ラバウル烈風空戦録

登録日:2023/07/05 (水曜日) 22:45:00
更新日:2024/02/12 Mon 23:24:35
所要時間:約 4 分で読めます




ラバウル烈風空戦録は、川又千秋氏による架空戦記シリーズの名前である。通称は『ラバ空』。
架空戦記ブームの黎明期からのリアル志向派の一作で、現在でも名作として名をあげる人は多い。

【ストーリー】

日米の緊張が深まる1942年。
海軍三飛曹風間健児は大陸で九七艦戦を駆って初陣を飾って以来、開戦後は台湾、本土防空、アリューシャン、ラバウルへと転戦を続ける。
それは、零戦、双戦、雷電、そして烈風と目まぐるしく移り変わる名機たちと、多くの戦友たちとの出会いと別れを繰り返す熱い時代の物語であった。

【概要】

物語は、主人公の風間一飛の戦後の回想という形で送られる。
そのため大部分が一人称の文体で進むが、この方式は架空戦記では極めて珍しく、他にはほとんど類例を見ない。
歴史は開戦までは史実どおりだが、真珠湾でエンタープライズを撃沈し、ガダルカナルに大和を投入したりと日本に有利なように少しずつ変わってゆく。
ただし、日本の技術力というどうしようもない壁にぶつかる新型戦闘機開発に関しては「国立飛行機」という架空の航空会社によって新技術が開発されたという体になっている。
また、架空戦記初期の作品の特徴として、史実の人物は名前をもじって登場させている(例、山本五十六→山木八十八)。
空戦の描写の秀逸さもさることながら、風間健児の回想から、一パイロットの視線から見た太平洋戦争という形で作品の評価はとても高い。

中盤までがコミカライズ化もされている。

【登場人物】

  • 風間健児
主人公。
航空兵として配属されたばかりの新人ながら、よき先輩たちに恵まれたことによりめきめき腕を上げていく、後の撃墜王。
本作は日記を書くことが習慣の彼の記録を用いての回想という形で進行する。
性格は、上に礼儀正しく下に優しい熱血漢。当初は調子に乗りやすい欠点もあったが、先輩の厳しい指導で改善していった。
情に厚く、戦友が戦死したさいの慟哭は同じ立場のパイロットならではの生々しさに満ちている。
嫌いなものは卑怯なこと。それゆえに戦争に勝つためには非道を辞さない欧米の実利最優先の価値観に嫌悪感を示す一面もある。

  • 三田六郎
通称ミロクの中尉と呼ばれる天才的な撃墜王。
風間がもっとも慕い尊敬する先輩であり、風間を心身ともに一人前の戦闘機乗りに育て上げた恩人でもある。
上からは信頼され、下への配慮も怠らないと、人格面でも作中きっての完璧超人。
容姿は原作では女性的な美男子だったが、コミカライズ版ではなぜかキツネ目のコミカルなキャラになった(ちゃんとシリアスな場面では締める)。

  • 山木八十八
史実の山本五十六。
史実では失敗した選択肢を切り替えることで日本を敗戦から救っていく。
だが護衛駆逐艦が急行しているというのに潜水艦に大和の主砲を撃ち込まさせるような無茶な命令をすることも。

【本作オリジナル、または史実から改変された飛行機】

  • 双発単座戦闘機
通称双戦。
海軍の「長距離侵攻用双発多座戦闘機」の失敗を元に、零戦のパーツをできるだけ流用して作られた双発戦闘機。
零戦の弱点であった機体の脆弱さや突っ込みの弱さを双発の大馬力で解消しており、ドゥーリットル隊の迎撃からアリューシャンを経てガダルカナルへと連戦活躍した。
しかし双発ゆえの装備の贅沢さがたたり、量産は少数で止まり、大戦中盤にはほぼ姿を消してしまった薄幸の名機である。

  • 雷電
史実の雷電と違い、国立飛行機の改設計で淚滴風防になるなどの改良が施されている。

  • 烈風
史実ではついに完成しなかった零戦の後継機であるが、本作では史実の日本軍機の泣き所であった誉発動機を改良した勲発動機が完成したことで早期に量産に成功した。
自動空戦フラップを搭載し、航続距離も零戦並みと、史実の烈風と紫電改のいいとこどり。
しかしその頃には米軍も烈風に匹敵する高性能機を続々投入してくる頃のため、零戦の無敵戦闘機伝説再来とはならなかった。

  • 零戦42乙型
外伝で登場。未熟練搭乗員が多くなったことを鑑みて、命中させるには肉薄が必要な20ミリ機銃を撤去して、機銃全てを7.7ミリに統一している。
余談だが、この回で架空戦記ファンには有名な「零戦100型という機体は存在し得ない」という文句が出た。

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最終更新:2024年02月12日 23:24