ベルフェゴール(悪魔)

登録日:2012/02/23(木) 04:11:06
更新日:2022/03/23 Wed 17:58:21
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「女たちを皆、生かしておいたのか。
ペオルの事件は、この女たちがバラムにそそのかされ、イスラエルの人々を神に背かせて引き起こしたもので、そのために神の共同体に災いが下ったではないか。
直ちに、子供たちのうち、男の子は皆、殺せ。男と寝て男を知っている女も皆、殺せ。
女のうち、まだ男と寝ず、男を知らない娘は、あなたたちのために生かしておけばいい」
「民数記」



◆ベルフェゴール◆

「ベルフェゴール(Belphegor)」はユダヤ/キリスト教の代表的な悪魔
地獄の君主階級にある大物悪魔とされる一方で、中世から現代までの、やや俗的な民間説話にて登場して来る事が多く、
そちらの方面での話題が逆にこの悪魔の名を高め、広く伝播させている。

七つの大罪」では色欲か怠惰を司る悪魔として名前を挙げられる事がある他、
地獄に於いては悪魔軍団の武器開発を担当しているとも云われるが、根も葉もない後付けであろう。


【概要】

旧約聖書「民数記」に名前が登場する、異教の神バアル・ペオル(ベルペオル)が原型であるとされるが、
現在では中世に誕生した数々の民間説話でのイメージが定着してしまっている。

バアル・ペオルは古代ヨルダンのペオル山の神(女神?)であり、その響きからも判る様に多数に伝播していたバアル神の変形の一人とも考えられている。
(※或いは、単にペオル山の主(バアル)と云う意味とも)

しかし、中世以降に誕生したベルフェゴールに纏わる伝説と、現在までに伝わるイメージからは全く原型となる異教の神の姿を導き出す事は不能であり、
この為に記述媒体によってはバアル・ペオルとベルフェゴールを別の悪魔として紹介している例もある。

……以下に、それぞれの伝説を記すので参考にされたし。


【バアル・ペオル】

項目冒頭のド鬼畜なモーセの発言で有名な旧約聖書「民数記」に登場するモアブ人の神。
「民数記」によれば、イスラエルの民がモーセに率いられてカナン(パレスチナ)の地に入る前にモアブの地を訪れた。
モアブの娘たちは、バアル・ペオルに供犠を捧げるお祭りにイスラエルの民も招き、
バアル・ペオルを始めとする自分たちの神々(地元の神社を案内する感覚)を礼拝させ、食事をともにした。
イスラエルの「神(Y・H・V・H)」はこれに激怒、参加した者たちを死刑に処すようモーセに命じさせたが、
それでも怒りは収まらず、更に疫病をもたらして24000もの人々の命を奪ったという。
……心が狭いなんてレベルじゃねーぞ。

旧約聖書に於いて、この災害は「ペオルの事件」と呼ばれている。
また、4世紀の神学者ヒエロニムスは「列王記(上)」に登場する「モアブの神である憎むべき者」と記述されたケモシュ神はバアル・ペオルの事であると述べている。

バアル・ペオルの信仰に性的な儀式も含まれており、モアブの娘達がイスラエルの民を誘惑したのが「神」が激怒した理由であるとされるが、
古代バビロニアの神聖娼婦(巫女)の風習を始め、古代のメソポタミア起源の地域では人々が大地への礼賛を女性の肉体に準え、
また客人を迎え入れ新たな血を入れるのは当時の常識であった(地母神信仰)。

ユダヤの「神」が多大な権威を獲得したのには、それら異教の神話を徹底的に否定、攻撃したと云う事実があるからだが、
モアブ人にとってはもてなした客人に言い掛かりを付けられた上に攻撃されたのだから、青天の霹靂も良い所だったであろう。

ベルフェゴールを色欲の悪魔にして、魅惑的な肉体を持つ妖艶な女悪魔とする説は、この伝説から生まれた物であり、
性愛を司る金星の悪魔であると占星術では解説されている。


