吉田松陽

登録日:2022/05/14 (Sat) 22:58:20
更新日:2024/01/21 Sun 06:41:49
所要時間:約 10 分で読めます




屍を喰らう鬼が出ると聞いて来てみれば…君がそう?

また随分と、可愛い鬼がいたものですね

銀魂』の登場人物。
モデルは言わずもがな、幕末の長州藩で多数の維新志士を輩出した松下村塾の吉田松陰。



【概要】

銀時高杉達の師匠。
孤児であった銀時にとっては育ての親でもある。
本編開始時点では故人。

『紅桜篇』にて初めてその存在が語られるが、この時は後ろ姿のみだった。
その後、『紅蜘蛛篇』で銀時との出会い、『一国傾城篇』で別離、『将軍暗殺篇』で桂・高杉との出会い、そして死別が描かれた。
とある地方の田舎で私塾『松下村塾』を開き、銀時らをはじめ貧しい子供達に無償で剣術と手習いを教えていた。

淡い灰色をした長髪に中性的で整った顔立ちをした、一見女性と見まがうほどの美男子。シルエットだけだと成長後の弟子を含めこの漫画に大勢いるだろうとか思ってはいけない。
常に笑顔を絶やさず敬語で話すどこか掴みどころのない飄々とした人物だが、桂が握ったおにぎりを勝手に食べたり「巨人みたいだ」と銀時から言われた際「私は阪神派です」とずれた返答をしたりとかなり天然な面もある。
周囲の武家からは国家転覆を目論んでいるなどと警戒され疎まれていたが、当人としては「侍とは生き方であり、生まれによるものではない(意訳)」という信条を実践した程度のものであり、さして特別な事を教えているつもりはなかった。

だが、そうした普段の温和な様子に反してすさまじく剣術の腕が立ち、すれ違い様に相手数人の刀を粉砕するほど。
さらに素手でも軽い拳骨で相手を地面にめり込ませるなど、短い描写で底知れない強さを見せつけた。
その実力たるや銀時をして一度も一本とる事が出来なかったほど。
また、学舎に夜討ちをかけようとする大人達と弟子達が衝突しそうになった際は、普段の穏やかな口調はそのままに凄んだ表情で大人達を畏怖させ一蹴した。


私のことを好き勝手吹聴するのは構いません

私が目障りならどこへなりとも出ていきましょう ですが…

剣(それ)を私の教え子たちに向けるというのなら 私は本当に国家位転覆しても構いませんよ


しかし、寛政の大獄が始まると松下村塾もその煽りを受け、とうとう松陽も捕らえられてしまう。
恩師を取り戻すため、攘夷戦争に身を投じる銀時らであったが...。





以下、将軍暗殺篇終盤の回想におけるネタバレ






弟子達の奮戦も虚しく、攘夷運動は衰退の一途を辿り、遂には銀時を除き幕府軍に捕らえられてしまう。
天導衆に連れられ戦場に姿を現す松陽だったが、そこで天導衆は銀時に、仲間を犠牲に師を救うか、師を犠牲にして仲間を救うか究極の選択を突き付ける。
結果、銀時はかつて松陽と交わした「仲間」を守る約束を選び、自ら師を手にかける。
首を刎ねられる寸前、自分との約束を守ってくれた弟子に「ありがとう」といつもと変わらぬ穏やかな表情で感謝を告げ、その命を散らした。

これにより、銀時達三人は命を救われたものの、以降道を違える事となる。
また、この出来事がその後の銀時の「師弟関係」「約束」に強く拘る人間像に影響を及ぼしたといっても過言ではない。
このほか、投獄中見張りを担当していたに手習いを教えていたほか、と言葉を交わす様子も見られた。



そして月日は流れ、かつての弟子であった銀時と高杉は、それぞれ亡き師への想いを胸に刃を交える———。

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以下、本編最終盤のネタバレを多分に含みます。
さらば真選組篇以降のストーリーを未読・未視聴の方はご注意ください。










三つ巴の戦局により混迷を極める黒縄島に現れた天導衆の直属暗殺組織「天照院奈落」の増援部隊の船から突如漆黒の外套と編み笠、の仮面を纏った一人の男が降り立つ。
』と呼ばれたその男は人外じみた力を振るい、剣技の達人である沖田や信女、夜兎族である神楽を同時に相手取っても容易く蹂躙する。
やがて銀時と対峙するが、化け物じみた強さを放つ虚の太刀筋に、無意識ながら銀時はギリギリで食らいついていく。
競り合いの最中、銀時は遂に虚の仮面を打ち砕く。しかし、ついに露わになったその素顔は…















