ストラディバリウス

登録日:2012/04/17 Tue 11:28:29
更新日:2024/04/19 Fri 20:49:10
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概要


ストラディバリウスとは、イタリア北西部のクレモナで活動した弦楽器製作者、アントニオ・ストラディバリが製作した弦楽器を指す。アントニオといってもこの人とは関係ない。
アントニオの正確な生年月日は残っていないが、1644年あたりに生まれたらしい。
師事して技術を学んだ後、自分の工房を開き独立した。没したのは1737年12月18日であると言われている。

その出来は、「ストラディバリウスを超えるバイオリンは誰も作れないだろう」とまで言われるほど。
なお、バイオリンが特に有名だがヴィオラやチェロもそこそこ製作されており、いずれも相当な名器として知られる。しかし有名すぎるせいか贋作も多い。
というか、今のバイオリンの殆どはストラディバリウスを手本にして作られており、それらコピーモデルはまとめてストラドモデルと呼ばれている。

また、個別に二つ名がついている場合もある。

例)
  • 裏板のニスの光沢がイルカみたいに美しいから「ドルフィン」
  • メディチ家がアントニオ猪木に製作を依頼したものの一つだから「メディチ」
  • テールピースに救世主の彫り物があるから「メシア」


さて、このストラディバリウス。
オークションに出ようものなら、簡単に億までいってしまう代物である。

そのブッ飛んだ価格から、さぞ格調高い高い場でしか使われないと思うだろうが、『ストラディバリウスを聴こう』といった主旨のコンサートは意外と各地でやっていて、我々一般人にも麗しい音色を聴く機会は実は結構ある。


日本(人)とストラディバリウス


現存しているストラディバリウスは約600挺。そのうち十数挺は日本音楽財団が所有しており、ヴァイオリニストに無償貸出している。
2011年6月、日本音楽財団は所有しているストラディバリウス(1721年製、二つ名:レディ・ブラント)を英国オークションに出品、
その売り上げを東日本大震災の義援金にした。
落札価格は円に換算すると、なんと約12億7000万円

( ゚д゚) ………。

1挺でこれである。
この価格は、これまでのストラディバリウスの最高値の4倍に相当する。

理事長曰く、「これは目茶苦茶大事なコレクションのひとつだけど、日本人同士でできることは何でもして助け合わなきゃね」(大意)
さらに、日本音楽財団が所有する楽器を売却したのはこれが初めてのこと。

バラエティ番組『芸能人格付けチェック』においてヴァイオリンの演奏が音感問題で取り上げられる際、使われる楽器はほぼこのストラディバリウスであるといっていい。

ヴァイオリニスト垂涎の逸品ゆえ、家を売ってストラディバリウスを買った日本人女性もいる……お子さんのように愛でているそうです。


フィクション作品において


  • 『シャーロック・ホームズ』
    バイオリン演奏を趣味の一つとしているホームズが、質屋で安物と勘違いされて5,6万円ほどで売られていたストラディバリウスを発見し、真相を店主に教えずに買ってきたというエピソードが存在する。

  • 名探偵コナン
    ストラディバリウスの所有権が発端となった音楽家一族の連続殺人事件の真相を暴く『ストラディバリウスの不協和音』というエピソードがある。

  • 超人機メタルダー
    ストラディバリウス(作中では「ストラディバリ」と呼称)を片手に音楽攻撃で戦うラプソディーという敵キャラが登場する。本当は心優しい性格で、戦いが終わった後は遊園地で余生を過ごす事となった。

  • METAL MAX2
    バトー博士が設計してくれる戦車のバリエーションとして「ストラディバリ」名義で登場。造形モデルはオリジナル版だとVI号突撃臼砲シュトルムティーガー、リメイク後はV号駆逐戦車ヤークトパンターに見える。

  • 真・女神転生
    隠し悪魔である「魔人ディビット」が奏でるバイオリンとして登場。同作では倒すと「ストラディバリ」名義で落とすことがある。とてつもない性能をした女性用武器だが、入手はあまりにも難しい。






