リング0 バースデイ(映画)

登録日:2022/05/04 Wed 01:58:08
更新日:2024/02/28 Wed 15:48:19
所要時間:約 33 分で読めます







ついに明かされる、貞子出生の秘密。




「リング0 バースデイ」は2000年1月22日に公開された日本のホラー映画「リング」シリーズの第4作目で、第1作目の前日談にあたる。
超能力者山村貞子がどういった経緯で恐怖の存在となったのかが明かされる。

鈴木光司による外伝「バースデイ」に収録された短編「レモンハート」をベースにしつつ、劇場版ではカットされた小説版の「生前の貞子」にまつわる描写も取り込まれている。


同時上映は貴志祐介原作の「ISOLA 多重人格少女」。



概要


「リングは0で終焉する」というキャッチのとおり、一連のシリーズに一区切りをつける最終作として製作。
原作の「レモンハート」同様、恋愛ドラマや劇団ドラマ要素を含んでいるのも特徴で、作中劇「仮面」の世界観や貞子と遠山のメロドラマが尾形氏によるどこか上品さのあるBGMを通して本作に他作品とは異なる雰囲気を醸し出している。

監督は「ほんとにあった怖い話」や「予言」で知られる鶴田法男、脚本は1作目、2作目に続き高橋洋。
音楽は「ほんとにあった怖い話」シリーズや「亡霊学級」で鶴田氏と組んだ経験のある尾形真一郎氏が担当した。
田辺誠一、麻生久美子、田中好子、高畑淳子と豪華なメンバーをキャスティングし、主人公には庵野秀明とアニメージュで表紙を飾り、ミイラにされたりした仲間由紀恵を抜擢。

主題歌はL'Arc〜en〜Ciel(ラルク・アン・シエル)の「finale」。恋愛・舞台劇要素を含んだ歌詞、物悲しいメロディが終幕を意味する本作と絶妙にマッチしたものとなっている。



あらすじ

現代―。
友人からあるビデオを見たことを電話で聞いていた女子高生清美。彼女は友人の井戸という言葉から、廃墟の近くにある井戸を訪れ、その後、その井戸の側で男が女を殺害する様子を廃墟から目撃する夢を見たことを話す。
30年前―。
新聞記者・宮地彰子は小学校教師の須藤から彼女のかつての教え子・山村貞子の話を聞いていた。貞子の行方を追っていた彼女であるがその足取りは掴めない。
その貞子は東京の小さな劇団「飛翔」で研修生となっていたのだが彼女は常に何かに怯えている様子であった。
音楽技師の遠山博はそんな彼女を気にかけるが彼に好意を持っている立原悦子はそれが気に食わない。一方劇団員の葉月愛子は井戸の夢を見ていることを同じく劇団員の有馬薫に話すのだが彼女もまた同じ夢を見ていた。
そんなある日稽古中に愛子が謎の死を遂げてしまい、彼女の代役は団長の重森によってまだ研究生である貞子が抜擢されることになる。その後も貞子の周りでは怪現象が起き続けた。少女の姿、消える衣装、破壊するカメラ...。やがて劇団員たちは貞子が原因であると考えるようになりある出来事をきっかけに恐ろしい事件が起きることになる。
一方宮地は須藤から話忘れたことがあるとあることを語られる。それは山村家で貞子とはぐれてしまった際、階段の上に恐ろしい目をした貞子によく似た格好の少女を見たことだった...。



