ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0924 路地裏(前)
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ankoss
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ここはある街の路地裏。
廃棄されたのであろう、放置された古タイヤの影にうごめく汚饅頭たちがいる。
「おさー わかるよー もうすぐよるなんだねー」
「むきゅ! まだよ! もうすこしまつのよ!」
長と呼ばれたのはゆっくりぱちゅりー。体の弱いぱちゅりー種が街中で生き残っているのは珍しい。
ゆっくりはその性格上、無駄に動いたり大声で叫ぶことが多いのであまり燃費がよろしくない。
その上ぱちゅりー種は少食なので食いだめができず、定期的な食料確保が難しい街では栄養失調になりやすい。
力も弱くストレスにも弱いぱちゅりー種が、過酷な野良生活で生き残るのは珍しいと言える。
しかし、この長ぱちゅりーはいわゆるゲスであった。
ゲスならではのずる賢さを生かし、多くのゆっくりを率いる立場を手に入れたのだ。
手足となるゆっくり達を使うことで十分な食料が取れ、ぱちゅりー種にしては丈夫なゆっくりになっていた。
今は厳選した配下のゆっくり達を連れてレストランの裏路地の古タイヤの影に隠れている。
長ぱちゅりーの下調べどおりなら、そろそろ店の新入り店員が生ゴミを捨てにくるはずである。
このレストランは、いつもは生ゴミもマニュアル管理しているので手が出せないでいたが、
最近入った新入り店員はマニュアルをあまり守っておらず、生ゴミを出しっぱなしにするのだ。
野良ゆっくりにとってはありがたい話である。
ただし、新入り店員が生ゴミを捨てる当番は週1回しかない。
それ以外の日はマニュアル指導された店員が、ゆっくり対策通りに生ゴミには殺ゆ剤を投与して捨てている。
つまり、他の店員が捨てる生ゴミを食べるとゆっくりは死ぬのである。
それゆえ新入り店員の日を覚えることができないゆっくりにとって、このレストランは鬼門でもあった。
だが、この長ぱちゅりーはとても頭がよかった。時計やカレンダーを理解できるほどである。
何度もレストランを観察し、新入り店員の日を特定していた。
ガタンッガタンッ…ガチャ
「よっこいしょ… うわっ今日は寒いな…」
店の裏口を開けて、新入り店員がゴミ袋をかかえて出てきた。
(むきゅ! きたわよ! みんなしずかにね…)
新入り店員は寒さに震えながらポリバケツにゴミ袋を詰め込むと、蓋もせずにさっさと店内に戻っていった。
「…いったようね。 みんないくわよ!」
「「「「ゆー!」」」」
古タイヤの影からぞろぞろと這い出るゆっくり達。まずは足の速いちぇんが飛び出した。
「わかるよー たおすんだよー」
ドンッ! ガタンッ!
その俊足を生かし、速度の乗った体当たりでポリバケツを倒す。そしてそのまま道に飛び出して警戒に入る。
裏路地とはいえ人が通る可能性がある。ちぇんは主に周囲を警戒する護衛役のようだ。
「「「「あとはまりさたちにまかせるのぜ!」」」」
次にまりさ達だ、おぼうしを使うことによりたくさんの荷物を運ぶことができるため、運搬役には最適である。
ニ匹のまりさがおぼうしからオール状の棒を取り出し、ポリバケツから生ゴミをかき出しはじめた。
残りのまりさ達はおぼうしをひっくり返して並べたあと、順番に生ゴミをくわえておぼうしに運び込む。
まるで流れ作業のような連携された動きで、あっというまに生ゴミが運ばれていく。
「…うっめ! これめっちゃうっめ!」
「がまんできなかったんだねー わかるよー でもたべるのはかえってからだよー」
一匹のまりさが我慢できずに生ゴミを食べ始める。ちぇんが注意するが止まる気配もない。
長ぱちゅりーはそれを横目で確認しつつも注意はしなかった。それよりも自分のおさげをじっと見ている。
よく見るとおさげになにか付いてる。どうやら子供用の腕時計のようだ。
「むきゅ! そろそろまずいわ! いそいでかえるわよ!」
ポリバケツを倒してからきっかり5分後。
腕時計で時間を計っていた長ぱちゅりーは撤退命令を出す。
おぼうし一杯に生ゴミを詰め込んだまりさ達が、次々と古タイヤの影に戻ってくる。
そのまま古タイヤの影にある側溝の穴へと飛び込んでいく。どうやら通路代わりに利用しているようである。
「おさー あのまりさがまだなんだねー」
「むーしゃむーしゃ! しあわせー!!」
つまみ食いをしていたまりさがまだ食べ続けていた。運搬役というのをすっかり忘れているようである。
「ぱちゅがなんとかするわ、ちぇんはみんなをつれてもどって」
「わかるよー ゆっくりもどるよー」
そうしてまりさと長ぱちゅりーを残して、ゆっくり達は側溝へ消えた。
まりさ種は運動能力が高いとはいえ、おぼうし一杯の荷物があるとその移動速度はかなり遅くなる。
そのため、先に戻ってもらったのである。
長ぱちゅりーはひとりで古タイヤの影に隠れてまりさを観察していた。
(…むきゅ! あれだけたべてもなんともないならだいじょうぶね!)
