牛飼娘(ゴブリンスレイヤー)

登録日:2022/07/25 (月) 17:34:35
更新日:2024/01/31 Wed 20:14:06
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すぐ支度するから、ごはんにしよっ


GA文庫の小説『ゴブリンスレイヤー』の登場人物で、ヒロインの一人。
CV:井口裕香
AA版配役:御影アキ(銀の匙


●目次

◆概要


物語の主人公、ゴブリンスレイヤーの2歳年下の幼馴染。
一巻時点で18歳。今作のヒロインの一人。

冒険者ではない一般人で、物語の舞台である辺境の街のギルド近くにある伯父の牧場で暮らしている。
明るく元気な性格の持ち主で、誰に対しても基本的には分け隔てなく接する、純朴で優しい少女。

若干天然でやや子供っぽい言動から実年齢より幼く見える一方、身体は本人が悩みの種とするほど「スタイルの良い年頃の女の子」に育っている。

ゴブリンスレイヤーが「今晩泊める」と連れてきた年頃の冒険者に危機感を持つことなく快く承諾したり*1
起き抜けで下着姿や掛け布を巻いただけという色々と無防備で刺激的な格好でゴブリンスレイヤーに挨拶することもある*2
ただ「見られている」という自覚があるのとないのとでは違うのか、着替え中の自身の部屋にいきなり入って来た時は、流石に身体を隠し、
「ノック、ノック大事!」と注意するなど、異性に肌を見られることに対する羞恥心はあるようだ。


牛飼娘の作るシチューはゴブリンスレイヤーの好物で、彼が帰ってくる時はよく作ってあげているだけでなく、
「帰ったら何が食べたい?」と牛飼娘に訊ねられると、ゴブリンスレイヤーは十中八九「シチューがいい」と答えている*3
このシチューは、幼い頃に食べる機会があったゴブリンスレイヤーの姉のレシピを、彼女が記憶を頼りに再現したものであり、
こういったところでも、牛飼娘の幼馴染に対する愛情が窺える。

幼馴染故に、些細な仕草や反応から人一倍分かりにくいゴブリンスレイヤーの内心や気遣いを正確に感じ取り、
その気持ちを慮りながら、時に穏やかに、時に明るく接する、ゴブリンスレイヤーの数少ない、そして一番の理解者である。
その幼馴染への理解度は、ゴブリンスレイヤー本人も「自分よりも自分のことを理解している」と内心で認めるほど。


傍目にも分かりやすく幼馴染であるゴブリンスレイヤーに恋心を抱いており、その自覚もあるため、
折を見てはデートに誘ったり、よく彼にスキンシップを図ったりと、ちょくちょくアピールしている。
彼に好意を寄せている他の同性に対するアンテナも張っており、知己の間柄では女神官と受付嬢を恋敵と認識しているが、
二人とは険悪な関係どころか仲が良く、特に自分よりは短くとも長くゴブリンスレイヤーを想っている受付嬢とは、
仲の良い姉妹のような友人関係を築いており、朴念仁な共通の想い人について互いに相談し合ったり、
収穫祭で両方とも彼とデートできるとなった際には、友人である受付嬢に気を遣うように別れ際に言ったりしている。

また、冒険者でないだけに、想い人と一緒に冒険が出来る女神官のことは羨ましくも思っているが、
健気な妹のように思う彼女のために、新年を想い人と過ごす絶好の機会をプレゼントしたりしている。
ちなみに、妖精弓手は当人も言う通りゴブリンスレイヤーに想いを寄せている節は見られないが、
上述のように女神官を送り出した際、不思議そうにする妖精弓手に「彼女にも(一緒に冒険できる以上)機会はあるから」と内緒にするなど、
牛飼娘(と受付嬢)は妖精弓手も恋敵になりかねないと思っているらしき描写も。