登場人物


■山村貞子
演:仲間由紀恵、古谷千波(少女時代)
主人公で後に呪いのビデオを生み出し世間を騒がせることになる人物。18歳。
東京の小さなアパートで一人暮らしながら劇団の研修生をしているが、その様子は常に何かに怯えている。一方で定期的に病院に通い、父・伊熊の弟子である久野からカウンセリングを受けている。
遠山とは気にかけられたことがきっかけで次第に惹かれ合っていくが、一方で愛子の変死で重森に代役に抜擢、さらに彼から関係を迫られる。そして劇団内で起こる怪奇現象によって彼女の運命は悲しき方向へと進んでいく...。
超能力を持っているがコントロールすることができない。これが事態をより深刻にしてしまうことに。(尤も後述のことを考えると破壊や殺傷の能力は彼女によるものではなかった可能性もあるが...。)予知能力も持っているのか遠山の手に血を見たりすることも。
本作では治癒能力も持っていることが明かされ、遠山の頭の傷を消したり老人の足を治す姿を見せた。この能力は自分の意思で行えるようである。また同じ能力の一種か前作でも示唆されていた驚異的な生命力の強さも本作で描かれている。
「人としての貞子」は原作シリーズや映画「らせん」では魔性の女としての側面が強調されていたが、本作では美しいながらもあどけない振る舞いの女性として描かれている。
+ ネタバレ
舞台本番、悦子が再生した劇場内で流した公開実験のオープンリールを聞いて混乱、さらにもう一人の貞子の暗躍によって死者を出した上に舞台を大パニックに引き起こしてしまう。
恐怖と憎悪で暴徒と化した遠山と悦子を除く劇団員たちによってリンチを受け死亡した...。と思われたが上述の能力の恩恵かかろうじて生きていたようで、伊熊邸に運ばれたあと意識を取り戻し遠山と共に逃亡を図ろうとする。
しかしもうひとりの貞子に捕まり一体化、意思を乗っ取られ邪悪そのものと化し超能力で伊熊以外の人間を死亡させることとなった。体をゴキゴキ動かしながら宮地と悦子に迫る姿は必見。
その後本来の人格に戻り父・伊熊に介抱されるがこの世への脅威となることを危惧した彼によって薬を投与され苦しみだし最後は鉈で頭をカチ割られ、井戸に投げ込まれるのだった。
そこでハッと布団で目覚める貞子。目の前には遠山が。すべては夢であったのか...。
貞子は遠山の顔に手を伸ばす...。











しかし手を伸ばした先にあったのは遠山の顔ではなく井戸の壁。
貞子は助かったわけでも、まして天国に召されたわけでもない、井戸の中に放り込まれてそこで幻を見ていたに過ぎなかった。貞子にはもう井戸の中で生き続けるしか道は残されていない。井戸に蓋が閉じられ暗黒が訪れる。恐怖と絶望と悲しみに貞子は叫び続けるしかなかった...。
彼女が井戸を出るにはあと30年かかることになる。


■遠山博
演:田辺誠一
劇団「飛翔」の研究生で音楽を担当。25歳。
どこか影のある貞子を気に掛けるうちに彼女に惹かれていきやがて恋仲となり、劇団内の怪奇現象も貞子のせいではないことを信じる。
貞子を襲った重森を止めるが彼に小道具で頭を殴られ出血、さらに揉み合いの末重森が死亡してしまう。
貞子の治癒能力で一命を取り止め一度は警察に自首しようとするが、貞子の治癒能力を目の当たりにしたことで考えを変え、重森の遺体を隠し、舞台をやり遂げた後共に駆け落ちしようと画策する。
演者の田辺誠一は前年に放送されたドラマ版「らせん」で織田恭助を演じており、リングシリーズでは初めて別の作品で異なる役を演じた人物となった。
+ ネタバレ
計画は劇団員たちが重森の遺体を発見したことと悦子の妨害による舞台の騒動で失敗に。伊熊邸に向かう宮地たちに同行し、運ばれる貞子の元を絶対に離れなかった。
やがて貞子が蘇生すると今度こそ共に逃げようとするが、貞子が一人に戻り邪悪化、逃れられないと悟った彼は彼女に愛の告白をした直後断末魔の叫びと共に死亡、最後まで貞子への愛を貫き通したのだった。

