シルバー仮面

登録日:2023/05/21 Sun 14:55:40
更新日:2023/11/29 Wed 06:12:32
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春日兄妹にとって光子ロケットの完成は宿題である。
そのために戦い、傷つく。
たとえこの旅が果てしなく続こうとも彼らはさすらう…
明日の太陽を求めて。


『シルバー仮面』とは1971年(昭和46年)11月から1972年(昭和47年)5月にかけて、TBS系列にて放送された特撮ヒーロー番組である。
放送話数は全26話。


【概要】

製作は『月光仮面』などで知られる宣弘社と、後に『スーパーロボット マッハバロン』を手掛ける日本現代企画が担当。
メインスタッフにはTBSを退社し、『曼陀羅』などのR18指定映画を世に送り出した実相寺昭雄率いる『コダイグループ』の面々が参加。
日本現代企画とコダイは共に円谷プロダクションから独立した面々が設立した団体であり、先述の実相寺のほか、美術担当の池谷仙克や特技監督の大木淳を筆頭に、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などの円谷プロ作品で活躍した実力派スタッフが多数招集されている。
当初は『21世紀鉄仮面』の仮題で企画が進められていた。このネーミングは宣弘社の小林利雄社長の意向を汲んだものだという。
最終的に池谷氏がその鉄仮面のイメージを主役ヒーローに取り入れ、『シルバー仮面』が誕生する事となった。


【解説】

TBSプロデューサーの橋本洋二氏は大枠の企画段階から特撮と人間ドラマを主題とした作品にすることを決めており、その結果60年代にヒットした海外ドラマ『逃亡者』・『インベーダー』を髣髴させるロードムービー調のドラマに仕上がった。

内容は父の遺した光子ロケットの秘密を求める主人公の春日兄妹5人が宇宙人と戦いながら旅を続ける放浪劇であり、時には兄妹5人を暖かく受け入れる者もいれば、宇宙人怖さに迫害する連中も現れ、そんな彼らや人の業に対して兄妹が悩み苦しむという非常にハードなストーリーが展開される。
さらには地球人は本当に正しいのかという、ヒーロー番組の命題に目を向けた真剣なドラマ作りもなされた。

こうして始まった意欲作『シルバー仮面』であるが、第1話からなんと撮影トラブルが発生(詳細は当該項目を参照。)、第2話からはフジテレビ系列で円谷プロ製作の『ミラーマン』が裏番組として始まり、陰鬱な作風が仇となって視聴率面で苦戦を強いられるなど前途多難な事態に見舞われてしまう。
「シルバー仮面が罰当たりにも卒塔婆を振り回して戦う」「シルバー仮面と敵が大勢の人がいる商店街を駆け抜ける」など当時の生活風景ちゃぶ台を見せるシュールな場面は、迷場面として後にバラエティ『ジェネレーション天国 特撮ヒーローSP』などで取り上げられたことも。

この打開策として等身大のヒーローだったシルバー仮面を第11話から巨大化させ、*1番組名も『シルバー仮面ジャイアント』に改題された。

物語も光子ロケットの秘密を巡るロードムービーに区切りを付け、路線変更して春日兄妹も科学機関・津山宇宙科学研究所に定住するようになる。
宇宙人も自ずと巨大タイプが増え、怪獣も登場するなどバリエーションが豊富となり、これらの敵と戦う明朗快活なバトル路線にシフトし、視聴率も多少ながら回復していった。
人間ドラマもよりアットホームな雰囲気となり、時には1クールほどではないにしろハードなストーリーも展開されるバラエティーに富んだ作風は今なお多くのファンからの支持を集めている。

そして宇宙人と地球人の関係にある種の答えを出した最終回は現在も語り草となっている。


【あらすじ】

「宇宙人襲来説」を唱えていた春日博士は、光子ロケットを密かに作り上げ、そのエンジンの秘密を子供達である春日兄妹の身体に隠し、そのままチグリス星人に殺害されてしまう。
遺された春日兄妹は自分達の身体の中に眠る秘密を明かし、光子ロケットの起動させるため、各地の博士と縁のある物理学者を訪ねる放浪の旅に出る。
その過程で出くわす無法な宇宙人に、春日兄妹の次男・光二がシルバー仮面に変身して立ち向かっていく。


【登場人物】

●春日兄妹

彼らには父・春日博士によってそれぞれ特殊能力や武器が授けられている。しかし常に光子力ロケットの開発を阻止せんとする宇宙人から命を狙われ続け、周りの人間からは白い目で見られ協力してくれる人物もいるが宇宙人の魔の手に巻き込まれて命を落とすか兄弟達と縁切ることが多いなどつらい運命を背負っている。
第11話からは津山博士から新型銃をもらい受け、兄妹全員が携帯している。


