ひげを剃る。そして女子高生を拾う。

登録日:2024/01/14 Sun 20:30:00
更新日:2024/03/03 Sun 09:24:23
所要時間:約 4 分で読めます




片思いした相手にバッサリ振られ、ヤケ酒をした帰り道、

26歳のサラリーマン・吉田は路上に座り込む女子高生・沙優と出会った。

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』は「しめさば」による日本のライトノベル作品である。
「カクヨム」にて2017年より投稿がなされ、2018年から2021年にかけて角川スニーカー文庫にて書籍版が刊行された。
イラストは「ぶーた」と「足立いまる」

全9巻

略称は「ひげひろ

〇目次

【概要】


20代のサラリーマンと家出した女子高生が出会い、共同生活を過ごす様が描かれるヒューマンラブストーリー。
ヒロインの沙優の抱える心の闇と家庭事情に、主人公の吉田が向き合っていくことが本作の見所であり、家族が一度崩壊してしまった事情に悩まされ、価値観が歪まれた沙優の気持ちに驚く吉田だが、共同生活を経て、変わりゆく彼女の心境を見守りつつあり、彼女とどう向き合っていくのかが描かれる。
二人に血縁関係はないが、いわゆる「擬似家族」のような体験を通じて、吉田も沙優もこれまでのことを見つめなおすシナリオになっている。
…但し、後述するが序盤で吉田は明確に触法行為となる決断をしており、作中でもその罪を第三者から指摘されるくらいには危ない橋を渡っているため、
その行為を「沙優の更生のための必要悪」だと受け入れられるか(また吉田の罪と沙優の援助交際を通報しない周囲の人々の振る舞いを「優しさ」と解釈出来るか)で評価が分かれるとも言える。

2023年6月時点でシリーズ累計部数が300万部を突破している。
「このライトノベルがすごい」文庫部門2019年版で4位にランクインしている。

「足立いまる」によるコミカライズが2018年より「月刊少年エース」で連載されている。既刊11巻。
また、2021年4月から6月の期間でテレビアニメが放送された。全13話。

【あらすじ】

5年片思いした相手
にバッサリ振られたサラリーマンの吉田。
ヤケ酒の帰り道、路上に蹲る女子高生を見つけて

「ヤらせてあげるから泊めて」
「そういうこと冗談でも言うんじゃねえ」
「じゃあ、タダで泊めて」

なし崩して的に始まった
少女・沙優との同居生活。

家出JKと26歳のサラリーマン。
微妙な距離の二人が紡ぐ、日常ラブコメディ。
(公式HPより引用)

【キャラクター】


(主要人物)


吉田
CV:興津和幸
本作の主人公
IT企業に務める26歳のサラリーマン。
上司で想いを寄せていた愛依梨に告白するも玉砕し、ヤケ酒をして酔っていたところ、夜道に蹲っていた沙優を見つける。
彼女を泊めることになるのだが、その後、家出してきた彼女の境遇や歪んだ価値観を知り、彼女には真っ当に生きてもらうためにも、違法行為だとは感じつつも家事や労働をさせることを条件に宿泊を許可することになる。
間違った選択と行為ではあったが、結果的に丸く収まった稀少な一例であろう。
不器用なところもあるが基本的には優しく、お人よしな性格と無鉄砲なまでの行動力は沙優という少女の救いになった。

ちなみに本人は「年上で胸の大きな女性」が好みと主張した(その点では愛依梨はマッチしていたと言える)実際は沙優に対しても魅力は感じていたのだが、そこは自重して堪えている

荻原沙優
CV:市ノ瀬加那
本作のヒロイン。
北海道旭川市の高校に在籍している女子高生。
とある理由で北海道から東京まで家出してきたが、身寄りや収入源が無い為に自身の身体と引き換えに男性宅に泊めてもらう援助交際を繰り返してきたため、序盤では貞操観念を始めとした真っ当な価値観が無くなってしまっていた。
これは家出前後における学校での人間不信と家庭環境の崩壊事情、植え付けられた内罰的な価値観、孤独に苛まれてしまったことによるものである。

可愛らしい容姿に加えて、大きな胸を持っておりスタイルが良い。本人曰くFカップ。最初はこれで愛依梨に振られて傷心していた吉田を誘惑していた。
触れないHカップより触れるFカップの方がよくない?

