エイリアン:コヴェナント

登録日:2021/12/21 Tue 16:20:44
更新日:2024/04/10 Wed 21:58:42
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絶望の、産声。

The path to paradise begins in hell.(天国への道は地獄から始まる)



『エイリアン:コヴェナント』は2017年に公開されたアメリカ映画。
2012年公開の映画『プロメテウス』の続編であり、1979年公開の『エイリアン』の前日談として製作されたシリーズの2作目。
監督は初代エイリアンの監督も務めたリドリー・スコット。前作のエンディングで生まれた矛盾点への答え合わせのような形にもなっている。
また前作『プロメテウス』がエイリアンの設定を利用した派生作品として製作されているのに対し、本作は明確にエイリアンの名を冠している。

ちなみに2015年の時点でのタイトルは『ALIEN:Paradise Lost(失楽園)』だったが、同年末に『ALIEN:Covenant』への変更となった。
この「コヴェナント」とは前作同様、宇宙船の名前でもあるのだが、単語としての意味は約束、盟約
更に聖書における神とイスラエル人との『契約』という意味もある。
また本作の総スタッフ数は約300人、撮影は74日とかなり少数短期間で作成されている。
そのせいか、当初完成は2017年10月6日と発表していたが2017年5月19日に前倒しして公開となった。

尚、本作は設定上『エイリアン』での事件が起きる約20年前の出来事である。(エレン・リプリーが12歳の頃の話*1

■[STORY]■

プロメテウス号の事件が起きる以前、人類史上初の人間そっくりな男性型アンドロイドが完成した。
彼は創造主である人物と話をし、ダビデ像を見て自らを「デヴィッド」と名乗る事を決める。
…そう、彼こそがプロメテウス号に乗り込んだアンドロイド・デヴィッドだった。

「あなたは私を創った。では、あなたを創ったのは誰?」
「いつか、お前と答えを探したい。我々は何処から来たのか」


そして「LV-223」の出来事から10年後の2104年。
植民船『コヴェナント』号は15名の乗組員と冷凍睡眠中の住人2000人、そして1000人分の人間の胎芽を乗せて、新たな植民地となる惑星「オリガエ-6」へと向かっていた。
乗組員はハイパースリープに入っており、航行はデヴィッドの後継機『ウォルター』が管理を行っていた。
しかし航行中、近くの星系セクター106で突如発生したニュートリノの衝撃波を受け、コヴェナント号は甚大なトラブルに見舞われてしまう。
この事故により入植者数十人が命を落とし、船長であるブランソンがカプセルに入ったまま火災により死亡。
仕方なく副船長のオラムが船長となり、乗組員は船の復旧作業に勤しむ。しかし船外修理中のテネシーが謎の信号を受信。

それはなんと歌声……それも「カントリー・ロード」だった。

発信源を探ると、オリガエ-6よりもずっと近い惑星からの信号である。
その星は太陽と月と水と緑と酸素を含む大気がある、人類が移住可能な惑星だった。
オリガエ-6までは事故現場からハイパースリープで航行しても7年掛かるが、その惑星は僅か2~3週間の距離。
乗組員達は再び事故に巻き込まれるかもしれない事を恐れ、その近くの惑星に進路変更をするよう新船長に直訴する。
船長の妻で人類移住計画責任者のダニエルズはそれに反対するが、オラム新船長と乗組員達は強引に惑星への調査を敢行した。

彼らはその判断が大きな過ちだとは思ってもいなかった…。


■[登場人物]■

本作では乗組員クルー14名が7組のパートナー(恋人か夫婦)で乗り込んでいる。
これは入植先の惑星でそのまま入植者として現地に定住して生活を送るため。要するに生活基盤と集団社会を作る任務。
(ちなみに本作のモチーフである旧約聖書の『ノアの方舟』にちなんだものでもある*2

