ドミノ(2023年の映画)

登録日:2023/11/13 Mon 00:00:03
更新日:2024/04/02 Tue 23:05:53
所要時間:約 10 分で読めます







ひと押しで〈世界〉は崩れ出す。



娘を探す刑事は、その鍵を握る‘絶対に捕まらない男を追い、〈世界〉に迷い込む。
かつてない映像体験! かつてないギミック! かつてないどんでん返し!



概要


『ドミノ』(原題:HYPNOTIC)は、2023年5月12日にアメリカで公開されたSFミステリー映画。
日本では2023年10月27日にワーナー・ブラザース映画とギャガの共同提供・配給で公開された。
監督・脚本*1・原案・製作・撮影・編集は『スパイキッズ』シリーズや『アリータ:バトル・エンジェル』などのロバート・ロドリゲス
また、彼の長男ロケットは編集、次男レーサーはプロデューサーの一人、三男レベルは作曲、四男ローグは動画コンテ、長女リアンノンは絵コンテを制作している。

ロドリゲスが本作の企画に着手したのは2002年のこと。
彼はサスペンス映画の神様、アルフレッド・ヒッチコックの名作『めまい』をワイドスクリーンで復元した作品に触発され、「ヒッチコック的なスリラーを撮りたい」と思い立った。
シンプルな1ワードのタイトルが多いヒッチコック作品にあやかって、本作の原題は『HYPNOTIC』(催眠術)と名づけられた。
「タイトルが思い浮かんですぐに物語の軸も思いついた。存在にすら気づかないうちに、欲しいものを何でも奪って去って行く悪役の話だ」
そして、本作の企画のどこに惹きつけられたかについては、このように語っている。

僕は映画を作ることが大好きだけど、昔はマジックも好きだった。というのも、マジックを見た時にみんなが驚く感じが凄く好きなんだよね。
本作も同様で、観た時には映画作りをしているとは思われないかもしれないけど、実は映画作りをしているんだ。
ある意味、映画を作る、観てもらうという行為は、みなさんを催眠にかけている(=「Hypnotized」)ことと同じだと思っている。
そして映画の場合はみなさんチケットを買ってきてくれるので、「催眠術にかかりたい」と思って観に来ているのではないかと考えているよ。

役者がいて、脚本があるのも分かっているとは思うけど、映画館のスクリーンに映し出される世界を信じて、笑ったり、怖がったり、面白いと思って友達に伝えてくれたり、
人によってはそのキャラクターの存在が自身の中で大きくなって、壁にポスターを貼って崇拝していることもあるわけだし。

しかし、彼自身大のお気に入りだというこの脚本だったが、企画はなかなか進まず、何度も修正が繰り返された。
特に後半とエンディングについては「人生経験をもっと積まなければ書けなかった」と振り返っている。

その後も本作の苦難は続いた。
撮影は2020年春に開始される予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で延期に。
候補に挙がったロケ地は次々と断念され、結局撮影はほとんどがロドリゲス自身が所有するトラブルメーカー・スタジオで行われた*2
追い打ちをかけるように、2022年末に主な出資者であったソルスティス・スタジオがコロナの影響で事実上の閉鎖。
「コロナのおかげで延期と再開の繰り返しになって、予算がかさみまくってたんだ。それにスケジュールもキツキツだったよ」
実際、海外配給権の先行販売で予算は限られていたため、予算節約のために55日間の撮影スケジュールを34日間に短縮する羽目になった。
つまり、映画を完成させられただけでも奇跡と言える状況だったわけである。

こうして実に20年の歳月をかけて完成した本作。
しかし前述の通り、本作の国内配給や海外セールを担当していたソルスティス・スタジオが閉鎖された事で孤立無援の状態に。
そのためまともにマーケティングができず*3、製作費6500万ドルに対してオープニング3日間の興収は約240万ドル、世界興収でも1500万ドルという、2023年最大級の爆死作となってしまった。
そういう事情もあるのか、日本でのキャッチコピーは項目冒頭の通り必死さが感じられるものとなっており、タイトルもネタバレ防止のためか『ドミノ』に変更されている。
が、これでは故トニー・スコット監督、キーラ・ナイトレイ主演の映画のタイトル*4とダダ被りである。
世に出るタイミングが悪過ぎたのだ……

作品の評価も「見事に騙された!」という声もあれば、「予告が『インセプション』みたい」「後出しジャンケンに次ぐ後だしジャンケン」という声もあったりと賛否両論
一方で、不可解な事が次々と巻き起こるシークエンスをテンポよくさばいていく手腕や、ミステリー映画ながら難解な仕掛けはなく、シンプルに観やすい点は評価されている。

あらすじ


オースティン警察の刑事ダニー・ロークは、一人娘ミニーが行方不明になった事件から立ち直れないでいた。
このために結婚生活が破綻した挙句、逮捕された容疑者は誘拐した事も、どこに連れて行ったのかもまるで思い出せないというのだ。
そんなある日、ロークと相棒ニックスは特定の貸金庫を狙った強盗が計画されているという匿名の通報を受け、銀行に向かった。
張り込みの際、ロークが目を付けたのは銀行の外にいた一人の怪しげな男。
その男が隣の見知らぬ女性に話しかけると、女性は突然「暑い暑い」と言いながら服を脱ぎだす異様な行動を取り始める。
そんな様子を見たロークは急いで狙われていた23番の貸金庫に駆けつけ、男より先に到着。目的の金庫を開けると、中に入っていたのは何とミニーの写真。
写真には、「FIND LEV DELLRAYNE(レブ・デルレーンを見つけろ)」というメッセージが書かれていた。
ロークは2人の警官を伴って屋上まで男を追い詰めるも、警官は突然暗示をかけられたようになってお互いを撃ち殺し、男は屋上から飛び降りた。
すぐに見下ろしたが、地面に男の姿はない。一体何が起こったのか。

その後ニックスの協力で、この事件の通報者が場末の占い師ダイアナ・クルーズである事が判明する。
最初は非協力的な彼女だったが、この店でも客がいきなり不可解な行動を取り、自殺する事件が発生。
ダイアナ曰く、この事態を引き起こす謎の男の正体こそレブ・デルレーンとのこと。
さらに彼女は、かつてはデルレーンと同じ組織に所属していたという。
果たして、事件の真相は? そしてミニーの安否やいかに?

