ブラック商会 変奇郎

登録日:2023/06/04 (日) 01:48:47
更新日:2023/06/05 Mon 09:17:44
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ドーーン!




『ブラック商会 変奇郎』とは藤子不二雄Aによる漫画作品。

【概要】

週刊少年チャンピオン』で1976年から1977年まで連載された。単行本の巻数は出版社によって異なる。
一部単行本では『シャドウ商会 変奇郎』というタイトルになっていたこともあり*1、実写ドラマ版でもこちらのタイトルが採用されたが、現在は元に戻っている。

ジャンルは一応ホラー漫画だが、主人公が悪人の弱みを握って痛い目に遭わせるというブラックコメディやダークヒーローものでもある。
気味の悪い演出やグロテスクな描写も少なからずあり、作品のコンセプトとしては作者が同誌で連載していた『魔太郎がくる!!』と共通する要素も多い。
ただし、『魔太郎がくる!!』と比べると若干マイルドな雰囲気となっており、全体的に陰鬱な要素は抑えられている。
これは『魔太郎がくる!!』の復讐描写があまりにも残虐すぎて無難なホラー漫画への路線変更を余儀なくされたという経緯が影響していたようで、そちらよりも他媒体に出しやすい、メディア化を意識した作品になっていたらしい。

ホラー要素以外では作中の舞台設定の都合から様々な珍品が描かれるが、これらは実際に存在する骨董品である。
実はそれらの骨董品は作者が実際にコレクションした物品でもあり、作中や単行本でも解説(通称「変コレクション」)が行われるところも注目ポイント。

上述したように連載時は週刊少年チャンピオンとその出版社である秋田書店で作品が展開されたが、連載終了後は秋田書店以外の他出版社からも単行本が刊行されている。
『週刊コロコロコミック』でも期間限定で全巻の無料配信が行われた。

【あらすじ】

ハイテク都市・東京都新宿の超高層ビルの谷間に、そこだけ過去の世界にタイムスリップしたかのように佇む骨董店「変奇堂」。
その店主・変奇左エ門の孫は、変奇郎という名前の平凡な中学生だった。
だが、変奇郎は何かしらの悪事を働いた人間の弱みを見つけ、その弱みをネタに相手に金銭を要求する恐喝犯という裏の顔を持っている。
更に魔力も持っている変奇郎は、強請りに応じない人間や嫌がらせをしてきた人間に対して仮面とマントを付けた奇怪な姿に変身し制裁を行っていく……。

【主な登場人物】

  • 変奇郎
演:森田剛
本作の主人公の中学生男子(学年は不明だが、少なくとも3年生ではない)。祖父の骨董品屋経営を手伝っている。妙に長いもみあげがチャームポイント。
優等生でもない凡人でそれなりに社交的な性格…なのだが、通学している明友中学校は素行の悪い人間が多いこともあって作中では他生徒の嫌がらせに遭うことも多い。
しかしそれは表向きの話、裏の顔は相手の弱みを握って高額な金銭を払うよう迫る銭ゲバ少年。
本気で怒った時には仮面とマント、力を発揮するためのペンダントを身に着け、制裁や記憶操作を「ドーン!」の声と共に行う。

裏の顔で行う制裁は人生を奪うレベルの内容からちょっと痛い思いをする程度まで多種多様であり、基本的に悪人相手への所業とは言っても相手を傷付けることを躊躇しない冷酷さを見せる。
ただ、制裁に関しては基本的にビジネスの延長という性質が強く、しっかり金銭を支払ってくれた相手に対しては諸々の後処理やネタの破棄をしてちゃんと撤退する。
なんなら状況的に要求以上の金額を手に入れられる場合でも、あくまで要求した金額だけで手を打つなど律儀な一面も。
一応、強請りも相手が全く支払えない額を請求する訳ではなく、相手の懐は痛むがちゃんと用意できる額というレベルにとどめるなど、基本的な行動原理は「金を手に入れること」にある。
一方で悪人ではない客を助けるために自主的に自らの貯金から必要な金額を持ち出したり、変奇郎の意思が介在しない形で危険に晒されている悪人にわざわざ忠告しに行くなど、単なる冷酷な守銭奴というわけでもない。


