キング・オブ・ザ・モンスターズ

登録日:2022/08/23 Tue 12:10:33
更新日:2023/04/25 Tue 20:13:01
所要時間:約 8 分で読めます





巨大決戦、日本直撃。





KING

OF THE

MONSTERS


『キング・オブ・ザ・モンスターズ』は1991年にSNKがリリースしたアーケードゲーム。
ジャンルは対戦アクション。容量は55メガビット。
名前が似ているがゴジラ映画ではないのでご注意を。
まあ、後述の通り全くの無関係というわけでもないが。
ちなみにSNKつながりのザ・キング・オブ・ファイターズとも似た名前だが、
こっちのほうがKOFシリーズどころか餓狼伝説1でKOF大会の名が出たより先。
(同じ91年だがこっちが2月、餓狼1が11月稼働開始)

+ 目次


◆概要

本作のテーマはずばり、怪獣プロレス
怪獣同士の取っ組み合いがメインの映画のことをそう呼んだりもするが、本作に至っては文字通りの意味。
つまりどういうことかと言うと、怪獣を操作し、大都市のど真ん中をリングにしてプロレスで勝負を行うということである。
うん、深く考えたら負けだ。

当時はヒーローが怪獣を倒す内容のゲーム*1は発表されていたものの、
プレイヤー自身が怪獣となって暴れ回るゲームというのは非常に斬新であり、それだけでも目を引くゲームだった。
それに加えてSNKらしい凝った演出や秀逸なBGM、単純明快な内容から多くのファンを獲得。
同年の末に発売された餓狼伝説と共にSNKが躍進する起爆剤の一つとも言える作品となった。
また、当時のアーケードゲームは非常に高難易度なゲーム、有り体に言えば連コインが前提となっているような財布に優しくないゲームが多い中、
本作はコツを掴めばワンコインクリアも充分に可能な難易度であったことも特徴。*2
メガドライブSFCにも移植され、容量の問題から音響や演出がしょぼくなっていたり一部のモンスターやステージが削除されているものの、
それ以外は概ね再現されているためプレイに支障はない。
特にスーファミ版はタカラが移植しているが、餓狼伝説なんかと比べると遥かに遊べる出来
今ならVCやアーケードアーカイブスなどでオリジナル版が配信されているため、プレイは容易。

……が、実際にプレイしてみるとわかるものの、ここまで書いてきたバカゲーっぽい概要に対してゲーム本編の中身は非常にシリアスで重苦しい雰囲気が漂っている。
前述の通り本作に登場するのは紛うことなき怪獣であり、その全てが人類など歯牙にもかけない凶暴な破壊者として描かれている。
怪獣映画には人類と共存、あるいは味方をする善玉怪獣が存在するものだが本作においてそのような役割を持つものは皆無。
まさに全員が制御など不可能なモンスターなのだ。
己の欲望や破壊衝動を満たすために暴れ回り、生存圏を汚染していく怪獣たち*3に対して人類ができることは悲鳴を上げて逃げ回るだけ。
圧倒的な力の前に人間はただ蹂躙されるしかないことを端的に表すゲームオーバー画面の一枚絵などはプレイヤーの心に大きな印象を残したことだろう*4


◆ストーリー

人類の手によって地球は汚染され続け、地上には有害な紫外線、宇宙線が降り注ぎはじめた。そして、異常事態はひそかに進行しつつあった——。
1996年、想像を絶する凶悪モンスター達が世界各所から一斉に出現。
モンスター同士が出会えばさらに事態は最悪に。戦車を踏みつぶし、戦闘機を投げとばし、都市は無残に崩れ落ちてゆく。
破壊の限りをつくす巨大異色格闘技、いま地響きをあげながら日本に迫る。