登録日:2022/05/14 (Sat) 22:58:20
更新日:2024/01/21 Sun 06:41:49
所要時間:約 10 分で読めます







君は 私の剣をしっているな だとしたらそれは恐らく ぬぐい難い 敗北の記憶

君はしっている 君の剣は 私には届かない




CV:山寺宏一/喜多村英梨(少年体)

松陽の別人格。
後述の理由から恐らくは最も本来の人格に近いと思われる。

同じ肉体故に容姿こそ松陽と瓜二つだが、常に凍り付いたような不敵な笑みを浮かべ、瞳も自身の名を表すが如く虚空を見つめるかのように光を宿していない。
髪型もオールバックとなっている。


黒縄島での闘いが終結した後、信女の口から真実が明らかとなる。

虚は、星々を流れる巨大なエネルギー・アルタナ(地球人からは龍脈と呼ばれる)の影響を受け誕生した存在で、膨大なエネルギーを抱えたその肉体は、老いず朽ちない不老不死の力を与えた。さしずめ人間の形をした超エネルギーの塊といったところだろうか。
しかし、その力から虚はかつて周りの人々から「鬼」と恐れ疎まれ、あらゆる手段で殺されたものの決して死ぬ事はなく、やがてその苦しみから逃れるため無数の人格を形成することとなる。
そして果てにはその報いを返すかのように殺戮を繰り返し、朝廷をはじめ時の権力の裏で暗躍するようにった。これが天照院奈落の興りであった。
しかし、殺戮の日々の中にあって運命に抗おうとする人格が現れ、これがのちに松陽としての人格になる。
そして当時まだ少年だった朧との出会いをきっかけに虚は奈落から逃亡、朧の自己犠牲もあり追手から逃げおおせると吉田松陽と名を変えて、銀時らと出会った事で人間として生きようとする。
その経緯から朧や信女もまた、松陽の弟子たる存在である。

だが、松陽の処刑後、その肉体は荼毘に付されていたが、虚は松陽としての人格を消滅させ復活。
その後、不老不死の力に目を付けた天導衆を逆に懐柔、さらに春雨の元老院を排除し掌握。
永き時の中で死ぬことのない苦しみと人間への絶望を味わっていた彼は自身の運命に終止符を打つべく、洛陽での戦いの裏で別動隊を動かし他の星々のアルタナを暴走させ多数の犠牲を出すことで、その怒りを天導衆や地球に向けさせ宇宙規模の戦争を引き起こすという、まさに超規模の自殺を企てる。


【能力】

超人的な身体能力から繰り出す剣技と体術が武器で、数百年かけてこれを独自の暗殺術へと昇華させた。
その戦闘力は銀時や星海坊主をはじめとした作中の猛者達を同時に相手どっても圧倒できるほど。

だが、それ以上に厄介なのが先述したように肉体に宿したアルタナによる驚異的な生命力と再生力。
たとえ斬られようが潰されようが焼かれようが、核である心臓が存在する限り無限に再生を繰り返す。
その能力故時には自分諸共砲撃させたり自分の身体ごと刀で相手を貫く描写もみられる。
また、自身の血を与えることで相手、更には第三者にも同様の能力を与えることが可能だが、普通の人間では再生を繰り返すうちに力を失っていき、適合できなかった場合は肉体が崩壊を引き起こす。
そして最悪の場合、体内を巡る因子によって人格を乗っ取られてしまう。

弱点として、肉体を巡るアルタナは彼の生まれた星である地球の物なので、
他の星で採掘されたアルタナの結晶を体内に入れられてしまうと、拒絶反応を起こして傷の再生に支障が生じてしまうことが挙げられる。
そのため星海坊主は、自身が集めた異星のアルタナ結晶石を持って知人の技術者に依頼し、特別な刀、爆弾、大砲などの武器を製作していた。余った結晶は自分用の育毛剤として使った。


【結末】

用済みとなった天導衆を始末したうえ自身の血を与えゾンビ同然の状態にした奈落に解放軍を襲撃させ、全面戦争を引き起こすべく暗躍する。
万事屋や江戸の人々によって解放軍が撤退させられると、自ら地球のアルタナの暴走を引き起すべく現れ、それを阻止しようとする定春らを襲撃する。
万事屋、真選組、第七師団の面々を無尽蔵の再生で蹂躙するも、定春によってアルタナの供給を阻害され再生が停止し、何度倒されても挑んでくる「人間」の達の姿に思わず怯えを抱く。
そして再び斬り掛かる銀時の姿にかつて見た少年時代の彼の影を見出し、自分の中にまだ松陽の人格が残っていたことを悟りながら、銀時、新八、神楽、近藤土方、沖田、星海坊主、神威の8人に全身を貫かれて敗北する。
しかし、なおも銀時達に対し彼らが吉田松陽を救えなかった事実を突き付けながら、アルタナの渦の中へと身を投げ消滅したかに見えた。