  • 変奇左エ門
演:丹波哲郎
変奇郎の祖父であり、変奇堂の店主。
変奇郎のような特殊な力は持っていないために基本的に何らかの能力や道具を扱えないが(全く無いわけでもないような描写もある)、変奇郎の裏での所業は察しているようだ。
頑固で孫からも高額な金銭を要求するなど金にがめつい一面もあり、基本的に変奇郎の人格は左エ門の影響だと思われる。
古美術商としての技能や知識面は本物で、変奇堂に置かれている商品や売買している物品もマニアが見ると価値の高い品が揃っている。それらの商品がキッカケでトラブルの原因になることも少なくないが……。
金にがめつい一方で、数億の金を出されても店の土地を売ることを拒否、最初に商品の価値の分かった相手の予約を金銭に関係なく優先する、デートの費用を抽出するために店で扱っていない古本を売りに来た学生の買取に応じるなどの一面もある。

  • 変奇一郎
演:峰竜太
変奇郎の父親で左エ門の息子。骨董品店の経営には一切関与していない平凡なサラリーマン。
息子の正体や骨董品の知識もなければ、変奇堂に対する思い入れもない。
気弱な性格でうだつが上がらない場面が多々ある苦労人だが、息子や妻との関係は基本的に良好で良き父親ではある。
かなりのゴルフ好きで息子をゴルフに誘うこともあるが、ゴルフの腕は壊滅的に下手。

  • 変奇郎のママ
変奇郎の母親で一郎の妻の女性。一郎とは揉めることもあるが基本的に仲は良好で息子とも円満な関係だが、裏の顔は知らない。
ちょくちょく出番のある準レギュラー枠ではあるが、夫と異なってメイン回があったことはない。

  • 満賀道夫
明友中学校における変奇郎の同級生の友人の男性。
漫画家志望であることから様々なネタを考えており、家には漫画家のサインや手塚治虫の貴重な単行本などを揃えている。
色々と濃い人間が多い明友中学校においては常識的な感性の持ち主だが、変奇郎以上に大人しい性格が災いして持ち物を横取りされたり、悪意ある人間の罠に嵌められたりと被害を受ける機会がかなり多い。
変奇郎とは基本的に良い友人関係だが、策略によって変奇郎を避けるようになったこともある。

【ドラマ版】

1996年にテレビ朝日系列で『シャドウ商会 変奇郎』の名前で「万引き」のエピソードが単発ドラマとして放送された。
主演は当時V6に所属していた森田剛であり、エンディングテーマもV6が担当した。

美術面では変奇郎達の制服がブレザーになり、演者に合わせて茶髪になっている。
更に変身後も仮面がジャニーズなのに顔が見えないのもマズいのでマグマ星人のように目元が見えるタイプに変更されている他、マントの下が制服ではない、髪が逆立たないなどデザインはかなりアレンジされている。
もみあげはそこそこ長め。

また、「因果応報、報いあれ!」という原作にはない決め台詞が用意されていた。
「ドーン!」だと喪黒と被るからだろうが、この数年後に『笑ゥせぇるすまん』もテレ朝で実写化されるのだった。

【余談】

  • 同じく「素行調査代請求(恐喝)を行う主人公」を描いた藤子A漫画として、『恐喝(ユスリ)有限会社』とそのリメイク作『(かつ)揚丸(あげまる)ユスリ商会』がある。
    • 『変奇郎』の第1話「ひき逃げ」は『喝揚丸』の第4話「ひき逃げ代99万9000円也」とほぼ同一の内容。
  • 変奇郎のどこまでが苗字でどこからが名前なのかは不明。明かされていないのではなく、回によって変わるため。
  • 作中では作者の代表作である『怪物くん』などが作中作として登場する。

  • ミュージシャンの小山田圭吾は本作のファンだったようで、藤子不二雄Aの仕事場を訪ねた際に変コレクションを見せるように頼んだことがある。





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最終更新:2023年06月05日 09:17

*1 「ブラック」という単語が黒人差別にあたるのではないかと指摘を受けたからという説がある。