ホテイアオイ(植物)

登録日:2012/11/10(土) 19:31:06
更新日:2024/02/15 Thu 00:05:55
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ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)とは、水草の一種である。水面に浮かんで生える単子葉植物で、ミズアオイ科に分類される。
「ウォーターヒヤシンス」と呼ばれる事も。原産地は南アメリカ


○概要
外見上の特徴として、葉っぱの付け根部分が丸く膨らんでいる事が挙げられる。
浮き袋のような働きをし、ホテイアオイは水面に浮かんで生える事が出来るのである。
また、根からはまるでブラシのようにたくさんの根毛が生えており、こちらは重りの役割を果たして水面での絶妙なバランスを保っている。
ちなみに水が浅い時はそのまま根っこが泥の中に入り、普通の植物のような感じで大きく成長する。
葉っぱはタンポポのように横方向に広がるロゼットと呼ばれる形態をし、タンポポのように長い茎を伸ばす。
夏場に咲く花は青紫のものが何個かまとまっている形で咲き、見た目はとても綺麗である。
咲き終わった後は茎が曲がって水面に突っ込むような形となり、そこで種を実らせて水中にばら撒かれる。
最初は泥の中に根を生やすが、やがて水面に浮かぶようになり、見慣れた姿になる。
また、それ以外にも茎から先端に枝が伸び、そこから芽が生じる分裂増殖のような方法で個体を増やす事も可能。



…そう、これらの能力が、人間に美しさと醜さを同時にもたらすことになった。


○外来種として
ホテイアオイは、前述の通りその花が非常に美しい事で知られている。青紫色の花が沼や池の水面に咲いているのを見た事がある人も多いかもしれない。
日本でも明治時代に観賞用に持ち込まれ、各地で飼育されている。根っこが金魚の産卵に適している事も、各地に広がった要因の一つである。

…だが、各地に広まったホテイアオイは、やがてその美しさの裏にあるもう一つの顔を見せ始めるようになる。

南米出身と言う事もあり、このホテイアオイは寒さに弱く、日本でも冬はほとんどが枯れてしまう。
だが、その寒さをほんの僅かな個体が耐え抜いた時、前述の分裂増殖を経て翌年にはあっという間に個体数を回復させてしまうのだ。
一週間で個体数が二倍になるという凄まじい繁殖力の結果、
濁った池や沼など栄養分がたっぷりある場所ではあれよあれよと言う間に水面がホテイアオイで覆い尽くされてしまい、
水の中に光が届かないほどの個体数になってしまう。
さらにそうなった場合、今度は互いによりかかって背を高くするためにさらに緑の絨毯は分厚くなっていく。
その結果、プランクトンの減少やそれによる魚の減少などから生態系に深刻な被害を与えてしまう。
水の流れがせき止められてしまい、その凄まじい緑の絨毯は船ですら行き来する事が不可能と言う事態も招いてしまう。
あまりに増えすぎた個体が川の流れに乗って海に流れ込み、網に絡まって海の漁業にも影響を与えるケースまである。
さらに、被害はこれだけでは収まらない。
前述の通り、日本の冬の寒さにはほとんどの個体が耐えられずに枯れてしまうのだが、今度は水面を大量の枯死したホテイアオイが埋め尽くすと言う事態になる。
腐敗したその悪臭は凄まじく、水質の悪化も酷い事態となるのだ。
他にも、セイタカアワダチソウと同じようにアレロパシーを有しており、ライバルである在来植物を根こそぎ排除してしまう。

日本のみならず世界各地で今も被害を広げているホテイアオイは、現在世界の侵略的外来種ワースト100に認定され、
青い悪魔世界三大害草と呼ばれ恐れられるという事態にまで至っている。
…にもかかわらず、未だにこのホテイアオイを利用しようとする人は多い。

その見栄えの美しさや能力に惹かれ、環境を良くしたり水質を良くしようとホテイアオイを各地に導入しようと言う試みはあちこちで見られる。
確かにその浄化作用は注目すべき所があるが、そういう場合ホテイアオイの増えっぷりに面倒になってそのまま放置してしまう場合が多い。
そうなればもう自然破壊に協力したのと同然、環境は良くなるどころかさらに悪くなり、水質も目茶目茶になってしまう。
そもそも外来種を野に放つという事自体が非常に問題なのだが、その意識はまだまだ浸透していないのが現状である。

ただ、管理をしっかりとすれば、その美しい花は悪魔へと変わることなく、可憐なままでい続ける。
また、最近では増えすぎた個体を利用しようとする動きも起きており、ホテイアオイの繊維で作ったカゴなどが各地で発売されている。
ちなみに、花言葉は「恋の愉しみ」「恋の悲しみ」「揺れる心」。
美しく咲く青い悪魔に人々は愉しみと悲しみ、二つの心を覚える…のかもしれない。


★余談
「世界三大害草」の残りの二つは、ご存じアレロパシーのセイタカアワダチソウ、花粉症の被害も大きいブタクサだとか。


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最終更新:2024年02月15日 00:05