サザンクロス隊(機動戦士ガンダム)

登録日:2022/06/13 Mon 11:39:00
更新日:2024/04/15 Mon 12:08:04
所要時間:約 6 分で読めます




サザンクロス隊とは、劇場版「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」に登場する部隊である。



以下ネタバレ多数あります。

概要

ジオン公国軍の精鋭部隊であり、それぞれカスタマイズされた高機動型ザクJ型に登場する。
ドムのようなホバーが装備されており、前線のザクはまるでスピードスケートのように戦場を滑走し敵を惨殺。
残った敵がそれに目を向けたところにスナイパーが狙撃するというコンビネーションで次々と連邦軍のMSを屠っていくエース部隊である。
全員が元犯罪者であるものの約一名を除き基本的に温和で良識的。
作中でも市街戦で通常のザクを圧倒していた連邦軍のジム部隊をほぼ無傷で全滅させ、味方からも「彼らのお陰で戦線が持っている」と言われるほどの実力者達である。
そしてメンバー同士も仲が良く、常に軽口を叩きあっている。
しかし新人の1人を除いた4人は「ククルス・ドアン」という男に因縁があるらしく、特に隊長のエグバはその名前を出した人間に武器を向ける等激しい憎悪を持っている様子。

その理由はドアンがかつて所属していた隊だからである。
だがドアンが単に退役したにしては明らかに敵意を向けているが、その理由は……。

また、この項では主に元隊長のドアン以外の面々を説明する。



メンバーたち


エグバ・アトラー(CV:宮内敦士)

大尉であり現在のサザンクロス隊のリーダー。エクバではない。
普段は荒々しいながらも頼りになる指揮官であるが、ひとたび「ククルス・ドアン」という名前を出すと激しく激昂する悪癖を持っている。
それもそのはず、元々サザンクロス隊は傭兵であったドアンとエグバが起源であり、だからこそそのドアンが脱走したのが許せずにいるのだ。
MSの腕前もかなりのものであり、一たび戦場に出れば敵を冷酷に追い詰めていく。


ウォルド・レン(CV:上田燿司)

階級は中尉。現在の副隊長であり戦場では狙撃手を担当。
皮肉屋ながら部隊想いらしく、熱くなりがちなエグバを支えたり、ダナンが苦戦しているところを狙撃したりしている。
部隊の仲間とは冗談を言い合ったりと隊の潤滑油のような存在である。
しかし意外と臆病な所があり、映像中ではビビっているシーンも多い。その為か戦争に嫌気がさしており内心脱走したドアンが羨ましかったらしい。
また任務中も突然現れた白い悪魔に驚き、情けない表情で逃げるシーンもある。
…まぁこれらにビビるなって言われる方が難しいかもしれないが
ちなみに小説版では他のメンツ共々任務前にシャアと邂逅しており「白い悪魔」の事を聞いていた。まさかそれがフラグになるとは…。

セルマ・リーベンス(CV:伊藤静)

階級は曹長。隊の紅一点でありかなりの美女。
劇中ではドアンの元恋人のような雰囲気を醸し出しているが…。
小説によると格闘術のエキスパートであり、生身でも中国拳法のようなものを披露している。
腕っぷしの強さは幼少期かららしく、仕事ができなくなり暴力を振るう父親とそれを見て発狂した母親を見て育ち、最終的にその父親を殺害。
当時未成年ということで刑は軽く済んだが、その後兵士となり、ドアンと出会う。
同じく家族を亡くした彼とはシンパシーを感じ、一夜を過ごしちゃったらしい。互いに家族を失った溝を埋めるかのように…。
だがドアンは脱走。噂を聞きつけたセルマは件の島に映画の物語開始直前に一度潜入しているが、そこで新しい家族を作っていた彼に対し激昂。
彼を殺してでも手に入れようと決意する。


ユン・サンホ(CV:遊佐浩二)

階級は曹長。正直空気。
公式サイトの紹介文も「精鋭ぞろいの隊にあっても、見劣りしない操縦技術をもつ」…となんだかふわっとした紹介である。嘘は言ってないのだが…。
工学大卒でシステム・エンジニアとしても優れるが、小説版では剽軽な性格であり、「暇だったから」ということもあり見張りを勝手に離れるなどの行動をすることも。
反面やはり腕前はあるらしく視野は広い、その事もあって作中ではあるものを発見するが…。
だがこちらも結構なビビリ。でもやっぱアレに怖がるなと言う方が無理がある。


ダナン・ラシカ(CV:林勇)