あのまりさは新入りでしかもゲスだった。同じゲスとして長ぱちゅりーには感じるものがあったのだ。
ゲスと知りつつ食料集めに参加させたのは、ゲスなら必ずつまみ食いをするだろうと予想してだ。
つまりはゲスまりさを毒見役にしたのだ。
新入り店員の日は殺ゆ剤は投与されていないはずだが確実ではない。
人間の気分次第では投与されている可能性があるからだ。
(ゲスのやくめはおわりね)
長ぱちゅりーは小石を2個口にくわえ、レストランの裏口に向かって2連射で吹き付けた。
コンッコンッ
ガチャ「…はーい?」
長ぱちゅりーの投石を、ノックと勘違いした新入り店員が出てくる。
「…あれ? 気のせいだったかな… あっ! ゆっくりかよ!」
まぬけなことにゲスまりさはまだ食べ続けていた。よほど腹が減っていたのだろう。
「むーしゃむーしゃ! しあわ」グシャ!ブシュー!
新入り店員に踏み潰されて、目と口とあにゃるから餡子を噴出しながらゲスまりさはこの世を去った。
(ゲスはにんげんさんにせいっさいっされてね! むきゅきゅきゅ!)
ゲスはかならず群に迷惑をかける。ぱちゅりーの群には役に立たないゆっくりはいらない。
長ぱちゅりーはこの慎重で狡猾な性格で今まで生き残ってきたのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
「むきゅ! みんなおつかれさま!」
「きょうもたいりょうなんだねー! わかるよー!」
長ぱちゅりー達はゆっくりプレイスへ戻ってきた。ここは古い雑居ビルの床下である。
ゆっくり達はビルの路地裏にある床下換気口から出入りしていた。
換気口は非常階段の影にあり、さらに捨てられた角缶などを使ってけっかい!を張ってある。
また、ビルの1階にあるボイラー室がゆっくり特有のうるさい声をかき消してくれる。
これらの要素に守られ、ゆっくり達は人間に見つかることもなく穏やかに過ごしていた。
「まりさたちはごはんさんをおいてくるのぜ!」
「ちぇんはじゅんかいにいくよー わかってねー」
「むきゅ! おねがいするわ!」
長ぱちゅりーはまりさ達とちぇん達を見送りながら、昔を思い返していた。
長ぱちゅりーにはなぜか過去の記憶が無かった。気付いたらこの路地裏にいたのである。
そんな彼女にあったのは人間への絶対的な恐怖と、なにがなんでも生き延びるという生への渇望であった。
長ぱちゅりーは人間には絶対かなわないことを心得ていた。
そこで彼女が取った行動は『徹底して人間から隠れる』ことであった。
人間がまずやってこない床下をおうちとして選び、移動も側溝や物陰を利用し、目立たないように努めた。
さらに時間や日付の概念が理解できるので、誰よりも正確に安全に生ゴミを漁ることができた。
そのうち、桁違いに頭が良い長ぱちゅりーの手腕がうわさになって、彼女に付き従うゆっくり達が出てきた。
大半が長ぱちゅりーを利用しようとしたゲスであったが、逆に利用されてずっとゆっくりしていった。
そうやって選別された聞き分けのよいゆっくり達を手に入れたことにより、色んなことがやれるようになった。
まずは種ごとに役割を与えることで作業の効率化を図った。
まりさ種には主におぼうしを使った食料調達役に。
ちぇん種にはその機動力を生かした護衛・偵察役に。
ありす種にはとかいはな判断力でおうちの拡張・整備役に。
れいむ種には得意なお歌を使った子育て役に。
この役割分担により、少数精鋭で一気にゴミ捨て場を漁るようにした。しかも、ゴミを散らかさずにだ。
人間がゴミを漁るゆっくりを嫌う理由に、食べれるものを漁るのでゴミが散らかるというのがある。
そこで、ゴミ袋を丸ごと持ち去ることにした。おうちに運びこんでから食べれるものを仕分けるのである。
この手法は食べれないものも持ち去るので無駄もでた。
