オレハマッテルゼ(競走馬)

登録日:2022/07/10 Sun 07:31:02
更新日:2024/02/03 Sat 17:59:30
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――1999年、エリザベス女王杯。

悲願のGI制覇を狙い、一頭の馬がゲートを飛び出した。

その馬の名は「エガオヲミセテ」。

これまでGIIの阪神牝馬特別、マイラーズカップを含む4勝を遂げていた馬だった。

懸命に走るも結果は3着...その後も走り続けるも勝つことはできず、復活を期して放牧に出されることになった。

...しかし、そこで悲劇が起こってしまう。


放牧先の山元トレーニングセンターで火災が発生。


発見された時には既に手遅れで、中にいた30頭のうち救出できたのは8頭だけ。犠牲となった馬の中にはエガオヲミセテの名前があった。

こうして、エガオヲミセテは遂にGIを取ることなく、志半ばで焼死してしまったのだった...。











...そしてこの火災の一ヶ月前の2000年1月16日。エガオヲミセテの全弟が産まれていた。

この馬こそ、本項で解説する「オレハマッテルゼ」である。




願うのは

報われることなど
数えるほどしかなくて
それでもコツコツと
走り続けるしかなくて

俺の願いはたったひとつ
もっともっと
喜ばせることができたなら

その時には笑顔をおくれよ
よくぞここまでと
祝福する言葉とともに

───JRA・名馬の肖像 2022年 高松宮記念より



オレハマッテルゼとは、日本の競走馬である。

血統

父は言わずとしれた大種牡馬サンデーサイレンス。母父はカリフォルニアンS等GI3勝を遂げたジャッジアンジェルーチ。母カーリーエンジェルはダイナカールを母に持っているため、本馬はエアグルーヴの甥、アドマイヤグルーヴやルーラーシップの従兄弟に当たる。先述の通りエガオヲミセテの全弟でもあり、名前こそ変わっているが実はかなりの良血なのである。

名前の由来は石原裕次郎主演の映画『俺は待ってるぜ』。
ちなみに小田切氏は同時期にデビューした馬に同じく石原裕次郎主演の映画から取り『アラシヲヨブオトコ』と命名しようとしたが去勢されてしまったので急遽「オカシナヤツ」という名前に変更した。男の命を取られた上におかしなやつ呼ばわりされた元アラシヲヨブオトコは泣いていい。その後アラシヲヨブオトコという名前はまた別の馬につけられた。
ローマ字スペルは「Orewa Matteruze」だが文字だけ見ると「俺、はまってるぜ(嵌まってるぜ)」とも読めるが、これに関しては命名者であり馬主の小田切有一も二通りの読みの可能性を認めている。

姉と同じ馬主である珍名馬で有名な小田切有一氏、同じ厩舎である音無秀孝厩舎の元、中央競馬でデビューした。

デビュー~オープン入りまで

デビューはかなり遅めな2003年5月25日の3歳未勝利戦。中京芝2000m。2番人気に推されるも13頭中11着と大敗。その後東京芝2000m、阪神芝2000mと負け続けるも4戦目の小倉芝2000mで勝利。
その後はしばらく芝1600m~2000mの競走を中心に善戦と時々の勝利を繰り返した。*1
そして2005年5月1日。晩春ステークスで1着となり、ついにオープン入りすることとなった。

路線変更まで

オープン入り初戦は京王杯スプリングカップ。5番人気とやや控えめな人気だったもののアサクサデンエンの2着に食い込む。勢いそのままに初のG1である安田記念に挑んだものの11着と惨敗。しかし休養明けのキャピタルステークスでは見事に勝利。オープン戦初勝利を飾り5歳シーズンを終えた。

続く2006年、始動戦である京都金杯では一番人気に推されたが9着。東京新聞杯からは晩春ステークス等で騎乗した柴田善臣騎手を背に2着、阪急杯では3着と勝ちきれない競馬が続いた。
そこで柴田騎手は距離は短い方がいいと考え、1200mである高松宮記念への出走を進言し、馬主とも意見が一致した為、出走が決定。初の1200m戦へ挑むことに。


「俺は舞ってるぜ」

迎えた高松宮記念、オレハマッテルゼは重賞未勝利+勝ちきれない戦績が影響したか4番人気に推される。当時のスプリント戦線は短距離王者のデュランダルがターフを去ったこともあり、新たな主役は誰だというような状態だった。現にこの高松宮記念も上位人気に推されたのは

  • CBC賞の勝ち方から本格化が来たかと期待されていたシンボリグラン...の割には前走のオーシャンステークスで3着と既に怪しい感じだったが。
  • ここまで馬券外となったレースが阪神牝馬ステークスのみと安定感たっぷりだが1200mは初挑戦である桜花賞、NHKマイルカップ勝ち馬ラインクラフト
  • ここまでの勝利がすべて1200mのレースである重賞3勝のシーイズトウショウ

という状態。一番人気のシンボリグランの単勝オッズが3.3倍、四番人気のオレハマッテルゼは9.3という混戦模様。誰が勝ってもおかしくないレースだった。

レースではギャラントアローが逃げ、オレハマッテルゼはそれを追随する馬を見るように5番手につける。直線に入ると間から抜け出し、ラインクラフトの追撃を振り切りクビ差で勝利を飾った。
鞍上の柴田騎手はキングヘイローの高松宮記念以来6年ぶり、馬主の小田切氏は21年ぶり、音無調教師にとっては初の、そして何より、無念の死を遂げた姉に捧げるG1制覇、陣営にとっては格別な勝利となった。

その後、オレハマッテルゼは京王杯スプリングカップにて逃げ切り勝ちを収めた。
新たな短距離王者の誕生だ...と思われていたのだがその後は精彩を欠き、2007年の京王杯スプリングカップの3着が最高着順だった。富士ステークス9着を最後に引退した。

通算成績 38戦9勝[9-8-5-16]

引退後

北海道浦河町のイーストスタッドにて種牡馬入り。初年度産駒であるハナズゴールがチューリップ賞を勝利するなど、サンデーサイレンスの後継候補としての道を歩み始めた矢先の2013年10月30日に重度の腰萎症のため死亡。
G1勝利については先述のハナズゴールがオーストラリアのオールエイジドハンデを勝利している。

種牡馬としては残念ながら微妙なところで終わってしまったが、姉の悲願をかわりに叶えたオレハマッテルゼ。きっと天国で姉に笑顔を見せたことだろう。

追記・修正、俺は待ってるぜ。

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最終更新:2024年02月03日 17:59

*1 オープン入りまで掲示板を外したのは最初の競走と2003年10月26日に行われた3歳上500万下8着の2回のみである。