以下浪漫をぶち壊す現実の話。悪ノリ注意。





~ストラディバリが生きた時代~


「時代はヴァイオリンだぜw」
「売れるから兎に角量産しようぜwwww」
「おkやろうずwwさくっと作ってさくっと売ろうぜw」

しかし、アントニオは違った。
彼は手抜きすることなく、ヴァイオリンを当時としては高い技術により、ひとつひとつ丁寧に作り上げた。
その精度の高さは、当初から評価された。

そして時は流れ、ヴァイオリン需要は飽和を迎える。
結果、安く質の悪いものは負け、良いものだけが残った……。

実は、「何故彼が手を抜かなかったのか」は不明である。
職人としての誇りが許さなかったのではないか、という見方もあるが、推測の域を出ない。

時はさらに流れる。

耐用年数が長くなれば、その分活躍の場も増える。
そして、有名なヴァイオリニストが愛用したとする。

「あの人が長く使うってことは、それほど良い品なんだな」
「そういえば、超有名な〇〇さんも使ってたっけ」

そう。奏者以上に楽器がすごいのだと、一般人は思いこんでしまった。
そしてブランド名が独り歩きし、ストラディバリウス=ヴァイオリンの神という図式になったのだ。
実際は、周りが次々と姿を消す中、その高い品質により価値を保ち続けたロングランナーと表現するほうが正しいだろう。

確かに歴史的な価値もあるだろう。
しかし、奏者がいなければその真価は引き出せない。

とある番組にて、一流のヴァイオリン奏者を集めストラディバリウスと国産の物を含め、4~5台の異なるヴァイオリンの音色の違いをテストした事があった。
一人一人にヴァイオリンの音を聞かせてどれがストラディバリウスでどれが国産のもので、と指定していく。

その結果……。

きっちり正解した奏者はいなかった。
それどころか、国産の安いヴァイオリンとストラディバリウスとの区別が付かず、国産のものをストラディバリウスと名指しした演奏家もいたという。



【余談】
言ってしまえば、ストラディバリウスのその価値の秘訣は、先述したようなネームバリューによるブランディングもそうだが、ボディに塗装されているニスの素材の正体が判らない(たかがニスと思うなかれ、これはヴァイオリンの音色の命と言っても過言でもないほど音質を左右するのだ)ことにもある。
作者のアントニオが生きていた時代は太陽の黒点の関係で気候が現代と違い、そのため材料となった木材も現代のものと性質が違う(寒い環境を生き抜いていたため年輪は薄く多く積み重なり、非常に密度が高い)、そして、オリジナルが製造されてからかなりの年月が経過しているがゆえの良い意味での経年劣化(いわゆるエイジング)を再現できない等、現代科学をもってしても完コピできない要素が多々あり、いま現存している個体に頼るほかなく、これ以上増産する事が不可能という点にある。
要するにロストテクノロジーというやつである。


そんな中、2011年に、北米放射線学会議(RSNA)がオリジナルの音色にかなり近いコピーの製作に成功したという発表をした事がある。

発起人は放射線科医にして元ミネソタ大学助教授のSteven Sirr氏。
同氏の談によると「銃で撃たれた人を診たときのこと。患者が手術に運びだされたあと、練習に持ち込んでいたヴァイオリンをスキャナに突っ込んでみた。
色々向きを変えたりして見ているうちに、これはじつに興味深い観察対象だと気づいた」そうな。

コピディバリウスを製作する為に1000回以上のスキャンをくり返し、
虫食いや乾燥によって発生する小さな亀裂が楽器にあたえる影響や、長年の使用で生じた歪みまで分析。
さらに数百年を経て変化した木質まで考慮して材質を選び、楽器職人が完成させたという。


追記、修正はストラディヴァリウスを手に入れるため家を売ってからお願いします。

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最終更新:2024年04月19日 20:49