北海道4500km

登録日:2022/01/30 (日曜日) 22:03:00
更新日:2024/01/16 Tue 18:48:49
所要時間:約 10 分で読めます




概要

「北海道4500km」はサークル「天北部屋」による同人ゲーム。Vectorでダウンロード販売もされている。
同サークルのゲーム「新・北海道4000km」の姉妹作となる。2022年1月30日現在、まだベータ版ではあるが、バグも少なく既に十分遊べる出来となっている。
1967年の北海道の国鉄・私鉄の総営業距離約4500kmを乗りつぶすことを目的としてシミュレーションゲーム。
半世紀以上前となると最早我々の常識が色々と通じなくなる、という一種のタイムトリップ感を味わえるゲームでもある。

今作のウリ

55年前、ともなるとこのアニヲタWikiの読者にとっては大半が生まれる前のことであろう。
500円玉がまだない時代は物価は全く違い、SLが普通に現役。コンビニもなく今となっては姿を消した各種の特殊な鉄道がまだ生きている、ノスタルジーを超えて最早歴史の遺構を訪ねるようなそんな時代である。

前作と比べると鉄道路線において大きな特徴は以下のような点だろうか。

  • 札幌/函館の市電が登場
1983年でももちろん健在なのだが、私鉄はあまりクローズアップされてなかったことからゲームの対象外であった市電が今作では登場している。
単純に乗り潰しの対象となるだけでなく、札幌や函館の近隣駅まで伸びているため、上手く使えば異なった乗り継ぎができるかもしれない。

  • 炭鉱鉄道/軽便鉄道が健在
1983年には三菱大夕張鉄道を除き全てなくなる定めのこれら路線が、1967年ではまだ動いている。
とはいえ「健在」と書いたが「健」かどうかというとうーん、という路線が殆どだが……なにしろ後述するが、そもそもゲーム期間中に廃線となる路線が3つもあるのだ。

これらの路線、特に軽便鉄道はその特徴として「町や村の人間を都市部に送り出し、また迎え入れる」ことしか考えていない、ということがあげられる。
要するに「朝に国鉄と接続する都市部行き、夜に国鉄とは反対側の終点行き」というダイヤが組まれていることが多いのだ。これが厄介なのは前作をプレイしている人なら容易に想像がつくだろう。
実際、道東の多数の軽便鉄道は事実上このゲームのラスボスとしてプレイヤーの前に立ちはだかることになる。

基本ルール

1967年夏。国鉄は大規模なダイヤ改正「ヨンサントオ」を翌年に控え、長らく北海道の開拓地を支えてきた軽便鉄道などは廃止の憂き目が見えてきた年。
札幌から資金23300円を持ってスタートし、全路線乗車をして札幌に戻ってくればゲームクリアとなる。
初期所持金こそ単純に前作の半分以下なのだが、当時の物価に照らし合わせるとこれでも 大卒公務員の初任給 相当と中々の額である。
実際、物価は全般に今の感覚からすると大幅に下がっており、金銭価値が全く違っていることがうかがえる。


ゲーム前の設定として「いつから開始するか」と「何をもって『乗車』と認めるか」「青春18きっぷが使用できるか(if設定)」を設定できる。

開始日

  • 7月22日
完全なタイムリミットまでは余裕があり、またまだ日中の時間が長いことから写真撮影には比較的余裕がある。ただ、今作に関しては7月22日スタートの方が難しくなっている。
その理由は、7/31に廃線となる天塩炭砿鉄道を皮切りに、3つの路線が廃線となるため。7月22日スタートの場合、それらの路線に廃線になる前に乗らなければならない、というリミットがある。(乗れなければ、「詰み」)
このため、初心者には8月16日スタートが進められている。

  • 8月16日
そこそこ日中の時間が短くなってきているため、写真撮影に少々制約がつく。
とは言え既に廃線となっている路線、また8/18で廃線になってしまう鶴居村営軌道については乗車する必要はないため、純粋なタイムリミットとの勝負になる。

乗車条件

この辺は基本的に前作と同じである。

  • 全乗車区間を既乗と認める
特に制限のないデフォルトの条件

  • 普通列車で乗車した区間だけを既乗と認める
普通でないと既乗と認めない。
準急/急行/特急での移動が既乗と認められないが広い北海道で鈍行での移動はそれなりに大変。

  • 昼間に乗車した区間だけを既乗と認める
「列車の旅は車窓を見てナンボだろ!」という意見の元、昼間の移動しか既乗と認めない。
ちなみにあくまで駅を出発した時に昼まであれば、次の駅につくまでに夜になってもそこは既乗と認められる。