原作「レモンハート」では彼が主人公であり、死亡描写はいろんな意味で本作とは大きく異なる。




■立原悦子
演:麻生久美子
劇団「飛翔」の研究生で衣装を担当。23歳。
遠山に好意を寄せているが彼からはその気はない模様。
貞子には当初こそ優しく接しており悪い印象を持っていなかったが、遠山の気持ちが自分から貞子に移ったこと、そして消えた手入れ中の衣装を貞子が持っていたことをきっかけに、嫉妬と嫌悪を抱くようになり、やがて久野と会ったことから貞子が何かを隠していることを確信する。
そしてその一件を知って目をつけた宮地に公開実験のオープンリールを渡され流すよう促される...。
+ ネタバレ
オープンリールを舞台本番に流し、その結果劇場を大パニックに陥れ、さらに劇団員たちの貞子へのリンチを止めようとする遠山を妨害した。
その後宮地たちに同行し伊熊邸を訪れるが、見張りだったのかもう一人の貞子に会う気力がなかったのか遠山(と貞子)と共にトラックに残っていた。
貞子が蘇生してからは殺しに加担した罪悪感か恋敵としての敗北感からかそのことを宮地たちに告げようとはせず二人を行かせる。
貞子が一人に戻って邪悪と化してからはその姿を目撃して泣きじゃくりながらパニックになり宮地に無理矢理連れられる形で伊熊邸に避難、迫る貞子を前に逃げ切れないことを悟った宮地によって頭を撃たれ射殺された。




■宮地彰子
演:田中好子
新聞記者。36歳。
同僚の富樫と共に貞子を追っており、須藤や久野に貞子のことを聞いており、公開実験の様子を録音したオープンリールを持っている。富樫は記事にするためと思っていたが...。
実は12年前に志津子の公開実験で最初に彼女を責め立てた末貞子に殺された記者の婚約者。貞子を追っていたのはその婚約者の復讐のためであった。
偶然貞子が「飛翔」にいることを突き止め彼女を取材と称して彼女を刺激、カメラが破壊したことや撮った写真の人間のたちの顔が歪んでいることから貞子が本物であること、そして劇団員たちが呪われていることを悟る。一方で上京してきた須藤からもうひとりの貞子の存在を知らされることに。
舞台本番中に貞子を混乱させて劇場で騒動を起こさせ、その騒ぎに紛れて彼女を銃殺しようと画策、貞子に懐疑的になっていた悦子の存在を知って彼女にオープンリールを渡して流すよう促す。
舞台当日、客席から貞子の登場を待ち構え、ついに復讐を実行するときが来る...
+ ネタバレ
劇場が予想通り大パニックになる中、ステージに立つもう一人の貞子を目撃する。劇団員たちが先に貞子をリンチして殺害してしまった(実際は死んでないが)ため自らの手で貞子を殺すことは叶わなかったが、もうひとりの貞子を殺すため劇団員たちと共に彼女がいると思われる伊熊邸へ赴く。
到着した宮地はもうひとりの貞子の部屋に入るが彼女はおらず、さらに蘇生した貞子が逃亡したため追跡に向かう。
しかし一人に戻って邪悪そのものと化した貞子に逆に終われる形となり、悦子と共に伊熊邸の一室に逃げ込むがもはや彼女に打つ手はなく最後の抵抗として貞子を前に悦子を射殺した後自らも拳銃で自殺した。