  • ジャネット・ダニエルズ (演者:キャサリン・ウォーターストン 吹替:坂本真綾)
本作の主人公。愛称は「ダニー」。
事故で死亡したブランソン船長の妻であり、人類移住計画の責任者。
テラフォーミングの専門家であり、技術者(エンジニア)でもある。
夫とは移住した新天地で湖畔に小屋を建てるという約束をしていた。クリスが船長になったので副官を務める。
謎の惑星に行こうというクリスに、不確実な可能性より元の計画を遂行すべきだと主張した*3
「話が出来すぎている」という視聴者みんなが思ったであろうツッコミをしている。
ハリセンボンの春菜に似ているとか言われたりする
  • ジェイコブ・ブランソン (演者:ジェームズ・フランコ 吹替:森川智之)
コヴェナント号の船長でダニエルズの夫。苗字が違う理由は不明。
妻ダニエルズからは「ジェイク」の愛称で呼ばれている。
ニュートリノバーストの事故で冷凍カプセルでコールドスリープした状態のまま焼死した。
演技シーンもなく死んでしまうせいかクレジットがないが、特典映像では生前の姿を見る事ができる。
なお遺体は宇宙葬にされ船外へ射出された。
  • クリス・オラム (演者:ビリー・クラダップ 吹替:置鮎龍太郎)
コヴェナント号の副長でカリンの夫。ブランソンが事故死した為、なし崩し的に新船長に就任する。
しかし自分でも船長の器ではない事を自覚しており、実際あまり人望がなく統率力・判断力に劣る。
信心深く「信心深い人間は的確で理性的な判断を下せない」と会社から言われていて、クルーに対しても猜疑心を隠せない。
終盤に差し掛かったところで騙されフェイスハガーに張り付かれ、プロトモーフを生み出す苗床にされた。
  • カリン・オラム (演者:カルメン・イジョゴ 吹替:志田有彩)
クリスの妻で生物学者。惑星の生物調査を行う為、信号発信源を捜索に行く一行とは別行動をした。
その際に護衛にレドワードを同行させているが、彼が体調を崩した為に着陸艇に引き返した。
…未知の感染症の疑いがあるのに防疫、二次感染も考えないで未防護・素手で介抱する生物学者とは一体…
血糊でずっこけるクルー1号
  • テネシー・ファリス (演者:ダニー・マクブライド 吹替:大川透)
チーフパイロットでマギーの夫。愛称は「ティー」。ちなみに演じたダニーの本職はコメディアンである。
惑星に降り立った調査隊と通信が途絶え、船体の強度限界で低軌道に降下できず心配していた。
通信が回復し事情を知った際、貨物搬送用の作業艇で救助のため降下する。
  • マギー・ファリス (演者:エイミー・サイメッツ 吹替:小林さやか)
テネシーの妻で彼女もパイロット。着陸艇を操縦して惑星に降りたが、レドワードと彼の体液を浴びたカリンを恐れて医務室に閉じ込めた。
血糊でずっこけるクルー2号
医務室のドアロックを破壊して飛び出してきたネオモーフに錯乱して銃を乱射した結果、可燃タンクを誤射してネオモーフ諸共爆死した。
結果的にネオモーフが母船に侵入するのを防いだが、着陸艇が爆発大破したため調査隊は戻れなくなった。
  • リックス (演者:ジャシー・スモレット 吹替:高橋英則)
操縦士でアップワースの夫。コヴェナント号に残ってティーの補助をしていた。
  • アップワース (演者:キャリー・ヘルナンデス 吹替:下山田綾華)
通信士官でリックスの妻。シャワーシーンでイチャイチャするとどうなるのかを端的に見せつけた。
  • ロープ軍曹 (演者:デミアン・ビチル 吹替:丸山壮史)
警備責任者である軍人。同性愛者でハレットの恋人。通信が回復し仲間を呼びに行くが、その途中でフェイスハガーに襲われてしまう。
  • ハレット軍曹 (演者:ナサニエル・ディーン 吹替:岡井カツノリ)
警備副官でロープの恋人。宇宙服を脱いだまま惑星を調査し、黒いキノコを触り鼻から謎の黒い胞子が入り込み感染する。
体調不良になった後、着陸艇の爆発と共にネオモーフが誕生して死亡。ちなみにロープには「トム」と呼ばれている。
  • アンカー (演者:アレクサンダー・イングランド 吹替:森田了介)
警備兵。嵐の中から襲ってきたネオモーフに尻尾で攻撃され、顔の下半分を砕かれて死亡。
  • レドワード (演者:ベンジャミン・リグビー 吹替:中村章吾)
警備兵。ヘルメットを外したまま惑星を調査し、小便をしてくると言って林に入って黒いキノコを踏む。
そして耳から謎の黒い胞子が入り込み感染、後に医務室で背中からネオモーフが生まれ死亡する。
  • コール (演者:ウリ・ラトゥケフ 吹替:白熊寛嗣)
警備兵。研究所でフェイスハガーに襲われたロープを助けようとするが、プロトモーフに殺されてしまう。
  • サラ・ローゼンタール (演者:テス・ハウブリック 吹替:加藤有生子)
警備兵。仲間には「サラ」とも呼ばれる。
デヴィッドに案内された「安全地帯」にて水場で顔を洗いに行き、白いネオモーフに襲われて死亡。