受付嬢とはゴブリンスレイヤーと関係がないところでも一緒にお茶をしたりと親しくしているが、
良いところの令嬢である受付嬢と庶民である自分の生まれの違いや、女性としての品格の差について引け目も感じており、
ひいてはこれが、牛飼娘が自分の女性としての魅力に自覚がない一端でもある。
尤も、受付嬢は受付嬢で、牛飼娘について似たような思いを抱いているので、やっぱり似た者同士である。


ゴブリンスレイヤーも、幼馴染である彼女の事を非常に大切に思っており、
「自分が死ねば彼女が悲しむ」ことが、彼の軽々には死ねない(命を捨てない)理由になっている。
同時に、彼女や受付嬢が自身を慕っていることに気付いてもいるのだが、
彼自身は自分が彼女たちから慕われるほど価値のある人間だとは思っていない上に、
ましてやゴブリンばかり殺している狂人という自覚もあるので、彼女たちの思慕に応えられる男とは思っていない様子。
(悪い意味で)奔放なゴブリンやその被害に遭った女性を何度も目撃していることもあり、彼の方は無意識に色恋沙汰を避けているのかもしれないが。


ゴブリンスレイヤーの主要登場人物の中では珍しい、立場的には冒険者でもギルド関係者でもない*4一般人であるが、
本作におけるヒロインの一人、かつ、ゴブリンスレイヤーの日常と帰る場所を象徴する登場人物ということもあり、
原作小説はもちろん、ドラマCD等でも同じく冒険者でないヒロインの一人である受付嬢と共に必ずと言っていいほど出番があるレギュラーキャラクター。
小説のエピローグは、冒険を終え、帰ってきたゴブリンスレイヤーが、彼を待つ牛飼娘のところに戻ってくる、
あるいは、彼が帰ってくる予定日には残業をしてでもギルドに居残っている受付嬢が待つ受付に彼が向かうというシチュエーションが多く、
牛飼娘が暖かいシチューと共に笑顔で彼を迎えたり、受付嬢が二人分の紅茶を淹れつつ、彼からの報告を笑顔で受けるところで終わるというのが定番の〆の一つ。


◆容姿


赤短髪の少女で、身長は166cm前後。
ともすれば年齢よりも幼く見えるあどけない顔立ちと、後述の通りのナイスバディが目を引く美少女。
彼女の伯父によると母と生き写しな程似ているといい、作中で母が着ていたドレスを問題なく着れたことから、彼女の発育の良さは親譲りと思われる。

髪型はショートだが、かつてはロングだった。
ショートの方が明るく見えると助言と貰いゴブリンスレイヤーにも好評だったことからショートが定番化した。

原作の挿絵や漫画、アニメで度々描写される裸体はほど良く引き締まった体にお尻と完璧な安産型。
中でも最も特徴的な部分は、やはりあの胸であろう。

スタイルが良い受付嬢のバストを遥かに凌ぐその胸は視覚的にもかなりのインパクトがあり、
牛飼娘よりもスタイルが良いキャラクターとなると、劇中では剣の乙女や槍使いの相棒たる魔女くらいである。

13歳時点でも「発育の良い体」「背と胸ばかり大きくて…」と言われているので、幼少の頃から発育が良かったらしい。
異性の視線を引き寄せ、同性からも羨望の眼差しを受けるバストは、18歳(→20歳)となった今もまだ育っており、
作中でも「また育って下着が合わなくなってる」と彼女自身が口にしている。
特に自身の発育にコンプレックスがある上、身長差の関係で並ぶと彼女の胸が顔の前に来る女神官は、
牛飼娘(の胸)を見ては真っ赤になり、同時にこんなスタイルに成りたいと切実な望みを抱いている。