春日光二
演:柴俊夫

本作の主人公。
春日兄妹の次男で口数は少ないが、性格は温厚で光一やひとみの相談相手にもなるほど面倒見がいい。
春日博士から改造手術を受け、「銀色の力」ことシルバー仮面に変身する能力を身につけた。
第21話では謎の少女・テレサに好意を抱くが、彼女はガイン星人の送り込んだアンドロイドだったため、悲恋に終わってしまった。
第25話で誕生日を迎えた。

春日光一
演:亀石征一郎

長男。性格は冷静沈着。
春日博士から対宇宙人用の白光銃を与えられ、その射撃の腕前は一流。
兄妹の中で特に父の科学者としての資質を受け継いでいるようで、中盤からは新型の光子ロケットを作る「ベム計画」を津山博士と共同で進める。
喫煙者で、劇中では度々一服する描写が見られた。
最終回では、友好を求める宇宙人・ドリィとの交流をきっかけに、ある決断をすることになる。

春日ひとみ
演:夏純子

長女。穏やかで気配りが出来る性格で、母親*2の面影を強く受け継いでいる。
料理が得意と自称するだけあって、炊事係を担うことが多い。
春日博士から対宇宙人用の赤光銃を与えられているが、白光銃との威力の違いは不明。

春日光三
演:篠田三郎

三男。兄たちと違って熱血直情的。
星人に対する憎しみは特に強いが、そこを逆用されることも度々あった。
トランペットを吹くのが得意。
春日博士から人間態の宇宙人を見破るスペクトルメガネを与えられた。
その他ナイフを左手に隠し持っており、主に序盤で多用された。
最終回では、ドリィがワイリー星人とグルだと疑うが、彼女の命がけの行動を見たことで自分の間違いに気が付く。

春日はるか
演:松尾ジーナ

次女。彼女のみ特殊能力や武器を持っていない。
末っ子で甘えん坊なところがあるが、有事にはおとりを買って出るなど、自己犠牲を厭わない気丈な性格。
第5話では田所教授に兄妹の素性を疑われた際、自宅があった都内へ戸籍謄本を一人で取りに出かける行動力を見せた。
一方で第3話で早くも放浪生活を嘆くなど精神的に脆く、第8話での登場を最後に大阪の阿部教授に預けられたことが警察に語られる形で物語からフェードアウトした。


●津山宇宙科学研究所(SSI)

津山博士が所長を務める科学機関。他惑星にサイン波を発信し、その返信データを集積するといった研究を行っている。
地球の周囲を見回すレーダーの監視能力は、防衛庁からも評価が高い。
第11話以降の春日兄妹の拠点となった。

津山博士
演:岸田森

春日博士から宇宙物理学の基礎を学んだ科学者で津山宇宙科学研究所の所長。
第11話で初登場し、春日兄妹の後見人として研究所での活動を許諾。兄妹と力を合わせて新型の光子ロケット開発に全力を注ぐ。
兄妹のよき理解者であると同時に、男手一つでリカを育てる優しい父親でもあり、休みの日はリカとの時間を大切にすごしている。

津山リカ
演:北村佳子

津山博士の一人娘。
劇中の描写から学齢はおそらく小学4年生。
研究所の出入りを認められており、春日兄妹と楽しく話すのが好き。
ロバのぬいぐるみのロバートを『恋人』と呼んで可愛がっている年相応の純粋な少女。


●春日兄妹を取り巻く人々

春日勝一郎博士
声:八奈見乗児

春日兄妹の亡き父親で、天才的な物理学者。劇中では肖像画と声のみの登場。
生前は多くの優秀な青年科学者が師事していた。

大原道男
演:玉川伊佐男

春日博士の弟で、兄妹の叔父にあたる。
武器商人故に兄妹(特に光三)からは煙たがられることが多い。
友人とホテルを経営しており、宇宙航空局との関係も持つなど、兄に負けず劣らず人脈が深い。
憎まれ役として描かれることも多いが、兄妹に情が深い一面を持ち、リカの誕生日を盛り上げようと奮闘するなど、決して悪人ではない。
夫人、息子の紀久男、家政婦との4人暮らし。

秋山浩
演:池田駿介

第24話・最終話に登場。
4年間、アメリカで研究をしていた科学者で、画期的な赤外線レーザーレーダー発明して日本に帰国して来た。
ひとみの婚約者で、歓迎会の時にプロポーズをした。
バーナー星人に操られるが、ひとみの決死の訴えで正気を取り戻す。