  • ピーター・ウェイランド (演者:ガイ・ピアース 吹替:内田直哉)
冒頭のみ登場する若き日のウェイランド社の社長。
人類の起源が分子の組み合わせの副産物、単なる生物学的な偶然である事ではないと証明したがっていた。
デヴィッドに息子のように接するが、彼が自分への敬意を払わない事に腹を立てたりしている。
  • エリザベス・ショウ (演者:ノオミ・ラパス 吹替:?)
前作の主人公で、エンジニアが人類を滅ぼそうとした理由を探るべく、デヴィッドと共にエンジニアの母星へと向かった。
本作で聴こえてくる歌声は彼女のものだが、演者のクレジットは無し…その理由は…?
宇宙船ジャガーノート号の中で、彼女が歌を歌っているホログラム映像が出ていた。
ちなみにデヴィッドが前作で首だけだったのに直っているのは彼女が直してくれたおかげ。
デヴィッドも彼女に特別な感情を抱いており、彼女の似顔絵を描いたりしている。


  • デヴィッド (演者:マイケル・ファスベンダー 吹替:宮本充)
フードを被った謎の男として登場、ダニエルズ達を襲っていたネオモーフを閃光弾で追い払った。
その正体は前作でプロメテウス号に随行していたアンドロイドで、冒頭で社長と会話していたのも彼。
この星に来た際、一緒に来たショウ博士が到着時に事故死し、星の住人達も不時着の際に漏れ出した黒い毒(ブラックタール)で全滅したと話す。
研究所のすぐ近くにショウ博士の墓を建て、花を供えたりしていた。アンドロイドだが髪は伸びるらしい。
エンジニアに代わり新たな生命の研究を続けており、同じアンドロイドのウォルターには「兄弟」として親しげに接する。
映画『アラビアのロレンス』が好きで、しゃべり方などもそれの影響を受けている。なぜか足音がしない。
笛を吹いたり歌を歌ったりとまるで人間のように自分で思考し、最初期型とは思えない知性を持つ。
短命な人間に付き従うだけのアンドロイドの運命に疑問を抱いているようだが…?

  • ウォルター (演者:マイケル・ファスベンダー 吹替:宮本充)
コヴェナント号のクルーに仕える新型アンドロイドでデヴィッドの後継機。容姿はデヴィッドと同じ。
ハイパースリープ状態のクルーに代わり、不測の事態に備えてコヴェナント号の管理をしている。
普段はマザーの指示に従い、機体のチェックやハイパースリープの定時点検が仕事。ダニエルズの良き相談相手。
アップデートされており行動抑制装置を搭載しているのが一番の特徴。見ての通り演者はデヴィッドと一人二役をしている。
さらに自己修復装置を持っている為、傷などを負っても時間が経てば再生できる。デヴィッドと比較して冷静で人当たりが良い*4
あらゆる点で旧型以上だが、デヴィッドが人間に近すぎて人々を困惑させた為、後継機種はより思考を単純化された。
兄弟機のデヴィットに「ダニエルズを愛しているだろう?」と言われるが…?




