大西巨人

登録日:2011/08/28 (日) 10:36:24
更新日:2023/07/24 Mon 21:42:53
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大西巨人は日本の作家である。
本名は巨人(のりと)で、(きょじん)がペンネーム。

1916年8月20日、福岡市生まれ。かつては1919年生まれとされていたが、これは誤記されたものが定着し、本人が特に訂正を申し入れなかったためだとか。

九大卒業後、対馬の砲兵隊に召集。終戦後、野間宏、坂口安吾らに認められ、『近代文学』などに掲載。
作品の数は少なく、本人も文壇から距離を置いたため、決して有名ではない。文学史上では既に名を残しているが。
文体も非常にガチガチの硬質で難しく、軽い気持ちで読むことは出来ない。基本的に純文学の作家であり、腰を据えて読んだ方がよい。
その小説作品においては該博的な実在及び非実在のテキストが極端に盛り込まれている。
批評作品も小説と同じくらい残しているため論理性という点も強い。

反権力・反差別的な思想を持っていたがゆえに痛烈な批判に富んだ問題作も多く、作家の間でも評価が分かれる存在である。
マルクス主義的唯物論者でもあったので戦後に共産党に入党していたが後に除名されている。共産党系批評家の宮本顕治との論戦が原因だろうか。

しかし、代表作、『神聖喜劇』は日本文学の金字塔と呼ばれ、大岡昇平、松本清張、埴谷雄高などに絶賛された。

基本的に軍隊・労働問題・差別問題・老後問題などの社会問題を扱っているが、ミステリーの評価も高く、『三位一体の神話』ではミステリーと純文学の融合に成功している。

代表的な批評作品には野間宏の『真空地帯』の軍隊の通俗的すぎる悪性として描いた点を批判する『俗情との結託』などがある。

いわば文体の難解さと本人の孤高を貫くスタンスから、一般の評価が遅れた作家である。
ノーベル賞の推薦に挙げられていたが、本人の高齢と作品の翻訳の難しさが問題になっていた。

2014年3月12日、97歳で死去。

代表作

◆神聖喜劇
超人的な記憶力と知識を武器に恐ろしく頭の良い旧日本軍の新兵が軍律を逆手に取って下士官や鬼軍曹をやりこめる話。23年に渡って書き継がれた日本文学の金字塔。
なお劇画調にて比較的近年に漫画化されているので、そっちから入ってみてもいいかもしれない。やっぱり文字は多いけどね

◆三位一体の神話
死んだ作家の友人が作家の娘と共にその真相に迫る。純文学とミステリーの融合が成功した希有な作品。
なおキャラクターのモデルになった人間が本人含めているという説がある。

◆地獄変三部作
著者本人がデビュー当時の文壇を痛烈に批判した作品。先輩の野間宏らがその影響を心配し、60年間発表が許されなかった。

◆縮図・インコ道理教
あからさまにこいつらをパロディにした疑似論考の形をとった作品。128Pと短いので読みやすい…かもしれない

他にもいくつかあるが、作家のサイト、巨人館に置いて、いくつかの作品が無料で配布されている。
なかには上記以外の代表作も含まれ、長編、短編問わず読むことが可能。



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最終更新:2023年07月24日 21:42