ドロール&ロックバード(遊戯王OCG)

登録日:2023/09/13 Wed 23:48:16
更新日:2023/12/23 Sat 14:28:38
所要時間:約 7 分で読めます




【概要】

《ドロール&ロックバード》とは「遊戯王OCG」に登場するカードである。
所謂手札誘発に分類されるモンスターカード。
初登場はTCG版「Starstrike Blast」であり、日本では「EXTRA PACK Volume 4」で輸入された。

イラストは「ドロール」と思われる、長い獣耳を生やした中性的な容姿の子供と、「ロックバード」と思われる鳥が描かれている。
「ドロール(Droll)」という言葉は変人・道化などを指すが、イラストからはそのような特徴は見えない。案外変わった性格をしているのかもしれない。
「ロックバード(Lock Bird)」は伝承上の生物である「ロック鳥(Roc)」を意識したものだろうか。

カード名はTCG用語の「ドローロック」の捩りと思われ、そこから「ドロー」と「ロック」に対応した1人と1羽というキャラクターデザインが生まれたと考えられる。
その名の通り効果でのドロー他を妨害できる効果を持つが、ドローロックは一般的に《八汰烏》のように通常のドローを妨害することを指すため、やや看板に偽りがあったりはする。


【効果】

効果モンスター
星1/風属性/魔法使い族/攻 0/守 0
(1):自分・相手ターンに、相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
このターン、お互いにデッキからカードを手札に加える事はできない。

発動したターンはお互いにデッキからカードを手札に加えられなくなる。
これは特定のカードをデッキから手札に加える所謂サーチだけでなく、ドローも封じてしまうので対応範囲は《ライオウ》《手違い》などより広い。
この時期に出たカードにしては珍しく「場合の任意効果」のためタイミングを逃さず、チェーン2以降にサーチやドローをされたり、サーチやドローの後に他の処理が入っても発動できる。
ただし、発動条件として「ドローフェイズ以外にデッキからカードを手札に加える」条件があるため、サーチメタでありながら1回目は防げないという大きな弱点も抱えている。

汎用性は《灰流うらら》には大きく劣り、相手を選ぶため考えなしに入れると役に立たないことも多い。
しかし、効果が適用されればターン中ずっと効果が持続するので、《灰流うらら》なら手数で踏み越えてしまうデッキも踏み越えることができないため1ターンに大量のサーチ&ドローを繰り返すデッキには大きく刺さる。
相手を選ぶ性質から基本的にサイドデッキ向けのメタカードではあるが、近年の遊戯王では「サーチカードが更にサーチカード持ってくる」「展開中に多数のサーチを繰り返す」と言ったデッキも少なくはないため、環境のメタ次第ではメインデッキから入ることもある。
昔はこのカードが採用される環境は暗黒環境と言われていたのだが、近年は前述のような性質を持つデッキが珍しくもなくなったので言われることも少なくなった。


【長所】

  • サーチかドローを多用するデッキに刺さる
前述の通り。
単発無効では追い付かない手数で攻めてくる、サーチカードなどを多用する相手に対しては、大量展開に対する《増殖するG》ばりの拘束力を持つ。
金満で謙虚な壺》《強欲で貪欲な壺》《スモール・ワールド》などの汎用カードで安定性を高めるデッキも多く、
それらのカードを最初に発動してからデッキを回すためのサーチカードを持ってくる相手に対しては算段を大きく狂わせ、そのターンの行動を大きく狭めることができる。

展開デッキの大きな悩みとなる《増殖するG》の対策として使うこともできる。
効果の適用を許すと通常の手段では無効化できないのが厄介な《増殖するG》だが、ドローという行動を封じるこの効果なら対抗できるのだ。
ただし、最初のドローに発動できないので1:1交換は避けられない。
後述する短所も誘発するため、実用的に使えるデッキはある程度限定され、基本的にはあくまで「できる」という副次的な運用だと思うべきだろう。
《灰流うらら》などのスタンダードな増G対策と比べると適用後のどのドローに打ってもいいという利点があるので、展開中にこのカードを手札に加える手段があるとちょっと話が変わる。