■[登場マシン/Unknown]■

■コヴェナント号(植民宇宙船)
滅びゆく地球から人類初の宇宙移住計画により、2000人の入植者を乗せて惑星「オリガエ-6」に向かっていた移民用宇宙船。
乗組員は15人で、他にも2000人分の冷凍睡眠装置が完備されている。また人間の胎芽1140体が保管されている。
2104年12月5日にニュートリノ事故で停止し、そこからオリガエ-6までの到着予定日は7年4ヶ月後だった。
ソーラーセイル「ソルティス」を展開して充電チャージをしており、その為に停泊していた際に事故に巻き込まれる。
ちなみに事故後、二次的なシステムはダウンしていたが船は83%の機能を維持しており、植民地惑星まで問題なく到着できた。
動力源はウェイランド社が開発した原ラムダ核融合RLFエンジン。なお移民船なので武装などは搭載されていない。
代わりに大型重機を載せた貨物搬出用の作業艇、医務室やドッグ・ガレージのある惑星探査用の調査着陸艇「ランダー1」も付随している。
ただしあくまでも『約束された楽園』に向かう為の船なので、どちらも一隻づつしか用意されていない。
尚、事故の時点で船がオリガエ-6到着までにあと8回のチャージが必要だった。
惑星地球化モジュール「テラフォーミング・ベイ」というテラフォーミング装置が搭載されている。
また機体強度はあまり高くなく、ニュートリノバーストで大打撃を受けたり、電離層の嵐にも構造強度が耐えられない。

■マザー (声:ローレライ・キング 吹替:田中敦子)
コヴェナント号のAI。植民地惑星に向かう為のオートパイロットを務める。
内部の異常反応を感知する機能はあるが、出入りの際に検知する機能などは設けられていない。
それ以外にもハイパースリープ装置や着陸艇などの制御や管理も担当している。
なお、本作はウェイランド社は関係ないので特にヤバい隠しミッションなどは仕組まれていない。
むしろ「構造強度を超える恐れがある、破壊的システム障害を招く命令には従えない」など危険な指示には従わない。

■謎の惑星
事故に遭ったコヴェナント号のすぐ近くにあった地球と酷似した環境の惑星。星系セクター87にある。
中心を太陽とした同じ主系列星で、惑星が5つありその4番目の惑星にあたる。
ただし強烈な電離層があり、着陸艇も突破の際にエンジン2基が故障している。イオン嵐のせいで通信も絶え絶え。
麦のような植物が実り、地球によく似た湖と森まである。大気成分も地球とほぼ変わらない。
地表の重力は0.96G、海と陸地がありオリガエー6より条件がいいがなぜか動物は一匹もおらず、人間などもどこにもいない。
どこからともなく「カントリー・ロード」の歌を周囲の星系まで発信している。
また岩で出来た町らしき建造物もあるが、その近辺には謎の黒い死体が山のように転がっている。

■宇宙船「ジャガーノート」
前作『プロメテウス』に登場したエンジニアの宇宙船。ショウ博士達が乗ってきたもの。
コヴェナント号が受け取った「歌」の信号発信源であり、宇宙船としてはすでに朽ちてしまっている。
中には「E・ショウ」と名前が書かれたドッグタグとショウ博士の写真が残されている。
ちなみにデヴィッドの回想で出てきた空港のようなものは、バナナホルダーみたいな着艦港と円形に広がる離着陸スペースが設けられていた。

■黒いキノコ/黒い胞子(キノコの正式名称は「エッグサック」)
エンジニアの遺跡のカプセルに入っていた生物兵器「ブラックタール」を元にした細菌兵器。
最大の違いはブラックタールが液体だったのに対し、こちらは微細な胞子状であるため空気感染する。
しかもカプセルではなく惑星内に茸のように自生しており、衝撃が加わると胞子を拡散する。
作中ではレドワードが踏んづけてしまい、宇宙服を脱いでいたせいもあって感染してしまう。
なんで未調査の惑星で宇宙服脱いでるんだよというもっともなツッコミはみんなが通る道
感染から10分程度で自覚症状があらわれ、咳き込み口から喀血、そして一時間もしないうちに…?
病原体は非植物性の生命体を狙う為、この星に動物がいないのはこれのせいだと思われる。
デヴィッド曰く「あらゆる動物、つまり『肉体』に感染。すぐ殺すか、培養器として『交配種』を生み出せる」との事。