シルバー仮面

身長:175cm
体重:60kg

父・春日博士から改造手術を施された春日光二が「銀色の力」によって「アタック!」の掛け声で変身する、銀とグレーのカラーリングが特徴の超人。
両目を光らせて怪力を発揮しタンクローリーを押し戻す、松明をバーナーに変化させることなどができるが、これといった必殺技や武器は持っていないので、星人へのとどめは毎回イレギュラーなものばかりであった。
第11話での光子ロケットの中での変身を最後にこの姿では登場しなくなったが、ジャイアントへの強化が不可逆なのかは不明。


シルバー仮面ジャイアント

身長:50m
体重:50000t

シルバー仮面が巨大化した姿で、カラーリングは銀と赤に変化している。
第11話にて、アンケプロ星からの脱出時に、暴走した光子ロケットエンジンの発光から放たれる光子エネルギーを浴びたことで誕生した。
第12話からは「シルバー!」の掛け声で光二の姿から直接巨大化出来るようになった。
ベルトのバックルが光ると多種多様な武器が出てくるようになり、さらには宇宙空間にも耐えうる飛行能力も身につけた。
必殺技も正式に放つようになり、よりヒロイック性が増した。


シルバー仮面ジャイアントの武器・技

数が多いので代表的なものを取り上げる。

シルバーサーベル
バックルから束を持って取り出すジャイアントの代名詞とも言える

シルバービュート
最初に使用された武器で、放電攻撃も可能な

シルバー光線
トサカ部分から放つ光学武器で使用頻度は高い。

シルバージャック
トサカから飛び出る接近戦用の刃、最も多用された武器の一つ。

シルバー手裏剣
基本的に1発ずつ使うが、第17話では盲目のまま敵に3発手裏剣を投げつけるシルバーめくら手裏剣を披露した。


【主なメカニック】

光子ロケット(初代
春日博士が開発した恒星間航行を可能にする宇宙船。
第10話までエンジンが未装着の状態だったが、春日兄妹が発見して完全なものとなった。
が、テスト飛行の最中にサザン星人の襲撃を受けて大破してしまう。

ベム計画のロケット
破壊された光子ロケットに変わる新たな機体として、光一が製作した宇宙ロケット。
試作段階の1号から3号までを経て、完成形のベム5号が第20話にて初お披露目となった。
太陽熱を動力源に転換し、半永久的な航行が可能な戦闘機で、最終回で大きな使命を帯びることとなる。


【無法な宇宙人・怪獣】

春日博士の遺した光子ロケットの秘密を奪おうとする宇宙人達、第11話からは巨大タイプな宇宙人も登場し、ベム計画を幾度となく妨害しようとした。
ウルトラシリーズと同じくレギュラーの星人はおらず、毎回違う侵略者が登場する。



【派生作品】

本作のパイロット監督を手掛けた実相寺昭雄によるリメイク作品。
詳しくは該当項目を参照。
  • 『ブレイブストーム』
『スーパーロボット レッドバロン』とのクロスオーバー兼リメイク作。
本作では後に春巻先生アナザークウガを演じる大東駿介氏がシルバー仮面を演じた。


【余談】

アニメ『ハヤテのごとく!』の1期において、年明けから路線変更云々の話題が出た際に
「裏番組対策で無駄に巨大化した特撮ヒーロー」と本作を皮肉ったネタが使われていた。
その際にツッコミで画面が殴られたが、その際の腕がどう見てもシルバー仮面ジャイアントのものだった。
光明社より『シルバー仮面対怪獣』というかるたが出版されているが、銀色の鉄人28号がマントを着たような、似ても似つかない姿でネット上でネタにされることがある。
かるたの中身を見るにシルバー仮面以外にこの番組と関わりのある名前が出て来ない(対戦相手の「怪獣」は一般的な恐竜の名前とか火星人とかロボットとか海坊主)ので
正確な出版年は不明だが当番組放映前たぶん60年代後半の怪獣ブームの頃に発売され偶然名前が被っただけと思われる。


春日兄妹にとって項目の編集は宿題である。
そのために戦い、傷つく。
たとえこの追記・修正が果てしなく続こうとも彼らはさすらう…
明日の太陽を求めて。

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最終更新:2023年11月29日 06:12

*1 番組初期に刊行された児童誌にはシルバー仮面の身長・体重データを2m10㎝~40m・120㎏~45000tとする記述があり、この時点で巨大化が視野に入っていた模様。

*2 劇中で詳細は語られていないが、父同様に既に亡くなっている模様。