……尚、ペオル山はモーセの隠された埋葬地であるとも云う。


【ベルフェゴールの探求】

中世の古い諺であり、意味は「有り得ない事」を表す。

ある時、地獄で悪魔達の間に「地上に幸福な結婚があるのか?」と云う議論が起こり、ベルフェゴールが派遣された。
悪魔達は人間が教会の言う様に、調和して平和に暮らす事など出来る訳が無いと知っていたので、
地上が自分達の嫌う調和に汚されていない事を実際に確かめたかったのである。
……さて、実際に調査を開始したベルフェゴールは結婚生活により互いに泣かされる男女の姿をイヤと言う程に見続けた末に地獄に戻り「無理!」と報告した挙げ句、
徹底的な「人間嫌い(ベルフェゴール)」になったとされる。
……何とも皮肉の効いた話であり、また、これがベルフェゴールの名前の語源だとも云うが、完全な後付けであろう。

とは云え、結婚生活の幸福の皮肉を説明した説話としては非常に人気があったらしく、現在までのベルフェゴールのイメージを決定づけているのだと云う。


【その他】

コラン・ド・プランシーの描いた便所に座ったデーモン(鬼神)と云う強烈なイメージが定着しているが、
これは『悪魔の辞典』等で原典や文芸に通じていないとして、批判もされている。

しかし、一方でベルフェゴールを排泄物を捧げられた「屁の神」「男根の神」であり、山の穴や岩の割れ目に住むとの伝承もあるが、
これは同じくバアル神に由来する糞山の魔王ベルゼブブや、前述のバアル・ペオル神の伝承、
そしてプランシーの描いたイラストから想起されたイメージが習合(ごちゃまぜ)した結果なのだろう。

また、フランスでは「ルーブル美術館を夜中に歩き回る怪物」という都市伝説のキャラクターとして人気がある。
……ルーブル美術館に来訪した際には、トイレの個室の使用には十分に注意されたし。


【主な登場作品】

◆ゲーム『女神転生』シリーズ
高位の「邪神」か中位の「魔王」として登場している。

◆ゲーム『うみねこのなく頃に』シリーズ
煉獄の七姉妹の四女として登場。怠惰を司る。
主人に対して献身的だが、それは主人を自分なくしては動くことすらままならない豚にする為である。
いつも奉仕ばかりしているので親切にされるのには慣れていない。可愛い。

◆漫画『男子高校生の日常
おまけ漫画『女子高生は異常』において、アホJKトリオに対して中央高校の生徒会長が出したクイズに登場。
「女子高生が悪魔の名前なんざ即答するんじゃねー!!」と正解した二人にブチ切れた。

【パロディ】
◆漫画『家庭教師ヒットマンREBORN!
ボンゴレファミリー独立部隊ヴァリアーの七人の一人にこの名が冠せられている。一言で言うなら「ドSバカ王子」。
他の6人もレヴィ・ア・タンは「嫉妬」のリヴァイアサン、マーモンは「強欲」のマモン、ゴーラモスカは「蝿」つまり「暴食」のベルゼブブがモデル。

◆小説『灼眼のシャナ
主人公たちと敵対する異世界人『紅世の徒』の組織『仮装舞踏会(バル・マスケ)』の最高幹部“三柱臣(トリニティ)”の一人。
参謀“逆理の裁者(ぎゃくりのさいしゃ)ベルぺオルの名前のモデル。

【名前のみ】
◆PZL M-15 ベルフェゴール
ポーランドが放った複葉式ジェット農業機
あまりの奇っ怪な見た目から「ベルフェゴール」と名付けられた。
どれくらい奇怪なのかって、ジェット機で複葉式という時点で何を言ってるのかさっぱりわからない(もちろん編集者にもわからない)上、
エンジンはコクピットの上に付いている。
速度は200km/hという「世界一遅いジェット機」





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最終更新:2022年03月23日 17:58