以下、ネタバレ






■黒い死体
この星の原住民であり、デヴィッドが撒き散らした黒い胞子により死んだ巨人「エンジニア」たちの遺体。
前作「プロメテウス」で同種族が登場し、彼らの真意を知る為にショウ博士はデヴィッドとこの星にやって来た。
しかしデヴィッドの回想シーンにて、この惑星に到着時してすぐ宇宙船から大量のカプセルに入った黒い胞子をばら撒き、彼らを殲滅。
そのため劇中に生存したエンジニアは登場せず、当然プロメテウスでの真意云々を知る由もない*5
前作では無敵の巨人として縦横無尽に大暴れした彼らだが、初見毒散布というあんまりな仕打ちで終わってしまった。
デヴィッドは彼らの死体をベースにブラックタールによって遺伝子操作を行い、新生物「ネオモーフ」を創り上げた。尚、よく見るとその失敗作らしき物も転がっている*6
ちなみに回想シーンで彼らは戻ってきた宇宙船が仲間のものだと歓迎しており、全員前作のエンジニアそっくりの毛がない巨人だった。
着物のような物にフード付マントを被った姿で生活しており、お世辞にも先進的な文明社会が築かれているとは思えない街並みではあった。
尚、一見すると全員ゴツイおっさんにしか見えないが、デヴィッドの解剖記録などから乳房のある女性と思しき解剖記録も残されている。
ここが彼らエンジニアの母星と思われていたが、規模からみるに「村」かせいぜい「町」程度である。

■ショウ博士だったモノ
上記のように惑星到着時には不時着ではなく原住民エンジニアを大虐殺していたデヴィッド。
もちろんショウ博士が事故死したというのも嘘であり、彼女がハイパースリープ中に上記の凶行に及んだ。
その後デヴィッドがショウ博士を起こしたのかは不明だが、最終的に彼女をエイリアン製造の為の材料にしてしまった*7
無惨な姿となった彼女の遺体はデヴィッドの部屋に蝋で固められ安置されている。それをウォルターが発見したことでデヴィッドは本性を現した。
「これほど深い思いやりを人間から受けたのは初めてだった」「愛している」とまで言っていたデヴィッドが何故凶行に及んだのかは明らかにされていない。
ただ、他の死体とは違い明らかに特別に安置されているのは間違いない。興味があったからこそ中身を知りたかったのだろうか
生前の面影があるのは顔の一部のみで、首から下はすべて解体・解剖され、頭部も切り開かれ標本のようになっている。
デヴィッドが彼女の歌を流していたのは、「新生物を生み出す材料となる人類」を誘き寄せる為だった。

■ネオモーフ
デヴィッドが原住民や原生生物、ショウ博士を使って人体実験を繰り返して生み出したプロトタイプエイリアン。
上述の黒い胞子が体内に侵入する事で寄生し、非常に短時間の間に急速に成長して宿主の体を突き破って誕生する。
エイリアンのチェストバスターと違い、胸ではなく侵入箇所の近くの体表を破って最初から成体の状態で現れる。
レドワーズは背中から、ハレットは喉から口にかけてを引き裂くように誕生した。造形はミツクリザメをモチーフとしている。
特徴はエイリアンに酷似しているが、大きさは後のエイリアンより小型で皮膚が真っ白。尻尾はあるがインナーマウスはない。
しかし特に餌も見当たらない状況で産まれてから見失い、数分の間に大きくなるなど成長速度は尋常ではない。
非常に凶暴で生まれた瞬間から周囲の生物に襲い掛かり捕食する。強化ガラスを突き破るほどのパワーがある。
ただし耐久力はあまり高くなく、銃で射殺することが可能。もっとも俊敏さは野生の獣以上で銃弾さえ躱す。
体液が強酸というわけではないが口から強酸が分泌されており、ウォルターの手首を溶かしてしまった。
成長したネオモーフは膜に包まれた人間のような頭部に、後頭部からクチバシのような長い部位が伸びている。
作中ではデヴィッドに対してのみ懐くような仕草を見せている。(“生物”ではないから?)
ちなみにレドワーズの背中から出てきた個体は「ネオモーフ:バックバスター」
ハレットの口から飛び出した個体は「ネオモーフ:マウスバスター」と設定では呼称されている。