ただ、当人は伯父から注意されるくらいに自身の容姿、特にスタイルの良さについては無頓着。
その大きな胸も、牧場仕事をしている彼女にとってはむしろ迷惑なものであり、太って見えるかもしれないという危機感を持っている上、
胸を含めた自分のスタイルが周囲の人間、特に異性にとってどれだけ刺激的に映るか全く意識しておらず、
想い人であることや気の置けない幼馴染ということもあってか、同年代の異性であるゴブリンスレイヤーと接する際にも、
上述の通り朝は裸も同然の姿で窓から乗り出して挨拶したり、装備点検中で兜を脱いだ彼の頭を、後ろから胸に抱き寄せたりしている。

自身の女性としての魅力についてもあまり自覚がなく、ある意味自分とは正反対の容姿の女神官を、健気な性格も含めて小柄で可愛いと評したり、
貴族出身故に「大人の女性」としての風格を備えた淑女たる受付嬢の所作に憧れたりしている。

とはいえ、当人の自覚はともかく、彼女も魅力的な美少女であるということは事実であり、
ともすれば子供っぽい天然な性格と、それと反比例するかのようなナイスバディの持ち主である牛飼娘は、
色々な意味で特に年頃の男子にとっては「危ない女の子」と言えよう。

◆牧場


辺境の街から数キロ離れたところにある牛飼娘の伯父が営む牧場。

牛や羊の搾乳で経営しているようだが、かなりの大きさと家畜の数がいる牧場らしく、
また、ドラマCDでのシロツメクサ(クローバー)の話題で「豚のゴハンだけどね」と彼女が話す場面から察すると、
搾乳用の牛や羊の他に、食肉用の豚なども飼育しており、ベーコンや燻製肉といった加工品も扱うようだ。

これだけの規模を伯父は独立農民(ヨーマン)として始めたらしく、「彼が拓いた、彼の土地」と明言されている。

ゴブリンスレイヤーは掛け値なしで良い牧場と評価し、牧場に遺恨を持った酒商の息子が「良い牧場」と称賛するなど、他者から見ても一線級で、伯父も確かな自負と自信を持つ。

また、ここで取れた製品は評判が良く、主に町のギルドや酒場、レストランに卸しているためか、
ゴブリンに狙われているという情報がもたらされた時に「ゴブリン一匹討伐で金貨1枚」という破格の報酬が出るぐらいに非常に重要な存在。

ただ、牧場主は加齢の影響もあって姪と自分の二人では経営が難しくなってきていることを実感しており、
依頼がない時には下宿人のゴブリンスレイヤーも牧場仕事を手伝ってくれるとはいえ、
それでも品物を街まで送り届け、放牧が終わり牛舎に家畜を戻す頃には夕方になってしまうほどの忙しさに、身体がそろそろ悲鳴を上げ始めているようだ。
そのため、牧場で新たに人を雇うことも考え始めたようだが、これについては慎重になっている様子で、
姪ではあるが娘のように可愛がっている年頃の牛飼娘が居る場に他人、ましてや男性を入れるのはどうかという親心も影響していると思われる。

ちなみに、ゴブリンスレイヤーが水の都で仕入れてきた知識を元に、都会で流行りの氷菓子(アイスクリン)の製造・販売も始めたが、
ドラマCDでこれを買いに来た勇者の弁では、それこそ都会以外ではアイスクリンを取り扱う店・牧場はほとんどないといい、
そういった物珍しさもあってか、アイスクリンは牧場の新たな名物(収入源)となりつつあるようだ。

◆過去


ゴブリンスレイヤーと同じ村の出身で、彼とその姉とは両親共々家族ぐるみで付き合いがあったようだが、
10年前、彼女が伯父の牧場に遊びに行っている間に、故郷の村がゴブリンに襲撃され、壊滅。
彼女の両親も、村や家と共にゴブリンに襲われ、帰らぬ人となった*5

彼女自身は当時村にいなかったので被害を受けずに済んだが、両親の死はもちろん、
出立の際に喧嘩して仲直りできなかった幼馴染(ゴブリンスレイヤー)や彼の姉もおそらく死んだと思われたことのショックで、
孤児となった牛飼娘は伯父と彼の牧場に引き取られることとなったが、5年ほどは引きこもりも同然となっていた。