階級は伍長。左頬にトカゲのタトゥーを入れている。その見た目通り残虐な性格で、前の部隊で隊長の鼻を嚙みちぎる、その事を吹聴していた整備士の目を潰す等の問題行為を起こしていた。
サザンクロス隊に志願してきた男で、残虐な戦い方をするものの操縦の腕前は本物、命令違反をすることもなく、その事は他の隊員から認められている。
また敵のトドメをウォルドに奪われた際は「獲物を横取りするな」と言ったりするものの、その口調は互いに冗談めかしたものでありなんやかんやで現状を気に入っている様子はある。
しかし彼がこの隊にやってきたのは「ククルス・ドアンがどれだけ強いのか見てみたい」というものであった。
小説版でもシャアと出会った際に喜んでいた為ミーハーなのだろう。
過剰な程の俺たちドアンファンであるが、しかし隊がドアンに対して憎しみを抱いている為、都度地雷を踏みぬく
エグバがキレたらすげぇビビり逃げ出す等、見た目や言動の割に完全に狂った人間というわけじゃなく、良くも悪くも普通のチンピラと言える。


ククルス・ドアン(CV:武内駿輔)

元サザンクロス隊長。
そもそも「サザンクロス隊」という部隊名も、教会の孤児院で育ったドアンの発案によるものである。
だがかの虐殺の代名詞である「ブリティッシュ作戦」にて、コロニー内の毒ガスを牽引する軍艦の護衛任務に就くが、その毒ガスで妻子が殺されてしまう。
挙句かつて助けた青年がその毒ガスの開発者ということを知り、彼の精神は締め付けられる。
そして翌日の市街戦にて民間人が戦闘に巻き込まれ、硝煙に消えて行く姿を目撃。
…その果てに瓦礫に潰され果てた女性と、それを見て泣いている子供を見て彼の中で何かが吹っ切れ、ジオン軍から脱走する事となる。
彼の脱走は部隊の面々にとっては衝撃的だったらしく、埋められない傷となり今は憎悪に変わっている……。


その他の事は彼本人の項目にて。


MS-06GD高機動型ザク(地上用)

彼らの乗機。全員がこの機体に乗っている。
スカートに配置されたスラスターと脚部に増設されたリフティング・フレアによりホバー移動での高速戦闘が可能である。
パイロットの腕も然ることながらその性能は破格であり、一般兵のジムでは全く相手にならない。
またサザンクロス隊のザクは膝の部分に星を模した飾りをつけており、その飾りとシールドのエンブレムが彼らの証となっている。
武装面でもある程度自由が効き、隊員は各々の得意分野に合わせて装備を選んでいる。
そしてここが重要なのだが、ヒートホークやヒートサーベルの抜刀シーンが非常にかっこいい。

なお「ドムのようにホバー移動するザク」はサザンクロス隊が初出ではない。
小説版「コロニーの落ちた地で…」にて、オーストラリアの現地ジオン軍がドムの噂を聞いてテストがてらで運用していた。
とはいえ急ごしらえだった事もあり余り有効とは言えず、主人公のレイヤー達には驚かれはしたものの割と楽に対処されてしまった。


その末路


ドアンの事で揉めつつも戦果を挙げるサザンクロス隊。
ある日、彼らにマ・クベの副官であるウラガンからとある任務が下る。
それは無人島「帰らずの島」から発せられるジャミング装置の無力化。
しかし隊の全員が確信していた、件の島には「あの男」がいることを。
途中でエグバがドアンの話題で舞い上がったダナンと一悶着あったが。

エグバはウォルドとユンにジャミング装置の処理を任せ、自分はセルマ、ダナンと共にファットアングルで島に上陸。
ちなみにジャミング処理班は原作のようにルッグンにぶら下がって移動していた。
そのルッグンはザクの運輸には成功するも連邦軍の戦闘機と交戦、打撃を与えるも割とすぐに撃墜されてしまった。

こうして島に上陸したサザンクロス隊は、ガンキャノンを破壊後、遂にククルス・ドアンを見つける。
傷ついたザクの盾には、頂点が輝くサザンクロスの隊章が描かれていた。今のエグバと同じエンブレムだ。
互いに譲れないものがあるドアンとサザンクロス隊は交戦に入る。

一方別行動を取っていた2人は、それらしい洞窟を見つける。
ウォルドはユンに見張りを頼み、自らはジャミング装置の解除に生身で向かう。
ユンはなんやかんやで見張りをしっかりしており、怪しい人影を発見。
「ねずみがいる」とそれを追跡するが、洞窟を進んだ先ででシートに包まれた怪しい空間を発見する。
ふと下を見ると赤い何かが見える。…それがMSの足だと気付いた時にはもう遅い。
一瞬で白い悪魔に襲われ、アムロは彼を爆発させないようにコクピットにサーベルを突き立て殺害した。
「精鋭ぞろいの隊にあっても、見劣りしない操縦技術をもつ」ユンであったが、見劣りしない程度の操縦技術ではガンダムに勝てるはずがなかったのだ。戦った場所も狭かったし…。
というか一連の描写は完全にパニックホラーかスプラッタホラーのそれである。

一方ウォルドはジャミング装置の解除に成功。
すぐに解除されはしないがシークエンスが開始されることを確認、踵を返すが…そこには白い悪魔がいた。
ウォルドは必死に逃げ出すも、アムロはそんな彼に対しガンダムを動かす。MSの速度から人間が逃げられるはずもなく
……そしてそのままウォルドはガンダムに踏み潰され死亡した
一節にはガンダムの足の窪みに上手くハマって生き残っているとか。

