なキーワード能力。
これを持つクリーチャーは攻撃してもアンタップ状態のまま。そのため攻撃しつつブロックに回すことが可能になる。
非常にシンプルでながら便利な能力で、特にP/Tが高くなりやすい大型クリーチャーがこれを持っていると攻防共に非常に輝く。
代表的なクリーチャーとして《セラの天使/Serra Angel》が存在する。

元々はキーワード能力ではなく、《セラの天使》からとった「セラ能力」などといった俗称で呼ばれていた。
登場から10年以上経った2004年の「神河物語(CHK)」で「警戒」のキーワード能力として制定された。

召集/Convoke

あなたのクリーチャーが、この呪文を唱える助けとなる。この呪文を唱えるに際しあなたがタップしたクリーチャー1体で、(1)かそのクリーチャーの色のマナ1点を支払う。
「ラヴニカ・ブロック」でギルドの一つであるセレズニア議事会の固有能力として登場したキーワード能力。
これを持つ呪文は、唱える際に場のクリーチャーをタップすることで1マナ分の支払いとすることが出来る。
要するに場の全てのクリーチャーを疑似的なマナクリーチャーとして扱えるようになる。
当然横並べしていればいる程唱えやすくなるので、トークンやアグロ志向のデッキに向いている。
また唱える際に召集でタップしたクリーチャーを参照し、+1/+1カウンターのような恩恵を与えるカードも存在する。

共謀/Conspire

あなたがこの呪文を唱えるに際し、あなたはあなたがコントロールする、この呪文と共通の色を持つアンタップ状態のクリーチャーを2体タップしてもよい。そうした場合、その呪文をコピーし、あなたはそのコピーの新たな対象を選んでもよい。
アンタップ能力と同じく「シャドウムーア(SHM)」で登場したキーワード能力。
要するに同じ色のクリーチャーが2体いれば効果が倍になる。
効果自体は強力なものの、クリーチャー2体は意識しないと微妙に重い。

テキスト自体がややこしいこともあってか、以降のエキスパンションでは登場していない。

神啓/Inspired

神啓 ― オレスコスの太陽導きがアンタップ状態になるたび、あなたは2点のライフを得る。
「テーロス・ブロック」の「神々の軍勢(BNG)」で登場した能力語。
アンタップ状態になるたびに何らかの効果が誘発する。
「テーロスの人々が寝ている(≒タップ)間に夢の世界ニクスの神々から啓示を受け、起きた(≒アンタップした)時にそれを活かす」
という趣のフレーバーでデザインされており、アンタップ能力のある種のリメイクとして作られた能力でもある。
他のカードを絡めなくてもターン開始時のアンタップステップで誘発するので、攻撃していれば次のターンには誘発できる。

しかし何かしらコンボしない限り攻撃して倒されずに次の自ターンまで生き残る必要があることや、これはこれで誘発忘れが起きたりと問題が多かった。
当時のスタンダードにはタップ能力を持たせるエンチャントや召集持ちなどの相性の良いカードもあるにはあったが、あまり活躍しなかった。
開発陣の一人であるMark Rosewaterに言わせれば「不人気」であり、「(再登場は)ありえないとは言わないが、ちょっとした奇跡が必要」*5とのこと。

ちなみに攻撃してもタップしなくなる警戒とは致命的に相性が悪いのだが、テーロスで警戒を全体に付与するのは太陽の神である。
なので
「警戒を得ている=太陽の神の加護がある=太陽が沈まないので夜にならない=誰も寝ないので夢の世界から神啓を得ることもない」
となり、フレーバー面では極めて高い完成度を誇っている。

搭乗/Crew

搭乗N(あなたがコントロールする望む数のクリーチャーを、パワーの合計がN以上になるように選んでタップする:ターン終了時まで、この機体(Vehicle)はアーティファクト・クリーチャーになる。)
「カラデシュ(KLD)」で登場したアーティファクト・タイプ「機体/Vehicle」に関連するキーワード能力。
「クリーチャーをタップすることで機体に乗り込み、そのパワーを使って機体を動かす」
というイメージでデザインされており、だいたい強力な機体ほど大きなパワーが必要になる。
タップするクリーチャー数に制限が無いので、仕事の無くなったマナクリーチャーをまとめて搭乗させて機体を動かすといった動きも出来る。
面白いところではクリーチャー化した機体を別の機体の搭乗要員に充てることも可能。
初登場の「カラデシュ・ブロック」の目玉キーワード能力であり、意図的に強くデザインされたためかなり久々の禁止カードを出したりもした。

機体(+搭乗)という存在は扱い易いためか「カラデシュ・ブロック」以降でもたびたび登場している。
搭乗以外の起動型能力でクリーチャー化する機体もいくつか登場しているが、それらも大まかに「クリーチャーをタップする」条件は必ずついている。
機体とタップという要素は切り離せないデザインなのだろう。