しかし13歳になった頃、偶然ゴブリンスレイヤーと再会。
ただでさえ5年振り、かつ死んだと思われていた上、相手が鉄兜を被って顔も見えない状態でありながら、
道ですれ違った直後、直感で「幼馴染の彼に違いない」と見抜いた彼女は、必死に彼に声を掛けた。

果たして死んだと思われていた幼馴染その人であると確認が取れた後は、
かつての頃とはあまりにもいろいろと変わっていたゴブリンスレイヤーの言動に困惑もしつつ、
伯父に一生懸命頼んで決まった宿がない彼を牧場に下宿させたことを皮切りに、彼の世話を焼くようになる。

同時に、彼が冒険者業を営んでいると知って、彼と少しでも関係を持ちたいと思い、
冒険者ギルドと関わる食料配達の仕事を引き受けるなどもし始めたことで、
かつての幼馴染との再会がきっかけとなり、牛飼娘は引きこもり状態から脱することになった。

そして、本編開始直後は既に引きこもりだった頃の暗い雰囲気など微塵もなく、
伯父とも本当の親子のような関係になり、彼の牧場全体の仕事を手伝うようになっている。
まさしく、幼馴染への想いが彼女を変えたわけである。

ちなみに引き籠り当時は、髪を長く伸ばして右目を隠していたロングヘア―だったが、
知り合った魔女のアドバイスで、現在の髪型となった。


◆作中の活躍


物語開始時点で既にゴブリンスレイヤーが牧場に下宿して5年ほどが経過しており、
彼が牧場にいる時は、牧場の仕事を手伝ってもらったり、食事を作ったり耳かきをしたりとよく一緒に居り、
傍目には(ゴブリンスレイヤーの)彼女や恋人を通り越して(新婚の)奥さんではないかと誤解されかねない距離感で接している。

ただ、ゴブリンスレイヤーはある理由から、彼女からのスキンシップなどは受け入れつつも、ある程度距離を置いて付き合おうとしており、
牛飼娘も幼馴染の彼が悪意や拒絶という理由からそうしているわけではないと感じつつも、その様子に心を痛めていた。

そんな中、彼女の住む牧場がゴブリンロード率いるゴブリンの大軍が狙われるという最悪の事態が発生。
牛飼娘はその知らせを持ってきた、『小鬼殺し』の異名を持つ幼馴染なら対処してくれるのではないかと考えていたが、
彼は彼女の予想に反して弱々しく首を横に振り、「無理だ」と力なく答えた。

彼曰く、洞窟などの狭い場所ならば、今回の群れと同規模と思しき百匹以上が相手でも、牛飼娘が予想した通り勝てるというが、
牧場、つまり障害物がないだだっ広い平野では自分一人ではただでさえ対処が難しい上、
今回の群れを率いているゴブリンロードはまさに「ゴブリンたちの王」であり、普通の群れとは脅威度も桁違いに高く、
そんな悪条件では、『小鬼殺し』たる自分でも対処しきれないという。

その過酷な現状を伝えられた後、幼馴染の彼は続けて牛飼娘と牧場主に牧場から逃げるように提案するが、
牛飼娘は彼が自分たちの事を思って提案してくれていると理解しつつも、それを断った。

故郷を焼かれた牛飼娘にとって、伯父の牧場はただ一つ残された彼女の居場所であると同時に、
同じように故郷を焼かれたゴブリンスレイヤーが帰ってこれる唯一の場所であり、
故にここが無くなれば、自分と伯父の居場所も、大切な幼馴染が帰ってくる場所も無くなってしまうとして、
涙ながらに牧場から逃げることを拒否し、留まることを告げた。