■重森勇作
演:若松武史
劇団「飛翔」の演出家で事実上の代表。38歳。
愛子の死後、彼女の代役としてまだ研究生である貞子を抜擢する。
自尊心が高く、自分が手に入れられないものはないと思っており、遠山の気持ちを知っていながら貞子の部屋に来るなどして彼女を自分のものにしようとする。人を殺してでものし上がろうとする女を理想の女優としているようだ。
志津子の公開実験の事件を知っており、貞子の部屋で見た写真や貞子がカメラのフラッシュに怯えていたこと、様々な怪現象から貞子が志津子の娘で記者達を怪死させた張本人だと確信する。
彼女により魅力を感じた重森は彼女に迫るが直後に起きた怪現象から自分を殺そうとしていると勘違いして襲い掛かる。駆けつけた遠山に止められるのだが彼を小道具で殴りつけ揉み合いになった末頭を打って死亡してしまった。死体は翌日の朝、遠山によって隠されるが...。
キャラ自体は原作の「リング」の時点で登場している。
+ ネタバレ
血が床に流れ出たことで劇団員たちによって発見される。
そして公開実験のオープリンリールを聞いて混乱した貞子の目の前に血まみれの重森の幻影が出現。これが劇場を大パニックにする引き金となる。
原作シリーズでは貞子の秘密を暴こうとした結果彼女に心臓麻痺を引き起こされて殺されていることが「リング」で語られている。



■有馬薫
演:高畑淳子
劇団「飛翔」の女優。38歳。
舞台「仮面」ではイワコフ教授の秘書・マトリョーナ役を務める。貞子が来てからというもの夜な夜な井戸の夢を見ていることを愛子から聞くが自身もまた同じ夢を見ていた。
劇団内で起こる怪現象を貞子の仕業だと思い込む。
重森同様キャラ自体は原作「リング」の時点で男性・有馬真の設定で登場しており、TVSPドラマ版でも原作とほぼ同様の役回りで登場している。
+ ネタバレ
舞台本番当日、重森の遺体を発見、他の劇団員と共に逃げ出した貞子を追い詰め彼女をリンチする。
宮地たちと共に伊熊邸へ向かうが、蘇生してもう一人の貞子と一体化した貞子によって超能力で殺されてしまった。*1
なお原作では役回りがほとんど異なるためか貞子に殺されておらず現在まで生きている。


■葉月愛子
演:奥貫薫
劇団「飛翔」の女優。28歳。
舞台「仮面」のヒロイン・アンナ役を務める。貞子が来てから井戸の夢を見るようになることを有馬に語っていた。そのせいか顔色も歩くそのせいか何かと重森から演技のダメ出しを喰らっており、貞子の背後に少女の姿が見えることから彼女に不気味なものを感じている。その恐怖とイラ立ちから彼女に当たることも。
アンナ役になったのは重森の権力によるもので愛子は役を勝ち取るために彼と付き合っていたようだ。
+ ネタバレ
ある日に稽古の合間の休憩中、もうひとりの貞子が現れ接近。薫が話しかけたときには死亡していた。
死ぬ直前に録られた稽古のテープには「殺された」という彼女の声が収められていた。その後も幻影か霊か貞子の前に現れ指を差して無言で責める。


■久野亘
演:水上竜士
貞子がカウンセリングを受けている医師。36歳。
貞子の父・伊熊の弟子で彼からの頼みで上京してきた貞子の保護者となっており、病院で彼女の精神面のケアをしたり、貞子が見る幻を幻覚と捉えたうえで薬品を投与していた。
貞子に疑いを持った悦子に押しかけられるが何も答えられないと追い返す。
次に訪れた宮地からも貞子や伊熊の所在を聞かれるが答えなかった。
超能力の存在は否定していたが公開実験のオープンリールを聞いたことや貞子が老人の足を治したことを聞いたことで信じるようになり舞台本番に劇場を訪れる。
+ ネタバレ
オープンリールを聞いて混乱した貞子の前に立ち落ち着かせようとするが、貞子にはそれが血まみれの重森に見えたことで錯乱、暴発した超能力で殺され蝋燭のテーブルに突っ込んだ。*2


■須藤
演:角替和枝
貞子の小学校時代の担任。40歳。
冒頭で学校に訪れた宮地にかつてクラスで海に行った際、海で大勢の子供達が溺死したこと、そしてその前に貞子が「みんな死ぬ」と言ったことを語る。
しばらくして上京し宮地の元を訪れ、話忘れたことがあると山村家を訪れた際に貞子にそっくりな少女を目撃したことを語る。


