アルゴス(ギリシャ神話)

登録日:2022/12/30 Fri 21:25:00
更新日:2023/07/12 Wed 20:23:06
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アルゴス(:argos)とはギリシャ神話に登場する巨人である。
また、アルゴナウタイ*1の乗る船を作った船大工及びそれに由来する都市の名前でもある。

巨人のアルゴスの方がよく知られているため、当項目では巨人のアルゴスについて解説する。


▽目次

概要

ギリシャ神話にはティターン神族やギガス、アンタイオスなどと言った多種多様な巨人が登場するが、
彼の場合は「全身に目玉が存在する」という他に類を見ないかなりグロテスクな姿である
またこのことから目を交代交代で眠らせることで後述するイレギュラーな事態を除いて完全に眠ることがなく、全く隙がなかったと言われている。
伝承によればテュポーンの妻にして怪物たちの母であるエキドナや、アルカディア地方で暴れていた牛の魔物を退治したという。
異説として目玉だらけではなく「複数の頭部があった」「顔にある目のほかに背中にも目」更には「顔に4つの目があった」とも言われているが、交互に眠らせていたという意味ではどれも同じである。


活躍

テュポーン亡き後ペルポネーソスという土地で暴れていたエキドナを討ち取るという衝撃的なデビューを果たす。
次いでアルカディア地方で暴れていた雄牛の魔物を討ち取るという武勇を経て神々の配下となる。

そんな彼が本格的に活躍するのが全能の神ゼウスイオの一件である。
性懲りもなく妻であるヘラを祀る神殿に仕えていたイオという名の美女にゼウスは手を出す。
当然ながら己を祀る神殿に仕える女性に手を出され、
カンカンになったヘラが来た為イオを牝牛に変えて誤魔化そうとする*2のだが…

ゼウス「違う!これはただの牝牛で…」

ヘラ「ただの牝牛ですか…では私がもらっていいのですね? た・だ・の・牛なのですから。」

ゼウス「あっ…」

ヘラ「ついでに貴方が馬鹿な真似をせぬように見張りもつけておきます。頼みましたよ、アルゴス。」

アルゴス「了解、牝牛が逃げ出さぬよう、そしてゼウスが取り返しに来ぬよう見張ります。」

お約束通りヘラにはお見通しであり、牝牛という名のイオを没収・監禁された上に
見張りとしてアルゴスを呼び出し、取り返せないようにしてしまう。

ゼウス「ワシも取り返したいんじゃが奴は眠らないからのぉ…どうしたものか…」

?「お困りのようですね?」

さしものゼウスも寝ずの番人アルゴスを相手にしては何もできず、ほとほと困り果ててしまったのだがそこにある神が名乗りを上げた。
ギリシャ神話のトリックスターヘルメス(ゼウスの庶子)である。

ヘルメス「私の魔法の笛をもってすればアルゴスなど敵ではありません。」

ゼウスもヘルメスが魔法の笛を持っていることを知っており、彼ならそれができると踏んで依頼したのである。


最期

アルゴス「なんだ貴様?」

ヘルメス「怪しいものではございません。通りすがりの吟遊詩人でございます。」

と旅人のような恰好をしたヘルメスは魔法の笛を奏で始め、

アルゴス「なんだ?段々眠くなって…zzz」

不覚というべきか、ヘルメスの奏でる魔笛ですべての目を
眠らされてしまい完全に眠りについてしまう。

そして

ヘルメス「隙あり!」

と言わんばかりに隠し持っていたハルパーを一閃。哀れアルゴスは眠ったまま首を刎ねられて殺害され、イオも取り返されてしまったのである。
イオに関してはその後も逸話があるのだがここでは省略する。

忠臣であるアルゴスが不覚を取った上に討ち取られてしまった為、
ヘラはその死を悲しみ、ある鳥の羽にその目玉を移植した。
この鳥こそが後のクジャクであり、特にオスのクジャクの目玉のような模様の尾羽の起源となったという。
異説としてはアルゴスが討ち取られ、不機嫌になったヘラにゼウスが彼の目玉を移植した鳥を送ったがそれがクジャクだとも。
どちらにせよアルゴスが死亡してからクジャクという鳥が誕生したという意味では共通している。



創作では

全身目玉だらけというグロテスクな姿故か、キャラクターとしてはあまり創作作品には登場しない。

ファントムの一人としてアルゴスがおり、全身に目玉が存在しているという原点の彼の姿を踏襲したデザインとなっている。

名前は上述したファントムと同じ「アルゴス」だが、こちらは普段から全身目玉だらけではないものの、
変身形態であるエクストリーマーが「尾羽上のパーカー部分に無数の目玉を有している」というこれまた原典における姿を踏襲したデザインとなっており、
更に死後に目玉を移植された鳥とされるクジャクの要素も持ち合わせている。
個別項目も参照。

ドーラモンスターの一体として、ドーラアルゴスが登場。

  • デジモンシリーズ
『デジモンセイバーズ THE MOVIE 究極パワー!バーストモード発動!』より、アルゴモン系統が登場。
名前の由来はアルゴリズムからだが、目の意匠が強調されていることから、こちらもモチーフになっていると思われる。



余談

彼の登場したギリシャ神話には冥府の番犬として有名なケルベロスがおり、
討ち取られたか否かの違いこそあれど、音楽で眠らされて不覚を取ってしまうという意味で似通っている。

彼を討ち取ったヘルメスの数ある異名の中にアルゲイポイテースというものがあるが、これは直訳すると文字通り「アルゴスを殺した者」という意味になる。




追記・修正はすべての目玉を眠らされないようにお願いします。

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最終更新:2023年07月12日 20:23

*1 黄金の羊の毛皮を求め旅をしたイアソン達一行の総称

*2 ゼウスは白い牡牛をシンボルとしていたため、神への貢ぎ物として牛がよく生贄にされていた。