ゴブリン共の手に落ちれば、すぐに殺される方が遥かにマシな責め苦に晒されると警告されても、牛飼娘の意志は変わらなかった。
自分の手の届かないところで大切な人が死んでしまうことの辛さ、遺体のない葬式の虚しさ、
大切な人と帰れる場所を失ってしまう恐怖を誰よりも知る彼女は、もう二度とそれらを味わいたくなかったのである。

彼女の強い意思を知ったゴブリンスレイヤーは、彼女の意思を汲み取り、
無理矢理彼女と伯父を避難させることはせず、彼なりに牧場を守るために戦うことを決意する。

直後、ゴブリンスレイヤーが他の冒険者に応援を依頼し、ギルドもこれを後押ししたことで、
辺境の街のギルドに所属する冒険者の大半が、牧場をゴブリンの手から守るために決起。
彼らによってゴブリンの大軍は殲滅され、頭目たるゴブリンロードも『小鬼殺し』とその相棒の冒険者によって討ち取られた。
牛飼娘とその伯父、そして幼馴染の青年の居場所である牧場は、冒険者たちによって守られたのである。

そして、満身創痍となって『家』に帰ってきたゴブリンスレイヤーを、牛飼娘は優しく出迎える。

「ただいま」

「おかえり」

長い年月を掛けて、漸く彼女の元に彼が帰って来た瞬間である。
そして祝勝会が開かれる中、彼の冒険者になりたいという願いを聞き、
彼女も嬉しそうに「なれるよ」と励ますのだった。


この戦いを機に、今まで変わり者として避けられていたゴブリンスレイヤーはギルドの冒険者たちから気軽に声をかけられるようになり、仲が良い友達が増えた。
受付嬢とは本編開始前から仲が良かったが、ゴブリンスレイヤーのパーティーとも親密になり、
彼女より年少の新人冒険者にも気さくに応じるように。
特に同じ女性同士ということで、女神官や妖精弓手とは非常に仲が良く、
女神官には姉のように接し、妖精弓手は自身の姉の結婚式に牛飼娘を招待する程である。

19歳となった時には、その誕生日にゴブリンスレイヤーから祝いのプレゼントを渡される一幕が描かれるが、プレゼントはなんと「現金」。*6
朴訥な彼らしいと言えば彼らしいとはいえ、女の子へのプレゼントとしては下の下ともいえるそれに、
流石の牛飼娘も様々な感情が綯交ぜになったが、最終的に「仕方ない」と苦笑いして、
次のプレゼントには、「彼が選ぶ」ことを絶対条件とするプレゼントをお願いした。
ゴブリンスレイヤーもこのことを反省し、次のプレゼントはドラゴンとの闘いで剥がれ落ちた赤い鱗を渡したらしい。ちなみにその鱗は紐を取り付けて大きめのペンダントとして身に付けている模様。


時間はやや前後するが、水の都でのゴブリンスレイヤーによるゴブリン退治の後、
辺境の街での収穫祭が近くなった際には、牛飼娘は一大決心して当日にゴブリンスレイヤーを誘おうとしていたが、
彼女よりも一足先に勇気を振り絞った受付嬢により、声を掛けた時には既に彼女に当日の午後を取られてしまっていた。
牛飼娘は先手を取られた落胆を覚えつつ、勇気を振り絞った彼女に取られたら仕方ないと諦め、
冗談半分に「ならせめて午前中は自分と回ってほしい」と口にすると、ゴブリンスレイヤーはあっさりと承諾。
本当にいいのかと念押ししても彼の答えは変わらず、牛飼娘は大喜びで当日を待つことに。