こうした安易に身体の関係に持ち込もうとする考え方を改めさせようとする吉田の提案により、アルバイトや家事をすることを条件に吉田宅に泊めることを許可してもらう第三者な吉田の認定だけで本来保護者が必要な未成年のアルバイトは無理やろというツッコミは無しで
この共同生活によって、彼女の失ってきた家族への思いや擦れた価値観が変わっていくことになる。

後藤愛依梨
CV:金元寿子
吉田の職場の上司であり、彼が好意を寄せている女性。
吉田より2歳年上でIカップの巨乳の持ち主。
以前吉田から告白を受けたが、断っている。しかしその理由は…

吉田が沙優を家に泊めていることを知り、吉田の家を訪れ、彼女と話すことになる。女子高生という短い期間を援交で家々を渡り歩ている彼女の境遇に驚愕するが、短い期間だからこそ、自身を大事にしてほしいことを彼女に諭し、それ以降、彼女の相談役となる。

三島柚葉
CV:石原夏織
吉田の職場の後輩OL。
吉田が教育係となり面倒を見ている。映画好き。
ゆるふわ系の見た目だが、やや仮面をかぶっているところがあり、おじさん受けが良いという性分を自覚しつつ、「出来ない自分」を演じていた。そんな彼女でも親身に付き合ってくれた吉田に惹かれる結果になった。

最初は沙優の存在には否定的であったが、後に彼女の協力をしたいと考えるに至った。

結城あさみ
CV:川井田夏海
沙優が東京で出来た初めての同世代の友達。
見た目はギャル風身。沙優がアルバイトで働いているコンビニで知り合った。
見た目とは裏腹に友達思いの優しい性格。沙優のことを「沙優ちゃそ」と呼んでいる。
実は父は政治家、母は弁護士という超エリート一家で育ったお嬢様であるが、そうした家庭事情に反発したい気持ちがある模様。

(その他)


橋本
CV:小林裕介
吉田の同僚で妻帯者。
吉田とはよく沙優に関することで相談を持ち掛けられる。

矢口恭弥
CV:逢坂良太
沙優がかつて自身の身体と引き換えに泊めてもらった男性の一人。
バイト先で再会することになる。
再び沙優と肉体関係を持とうと迫るが吉田に阻止される。
吉田の沙優を泊める行為が違法であることを根拠に自身の振舞には目を瞑ってもらうことを持ち掛けるなど、腐った性根を持っているが、後にあさみから手痛いビンタをもらうことになる。以降、自身は沙優から手を引いた。

真坂結子
CV:石見舞菜香
沙優の高校時代の友人。
学校で独りになりがちな沙優に声をかけてくれた沙優にとって最初の友人。
地味目な容姿であることを自覚しており、自身を持っていなかったが、沙優はそんな彼女を大事な友人として接していた。

しかし、親が大企業の社長な上に当人の美人で同世代の中でも凛とした態度の沙優は一目置かれていたのだが、そんな彼女と結子が一緒に居た結果、「結子なんかが不釣り合いな相手と友達になるなんて生意気」などという理不尽な理由で目をつけられ、学校でのいじめが始まった。
そして、そのいじめをきっかけに精神的に追い詰められることになり、自ら命を絶つことになる。
初めてできた友人の自殺と、自分が自殺の遠因になったことへの自責の念が、沙優の人生を大きく狂わせてしまうことになる。

