エボラ出血熱

登録日:2009/09/24(木) 20:32:01
更新日:2024/05/01 Wed 21:21:58NEW!
所要時間:約 14 分で読めます




※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

エボラ出血熱とは、スーダンまたはその周辺で発症した、世界的に認知されている病気である。要因はエボラウィルス。



概要

エボラウィルスとは、1976年6月にスーダン南部、ザイールとの国境に近い人口二万人の小さな町ヌザラで初めて感染者が現れたウィルスであり、
感染者である男性の出身地であるザイール、その付近に位置するエボラ川からとられた。生物危険レベル(BSL)4に分類される。

出血熱というのは、文字通り最初は40度近い高熱を発するとともに全身で出血症状を示して死に至ることから名付けられた。
ただし出血そのもので死亡することはなく、下痢による脱水症状や多臓器不全が死因となる。

エボラウィルスそのものは80~800nmのRNA(リボ核酸)ウィルス。一本鎖が基本だが、ネジ状だったりと定型はない。フィロウィルス科。



自然宿主は類人猿ではないのか、という憶測もたっていたが、未だ不明とされる。だが最近では食用コウモリが宿主ではないか、という説もある。




感染源は患者の血液、体液、排泄物、唾液などに触れただけで感染する。
空気感染は基本的にないとされるが、最近になって実は空気感染もするのではないか、と言われている。
少なくとも飛沫感染(咳やくしゃみなどによって飛散する「唾」や「鼻水」等の「エアロゾル」の中に含まれる形で拡散する形態。感染者から数メートル~十メートル前後の範囲が危険区域となる。またエアロゾルが付着し、乾燥する前のドアノブ等に触れても感染する)はする可能性が高い。
また、感染力そのものは恐ろしく高く、わずか数個のウイルス侵入で発症するとも言われる。
※ 通常の食中毒細菌で10万~100万個、強力な感染力で知られるノロウイルスでも100個程度の侵入が必要とされる。

よって、通常の意味での手洗いや消毒では皮膚の「しわ」や「毛根」等に入り込んだウイルスを殺菌し尽くすことは不可能に近く、
十分な手洗いで感染を防げる等とは思わない方が良い。
ただしフィロウィルス科に属する本ウィルスは性質上消毒液に弱く、医療機関レベルの徹底した消毒は十分に有効である。



症状

潜伏期間は一週間から二週間程度で、最大三週間とされる。潜伏中は感染力を発揮しない。
一旦発症すると患者はまず発熱ののち、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛と症状を増していき、
その後吐血、下血など、まさに身体中の穴と言う穴から血を吹き出して死に至る。


と、こういうと致死率が十割くらいに思われるかもしれないが実際は50~89%ほど。それでも高い。

但し、ギネスブックには2つ世界で致死率の高い病原体の一つとしてエボラウイルスが認定されている。(もう一つは後天性免疫不全症候群ことエイズを引き起こすHIV)
ついでに言うとこれほどに高い死亡率だとウィルスとしての性能はあまりよくない。宿主を殺してしまっては寄生の意味合いが薄まるからだ。

そこに至る順番としては、ウィルスが感染するとまずは血管の内側に張り付く。その後、そこで増殖し、血管の細胞を破壊して体を蝕んでいく。まことに恐ろしい。





もっとも恐ろしいのは、未だに血清が作られていないことである。
何故ならば、このウィルスを扱うのにはバイオセーフティーレベルの最高レベル(レベル4)相当の厳重過ぎる程の設備群を備えた最高峰のウィルス研究所でなければいけないからだ。
具体的にはほかの施設と完全に隔離されていて、認定された人間以外は実験区域付近に 近づく事も含めて 厳禁(幾重ものセキュリティゲートがある)、実験区域への入退室の際は必ず化学防護服を身に着け複数の専用のシャワーを浴びなければならない、実験は必ず2人以上で行う…など。実験区域内は換気系の全てが幾重もの高精度フィルターや独自の機構によって外部と完全に遮断されている。該当ウィルスを扱う際は絶対に最高クラスの安全キャビネット越しでなければならず、実験ひとつとってもまさに命がけである。
しかし近頃、東京大学の某教授のつくりだしたワクチンをマウスに試したところ、二週間ほどは普通のマウスと同じようにしていたらしい。

なお、血清についてだが作られていないと記載したが、どちらかと言えば作りようが無いというのが現実な話。
このウィルスは遺伝子変化による突然変異が起きるスピードが速すぎるからであり、
血清が間に合わなかった場合はその変異版に合わせた血清が必要となってしまう事になる。

…とはいえ、変異性についてはインフルエンザウイルスを想像してもらえばわかるが、ワクチン生産ができないというわけではない。エボラにワクチンがない最大の理由は、被害が完全に「対岸の火事」だったからである。所詮アフリカの一集落が壊滅したところで先進国には何ほどの痛痒もない、それほど有効期間が長くないワクチンを大量生産してもまったく利益にならない。悲しいことだがこれが偽らざる実情だった。つまり「できない」ではなく「やらない」だったのである。これが覆ったのは2014年の大流行で、1万人を超す大量の死者を前に、ようやく各国も対応に乗り出したところ。基礎的な知見は蓄えられつつあり、大流行の兆しがあればワクチンの量産に移行可能な体勢が作られるまでもう少しだろう。



日本の法律では一類感染症に分類される。
現在七疾患あり、エボラ出血熱の他に、クリミア・コンゴ出血熱、天然痘、南米出血熱、ペスト、マールブルグ熱、ラッサ熱がある。
ついでにこれにかかる、もしくは感染の疑いが発覚すると個人の権利を無視した強制措置をされる。隔離病棟に強制入院などがそれにあたる。

ちなみにエボラ出血熱が発見された周囲にそれの対処として軍隊まで派遣された。
だがこれは救援活動などではなく、感染疑惑者をその地域へ押し込めておき外に出ないようにする、というものだった(住民が勝手に出ようとしたら殺害も止む無いレベル)。
要するに強制的なクローズドサークルの作成である。



バイオテロの危険性もA級に認定されている。

また、種の保存という観点から見てみると、

  • 宿主がすぐに死んでしまうので繁殖しにくい
  • 潜伏期間が短く、発症までに宿主があまり移動しないので広まりにくい

と、強すぎる毒性とは裏腹に生物としては弱い部類に入る。



エボラちゃん

文字通りエボラウイルスを擬人化させた萌えキャラ。
元々は日本のイラスト投稿SNS『pixiv』で投稿されたキャラクターであったが、そこから海外の4chan等に転載・拡散されたのをキッカケに一気に話題となった。
モチーフがモチーフなだけに一部からは不謹慎と批判されたりもしている(主に台湾)。
のちに天然痘を擬人化したようなキャラが現れたとか(笑)




追記・修正お願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 病気
  • 要宇宙服着用
  • 20世紀少年
  • Dr.コトー診療所
  • バイオハザード
  • LEVEL4
  • エバラ焼肉のたれ
  • オメガトライブ
  • デボラじゃないよエボラだよ
  • エボラ出血熱
  • エボラちゃん
  • ウイルス
  • 伝染病
  • 一類感染症

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年05月01日 21:21