◆ルール

プレイヤーは6体の怪獣の中から一体を選択し、日本各地を転戦しながら他の怪獣を撃破して頂点を目指す。
同キャラ対戦を含む勝負を6戦行い、全員倒すと敵の体力が上昇した二週目に突入。
6×2の12ステージを勝ち抜けば晴れてゲームクリア。
2Pとの同時プレイも可能であり、その場合は二対二のタッグマッチでの対決となる。
各キャラクターは共通動作としてパンチ、キック、ダッシュ、ジャンプや投げ技が使用可能であり、さらに全キャラが一つずつ固有の飛び道具を持つ。
ステージの端には赤い電流エリアが設置され、これに当たるとダメージこそないが電撃で痺れたうえでステージに押し戻されるなど、
プロレスで言うロープの役割を果たしている。
画面上部には体力ゲージが表示され、相手から攻撃を受けるとゲージが減少していく。
体力ゲージが減るとダウンからの復帰が遅くなったり、グロッキーする時間が延びたりするものの、怪獣の生命力はすごくゼロになっても倒されることはない。
決着をつける方法はただ一つ。ダウンしている相手をピンフォールして3カウントを取ること
フォールされた側はボタン連打をすれば押し返すことができるがそれにも限度があり、3回以上のしかかられるとまず跳ね返せない。
また、特定の投げ技を決めるとパワーアップアイテムが出現し、10個取得することでキャラの色が変わり二段階までパワーアップができる。
戦いの舞台となる都市には高層ビルなどが建ち並ぶが、これらを投げつけての攻撃も可能。
さらに定期的に戦闘機や戦車なども怪獣たちへ攻撃を仕掛けてくるメーサー殺獣光線車とサンダーバード2号の奇跡のコラボ。さほどダメージはないものの攻撃を受けると隙ができるため少々厄介。

戦いの舞台となるステージは東京・岡山・神戸・京都・大阪・広島の全6都市。
中国・近畿地方に偏り過ぎじゃね?とツッコむのは誰もが通る道。まあ関西のメーカーだし
どの都市も東京タワーや金閣寺、大阪城といったランドマークが忠実に再現され、なおかつそれらを破壊することが可能。
というよりこのゲームは街を破壊すると得点がアップするため大概は無惨に壊される運命にある。
ただし原爆ドームは位置の関係で破壊不可能。さすがに一歩間違えれば封印作品にされちゃうので……

◆登場キャラクター


●GEON −ジオン−

大地が怒りに震える!
低血圧のため目覚めの機嫌は最悪だ!

ロシアの地底深くで眠りについていたが、環境破壊による異常気象により目覚めた。

・恐竜型モンスター
・身長……45m
・体重……4万t

本作に登場するモンスターの一体。宇宙世紀とは関係ない。
見た目は二足歩行する肉食恐竜そのもの……というか炎を吐くところといい、背びれといい、かなり言い訳のしにくいデザインをしている。
一応、頭部にツノが生えているなどの違いもあるがそれはそれで似たやつがいたり。
まあSNKだし。というか、当時はわりと大らかだったのでSNKでなくとも露骨なパロディキャラなどはあまり珍しくもない。
考古学博士曰く、元々は白亜紀の肉食恐竜だったのではないかと推測されている。
怪力に加え、長い尻尾を使っての格闘戦も得意。
最大の特徴は倒した怪獣を捕食することにより、細胞を取り込むと新たな能力を得て進化していく点。
つまり、未だ成長途上。
ダッシュ攻撃ではSUMOUパワーを感じさせるスーパー頭突きを披露してくれる。
必殺技は口から吐き出す高熱火炎。パワーアップすると巨大な火球へと変貌する。見た目はゴジラなのに技はガメラとはこれ如何に
もしかしたらゴジラではなく、マグマ光線を吐いて角がある帰マンのアーストロンのほうがイメージ元かもしれない。
こいつの登場回は「怪獣総進撃」という、世界各地から怪獣が次々復活していくという話だったし。

●WOO −ウー−

自然の恩恵を忘れた人類!
中国三千年の歴史が暴走する。

中国でひっそりと暮らしていたが、森林破壊により凶暴化。スピード、パワーのバランスは絶妙の上、電撃弾を発射する。

・巨大猿人型モンスター
・身長……43m
・体重……2万2千t

本作に登場するモンスターの一体。巨大なゴリラのような姿をした怪獣
ウルトラシリーズにも同名の伝説怪獣がいて猿っぽいが冷気要素皆無なのでおそらく関連はない。
ピンフォール時やエンディングではドラミングを披露したりとこれでもかというほどゴリラ成分たっぷり。
が、いかんせん見た目が地味過ぎたからか家庭用に移植された際は削除されるという憂き目に合うなどちょっと不遇。
専用BGM『ハレマー教聖歌(狂気の祈り)』は民族音楽っぽくて少し怖い。
ダッシュ攻撃は尻を突き出してのヒップアタック。
必殺技は両手から放つ電撃弾。パワーアップすると弾が巨大化する。
なんでゴリラがこんなの撃つの?と思うかもしれないが、元ネタは映画キングコング対ゴジラでコングが帯電体質になったことからだろう。