荻原一颯
CV:鳥海浩輔
沙優の兄。「おぎわらフーズ」の代表取締役社長でもある。
仕事上でも母親が上役にあたるため常に頭が上がらないが、かねてより妹の沙優を気遣ってきた優しい兄ではあったが母親との関係が崩壊した妹を気遣ってきた。
しかし、大金を渡して家出の一押しをしてしまい、あまつさえ家出した沙優が(一応金が無くなったら帰ってこいという一颯の忠告を無視したためでもあるが)路頭に迷って援交常習犯と化す事にも繋がってしまった。
こうした彼の行動に対して読者から賛否の声がある。
実際のところ、一颯自身もまた、家庭内不和から逃げるために仕事に没頭する大黒柱のような心境に陥っていたことを自覚していた。
仕事を放りだせず母に阿る他なく不可抗力ではあった。
とはいえ、母と敵対してでも妹を擁護するのでなく、妹に対して一定の義務は果たしたのだと自分に言い聞かせる為に、妹に金だけ渡して母と妹から距離をとって心理的に逃げていた自分の行動と選択を後悔し続けていた。

それ故に吉田に対する心象は複雑。
妹の気持ちに寄り添い味方になって更生の手助けをするという、自分に出来なかったことを兄の代わりに成してくれた男でもあるため、非常識なおバカのおっさんに対する呆れと同時に羨望と感謝の念も抱いている。


沙優の母
CV:柚木涼香
沙優の母親。
大企業を切り盛りする女傑と評せる企業家だが、その多忙さとのしかかる責任、父との別居状態も禍して常に精神に余裕がなく、元々沙優とも折り合いが悪かった。
そんな折に、結子の自殺に伴ってマスコミが家に押し掛けることになり、精神の不安定さに拍車がかかった。
母親はより一層沙優につらく当たり「アンタが友達を突き落としたんじゃ?」などと放言を口走ったのが止めとなって、彼女は家出してしまうことになった。

本来なら娘の精神フォローに回るべきだが、そもそも沙優に対して愛情があったかどうか疑わしく、彼女の家出の原因を作ってしまった張本人とされる。
最終的に娘探しを決意した理由も「娘の家出を周囲に隠したせいで、自分が娘監禁犯だと疑われたから」という自分の保身重視のものだったため、非難されても致し方ない側面がある。

家でから戻った娘と再会した後にも自分の非は一切謝罪どころか認めることなく、結局またもや致命的に拗れそうになる。
しかし、そこに居合わせた吉田が、無情な母親に説教するでもなく「沙優のことをもっと考えてくれ」と土下座して頼み込んで事態は一変。
母親が無関係な吉田の愚直さに呆気にとられた上に世間体を気にしたのもあって、高校卒業まで娘の面倒を見ることも承認し、沙優を勘当する決断は避けたのだった。


【テレビアニメ版】


2021年4月から6月までの期間でアニメ化された。
ほぼ原作通りの流れである。
アニメーション制作はproject.No.9。
シリーズ構成は赤尾でこ

(主題歌)


OP:「おもいでしりとり」
DIALOGUE+によるオープニングテーマ
ED:「Plastic Smile」
石原夏織によるエンディングテーマ。

【その他】


作品の根幹となる吉田の「未成年の沙優を保護者に連絡を取らず保護する」行為に関しては、現実では「未成年者略取」に該当する行為である。
原作者もこの事実について、読者に犯罪であることを留意するようにTwitter(現:X)で注意喚起している。
現実でも施設が多くの問題を抱えているので、現実とフィクションを混同しないのが大事ながらもこうした問題は度々起こり、賛否を巻き起こし活発に議論が交わされる。
だがそれでも、社会において正当な手続きというものはやはり存在する。
仮に子供側に虐待や育児放棄、親の死等「家に帰りたくない・帰れない」事情があっても、まず現実では警察や児童相談所に保護を依頼し、その上で正式に子供と同居する方法があるかを模索すべきであろう。


「追記・修正してあげるから泊めて」
「そういうこと言うんじゃねえ!」


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最終更新:2024年03月03日 09:24