  • 普通列車で昼間に乗車した区間だけを既乗と認める
2番目と3番目のハイブリッド。最難関チャレンジである。

「青春18きっぷ」がある世界線

チェックなしがデフォルト。
そもそも1982年に「青春18のびのびきっぷ」として発売されたのが最初であるため、本来1967年には存在しない。
チェックを入れると北海道の一部駅で青春18きっぷが買えるようになる。

パラメータ

プレイヤーの状態を表すパラメータとして、以下のものがある。

  • 健康度
文字通りの健康状態。時間経過で低下し、0になれば行動不能でゲームオーバー。
雨ざらしの中野宿したりすると面白いぐらい下がる他、後述の満腹度や衛生度が著しく低下するとやはり健康度の低下速度が上がる。
回復方法は栄養ドリンク(その名もホッカイDo、1日3本まで)と宿に泊まること、それと温泉に入ること。
ただ全体に様々な物価が下がっている中ほとんど値下がりしていないホッカイDoのコスパが相対的に悪くなっているため、今作ではあまり栄養ドリンクは頼りたくない存在になっている。
前作に比べると宿も安いのだがさすがに毎日泊まれるほどではないため、どのタイミングで泊まって健康度を回復させるかが戦略上重要となる。

  • 満腹度
どれぐらい空腹か。最も低下速度が早く、最も回復させやすいパラメータである。
基本的には食事で回復させる。駅弁がベースになるだろうが、消費期限のない菓子類は緊急時に有効なので幾つか確保しておきたいところ。
特に簡易軌道の乗り潰しを行う際にはネックになりやすいので、物資はきちんと整えたい。

  • 衛生度
どれぐらい清潔か。満腹度より低下速度は遅いものの、それでも3-4日に1回は回復を考えるべきパラメータ。
基本的には銭湯や温泉を利用することになるが、存在する都市が限られる上に時間も比較的限定されるため、入れる機会は逃さないようにしたい。
他に船に乗った場合シャワー施設があればそれでも回復ができる。
また着替えがなくなれば当然酷いことになるため、これらの洗濯も考えたいところ。
銭湯や温泉には貸洗濯機が一緒にあるため、お風呂に入ってる間にそこで洗濯するといいだろう。洗濯は中々時間がかかるため、余裕をもって行いたい。

切符/乗車料金

システムの都合上、予め切符を買うのではなく降りた時に適当なタイミングで「清算」コマンドを使用して清算することとなる。この際なるべくリアルの鉄道料金に沿った形で計算される。
今作では全般に運賃も安くなっていること、お得なきっぷの恩恵を受けられない私鉄も多いこと、またそもそもお得なきっぷが殆ど存在しなくなっていることから、周遊券などに頼らないプレイヤーも多い。

ちなみに、列車のほかにバスや船、飛行機も利用可能で、こちらは降りた時点で即時清算される。

  • 青春18きっぷ
先述の通りそもそも本来は存在しないものであるため、『「青春18きっぷ」がある世界線』にチェックを入れなければ登場しない。
国鉄の普通列車及び青函連絡船に乗ることができる。
切符は1日券4枚と2日券1枚がセットになっており、都合6日使用可能。急行や特急の乗車券としては使えないため、急行や特急に乗った場合は普通は完全に別途料金を支払う必要がある。
その一方で道外でも使用できる唯一のお得な乗車方法である。

  • 北海道周遊券
北海道全域で急行/準急の自由席と国鉄バスを含めた国鉄全線乗り放題となるきっぷ。
前作と違い、「特急は別料金」「急行も指定席しかない場合は別料金*1」と、前作ほどの万能感はない。
もっとも、まともなお得なきっぷがこれしかないので、初心者はとりあえず手に入れた方がいいだろう。

発売しているのは盛岡(17日有効)と秋田(19日有効)だけなのだが、これでも実は入手しやすさが軽減されており本来は仙台か新潟が最寄りの発売駅であった。

  • 一般周遊券
厳密には特定のきっぷではないのだが、交通費軽減の1方法であるためここに記す。
一つの乗車券を使っている最中に周遊指定地を2カ所以上訪問していると、「一般周遊券」として扱われ割引が受けられる。また、5カ所以上回っていれば国鉄バスも割引の対象となる。
計画性は求められるが、周遊指定地が密集している場所などでは狙う価値もあるだろう。

アイテム

ゲーム中、さまざまな場所でアイテムを購入できる。基本的に利用するのは駅の売店と駅弁屋になるだろう。
街の商店まで行かなければ手に入らないアイテムもあるが、その辺りは割とやり込みの範疇に入るかも知れない。