そして迎えた祭り当日には、伯父が厚意で用意してくれた、かつて母が着ていたドレスを身に付け、
収穫祭で賑々しい辺境の街を、いつも通り甲冑姿の幼馴染と一緒に見て回る牛飼娘。
出店を回り、遊んだり食べ歩きしたり、幼馴染の年下の同業者とふれ合ったりと楽しい時間を過ごす彼女だが、
何よりも嬉しかったのは、「かつて牛飼娘が欲しがっていた」という思い出を元に、彼が出店で購入してくれた銀細工のおもちゃの指輪。
「それは子供の頃の話だよ」と言いつつも、「今でも好き」と指輪を受け取った牛飼娘は、
少し後、銀玉投げの出店を見ている中、さも今思いついたかのように「せっかくだから付けてよ」と彼にねだる。
「どこにだ」という問いに流石に「左手の薬指」と返すことは出来なかったものの、
それでも右手の薬指に指輪を付けてもらった牛飼娘は、幸せそうな満面の笑みを浮かべた。


それからしばらくして、冬の時期にゴブリンスレイヤーと一緒に隣町まで積み荷を送り届けようと出かけた際には、
牧場戦以来となる、ゴブリンどもの魔の手が彼女に襲い掛かる危機が訪れた。

配達の最中、降り積もった雪の中から突如ゴブリンどもが彼女とゴブリンスレイヤーが乗る馬車を奇襲し、
ゴブリンスレイヤーは幼馴染を攻撃から守るためにゴブリンを迎撃するが、この判断が裏目に出た。
奇襲に構わず、即座に馬に鞭をくれて猛スピードでゴブリンどもの包囲網を突破するのが最適解だったのだが、
最初の奇襲の際、冒険者でない牛飼娘を攻撃から咄嗟に庇ったことで、その機会が永遠に失われてしまったのだ。

次善の策として、ゴブリンスレイヤーは包囲網の一角を、牛飼い娘を庇いつつ突破し、
目先の欲にすぐ目が眩むゴブリンどもが馬や積み荷の略奪に夢中になっている隙に訪問予定の村に向かった。
しかし、村の近くにゴブリンどもが我が物顔で陣取っている時点でゴブリンスレイヤーたちは薄々気付いていたが、
着いてみるとやはり村には村人の姿などなく、少し前に廃村となったことが窺えた。
ゴブリンスレイヤーと牛飼娘は、孤立無援の状態に置かれてしまったのだ。

さらに悪いことに、先のゴブリンどもの襲撃は偶発的遭遇ではなく、ゴブリンスレイヤーに悪意を持つ者が仕向けたものだった。
その者とは、ゴブリンスレイヤーが妖精弓手たちとの初めてのゴブリン退治で倒したオーガの弟。
かつて自分の兄を殺した仇がここに来るという情報を得たそのオーガは、兄の仇を討つためにゴブリンを率いて襲撃しに来たのである。
オーガの敵意は凄まじく、廃村に逃げ込んだゴブリンスレイヤーとその連れ(牛飼娘)を探すためにゴブリンどもに見回りをさせ、
それでも成果が上がらないとなると、予め叩きのめし、捕虜としていた二人の女性の冒険者を人質とし、仇敵を隠れ場所から誘き出そうとした。

人質を見殺しにするわけにもいかず、また、例え逃げ出しても見つかれば牛飼娘の命まで危ないと判断したゴブリンスレイヤーは、
自分の策のために牛飼娘に大きな氷の欠片をいくつか用意し、それを彼女に鏡のように磨いてもらった後、
「自分とオーガたちが戦闘に入ったら村を脱出しろ」と告げた。奴らの注意が自分に向いているうちに逃げろと。
牛飼娘は事情を報せ、助けを呼ぶためにも、彼の指示に従うことを決め、脱出。
その後、オーガとゴブリンどもがどうなったかは、最早語る必要はないだろう。
『小鬼殺し』とその一党が揃って、片付けられないゴブリン退治などまずないのだから。

牛飼娘もまた脱出に成功し、無事に辺境の街に辿り着いた。
心配していた伯父や受付嬢に迎えられた後、偶然合流した仲間と共に帰ってきたゴブリンスレイヤーを彼女が出迎え、
冬の日に牛飼娘に襲い掛かった悪夢のような出来事は終わりを告げ、いつもの日常が戻った。