登場人物


  • ダニエル“ダニー”・ローク
演:ベン・アフレック/吹き替え:森川智之

オースティン警察の刑事。
4年前、公園で一瞬目を離した隙に娘ミニーが行方不明になる事件に見舞われた。
さらにはこの事件がきっかけで妻とも離婚。心身のバランスを崩し、セラピーに通っている。
それでも職務に復帰するが、次々と人々が操られる異様な事件に遭遇。
この事から、人々を操った男こそがミニー誘拐事件に深く関わっていると確信。
ダイアナと出会った事により、相手の脳をハッキングし操る能力者「ヒプノティック」や、彼らを束ねる政府の秘密組織「機関(ディビジョン)」の存在を知る。
そして彼自身もまた、「ヒプノティック」の力を遮断する能力を持っている事が明らかに……


  • ダイアナ・クルーズ
演:アリシー・ブラガ/吹き替え:永宝千晶

オースティンのチャペル通りに店を構える占い師。
しかしこれは世を忍ぶ仮の姿で、その正体は「ヒプノティック」の一人で、デルレーンの元同僚。
デルレーンの悪事を止めるために銀行の強盗計画を通報し、ダニーに協力する。


  • レブ・デルレーン
演:ウィリアム・フィクナー/吹き替え:郷田ほづみ

悪の道に堕ち、「機関」を乗っ取ろうとした最強の「ヒプノティック」。
一度は拘束されたものの、それを見越して自らの記憶を消去し、6週間前に脱走。
特定のワードやイメージ、ディティールをトリガーに記憶が戻るよう、自らの潜在意識に細工していた。
そして記憶を取り戻す最後の鍵であるミニーの写真を狙い、ダニーをつけ狙う。


  • ニックス
演:J・D・パルド/吹き替え:関口雄吾

ダニーの相棒。
娘を誘拐されたダニーを気遣い、匿名で銀行強盗計画を通報してきたダイアナの住所を調べるなど協力を惜しまない。
しかし彼もまたデルレーンに操られてダニーとダイアナを殺そうとした結果、ダイアナに射殺された。
こうして指名手配犯になった2人は、ダイアナの師匠ジェレマイアが住むメキシコに逃げる事に。

  • ジェレマイア
演:ジャッキー・アール・ヘイリー/吹き替え:山路和弘

元「機関」の訓練士でダイアナの師匠。
彼の家を訪ねた一行は、「ヒプノティック」達を意のままに操る「ドミノ計画」について聞かされる。
「ドミノ」とは「機関」の秘密兵器であり、デルレーンはそれを狙っているとのこと。

  • リバー
演:ダイオ・オケニイ/吹き替え:伊藤健太郎

ダイアナの仲間で元「機関」のメンバー。
追跡の目を避けるために廃墟のような隠れ家に潜伏している。
天才的なハッキングの才能を持ち、何故ダニーが「ヒプノティック」の力を持っているか調べてくれたが……
そこから彼の別れた妻ビビアンが「機関」のメンバーだったという衝撃の事実が明かされた。
さらに深夜ダニーがこっそり彼のデータベースを調査すると、さらなる衝撃の事実が次々と明らかになる。

  • ミニー・ローク
演:ハラ・フィンリー/吹き替え:千本木彩花

ダニーの一人娘で、本名はドミニク。
4年前に失踪しており、ダニーの心に深い影を落としていた。
しかし匿名の通報で見つかった写真により、ダニーは尋常ならざる世界への冒険に出る事になるのだった。


余談


〇劇中、バーテンダーに対しグラスの中に小便を入れられるか賭けるジョークがあるが、これは『デスペラード』のセルフオマージュである。

〇「機関」のメンバーの制服は赤いブレザーで、『スパイキッズ』のサム・サムやその続編の磁石人間を思い出した方もいるはず。
これは「ロドリゲス自身が『エル・マリアッチ』の製作資金のために治験に参加した時、参加者は全員赤いシャツを着せられたという経験から来ているのでは」と劇場パンフレットで考察されている。


追記・修正は、化かし合いを続けながらお願いします。



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最終更新:2024年04月02日 23:05

*1 共同脚本はギャレス・エドワーズ版『GODZILLA ゴジラ』や『キングコング 髑髏島の巨神』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』『ゴジラvsコング』のモンスター・ヴァース4作品を手掛けたマックス・ボレンスタイン。

*2 メキシコの場面では『アリータ:バトル・エンジェル』のセットを再利用している。

*3 一応その後、ケチャップ・エンターテイメントという会社が国内配給会社となったが、小規模な会社である上マーケティング期間が数週間しかなかったため焼け石に水だったという。

*4 ちなみにこちらの内容は実在のバウンティハンター(賞金稼ぎ)、ドミノ・ハーヴェイの半生を描いた伝記映画で、2005年に公開された。