巽千太郎(ゴルゴ13)

登録日:2023/08/19 (木) 00:09:35
更新日:2023/09/06 Wed 01:14:02
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私を脅かそうという、その魂胆が許せない!!




巽千太郎とは、漫画『ゴルゴ13』の112巻に収録されたエピソード「50年目の亡霊」に登場するゲストキャラクター。

概要

企業『帝国物産』の会長である老人の男性で、「50年目の亡霊」における主役的存在。

「政界のフィクサー」としても恐れられているようで、政界にも力のある人物。
実際に企業に勤める前には外務省の官僚をしている(ただし、今の外務省と関係ない一企業人と本人は自覚している)。
ところが、政界に通じていながらもゴルゴ13の存在を認知していなかった模様。

部下の有木は過去に戦犯として裁かれそうになっていたところを救い、以後30年にも及んで秘書として使っている。
家族同然のように信頼していることから、触れられたくない過去を昔話として伝えたほど。

戦後50周年の節目に日本で開かれることになった「国際恒久平和会議」の議長を任されていた。
ところが、平和会議開催が迫る寸前で、過去の経歴をネタに脅す怪文書を受け取ることになる。

過去の行いに反省の色ゼロなことや、自身を脅そうとした相手に思い知らせようとするなどの強気な態度から、醜悪な性格であると言える。
一方で「家族に秘密があってはならない」という思想もあるようで、事実上の家族と見ていた秘書の有木に過去を明かしたことは優しさとも言えるだろう。
だが、家族と見た相手を強く信頼するその姿勢は、裏を返せば過去に恋人に国家機密を漏らした原因なのかもしれない。
また、強気と言っても虚勢を張っている部分もあるようで、自分の命が狙われていると知ってからは、人に見えないところで精神的に弱っている様子も見せていた。

過去



そうだ。この事件は全て私の指示で行なわれた


実は、巽は過去に起きたスパイ事件「ラストボロフ事件」の黒幕という過去を持つ。
ラストボロフは巽に利用価値があると判断した米国諜報機関の意向で日本側に巽の名前を公表しなかった。
その結果、ラストボロフ事件は政界を揺るがさないトカゲのしっぽ切り事件として終わる結末になった。

つまり、巽という男は日本の外務省官僚としてソ連と通じながらも日本の上層部にも通じて利権を得ていたのである。

巽がソ連側に通じることになったのは、戦時中(1930年)にモスクワの日本大使館に外交官として勤務していた頃の事。
そこでロシア人女性のカリーナと恋仲になるが、彼女はゲーペーウーの工作員だった。
巽は彼女とのピロートークで情報を漏らし続けたことで弱みを握られ、結果としてソ連の諜報員となった。
その時に「シーザー」というコードネームを授かることになる。

以降の巽は外交官の立場を利用し、ソ連側に日独伊三国交渉の機密を送り続けた。
しかし、協力者なしでは継続不可能だったことで、通訳官の堀内武に目を付ける。
堀内の反戦思想にゲーペーウー仕込みの洗脳を施し、諜報活動に利用した。

1945年のソ連の満州侵攻直前、ブルガリアのソフィアにいた巽は日本の上層部に責任転嫁。
終戦後は自身の諜報活動を唯一認知していた堀内の存在を恐れ、彼をシベリアに売り渡した。
これらの行為に関して巽は堀内へ罪悪感は全く感じていない。
それどころか、堀内の生存説が浮上した際には「自身で息の根を止めておくべきだった」とすらまで思い始めるほど。

巽としては「ラストボロフ事件」については、公表されても外務省から退いて一企業の人間となっている現状では明かされても問題ないと考えている。
しかし、戦時中のスパイ活動については触れてほしくない黒歴史と化している。

堀内武のような男は巽の活動について日本史に残るソ連のスパイであるリャヒルト・ゾルゲに匹敵すると評している。
ゾルゲは任務こそ成功したが自身の正体についてはバレて命を落とすことになった末路を考えれば、生き延びた巽はゾルゲを上回っているかもしれない。

劇中の活躍

かつて陰謀に陥れた堀内武を名乗る怪文書が届く中、国際恒久平和会議においての殺害を宣言した殺害予告を受ける。
死んだとされる堀内が密かに生きていると確信した巽は、会議の欠席も難しい中で有木に対策を指示し、有木はゴルゴ13に依頼することで堀内への対策を試みた。

それでも精神的に不安を抱える中でついにやってきた1995年8月15日、終戦50周年記念の日ーーー。

国際恒久平和会議には多くの人々や警備員が集まっていた。
巽は同じ出席者の外人と会話のやり取りをしており、比較的穏やかに過ごしていた。
ちょうどその頃、平和会議から離れた位置の建物には死神・ゴルゴ13が愛銃と共に待機していた……。

ついに司会に呼ばれて開会の挨拶を求められる巽は盛大な拍手の中で席を立つが、体のバランスを崩したところを有木に支えられる。
自身を支えて共に歩く有木に感謝の意を伝えながら演台に向かう巽を、ゴルゴはライフル越しに眺めていた。

そして演台に向かう直前…………。




堀内が……。
本当に生きていると、思っているのか、シーザー?




口調と雰囲気が突如と変わった有木にかつてのコードネームで耳打ちされ、動揺する巽。
有木は実際には過去に仕えていた堀内を未だに慕っており、一連の脅迫の手紙もすべて堀内を演じる有木による壮大な罠だった。
あんたに仕えて30年、この時を待っていたと冷酷な表情を浮かべる有木に「世界中が注目する平和会議で偽りと裏切りの人生を送った唾棄すべき老人として死んでいく」ことを宣告される。
ゴルゴへの依頼による殺害対象は実際には巽であり、既に死刑執行の依頼は成されたとしてコードネームで名前を呼ばれるまま別れを告げられた。

突然の超展開と家族として見ていた有木の裏切りに頭が追い付かない様子の巽だったが、そんな事情を知るはずもない司会に言葉を求められる。
大量の冷や汗と困惑した瞳となった巽は、開会の挨拶も「わ、私は…… 私は……」というばかりで次の台詞に進めない。
これは、裏切りと死の確定に困惑して言葉が出ないのと同時に何か自問しているのだろうか……。

言葉が出ない中で窓ガラスを銃弾が貫通する巽の頭を一発で仕留め、彼を即死させる。
散らばった原稿と飛び散る血液とその傍で立ち尽くす司会の光景が出来上がると、亡骸の写真を撮ろうとするマスコミに囲まれる死後は晒し者のようだった。

スパイとして祖国と部下を裏切って栄光を掴んだ男は、最期に信頼していた相手に裏切られて絶望の中で死ぬというしっぺ返しを受けたのである。

余談

  • 実は殺害場所や時間を事前指定された珍しいパターン(他にも例はあるが)のゴルゴの標的だが、これは「ターゲットにできる限りの恐怖を与えてから殺したい」と「標的を誘導して殺害を確実にするためのサポート」という意味でゴルゴが有木に許可したと思われる。

  • ラストボロフ事件は実際に発生したスパイ事件だが、想像の余地が残る事件内容だったことから巽千太郎という架空の人物を作り上げて関連付けたと考えられる。





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最終更新:2023年09月06日 01:14