彼の向かう先にはドアンの世話する子供の1人マルコスがおり、逃した場合彼に危険が及ぶと判断しての事である。
…がさすがのアムロも人間を直接踏み潰した事には不快な表情をしていた。
しかしすぐに立ち直り、アムロは無人となったウォルドのザクを破壊した後ドアンの元に向かう…。
なおマルコスは直前までドアンの為になりたいとガンダムに乗って戦いたいと思っていたが、今までヘタレだと思っていた少年が躊躇なく人を殺すその姿を見て考えを改める事となる。

一方残りの3人の戦いも始まっていた。
まずは憧れのドアンと対峙できると俺たちダナンが口火を切り攻め立てる。
しかし小説版では投石を受ける等常識に囚われないドアンの戦い方に苦戦し、一瞬の隙を突かれ敗北。
だがダナンは憧れの強敵と戦えたことに満足し「あんた…最高だぜ!!」と喜びながら爆炎に消えた。
続けてセルマも憎しみのままにドアンを攻撃する。
しかし「家族を守るためにかつての仲間すらも殺す」覚悟を決めたドアンの敵ではなく、ヒートホークの一刀で切り裂かれる。
涙を流しドアンに「どうして…」と問いかけながらセルマもまた愛機と運命を共にした。

しかし隊長のエグバは流石に他の2人とは違い簡単にはやられず、乗機の高機動を活かした戦いでドアンを追い詰めていく。
やがてヒートサーベルの一撃がドアンザクの右腕を切り裂く。
ドアンは残った腕で投石をするも、MSにそんなものが効くはずもなく、いよいよ因縁にケリをつける時が来ると思われた。

だが、そんなエグバの背後からバルカンの弾幕が降り注ぐ。
驚くドアンとエグバの前に現れたのはRX-78-2ガンダム
灯台の光に照らされて、ビームサーベルを二刀流で構える「白い悪魔」は、ドアンが逃げ出した先に紡いだであった。
かつて緑の巨人をいくつも葬ってきた白い悪魔。今は追い詰められていく仲間を守るために現れたのだ。
エグバからすればなぜ白い悪魔がそこにいて、それどころかドアンの味方のかはわからないが、邪魔をされたエグバはそのままガンダムに挑みかかる。
しかしガンダムによって足場の悪い場所におびき寄せられ、不利な戦いを強いられた結果、崖で上半身を両断されて敗北。
憎しみに包まれたままエグバは敗れるのであった…。

小説版では乗機の撃破後も生きており、ドアンとの拳銃を使った決闘を行う。
だが彼の持っていたそれは空砲であり、その事に激昂したエグバは見せつけるように自決してやった
作中でダナンの無配慮なドアン信仰に激怒していたエグバだったが、もしかしたら「ククルス・ドアンの強さ」に一番惹かれていたのは彼であり、だからこそ戦いを捨てたのが許せなかったのかもしれない。


こうしてサザンクロス隊は一夜にして全滅。
だが前述の通り潜入班は文字通り命掛けで任務を達成しており、島のジャミングシステムが解除。
そしてそれの解除は即ち、地球上の大都市を攻撃する核ミサイルの発射シーケンスが実行されることを意味していた。
そう、これこそがマ・クベの(本意ではない)作戦であり、オデッサに歩を進めた連邦軍への制裁である…筈だった。

そのミサイルはドアンが夜な夜な、子供たちにすら「内緒の仕事」と称し細工をしていた。
ミサイルは打ち上げられても都市に向かわず、そのまま大気圏を突破し爆発。
まるでサザンクロスのような光を放ちながら消滅するのであった

それがドアンなりの「かつての仲間への決別の証」なのか「死者への手向け」なのかは、歴史は語らない。
しかし小説版ではドアンは彼らの墓を島に作ると述べているため、忘れられる事はないだろう。


【余談】

ウォルドがガンダムに踏み潰されるシーンは色々と衝撃的だったが、2023年現在の最新作機動戦士ガンダム 水星の魔女にて、再びガンダムで生身の人間を押し潰すという展開が発生した
しかし基本的に容赦しないアムロですら生身のウォルドを踏み潰すのに躊躇した*1のに、あちらの実行犯さっきまで命だったものの血溜まりを踏んでも気にせず、笑顔を浮かべた
その事で「アムロですら苦渋の決断だった」という謎のワードが踊ることとなった。
もう一つ余談だがウォルド役の上田燿司氏は水星の魔女でもケナンジ・アベリー役として登場している。





追記修正は、ドアンに憧れをいだいt編集するのは俺だ~!!

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最終更新:2024年04月15日 12:08

*1 アムロはTVアニメ版では生身のジオン兵をMSで殺さないように立ち回った場面もあり、逃がしても問題ない状況であれば見逃していたと思われる。