■富樫
演:木村靖司
宮地の同僚。38歳。
宮地と共に貞子の行方を追っていたが本人は宮地の行動が復讐であるとは知らず記事にするためだと思っていた。貞子や劇団員たちを撮影した写真を現像、彼らが呪われていることを確信した宮地にこの件から手を引くよう言われる。


■「飛翔」の男優たち
劇団「飛翔」の男優陣で、イワコフ教授役の児玉修二(演:村田則男)、アンドレイ役の丹波一彦(演:矢野浩次)、刑事A役の佐々原裕介(演:五十嵐明)、刑事B役の諸江仁(演:中野浩司)、ミハイル役の柳沢哲浩(演:宇納佑)の5人。
舞台当日、重森の死を知ったことで貞子への懐疑心と恐怖が最高潮に達し暴徒と化してしまう。
+ ネタバレ
全員宮地に同行して伊熊邸を訪問、逃亡した貞子を追うが一人に戻った貞子によって皆殺しにされた。


■「飛翔」のスタッフたち
劇団「飛翔」のスタッフ陣で舞台監督の結城(演:渡辺寛二)、演出助手の氏家守(演:出光秀一郎)、制作の人物(演:牧村泉三郎、役名はなし)の三人。制作の人物は話に絡むことはほぼなかった。
結城は床に垂れていた血から重森の死体を発見、彼の死が劇団内に広まるきっかけになった。
+ ネタバレ
結城と氏家は貞子へのリンチの際は貞子を助けようとする遠山を悦子と共に羽交い絞めに。伊熊邸へ向かう宮地には同行しておらず劇場に残ったと思われる(劇団内が呪われていたことを考えると彼らも後に死亡した可能性が高い)。

■清美
演:橋本真美
現代において「呪いのビデオ」の話を友人から携帯電話で聞いていた女子高生。
どういうわけか呪いのビデオを見ていないのに貞子が井戸で殺される夢を見ている。
真相は最後までわからなかったがもしかするとビデオ以外に貞子の呪いが広まっているのかもしれない。


■宮地の婚約者
演:門脇学
「リング」にも登場していた志津子の公開実験の際、最初に彼女を責め立てその結果貞子に殺された記者。
婚約者であった宮地は貞子を彼の仇と捉えている。
宮地が用意した拳銃は婚約者が祖父から譲り受けた旧日本軍のものである。


■山村志津子
演:雅子
ご存じ貞子の母親。本編開始時点で故人。
貞子の小学校時代に須藤が山村家を訪れた際には不気味な行動をとるなど既に精神に異常をきたしていた。
+ ネタバレ
舞台本番、オープンリールを流されて混乱する貞子の前に現れ何らかの言葉を発して消えていった。彼女は何を伝えようとしたのか...。その姿は貞子以外の人々にも見えていた。
また、志津子が精神に異常をきたしたのは公開実験でのことだけが原因ではなかったようで、伊熊は志津子が二人に分かれた貞子の内、「父親」に似た方の貞子の顔を見たことで気が狂ったと語っていた。


■山村敬
演:大場真
回想シーンで1カットだけ登場。貞子や志津子を売り物にしようとした志津子の従兄弟。「リング」のときとは異なり今回はボサボサ髪に髭と老年時の見た目に近くなっている。この頃から公開実験のことで病んでしまっていたのだろうか
須藤が山村家を訪れた際、貞子を連れながら案内した。
脚本の高橋氏によると伊熊がもうひとりの貞子を二階に閉じ込めることに協力していたようだ。