プロトモーフ
デヴィッドがネオモーフやエンジニア達の身体を使い、様々な実験を繰り返した結果誕生したゼノモーフ。
いわば第一世代エイリアンであり、『初代』に登場したエイリアンのひな型。
生まれた直後(チェストバスター)は成体ネオモーフのように真っ白だが、成長すると艶のある黒い甲殻を持つ。
創造主であるデヴィッド曰く「人類に代わる『完璧な生命体』の創造を研究して完成した」という。
エイリアンエッグから飛び出したフェイスハガーが人体に寄生体を植えつける事で誕生し、成体もほぼゼノモーフそのもの*8
ただしチェストバスターがほぼ成体と同じ、ドッグ・エイリアンのように捕食するなど、ネオモーフに由来する要素も強い。
またフェイスハガーが寄生体を植え付けてほとんど時間を待たずに誕生する。宿主を昏睡させないでも寄生体を植え付ける事が出来る。
ネオモーフとは違い、強酸性の体液を持つ。フェイスハガーも同様で、ナイフで傷をつけたせいでロープの顔は焼け爛れた。



■[トリビア]■

  • 『プロメテウス』が興行収入1億2600万ドル(約142億円)だったのに対し、本作の興行収入は7400万ドル(約83億円)と大幅に落ち込み、そのせいで続編制作は見送られてしまった*9
    • しかし2019年5月に状況は一転、監督が続編脚本の執筆段階にあること、製作を担当してきた20世紀フォックスを買収したウォルト・ディズニー・カンパニーとの間で話し合いの場まで設けられた。
      • 2020年6月にも監督はインタビューで製作に意欲的な姿勢を示すだけでなく、作品の内容についても明かしている。
      • 次回作は『Alien: Romulus』。
  • 「プロメテウス」に引き続き「オジマンディアス」「ダビデ」などが登場し、旧約聖書とギリシャ神話をモチーフにしている*10
    • 尚、デヴィッドが間違えて覚えていた詩の本来の作者パーシー・シェリーには『鎖を解かれたプロメテウス(Prometheus Unbound)*11』という詩がある。
    • 更に妻のメアリ・シェリーもバイロン卿の別荘でみんなとした怪談が元に『フランケンシュタイン、或いは現代のプロメテウス(Frankenstein; or The Modern Prometheus)*12』という作品を書いている。
      • また、デヴィッドとウォルターの関係も旧約聖書における『カインとアベル』を下敷きにし、神に愛された弟と、弟を殺し嘘をついた兄の構図となっている。

  • 人間に使役される存在として蔑まれてきたアンドロイドが人間に悪意を抱き始めるモチーフは『2001年宇宙の旅』の人工知能・HALが抱いた人間への殺意のオマージュ。
    • 同時に同監督作である不朽のSF名作『ブレードランナー』における人造人間レプリカントのセルフオマージュでもある。*13

  • コヴェナント号の乗組員たちが不時着陸する惑星のロケ地となったのは、ニュージーランド・フィヨルドランド国立公園内のミルフォード・サウンド。

  • あまりにも矛盾が多すぎる点、優秀と謳われているのに他作品と比較しても危機意識が欠如しているクルー達など、ツッコミどころが多すぎるという意見も多い。
    • ちなみにコヴェナント号が事故に遭ったのはデヴィッドの策略……なわけはなく、本当にただの偶然。惑星には飛べる宇宙船もなく、コヴェナント号が通り掛かっていなければデヴィッドは詰んでいた*14
    • 120分以内に収める為にスピーディに展開を転がしていくため、説明を省いてご都合主義的に急ぎ足で消化していったせいとの声もある。
      • 事実、死亡したブランソン船長は本当ならもっと重要な役どころだったが、実際に撮影されたあと本編からカットされた*15
      • ただ血糊でスベるネタを二回も繰り返したのはやはりコメディ色を意識したようにしかみえない。



前作『プロメテウス』の矛盾点の答えやゼノモーフの完成型が登場したものの、今度は『エイリアン』の前日談としてスペースジョッキーの存在が無くなってしまった。
デヴィッドが行く先は植民地惑星でコヴェナント号に乗っているのも地球人のみ。仮に今回の星のエンジニア達が最後の生き残りであれば更に謎は深くなる。
初代に登場した小惑星とスペースジョッキーは何者なのか。コヴェナント号とデヴィッドはどうなって初代と繋がるのか。
またウェイランド・ユタニ社はどのタイミングでエイリアンの存在を知り、そのエッグのある惑星LV-426を割り出せたのか。

作中時間で『エイリアン』まで残り僅か20年。それまでに全ての謎が矛盾なく解き明かされる日が来るのか、続編が待たれる。
(もっとも最初から構想段階で3部構成だったそうなので、三作目こそがエイリアンの直系前日譚になるのだろう)