即席/Improvise

あなたのアーティファクトが、この呪文を唱える助けとなる。あなたはあなたのアーティファクトをタップして、1個あたり(1)の支払いに代えてもよい。
「霊気紛争(AER)」で登場したキーワード能力。
召集のアーティファクト版。ただし召集と違い色マナを減らすことは出来ない。
アーティファクトはクリーチャーに比べ軽量なものも多いので「軽量アーティファクトをバラまいて一気にマナ軽減」という動きが強力。

ちなみに
親和の再録を検討していたが、【親和】デッキは環境をブチ壊して禁止カードを複数輩出するなど曰くつきであったため、代替としてデザインされた」
という経緯で生まれている。

督励/Exert

栄光をもたらすものが攻撃するに際し、あなたはこれを督励してもよい。そうしたとき、対戦相手がコントロールするドラゴン(Dragon)でないクリーチャー1体を対象とする。これはそれに4点のダメージを与える。(督励されたクリーチャーは、あなたの次のアンタップ・ステップにアンタップしない。
「アモンケット(AKH)」で登場したキーワード処理。
督励されたクリーチャーは次のアンタップステップにアンタップしなくなる。
フレーバー的には「神々の試練へ立ち向かうアモンケットの修練者たちが、限界を超えた力を引き出す」といった感じ。
その割には修練者なぎ倒してるドラゴンとかも持ってるけど
ゲーム的には次のターンの行動を放棄する代わりに強力な効果を発揮するというデザインで、タイミングを見極めれば強力。
アンタップ自体が不可能になるわけではないので、警戒を与えたり何らかのカードを絡めてアンタップすれば実質的なデメリットもなくなる。
デザイン空間が広いのか攻撃時に督励するものだけでなく「タップ能力使用時に督励できるもの」「コストとして督励するもの」もある。

また「アモンケット・ブロック」の「破滅の刻(HOU)」にはこの能力の派生として、
「あなたがコントロールする土地は、あなたの次のアンタップ・ステップにアンタップしない。」
という能力、つまり「プレイヤーを督励する(通称超督励)効果」を持ったサイクルが登場している。



余談

ここで語られたような意味での「タップ」と「アンタップ」についてだが、これはMtGの発売元であるウィザーズ*6の登録商標でもある。
そのため「タップ」「アンタップ」という用語そのものはウィザーズ関連のTCGでしか使用することが出来ない。
著名なTCGでは、MtGと同じくウィザーズが開発している『デュエル・マスターズ』くらいしか使用していない。
デュエマでも基本的な仕様は同じだが、
  • ブロックにもタップを必要とする
  • タップ状態ならばクリーチャーも攻撃対象に選択できる*7
  • タップ能力がMtGよりもレア
であることが異なる。
ちなみにアンタップ能力を持つカードも一応あるにはあるが、キーワード能力としては存在せずクリーチャー毎の個々の能力として扱われている。

ともあれウィザーズ以外のTCGでは、異なる言葉での「タップ」「アンタップ」の表現を半ば強いられている状況にある。
  • バンダイの『バトルスピリッツ』では「疲労」「回復」
  • ブロッコリーの『Z/X -Zillions of enemy X-』では「スリープ」「リブート」
  • 会社がデュエマと同じはずのタカラトミーの『WIXOSS』では「ダウン」「アップ」
  • ムービックの『Lycee Overture』では「行動済み」「未行動」
  • ブシロード製TCGでは「レスト」「スタンド」
等々……
とはいえTCGプレイヤーの間では比較的通りが良い用語のため、違うTCG同士でも概ねタップ・アンタップで通じる。
逆にMtGプレイヤーの間では俗称として「起こす」「起きる」(アンタップ)「寝かす」「寝る」(タップ)が使われることもある。



(T):項目1つを対象とする。あなたはそれを追記する。
(100),(Q):項目1つを対象とする。あなたはそれを修正する。

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最終更新:2023年12月26日 18:23

*1 一部のプレイヤー間では「次のアンタップ・ステップでアンタップしない」のマーカーとしてカードを180度回す場合がある。次のアンタップステップで他のカードと一緒に90度回すとタップ状態になるので、ミスを防ぎやすい。とはいえ全てのプレイヤーが行うわけではないため、あらかじめ相手の了承を取ったり公式大会等では使用を控えるべきだろう。

*2 以前は「タップ状態のアーティファクトは能力を失う」というルールがあったが、これは「第6版(6ED)」発売時に廃止された。

*3 「Blue」の「B」じゃないの?と思うかもしれないが「B」は黒(マナシンボル)、その次の「L」も土地に割り当てられているため。

*4 毎年発行される公式フォーマットでは使用できないプロモカード。一種のギャグカードばっかり。

*5 MtGユーザ向けに言うならストーム値9。

*6 ウィザーズ・オブ・ザ・コースト。WotCとも。親会社のハズブロの内部部門『ウィザーズ&デジタル』への再編が予定されている。

*7 ルールでプレイヤーへの攻撃とクリーチャーへの攻撃がはっきり区別されているので、厳密に言うと「アンタップ状態のクリーチャーは攻撃対象に選択できない」と言った方が正しい。勿論一部能力によってアンタップ状態のクリーチャーも攻撃できるようになる。