殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件

登録日:2023/04/10 Mon 02:25:49
更新日:2024/02/18 Sun 03:40:45
所要時間:約 10 分で読めます





ファミコン上に展開された日本初の本格推理アドベンチャーゲーム


【概要】

1988年1月7日にHAL研究所から発売されたFC用推理アドベンチャーゲーム。
開発は、ハル研究所、ハイパーウェア、MGP。
HAL研究所とはリンク先にある通り、現在のハル研究所のことである。
プロデュースには、後の任天堂の社長となる岩田聡氏の名前がある。

原作・脚本の"さえき いちたか"が樫畠明人から聞いた話を元にしたと言っているものの、当然ながらフィクションであり、実在の人物とは関係はない。
さえき いちたかも実在しない人物である。

なぜかゲーム中のタイトル画面では「パワーソフト連続殺人事件」と誤植されている。


【あらすじ】

探偵、樫畠明人の元に友人の西河正人が崖から転落死したとの電話が入る。
その死を偽装殺人と見破った樫畠明人は、彼が務めていたパワーソフト社に中村警部と共に捜査に向かう。
それは、更なる連続殺人事件の幕開けを意味していた。


【登場人物】


警察・捜査関係者

  • 樫畠 明人(かしはた あきひと)
このゲームの主人公の探偵でありプレイヤーの分身。28歳。
説明書には現代日本に現存する5人の名探偵の一人とか、司法試験に合格したが自主退学したなどの学歴が書いてある。
最初に死亡した西河正人は大学時代の友人であり、その無念を晴らすために捜査を開始する。
中村貴継警部とは遠い親戚にあたる。
名前は高橋名人を捩ったもの。

  • 中村 貴継(なかむら たかつぐ)
警視庁捜査一課の警部。42歳。
この事件以前から樫畠明人の推理力に度々世話になっているらしく、説明書によると警部まで出世したのは樫畠の助けあってのものらしい。
とはいえシナリオ中では役に立たない訳ではなく、アリバイや各種証言の裏を取っているなど、地道な捜査でしっかり協力している。
捜査は足で稼ぐタイプなのだろう。

  • 林さん
警視庁の鑑識。
事件現場にて死体の死亡推定時刻や状態を詳しく教えてくれる。
ちなみに固有グラフィック持ちの中では唯一犯人の容疑者リストには入らない。当たり前

【パワーソフト社について】

富野裕氏によって設立された会社であり、本社は富野裕氏が建設した富野ビルにある。
富野ビルはオフィスだけでなく、住居としての機能もあり、社長の富野氏と娘の美沙子は4階に住んでいる。
また、男性の社員達はビル内の部屋を自室として与えられており、そこで寝泊まりしている。

【パワーソフト社関連人物】

  • 西河 正人(にしかわ まさと)
最初の被害者。28歳。
自殺に見せかけて突き落とされ殺害された。
フェアリーコンピューター用のソフト、『スーパーマルクスブラザーズ』を開発、それがヒットしたことからマスコミに度々取材を受ける様になる。
次作の『イメルダの伝説』の開発を行い、完成間近というところであった。
プログラマーでありながら文学も好んでおり、手帳には意味深な短歌が残されている。

  • 富野 裕(とみの ゆたか)
パワーソフト社の社長。55歳。
ゲーム中では「しゃちょう」と表記されることが多い。
西河正人を殺害した犯人は社内にいるのではと考え、樫畠明人に3日間だけ調査を依頼する。

  • 富野 美沙子(とみの みさこ)
社長の娘。23歳。
パワーソフトでは事務等雑用担当。
専用BGM持ちで、ヒロインの一角。

  • 富野 小夜子(とみの さよこ)
社長の娘。故人。
2年前に交通事故で亡くなり、社長はその悲しみから部屋をそのままにしてある。

  • 松丘 順次(まつおか じゅんじ)
企画開発部長。27歳。
社長の甥で、会社設立を持ちかけ、一緒に会社を作り上げている。

  • 石橋 和彦(いしばし かずひこ)
広報及び営業担当の男性社員。28歳。
車好きで西河正人から金を借りている。
愛車はホワイトのRX-7。

  • 森田 陽祐(もりた ようすけ)
営業担当の男性社員。24歳。
自室にはエキスパンダーや柔道着があるなど、わかりやすい体育会系。

  • 諸尾 託也(もろお たくや)
グラフィックデザイン一般担当の男性社員。25歳。
「もろ"おたく"や」と名は体を表すがごとく、わかりやすいオタク。
趣味はビデオ鑑賞。
自室には6台ものビデオデッキがあり、アニメキャラのポスター(おそらくミンキーモモ)も貼ってあることから、おそらくアニメ鑑賞が趣味。