  • 一部のデッキではハンデスカードとして使える
「場合の任意効果」のため相手がサーチかドローをした後に、チェーン1で《攪乱作戦》などの「相手の手札を全て破棄させてからドローさせる」カードを発動した後に、チェーン2で《ドロール&ロックバード》を発動すれば、
遊戯王OCGは発動されたカードの処理はやれる所まで実行するため手札を全て破棄させた後にドローできないという処理になり、全ハンデスすることができる。
《攪乱作戦》は《ドロール&ロックバード》登場当時から存在していたため理論上は可能だったものの、安定性が低すぎてロマンやネタコンボ止まりだったが、トリックスターの登場で実践レベルで狙える様になった。
トリックスターは《トリックスター・リンカーネイション》という「相手の手札を全て除外させてから同じ枚数ドローさせる」効果を持つカードがあり、カテゴリ内サーチが手厚いため《攪乱作戦》と違って極めて容易にサーチが可能。
サーチしただけで手札を全てハンデスされるかもしれないという相手にとっては絶望しかない状況を容易に作り出せ、相手がサーチしなくとも《トリックスター・リンカーネイション》が2枚あれば無理矢理ドローさせて全ハンデスに持っていく理不尽極まりないことも可能だった。
このコンボが原因になったせいか《トリックスター・リンカーネイション》は2017年10月のリミットレギュレーションで制限カードに指定されてから、2023年9月現在でも一度も緩和されていない。
もっとも《トリックスター・リンカーネイション》には《トリックスター・ライトステージ》《トリックスター・マンジュシカ》を並べた状態で《トリックスター・リンカーネイション》連打することで発生するバーンによる疑似先攻ワンキルもしていたため、他にも余罪はあるのだが。
逆に言えば制限止まりなのでコンボ自体は生きている。

【トリックスター】以外で全ハンデスコンボを狙うのであれば素材縛りがないランク5のエクシーズモンスターで、《星守の騎士 プトレマイオス》からも出せる、《アーティファクト-デュランダル》が比較的使いやすい。
ただし、こちらは「お互いの手札を全て戻してからその枚数分ドローする」効果であり自分も被害を受けてしまうため、可能な限り手札を減らした状態で使うことになる。


【短所】

  • 1回目のサーチとドローは止められない
《ドロール&ロックバード》最大の弱点。
前述しているように、近代のデッキが動いた時にサーチやドローが1回もないというのは考えにくい一方で1回や2回で終わるor終わらせられる程度なら少なくない。
そういった場合だと腐ったも同然になったり、腐らずともおまけのドロー程度しか防げずに抑止力にならなくなったりする。

  • 基本的にアドバンテージは得られていない
サーチやドローを止めているわけではないので、計算上は発動した時点で1枚のアド損となる。
ターンを跨げば温存されていた発動を封じていたカードも発動されてしまう。
あくまでテンポアドバンテージを得るためのカードとなる。

  • ドローフェイズには対応していない
テキストの都合上、「ドローフェイズ中に行われた、効果によるサーチ・ドロー」は発動のトリガーに使えない。
普通は問題にならないが、速攻魔法を中心とした【ピュアリィ】のようなデッキには、意識されると発動を許さないプレイをされてしまう事がある。

  • 自分も効果を受ける
効果が適用されると自分もサーチとドローを行えない。
相手ターン中は自分の《増殖するG》との絡みに気を付ける程度になることも多いが、相手の《増殖するG》対策に自分のターンに使うには、展開過程でのサーチ・ドローをあまり行わない、自分の首が締まらないデッキであることが条件である。

  • モンスターとしてあまりにも貧弱
手札誘発として使わない限り、レベル1で攻守0でチューナーなどの特性も持たない完全な雑魚モンスターである。
無論、OCGにおいてはステータスが低いことが逆にメリットになる事例は多々あるし、手札誘発には珍しい風属性+メジャー種族の魔法使い族という属性・種族構成も悪くないが、そういった理由がないなら雑魚モンスターでないに越したことはない。
このカードの場合、いかんせん現代の主要な手札誘発の中では腐りやすい方であり、「腐りやすいのに腐った時の使い道で劣る」のは同じ手札誘発で比べた時にメインデッキ採用の順位が下がる一因となる。
同じくメジャーどころ同士では、レベル3でチューナーなうえに下級くらいなら止められる程度の守備力まである妖怪少女、逆に属性以外は同じだがチューナーという一点でレベル1が強みになりやすい《エフェクト・ヴェーラー》と比べると差が目立つ。