■伊熊平八郎
演:伴大介
ご存じ貞子の育ての父親でかつて志津子に協力してもらいながら超能力の研究をしていた学者。54歳。
久野に貞子を預けカウンセリングを受けさせることで彼女を手助けしていた。
居場所は貞子(と恐らく久野)以外誰もわからない状態であったが貞子の部屋の志津子の写真立ての中にあった伊熊からの封筒を宮地が発見、伊豆の山奥に住んでいることが知られることになった。
+ ネタバレ
自分の元を訪れた宮地たちを見るなり貞子を殺しにきたことを悟る。彼女たちをもうひとりの貞子の部屋に案内するが、無人になっていたことから「貞子がここに連れて来たのか」と宮地に聞いた。
宮地たちとは別行動をとる形で貞子を探すが見つけた時には貞子は一人に戻り宮地たちは死亡していた。
貞子が今後さらなる災厄となることを危惧した伊熊は全てを終わらせるため貞子に精神安定剤だと嘘をついて毒薬を投与する。
直後に苦しみだし逃げる貞子を追いかけ、最終的に鉈を振り下ろして頭をカチ割って井戸に放り込み殺害、泣きながら貞子に詫び続けるのであった。状況が「リング」とも「らせん」とも少し違ってるが気にしてはいけない
貞子を殺したのは決して憎悪や恐怖ではなく貞子をこれ以上社会悪にしたくなかった故の行動だったといえる。
らせん」では吉野の口から後に伊熊は土地を売却し死亡したことが語られたが、貞子に毒薬を打った際に「父さんもすぐ後を追う」と言っており、映画シリーズでは自殺した可能性が高い。



+ 宮地「もう一人...」
■もうひとりの貞子
演:古谷千波
劇団内に度々現れていた少女時代の貞子そっくりな少女でその正体は過去に貞子と分裂して誕生した片割れ。作中の怪現象を引き起こしていた張本人である。過去作における怨霊・山村貞子のポジションのキャラといえる。
母親に似た容姿で穏やかな性格である貞子とは異なり、本当の父親に似た容姿で性格は邪悪そのもの。その目は過去作を彷彿とさせる狂気を孕んだものとなっており、顔をみた志津子が発狂する一因になってしまうほどである。伊熊邸から逃げる貞子と遠山に「人間たちが追ってきたの」と話すなど自分を人間とは思っていない。
いつ分離したのか正確な時期は不明であるが、公開実験時の志津子が狂っているようには見えないため公開実験の直後であると思われる。
また、治癒以外の能力をコントロールできない貞子とは異なりもう一人の貞子は作中の描写からコントロールすることが可能な模様。
成長や貞子との一体化によってその邪悪さが肥大化することを危惧した伊熊によって薬で成長を止められ、伊熊邸の二階の部屋に監禁され貞子と引き離していたが、生霊のような状態で劇団に取り憑いて周囲に呪いを振りまき、愛子を殺害したり衣装を盗むなど暗躍していた(舞台当日での久野の殺害やスポットライトの落下、鏡の損壊に関しては貞子によるものに見えるが宮地がステージにもうひとりの貞子がいるのを目撃していることから、これらももうひとりの貞子の仕業でさらにいえばそもそも(主人公の方の)貞子には人を殺したり物を動かす力はなかった可能性がある)。
本人なりに貞子の手助けをしていたのか、あるいは彼女が追い詰められるよう邪魔していたのか、単に貞子を含め劇団を弄んでいただけなのか。その意図はわからない。
作中では実体はずっと伊熊邸の二階にいたようだが、宮地たちが貞子を伊熊邸に連れて来たことで施錠されていた部屋を脱走*3、貞子を捕まえて一人に戻り意思を支配してしまう。伊熊以外の人間たちを皆殺しするが、伊熊と会ったときには人格は消えていた。



登場用語


■志津子の公開実験
「リング」においても描かれた、貞子の母・志津子が行った超能力の実在を証明するための公開実験。
最初に志津子を責め立てた宮地の婚約者を貞子が超能力で殺害、さらに他の記者達も全員死亡したことが宮地によって語られている。
「リング」よりも30年ほど遡った本作の時期ではそこそこ人々の記憶に残っているようで、重森は貞子がカメラのフラッシュを恐れていることや彼女の部屋の写真から志津子の娘であることを勘づくことになった。
また本編では語られなかったが、「映画版脚本 リング0バースデイ」収録の「伊熊平八郎の研究日誌」において、伊熊は超能力の実在の証明の材料を揃え切れていない状況の中、山村敬の強い催促があったために仕方なく実験を開いたようで、事件後伊熊はこのことを早計であったと後悔していた。そりゃ後年の山村敬があれほど苦にするわけである