  • スタンプ帳
駅に置いてあるスタンプを押すための台帳。スタンプは収集要素の1つのため、早めに入手しておきたい。

  • フィルム
最近の人には最早なじみがないであろう、光学カメラ用のフィルム。
駅の売店などでは20枚撮りが売られている。百貨店などに行けば36枚撮りのフィルムも売っているが、当然そういう施設のある都市はごく一部である。

  • 弁当など各種食料
消費期限のない菓子類と、そうでない食事に分かれる。いずれにせよ満腹度の回復に必要。
消費期限のあるものについては消費期限が来ると強制的に食事したことになり、この時満腹度が高いと暴食ということで健康度が低下してしまう。持ち過ぎに注意。
飲み物がある場合一緒にとって満腹度の回復効果が上がる。

食事については駅そばや町の喫茶店などでの食事もある他、駅そばを持ち帰り容器に入れてもらうことも可能。
駅そばの持ち帰りは消費期限が著しく短く設定されているが、乗るべき列車までの時間が短い時は助けになる。

  • 飲み物
瓶のジュースと駅弁屋で買えるお茶が基本。
缶コーヒー? なかったわけじゃないですがUCCの缶コーヒーの登場が1969年です……。
缶ジュースはあるけど一部のお店で買えるのみ。自動販売機はあるけど売ってるのは瓶ジュース。
お茶の容器は1日ぐらいは水筒代わりに使え、大きい駅に滞在していると自動で水を汲んでくれる。
いずれも消費期限はない(けど瓶ジュースずっと持ち歩いてるってすっげぇ気を使いそう)。*2
ちなみに「水筒」というアイテムもあるが、36枚撮りフィルム同様街の大きい店に行かなければ売っていない。

  • 雨具
天候はほぼ当時の北海道を再現している。このため、歩いていたり野宿中に雨に降られた場合悪影響があるのだが、雨具があればそれを軽減できる。
必要かどうかはプレイスタイル次第か。

  • 栄養ドリンク
「ホッカイDo」という謎の栄養ドリンクが駅の売店で売られている。
ゲーム的には僅かばかり空腹度と健康度を回復してくれる。とはいえ1日に3本が限界な上、かかる費用に対する健康度回復の効率が非常に悪い。
あくまで急場しのぎと割り切ること。

収集要素

初期資金23300円は1967年当時は中々の大金なのだが、それでも旅行中の費用としてはさすがに不足がある。
そこで、様々な収集要素を集めることによってボーナス資金が入るため、全線乗車に並行してこれら収集要素を集めていくことになる。

入場券

硬券(昔の厚紙製の切符)で発行される入場券。
1枚10円か20円なので、積極的にどんどん集めて行きたい。無人駅では購入できないのだが国鉄に無人駅などほぼないので、かなりのペースで集めることができるだろう。
また、私鉄では基本的にスタンプは置いていないのだがシステム上当然入場券はあるため、私鉄でも集めやすいのもメリットである。

スタンプ

売店で売っているスタンプ帳に、各駅に置いてあるスタンプを押していく。
スタンプ自体は(当然ながら)無料で押せる上、スタンプ帳自体が安いことも収入源としては効率が良い、のだが意外とスタンプが置いてある駅が少ない。
特に私鉄の駅にはまず置いていないため、基本的には入場券とセットで考える必要があるだろう。

掛け紙

駅弁の掛け紙。駅弁自体売られている駅が限られ、また種類によってある程度販売時間も定まっていること、さらに満腹度のシステムから中々に収集には向かない。
とは言え弁当の単価もそこまで高くないので、満腹度の回復ついでに少しでも返ってくればいい、ぐらいで考えていればそこまでわりに合わないこともない。
駅によっては汎用の弁当や寿司を売っており、これらは収集対象とはならないため注意。

チャレンジ4500km

北海道に存在する国鉄・私鉄全84路線について、各路線の両端の駅で記念写真を撮り、路線すべてを乗ることで「1路線乗車」となる。これをこなしていくことでもボーナスが貰える。
基本的に全路線乗車がゲームの目的であるため、ついでに路線の端の駅で写真を撮るだけでいいこのチャレンジはやりやすいだけでなく、貰える資金もそこそこ大きいため、積極的に狙っていきたい。
注意すべき点としては写真撮影が陽のある間しかできないことと、「路線の端の駅」が列車の運行実態とはずれる、ということである。
(一例として挙げるなら、多くの列車の発着駅となる札幌はいずれの路線に置いても終端駅ではない)
大体終端と分岐点を押さえておけば問題はないのだが。