  • 吉川 慶子(よしかわ けいこ)
販売及び事務担当の女性社員。23歳。
美人のお姉さん系のヒロインの一角。

  • 長嶋 里歌(ながしま りか)
店舗での販売担当の女性社員。22歳。
若干天然というか、アホの子疑惑のあるヒロインの一角。

  • 片桐 花枝(かたぎり はなえ)
事務担当の女性社員。
他の女性社員は二十代前半だが、この人だけは33歳。
噂話が好きな、いわゆるお局様枠。
お局様枠で33歳は若い気もするが…。


【システム】

当時のFCの推理アドベンチャーに似たオーソドックスなコマンド選択式だが、コマンドを実行する毎にゲーム内時間が経過するのが特徴。
一定の時間になると一日が終わり、捜査完了までの間に必要なフラグが立っていなければゲームオーバーとなってしまう。
したがって、コマンドを考えなしに総当たりすれば無駄に時間が経過してしまい、解決できない。
加えて他の人の証言を得る前後で台詞が変化するギミックも随所にある。
特に、人間関係の不和や恋愛の話に関しては他の人からの証言を得ないと話してくれない場合が多い。

ゲームオーバーになっても最初からプレイし直せば不要な行動を避けられるが、プレイヤー自身の推理力が直接問われる硬派なゲームデザインであり、一筋縄ではいかない。
推理が必要になるのはキャラの台詞だけでなく、ゲームグラフィック、BGMからの推理も要求される。
捜査の進展を示す様なフラグはほぼ表示されず、捜査情報はメモを取らないと厳しい。

真犯人の指名の直前には原作者の「さえき いちたか」氏からのメッセージが送られ、事件解決は「作者からの挑戦状」という形式を取っている。
セーブは真犯人の指名の直前まではいつでも可能だが、真犯人の指名をする場面からは不可能となる。
犯人の指名だけでなく動機、証拠の詳細も聞かれるのにセーブポイントここからというのは若干不便さを感じるところではある。

ちなみに何故か「Aボタンがキャンセル、Bボタンが決定」という、一般的なボタン配置と逆の配置となっている。


【この人はこうして捜査に失敗した!!】

説明書にある失敗談という体のヒントコーナー。
3人の架空の人物による失敗談が語られる。

  • 一人目
総当たりでやれば解ける、と舐めてかかり、最初の西川の捜査にて探偵事務所に帰るを選択してゲームオーバー。
解説には探偵事務所に帰るのは捜査時間がなくなるためリスキーというアドバイスがある。
しかし実際のところ、最初の西川の事件の捜査では探偵事務所に帰ると即座にゲームオーバーになる仕様であり、微妙に噛み合っていない。

  • 二人目
ミステリーは得意だというプレイヤーで、メモを取らずに捜査を開始。
犯人を指名するところまで進んだが、動機などを正答できずゲームオーバーとなってしまった。
被害者のそれぞれに対する殺害動機やトリックなど、進展を適切にメモを取らなかったことが災いした。

  • 三人目
潔癖症で、全ての選択肢を試してから別の人のところへ行くという方針を立てて捜査を進める。
しかし、他の人の話を聞いてから別の人に話を聞くとまた違う台詞になっており、あれこれ戸惑っている内に時間切れとなってしまった。
上述の様に会話のフラグ管理があるため、話をする順番に気をつけたいという内容のアドバイスがされる。

【事件の展開】




【評価】

難易度が高いものの、時間を掛ければ事件の背景を解き明かし、犯人逮捕までたどり着くのは可能な範囲ではある。
シナリオもかなり入り組んでおり、その驚愕の展開に自力でたどり着けた場合の達成感はかなりのもの。
BGMも雰囲気にマッチしており、登場人物も個性的で印象に残りやすい。
しかし、発売時期が悪かったと言え、このゲームの発売日の一ヶ月後の社会現象に飲まれ、他のFCソフト共々隠れた名作扱いされている。
取扱説明書には「HAL研究所のアドベンチャーシリーズ第1弾」とあるものの結局第2弾は発売されなかった。


追記、修正は真犯人を指名し、美沙子さんにプロポーズしてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • FC
  • ソフトハウス連続殺人事件
  • 殺意の階層
  • 隠れた名作
  • HAL研究所
  • 岩田聡
  • 良BGM
  • ゲーム
  • マルチエンディング
  • ビターエンド

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月18日 03:40