■公開実験のオープンリール
志津子の公開実験の様子を録音したテープ。志津子が記者達に責め立てられる様子や貞子によって記者が殺される様子が収録されている。しかしテープには軋むような不快な音が混ざっていた。この音は劇団の舞台稽古で流したテープにも混ざっており、公開実験や劇団において貞子の呪いが蔓延していることを示している。作中で貞子に殺された人間は全員オープンリールを聞いていたが呪いのビデオのような力があるのかははっきりとは名言されなかった。
原作「レモンハート」にもオープンリールを巡る展開があるが内容やそれを巡る展開は異なっている。


■劇団「飛翔」
貞子が研究生として在籍している劇団で本作の物語の舞台。
舞台劇「仮面」の稽古中のさなか怪現象が多発することになる。
劇場の本番では大事件が起きたうえにその後の展開から劇団は解散となった可能性が高い。


■「仮面」
劇団「飛翔」が講演する予定の舞台。
娘・アンナを別人として生まれ変わらせようと彼女の死を偽装するため別人を殺害、さらに自分の元を訪れた女性をアンナに成り替わらせるため殺害しようとする父・イワコフの凶行とアンナを失ったと思って嘆く彼女の恋人アンドレイ、そして父の凶行に巻き込まれる一方でアンドレイへの気持ちを抑えきれないアンナの恋情を描いたロマンスミステリー。
元ネタは60年代のフランス・イタリアの映画「顔のない眼」。
原作では「黒い服の少女」という作品で内容も異なる。


■伊熊の家
伊豆に隠れ家のように建っている伊熊平八郎の自宅。
二階にはもうひとりの貞子が鉄で覆われた部屋に監禁されていたが貞子が運ばれてきたことによって脱走されてしまった。
伊熊の没後はボロボロの廃墟となっており、30年後の冒頭では清美が夢の中でそこに迷い込んでいる。


■井戸
シリーズ恒例の井戸。伊熊邸の前方にひっそりと立っている。
愛子や薫は夢の中で知らないはずのこの井戸を目撃していた。
まだ蓋がされていなかったためか過去作と異なり井戸の中の水面には葉っぱが大量に浮いている。


■呪いのビデオ
おなじみ見ると一週間後に死ぬビデオテープ。本作の時期はまだ存在しておらず、冒頭の現代パートで清美の友人が見たことが語られるくらいで出番はほぼ無し。




余談

(ネタバレを含むものもあるため注意!)











■本作の主人公の貞子が原作シリーズのような魔性の女として描かれていないのは脚本の高橋氏の意向。映画では怪物として描いているがそのまま主人公として描いても物語が展開しないために逆に普通の人間として描いて意外性と怪物と化すまでの過程への興味を誘う形にした。
一方で貞子が恐怖を振りまく展開を描かなければならないためどういった形で貞子による恐怖を描くかで高橋氏は悩んだようで、記憶が抑圧されているという設定を考えてたが多重人格の要素を含んだ同時上映の「ISOLA」とネタが被ってしまうということでこれは没に。そんな中、ふと「貞子が伊熊に電話で妹はどうしているのかを聞く」という内容のことを書いたことで主人公の貞子に片割れがいるというアイデアが生まれ、さらに先ほどの記憶の抑圧のアイデアから、記憶→多重人格→もう一人と発想が流れたことで貞子が二人いるという設定が生まれた。