●POISON GHOST −ポイズンゴースト−

汚された海が激しく荒れる!
凄まじい悪臭のため鼻はない。

日本近海のヘドロが怪物化。スライム状の体から伸びてくるパンチは敵を直接攻撃し、ダメージも大きい。

・スライム状モンスター
・身長……44m
・体重……5万t

本作に登場するモンスターの一体。公害によって垂れ流されたヘドロが怪物となったもの。
このゲームの怪獣たちが目覚めた原因として環境破壊が挙げられるが、ポイズンゴーストはそれによって生み出された最たるもの。
ジオンは平気で噛みついているが大丈夫だろうか
ヘドロの怪物という設定だが、この手の怪獣によくある不定形や軟体っぽさがなく「全身ヘドロまみれになった巨人」といったような、
割と体格がしっかりしている構造で神経や脳も普通に存在している等、どうにも謎が多い。
ウー同様に見た目が地味だったからか、移植版では二匹仲良く削除されている。
ダッシュ攻撃はスライディング。攻撃に入るまでに一瞬間があるため少々使いにくい。
必殺技は腕を伸ばしてのパンチ。パワーアップすると伸ばした手の平が巨大化する。


●BEETLE MANIA −ビートルマニア−


細菌に犯された密林!
虫けらのように人々は逃げまどう。

もとはアマゾン奥地の昆虫と推測されるが、地球外生命体との噂も。ミサイルのように発射する角と身軽さには要注意。

・昆虫型モンスター
・身長……46m
・体重……2万5千t

本作に登場するモンスターの一体。カブトムシが人型になったような姿をしている。
ただしドリルはない
SFC版の説明書によると未開のアマゾン奥地に棲息していたカブトムシが突然変異で巨大なモンスターとなった模様。
が、カブトムシ故に知能は全く無く、生まれ故郷の森林すらも破壊したとのこと。
背中の羽根を使って身軽に飛び回れるらしいものの、作中ではピンフォール時にバタバタと羽ばたかせる以外の使用機会はない。
ダッシュ攻撃はツノを使ってのすくい上げ。他のモンスターとは違い、相手を後ろに放り投げてしまう。
必殺技はその自慢のツノをミサイルのように発射する。
いいのかよ!?と思うかもしれないが飛ばした瞬間から新しいのが生えてくるのでご安心を。
パワーアップすると飛ばす角が変形し、ものすごく巨大化する。


●ROCKY −ロッキー−

古代人の現代文明に対する警告か!
ロック系の音楽を好む。

エジプトのスフィンクスから現れた謎の生命体。ずばぬけたパワーを持ち体内の岩石を武器として発射する

・岩石生命体
・身長……49m
・体重……6万1千t

本作に登場するモンスターの一体。全身が硬い岩石で構成された人型の怪物。
元ネタはウルトラQに登場するゴルゴス、あるいは見た目的にキン肉マンに登場するイワオあたりだろうか。
「エイドリアーン!!」とは叫ばない。
エジプトから突如として現れた謎の怪獣。
岩でできていることからわかるように怪力と高い防御力を誇り、身長も全モンスターの中で一番高い。
また、理由は謎だが8ビートの音楽を好み、SFC版の説明書によればヨロコビのダンスはロックのノリのつもり……らしい。
岩だからロックですか
ダッシュ攻撃はプロレスラー顔負けのラリアット。持続は長いが、隙も結構大きい。
必殺技は腹部の穴から発射する巨大な岩石。パワーアップすると岩がデカくなる。