虚の復活を予見した銀時は全国にある龍穴を2年近く巡り、その中の一つから赤子の姿で再生した虚の体を発見する。
かつての自身と師のようにしばらく二人で放浪していたが、急成長するその肉体に現れた人格は松陽の記憶を受け継いだものだった。
だが、なおも不老不死を手に入れようとする天導衆の生き残りが結成した教団『星芒教』が指揮する奈落の残党に狙われ、核である心臓をアルタナの結晶石に変え銀時に託し自らは囚われてしまう。
しかし、実際は復活した天導衆は虚の因子に操られていたに過ぎず、彼の完全復活を手助けしていたに過ぎなかった。

ターミナルを舞台に江戸の人々と星芒教の最後の戦いが繰り広げられる中、吸い上げたアルタナにより虚の肉体は復活を遂げる。しかし、そこに宿っていたのは松陽の意志であり、瞬く間に天導衆のリーダーを葬る。
だが、復活は一時的かつ不完全なものに過ぎず、自身の命が尽きる前に自らのために起こった騒乱を沈めようとする。
かけつけてきた高杉と再会するも、朧の遺骨を使い一時的に不老不死となっていた高杉の内に現れた虚からの一刀で松陽は重傷を負うも、高杉と朧の意志により松陽は追撃から逃れる。
そうとは気付かず、虚は遅れて現れた銀時と対峙するが、既に高杉の中の不死の力は枯れており、自分を抑え込まんとする高杉の意思と揺るがぬ銀時の意志の前に自分の刃は全く当たることなく*2銀時に一方的に切り伏せられ、「人は虚を知るがゆえに人を受け入れ人の中に生き、死別を持ってさえ滅ばず魂に有り続けられる」と悟り最期を迎えた。

一方、満身創痍でターミナルのコントロールルームを目指す松陽は、途中で新八達万事屋の面々と合流.
彼らの助けによりコントロールルームへたどり着くと、自身の心臓をくべて吸い上げ過ぎたアルタナを逆流させ暴走を防ごうとする。
身体が徐々に結晶となり崩壊が始まる中、仲間達に導かれ現れた銀時達三人に支えられながら遂に暴走を阻止。
成長した銀時と万事屋の姿を見届けてこの世を去った。


松陽、お前にずっと…見せたかったんだ

あれから色々あったけどよォ…

俺… コイツらと万事屋やってんだ


…ああ、しかと見たよ

…万事屋、坂田銀時

…立派に…なった…な…

…銀時…ここにいる彼らは、私にとっての君なのだな

…あの日、永遠を生きる鬼が君と…君達と出会って人になれたように…

…あの日、悲しい目をしていた小さな鬼も…人に…なれたのだな…


【余談】

そのキャラ性から松陽への人気は高く、劇場版『新訳 紅桜篇』以降に開催された人気投票では他のレギュラーに負けず劣らずの後順位を記録している。
一方、不老不死という能力の都合上ストーリーが必然的にシリアスかつ更なる長期化にならざるを得なかったとする原因だと指摘する声もある。
故にかアニメでは原作では虚の登場以降ギャグ回なしに一貫した長篇シリーズ同士の合間に未消化のギャグ回を挟むといった手法で放送がなされた。

虚が用いていた刀の鍔は卍型の形状だが、これは史実の吉田松陰の家紋と同じである(五瓜に卍)。
恐らくは「虚=松陽」の伏線の一つであったろうと考えられる。

映画『銀魂 THE FINAL』のオマケコーナー『銀八先生』ではまさかの生徒役で登場。自称永遠の時を生きてきた留年生。
主に連載の引き延ばしに関するスレスレの質問を勝手に近藤に代わって代弁したり、別人格の通称「偏差値虚くん」と一人漫才を繰り広げていた。

担当声優の山寺氏は劇場版『新訳紅桜篇』への登場を前提としてキャスティングされた事がパンフレットの高松信司監督のインタビューで明かされている。なお、松陽として出番のなかった『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』では時間泥棒役で出演している。更に言えば、以前はジャンプ原作のアニメへの出演が意外にも少なかったが、松陽を演じたのを境にジャンプアニメへの出演が増えていった。



追記・修正は弟子の成長を見届けてからお願いします。

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最終更新:2024年01月21日 06:41

*1 実写版でも声のみで出演している。

*2 劇場版では自分の名前通り『虚』を斬るかのように斬撃がすり抜けていた