■「リング2」での貞子の出生の経緯を踏まえてか、高橋氏が作ったもうひとりの貞子周りの要素はクトゥルフ神話作品をモチーフとしている様子。もうひとりの貞子が伊熊邸に閉じ込められているのはラブクラフトの「ダンウィッチの怪」でウィルバーの兄弟が自宅に監禁されている設定を、須藤が階段を這うもうひとりの貞子を目撃するシーンはラヴクラフトとオーガスト・ダーレスの共著「閉ざされた部屋」を映像化した「太陽の爪あと」で家の壁と壁の間に縛れている何かが穴から覗いている描写を意識している。

■超能力者の悲劇をメロドラマ要素も交えて描いた作品と言えばスティーブン・キング原作の「キャリー」が存在するが、実際本作のイメージとしてあったようで、監督の鶴田氏は高橋氏から監督のオファーをされた際、「『キャリー』をやりたい」と言われてノッたと語っている。

■脚本はかなり難航したようで、上がるまでのキャストや撮影のスケジュールを巡って鶴田監督とプロデューサーの小川氏がケンカして張り詰めた状況になったこともあったようだ。

■高橋氏は遠山のキャラクター付けに相当悩んだらしく貞子とは実は兄妹だったり宮地の弟だったりといった設定をつける案があったようで、最終的には死体と道行きする人物というところでキャラが見えてきたと語っている。また、遠山を演じた田辺氏が演技で苦労していたことも語っていた。

■貞子役の仲間氏は鶴田監督にかなりしごかれたようで、「仲間コノヤロー!」と加減なしにひどいことを言われて泣いてしまったことがあった。そのためか仲間氏は打ち上げの際、鶴田監督に近づこうとせず伊熊役の伴氏のそばを離れなかったという。
なお鶴田監督はそこまで怒っていたつもりはなかったようで、第3回三鷹コミュニティシネマ映画祭で上記の話が挙がった際、周りにそのことで質問して初めて自分がそうだったのかと気づいたという。
一方で仲間氏のことはこの時点で一目置いていたようで、撮影中の彼女の誕生日パーティーで一番下のスタッフにまで丁寧にお酒を注ぐ仲間氏の姿を見てこの子は絶対に伸びると感じていたようだ。
実際仲間氏は本作での演技が堤幸彦監督の目に止まり、ドラマ「TRICK」の主演に抜擢、その後も名女優への道を進むこととなった。夢破れることとなった貞子はさぞ羨ましいだろう。本作での経験や出演が仲間氏の名女優へのターニングポイントになったといえる。

■映像ソフトはいくつか存在。

  • VHS
本編前後にCMを収録。ワンダースワンのゲーム「リング∞」のCMも収録。

  • DVD
予告編やTVスポットを収録。過去作とのものとは異なりプロモーション映像やメイキング、未公開シーン集も収録している。DVD-BOX収録のものやレンタル版もこれと同仕様。

  • BD
「貞子3D」公開に伴い発売。特典はDVDと違って予告編のみとしょっぱい。(レンタル版には未収録)





















そのビデオを見た者は、七日後に死ぬ。











その謎は「リング」で始まる。
TO BE CONTINUED リング



公開実験のオープンリールを聞いた人は追記・修正をお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • リング
  • ホラー映画
  • 映画
  • ホラー
  • 貞子
  • 鶴田法男
  • 高橋洋
  • 鈴木光司
  • バースデイ
  • レモンハート
  • 劇団
  • 井戸
  • 呪い
  • 前日談
  • バッドエンド
  • 鬱展開
  • 恋愛
  • 分裂
  • 仲間由紀恵
  • 田辺誠一
  • 麻生久美子
  • 田中好子
  • L'Arc~en~Ciel
  • ラルク
  • 東宝

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月28日 15:48

*1 死亡描写は描かれず宮地が逃亡中に悲鳴が聞こえるのみ

*2 直後の描写から殺害はもうひとりの貞子の仕業であった可能性もある。

*3 部屋が無人になっていることへの伊熊の反応から貞子を連れて来たことでもうひとりの貞子の力が増したのだと思われる。事実貞子のほうも同じころに蘇生している。