【評価】

登場当時(2010~11年*1)はゲームスピードが現在程早くなく、手札を1枚失ってまでテンポアドバンテージを取ることにあまり魅力がなかった。
そして1ターンにサーチやドローが飛び交うにしろせいぜい数回なことが多いため奪えるテンポアドも小さく、1回目のサーチかドローを止められないのが非常に痛い問題となった。
例えば、《強欲で謙虚な壺》から《E-エマージェンシーコール》などを持ってきたところに打てれば何とか良い嫌がらせになる程度で、《E-エマージェンシーコール》から《E・HERO エアーマン》の場面では結局1:1交換しか期待しにくい。
《ライオウ》と違い1ターン待てば使えるし、ゲームスピードひいては制圧の成り立ちにくさによって1ターン待つだけなら許容できる場面が大半だった。
そのため、産廃やネタカードまではいかないにしろ弱いカードとして見られることが多かった。

最初に評価されたのは数年後、征竜魔導の2強環境。
どちらもサーチを多用するデッキの上に当時は《ライオウ》が準制限カードに指定されており、当時は手札誘発も少なく甘いメタカードは容易に貫通してくることから、そのターンの行動を大きく制限できる《ドロール&ロックバード》は評価されることになった。
しかし、この2強のデッキが規制された後は再び評価を落とし暫く使われることはなかった。
その後はカードパワーがインフレし、ゲームが大幅に高速化したことにより《ライオウ》などが時代遅れになった一方で手札誘発であるこのカードは輝きを増し、サーチやドローを多用するデッキが環境に出てくるたびにメタカードとして採用されることが多くなっていった。
環境の変化により「サーチやドローを止められておらずアド損する」欠点より、「相手ターン中に発動できて、そのターン中は効果が持続することによる瞬間的な相手への拘束性の高さ」という利点の方が大きく見られる様になった結果と言える。

昔のショップ大会にあったノーリミットデュエルでは禁止カードが使用できたため《処刑人-マキュラ》から繰り出される、ドロー効果をもつ罠カード連打からの先攻ワンキルを唯一止められるカードとして評価されていた。
ある意味時代を先取りしていた状況である。


【余談】
性別論争のあるカードの1枚。
タッグフォース6の配信デッキレシピの1つである「NEWマイワイフプラス」はアイドルカードで編成されたデッキとなっており、
メインデッキが女性モンスター、サイドデッキが男性が確定しているカードを含む中性的な外見を持つモンスターの編成となっている。
《ドロール&ロックバード》はサイドデッキに採用されているのだが、地霊使いアウス》もサイドデッキになっているので単に外見のみで分別されているだけかもしれない。

初出時のレアリティはノーマル。
登場から暫くの間は評価が低い上に非常にピーキーなカードだったため再録機会がなく、当初はストレージの山からいくらでも見つけられる程度のカードだったが、評価が進むにつれノーマルとはいえ入手が難しい時期もあった。
環境の変化により評価が見直された後は「ストラクチャーデッキ-パワーコード・リンク-」で再録されたのを皮切りに、ストラクで再録されるようになった。
実質レアコレ系列のパックとなる「PRISMATIC ART COLLECTION」ではスーパーレア、シークレットレア、プリズマティックシークレットレアで再録されている。
同パックでは海外初出のイラスト違い版が収録されている。

手札誘発界の大御所である《増殖するG》とは収録パックが同じなため同期となる。
「EXTRA PACK Volume 4」は後に活躍する手札誘発となる《カオスハンター》《スカル・マイスター》も収録されている。




追記、修正はトリックスターに全ハンデスされた人にお願いします。

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  • 攻撃力0
  • 守備力0

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最終更新:2023年12月23日 14:28

*1 TCGなら10年、OCGなら11年