●ASTRO GUY −アストロガイ−

核戦争を望む黒い陰謀!
欲望が老人に凶器の肉体を与えた。

放射能の研究で「放射能に耐えうる体」を目標とした異端の老化学者が、最終段階で自らを使い人体実験を行った結果、巨大なモンスターと化した。

人間型モンスター(?)
身長……48m
体重……4万t

本作に登場するモンスターの一体。羽のような装飾がついた覆面を被ったたくましい筋骨隆々の巨大な男性の姿をしている。
これまでに登場した怪獣たちの中でも一際人間に近い姿をしており、胸には『A』のマークが刻まれているなど、見た目は完全にヒーローのそれ。
専用BGM『醜きヒーロー』も重苦しい曲調が多い本作のBGMの中ではとりわけ軽快でどことなくヒーローソングっぽい。
初めてこのゲームをプレイした人の大半はアストロガイを使用すると断言できるほど存在感はバツグン。
家庭用移植版でも堂々と中央に鎮座する姿はまさに正義の味方
……なのだが、このゲームにそんな都合のいいキャラクターが存在するわけはなく、こいつもれっきとしたモンスターである。
見た目から勘違いされやすいが異形の力を持ったヒーローとかではなく掛け値なしの怪物。
ダッシュ攻撃はドロップキック。隙が少なく使いやすい。
必殺技は体内で高周波を生み出し、両手をクロスさせて放つ光線。パワーアップすると光線がめちゃくちゃ太くなる。




◆余談

本作では明言されていないが、次回作の内容からすると戦いを勝ち残ったのはジオンではないかと推測されている。
次回作では登場するモンスターの数が半分に減っているが、前述の通りジオンはモンスターを捕食して新たな細胞を得ることで進化していくため、
登場しなかったモンスターはジオンに倒された後に食い殺された可能性が高い。
ウーは本作で瀕死となって秘密裏に日本政府に収容されたとの記述があるが、再利用されたのが脳だけだったことからジオンの手で満身創痍にされたと思われる。
そしてアストロガイは戦いなどお構いなしに各地の原発を襲って放射能を得ていた模様。
他のモンスターを倒して、というよりも自分の食欲を満たすために行動していたため結果的に生き残ったようだ。

ストーリーの項目でも触れている通り今作は1996年の日本というリリースした時期からすると近未来の世界が舞台なのだが、
よりにもよって現実世界の1995年早々にかの阪神・淡路大震災が発生してしまい、
本作のステージにもなっている神戸が本当に壊滅的な被害を受けるなど笑えない事態になってしまった。
一説によるとこの震災によって予定されていたネオジオCDへの移植が中止になってしまったとのこと。
まあその時期に『神戸の都市を破壊できる』ゲームを発売なんかしたら不謹慎ゲームの謗りを受けるのは免れないし…

メインのサウンドクリエイターとしてBGMを作曲したのは「でんちゅう」「た~くん」などの別名義を持つ田中敬一氏。
SNKが誇るサウンドチーム『SNK新世界楽曲雑技団』として様々な名曲*8を世に生み出し、
豪血寺一族ではある意味ゲームそのものよりも有名なレッツゴー!陰陽師を作詞・作曲したことでも有名。




多くの人命が犠牲となり、建物が破壊・汚染され、後に『大災厄』と称される日本を戦場としたモンスター同士のサバイバルの果てに3体のモンスターが生き残った。

新たな地球の支配者は彼らになると誰もが疑わなかった。

しかし、3年後……





追記・修正はモンスターの王になってからお願いします。

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最終更新:2023年04月25日 20:13

*1 同年にはまさにその典型とも言える『ウルトラマン』がSFCと共にアーケードでリリースされている

*2 あくまでも1991年の他のゲームと比較すればの話であり、令和の現代からすると充分難しい部類の作品だが

*3 ステージクリア時に「被害報告」として破壊率・汚染率・死傷者が表示される

*4 生々しすぎたせいか家庭用移植版だと多少マイルドなイラストになっている

*5 2Pプレイ時は二匹

*6 勝ち残ったモンスターの名前が読み上げられる

*7 家庭用移植版だとキャスターは潰されずに逃げる

*8 ギース・ハワードの『ギースにしょうゆ』やライデンの『勇者雷電』等他多数