国鉄完乗・私鉄完乗

国鉄、あるいは私鉄を完乗することで報酬が貰える。もっとも国鉄だけ・私鉄だけを乗り進めることは現実的ではないので、結局どちらもゲーム終了近くになって獲得できるようになることが多いだろう。
前作に比べると国鉄は一部区間が不通である代わりにあちこちの支線が残っている、という状態なのだが、その一方で私鉄は各種炭鉱鉄道や軽便鉄道が生きており、また札幌・函館の市電が追加されているため、非常にバラエティーに富んでいる。

周遊指定地

25カ所の周遊指定地(観光名所と考えてほぼ間違いない)を回ると最初のうちは運賃割引のボーナスが貰え、また15カ所以上ならば5カ所ごとにボーナスが貰える。
前作と比べて1か所減っているが、これは日勝峠が公共交通機関で回れないので省かれているため。
先述のお得なきっぷの大幅減少から、初期に2カ所、あるいは5カ所を回って運賃軽減のボーナスをもらうのが定番の戦略。(定山渓は接続の私鉄が生きているためどうせ回るというのもその一助である)
また、通常の乗車券を使っている場合は一度に2カ所以上回ると割引が受けられるため、こうした点でも無視しえないポイントになっている。

難関路線

前作でも回るのが難しい路線は存在したが、それでも数少ない列車を捕まえられれば普通に折り返せたりした。
今作ではそんなどころではない難関路線が登場する。以下にそれらの路線を紹介しよう。

寿都鉄道

黒松内-寿都を繋ぐ路線。驚愕の1日0.5往復である。
16:20黒松内発寿都行きが運行列車の全て、というあまりに潔いダイヤ。なんでこんなことになってるのかと言うと、寿都発黒松内行きの列車は黒松内で旅客ホームが使えないので貨物扱いだけしてたからだそうな。
あと平行して寿都バスが走ってるので人間はこんなダイヤでも特に不便はなかったってのもある。翌年には水害で結局廃線になるしね!
列車は一本切りとはいえ、そのことさえ承知していれば前述のように並行でバスが走ってるんでそこまで大変ではない。

天塩炭鉱鉄道

初心者殺しその1。留萌-達布間を繋ぐ路線だが、7月31日をもって廃線となる。なのでそれまでに乗らなければいけないが、この手の路線の常として「朝に達布から留萌への1本」「夕に留萌から達布への1本」しかなく、当然のごとく達布から別の個所への接続はない。
つまり「夜中になんとか達布まで移動して、達布から朝の便にのって留萌に戻ってくる」「夕方の便で達布まで移動して野宿、もしくは夜通し歩いて留萌に戻る」の二択。いずれにせよ健康度と衛生度への大ダメージは避けられない。
しかもゲーム開始から10日ほどの間に必ず乗らなければならない、というおまけまでついてくる。

日曹炭鉱天塩鉱業所専用鉄道

こちらは全線ではなく、豊富-温泉-一坑-三坑とあるうち、一坑-三坑間が8月12日をもって廃線となる。
一応往復できなくはないが多大な待ち時間が発生するのもネック。

……なのだが、実は「一坑駅から砿業所まで歩き、そこからバスに乗る」ことによって比較的容易に豊富駅に戻ることができる。
先の寿都バスと違い並行でバスが走っているわけではないため、微妙に気付きにくいポイントになっている。

鶴居村営軌道

いわゆる軽便鉄道の1つ。バスもあってまだマシな中雪裡方面はともかく、新幌呂方面の上幌呂-新幌呂間は天塩炭鉱鉄道と同じく「朝に国鉄方面、夕に終端方面に1日1便」となっている。
そして8月18日をもって廃線である……が、流石にここまで遅いと焦る必要はないだろう。8月16日スタートの場合はそもそも乗らなくてもクリアはできる。
とはいえやはり健康度・衛生度へのダメージが大きいのが辛いし、こんな感じの軽便鉄道が道東には大量にあるのも辛い。(とどのつまり、それだけ釧路湿原が難所だったということなのだろうが……)

標茶町営軌道

道東の軽便鉄道の一つ。こちらも中御卒別-沼幌間が1日1往復、当然のごとく「朝に国鉄方面、夕に終端方面」である。
しかもこちらは廃線にならないため、8月16日スタートでも乗る必要がある。覚悟を決めよう。
何気に鶴居村営軌道(中雪裡)と標茶町営軌道(上御卒別)の間にバス連絡があるため、梯子も可能。その場合一気に健康度・衛生度は悪化するので、事前に十分態勢を整えよう。

追記・修正は釧路湿原に行ってからお願いします。

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最終更新:2024年01月16日 18:48

*1 特に急行まりもなどがこれに引っかかるため、注意が必要

*2 余談ながら、当時の国鉄の車両は座席に栓抜きがついてるケースがあったそうな