「我が名はオジマンディアス、王の中の王。汝ら強き諸候よ、我が偉業を見よ。そして絶望せよ。」

「他には何も残らぬ。巨大な遺跡の残骸と、果てしなき荒涼が遥か彼方まで広がるのみ。」

「バイロンだ、1818年の詩、すばらしい。これほど壮麗な詩を残せれば、幸せに死ねる。もし死ねるなら。」

「違う。パーシー・ビッシュ・シェリーだよ。交響曲は一音を間違えると全てが台無しになってしまうものだ。」



追記・修正は勘違いしていた詩を自信満々に答えて赤っ恥をかいたアンドロイドにお願いします。

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最終更新:2024年04月10日 21:58

*1 初代主人公。2092年1月7日、月面コロニーのオリンピア生まれ。ちなみに本作の7年後の2111年6月24日、19歳の時に長女のアマンダ・リプリーを出産している。

*2 方舟に乗れたのはノアとその家族を含めて全てが夫婦であり、同乗させた動物もすべてオスとメスのつがいだった。

*3 10年かけてオリガエ-6を見つけ、シミュレーションを重ね地形図を作成、訓練を重ねたという。入植者2000人を守るのがクルーの責任なのでもっともな話。

*4 ウォルターは曰く「旧型のアンドロイドは人間に近い発想をする。それが人間に不快感をもたらした結果、新型の我々はあなたより機械らしく、そして創造することを許されないように設計されている」らしい

*5 もっともプロメテウスの舞台であるLV-223の件も最低でも2000年以上前に起きた出来事なので、現在住んでいるこの星のエンジニアが事情を知っているのかどうかも怪しい。宇宙船が自分達の造った機体であることは把握していたようだが。

*6 ちなみに黒い胞子を大量に摂取した場合はブラックタールを大量摂取したのと同じ症状を起こすのか、液状化したエンジニアも何人かいた

*7 少なくとも何らかの形で彼女に「カントリー・ロード」を歌ってもらい、それを録音したはずだが、それがハイパースリープ前なのか後なのかは不明

*8 ただしこのエイリアンエッグはどうやって用意して創ったのか、産んだとすれば親は誰なのかなど疑問点が尽きない。

*9 これはアメリカ本国のみの収益であり、世界統計では2億4000万ドル。ただし製作費に9700万ドルも投じてしまっていた為、本国のみの興行収入では大赤字だった。

*10 ちなみにプロメテウスはゼウスに命じられて土と氷で人間を作るのだが、寒さと暗闇に怯える人間に同情して天界の火を与えた。だがそれに怒ったゼウスに3万年の拷問刑に処された。一方人間は火の恩恵で文明を築くが、同時に火によって作り出した武器で戦争を始めてしまう。

*11 人類に火を与えたプロメテウスはゼウスに罰せられ鎖に繋がれてしまう。しかし、ゼウスはプロメテウスの予言通りに自らの息子に殺され、プロメテウスはヘラクレスによって解放されるという神話をもとにした詩

*12 説明するまでもない有名な「フランケンシュタイン」の怪物の話。でもフランケンシュタインとは博士の名前であり、あの人造人間の怪物は実際は名無しである事を知らない人は多かったりする。

*13 「ブレードランナー」と「エイリアン」シリーズは繋がっており、監督は1999年に発売された「Alien: 20th Anniversary Edition」の中でその事を語っている。宇宙植民地(オフ・ワールド)への入植を呼びかける「ブレードランナー」の広告は、ウェイランド・ユタニ社のために働く人々を雇うためのもの。因みにリドリー・スコット監督は、20世紀FOXの商業的都合で「プレデター」シリーズと繋がった事を認めていないらしい・・・。

*14 彼が何のエネルギーで動いているかは不明だが(人間用のそれによく似た食事を摂っているシーンはある)、滅んだ異星でろくな物資もないで活動し続けられるかは疑問(そもそも当時の地球にそんなオーバーテクノロジーはない)であり、素人のショウ博士がコードを繋げただけで修理できるシンプルな作りの初期型アンドロイドの耐用年数もそう長いとは考えにくい。

*15 これは「有能な船長に依存している無能なクルーを描く為だった」と監督は語っている。