それから数日後、奇妙な圃人の老人が牧場を訪ねてくる。
彼はいきなり訳知り顔で、「変な冒険者がここにいるだろ」と牛飼娘に尋ねる。
「変な冒険者」が誰の事を指しているのか薄々理解しつつも、
その冒険者を、まるで罵倒しているかのように散々な言葉で表現することに反感を持った牛飼娘は、
「そんな冒険者はいない」と思わず強い語気で返し、彼が目を見開いたのを見て取って謝罪する。
しかしその人は怒った様子を見せないどころか、「(その冒険者と)よろしくやってんのか?」と下卑た質問を重ね、
「違います」と返した自分に、知り合いの魔法使いの言葉だという、
「お前の中にはお前の知らない美しさがある」「それは大冒険よりも大事なことだ」との言葉を送ると、
「いいものが見れた」と満足したように、老人は風のように去っていった。

牛飼娘はあまりにもいきなり現れ、去っていった得体のしれない老人にしばし困惑していたが、
すぐに気を取り直し、いつも通りに夕飯のシチューを作り始める。

なんといっても今日は、彼女にとって「世界で一番格好良い冒険者」が帰ってくる日。
やがて日が傾いた頃、窓からいつもの姿の彼が帰ってくるのを見て取った牛飼い娘は、
彼が扉を開いて入ってきた瞬間、いつものように笑顔を向ける。


「おかえりなさい!」


牛飼娘がゴブリンスレイヤーとなった幼馴染と再会して五年以上。
今日も今日とて、牛飼娘は牧場で働きつつ、ゴブリンスレイヤーの帰りを待っている。
たまに受付嬢や女神官、妖精弓手といった友人たちとお茶をしたり、一緒に出掛けたりもしながら。

そして、牛飼娘がゴブリンスレイヤーと再会して変わったように、
ゴブリンスレイヤーもまた、女神官とパーティを組んだその日から、ゆっくりと変わってきている。

ソロの時はゴブリン退治ばかりを繰り返していた彼も、仲間や友人といった知己が増え、
彼らと共にゴブリン退治の他にも様々な経験や冒険をし、夢だった『冒険者』に近付きつつある。

そんな彼の『冒険』の話を楽しそうに聞き、時にはその『冒険』のお土産を貰って喜びながら、
彼女は今日も、疲れて帰ってきた彼に美味しいシチューを振る舞うのだ。

◆余談


上記にも書かれているが、AA版では銀の匙のヒロインである御影アキが配役されている。
ただAA数の都合から一部にアイマスの及川雫のAAも使用されている。
まあやる夫スレではよくあることである。(というか見た目からして及川雫にしか見えない……)



……ありがとね

何がだ

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最終更新:2024年01月31日 20:14

*1 彼女の伯父である牧場主は当然反対したが、ゴブリンスレイヤーに寝ずの番をするとまで言われ、渋々承諾した

*2 対するゴブリンスレイヤーはその格好に言及することなく、普段と変わらない態度で応じるが、挨拶を返すとすぐに彼女から視線を逸らすなどして配慮はしている。

*3 冬場はもちろん、暖かくなってきてもリクエストするなど筋金入りで、牛飼娘も笑いながら「好きだねぇ、それ」とコメントしたことも。

*4 牧場で作った食品等を定期的にギルドに納入している出入り業者、という意味では関係者と言えるかもしれない。

*5 姉の自己犠牲もあって生き残ったゴブリンスレイヤーは、隣人であった彼らの遺体を目撃しているが、どちらもボロ布のように成り果てた姿で柵に吊るされているという、なんとも傷ましい姿で晒されていた。

*6 このことは後に槍使いの耳にも届いていた。恐らく牛飼娘→受付嬢→魔女→槍使いと伝わったのだろう。