だが、ゴミ捨て場の滞在時間が減ったため、人間に見つかって潰されるゆっくりが格段に減ったのだ。
それに、ゴミ袋が1つ2つ消えたところで困る人間はいない。
むしろ群が縄張りにしたゴミ捨て場はキレイになったぐらいである。
キレイなゴミ捨て場にはゆっくり対策も取られなくなり、楽々と食料を集められるようになった。
そうして安定した食料供給と、安全なゆっくりプレイスが揃った彼女らは、爆発的に数を増やした。
通常、街では狩場(主にゴミ捨て場)が限られているので群と呼べるほどのグループは形成されない。
1つの狩場につき2~3家族の小規模グループが縄張りとして居つくのが普通である。
そもそも群とは外敵に対抗するための集まりのことだが、ここは人間の街である。
ゆっくりが集まったところで人間には対抗できないし、むしろ目立つので加工所に通報されるだろう。
しかし、このゆっくりプレイスには20家族以上、赤ゆっくりを含めれば3桁に届く数が生活していた。
長ぱちゅりーひとりから始まったこのゆっくりプレイスは、街中でありながらりっぱな群になったのである。
物思いにふけっていた長ぱちゅりーにれいむが話しかけてきた。あのゲスまりさの番である。
「おさ! ゆっくりおかえりなさい! …ゆ? れいむのステキなまりさは?」
「…むきゅ。 まりさはにんげんさんとたたかって、えいえんにゆっくりしちゃったわ」
「ゆわわわ! ぞんなあああああ!! れいむひとりじゃあかちゃんそだてられないのにいいい!!」
まりさの死を悲しむより先に自分の心配をするれいむ。ゲスの番は当然ゲスのようだ。
(ゲスなれいむはひつようないわね)
そんなゲスれいむに長ぱちゅりーはささやいた。
「むきゅ、きをおとさないで。 とくべつにあまあまをあげるからげんきをだして」
「ゆっ?! あまあま?!」
あまあまと聞いて急に生き生きとしだすゲスれいむ。さすがしんぐるまざー(笑)である。
長ぱちゅりーはゲスれいむにだけ見えるように白い錠剤状のあまあまを取り出した。
「これはラムネさんといって、とってもおいしいあまあまよ。 みんなにはないしょよ」
「むーしゃむーしゃ! しあわZzzzzzzz…」バタンッ
ゲスれいむはあっという間にラムネを食い尽くすとそのまま倒れた。
ゆっくりはラムネを吸収すると眠りに落ちるのである。
「むきゅ! れいむがたおれたわ! いそいでちりょうしつに!」
そして治療室と呼ばれる一室に運び込まれるゲスれいむ。
ダンボールの壁で仕切られたその一室の中央には、コンクリートブロックが2つ並べて置かれている。
これが治療台のようで、ゲスれいむはその上に寝かされる。
「れいむのちりょうをするわ! むずかしい『しゅじゅつ』になるから、だれもはいらないように!」
ひとりになった長ぱちゅりーは、ブロックの影に隠してあった先が細くなった金属棒を取り出した。
ゴミ捨て場から拾ってきたのだろうそれは、カクテルの氷を削るのに使うアイスピックだった。
慣れた手つきで口に咥えると、ゲスれいむのあにゃるに先を当てる。
(ゲスはえいえんにゆっくりしていってね! むきゅきゅきゅ!)
そうして慎重に角度を合わせると一気に突き刺した。
ズブッ「ゆ゛ぶぶっ…」
ゲスれいむはアイスピックで中枢餡を一突きにされ、口とあにゃるから餡子を垂れ流して動かなくなった。
ゆっくりは中枢餡を傷つけられて死ぬと、中枢餡によってコントロールされていた体中の餡子が弛緩する。
そうなると穴という穴から体液や緩くなった餡子を流出する。具体的には涙やしーしーやうんうんを漏らすのだ。
長ぱちゅりーがやったようにあにゃるから一刺しで殺すと、傷が目立たないうえに漏れたうんうんで隠れてしまう。
こうなるとゆっくりの目では突然死したようにしか見えない。犯行の瞬間さえ目撃されなければ完全犯罪の成立だ。
うまくいったと笑みを浮かべる長ぱちゅりー。
アイスピックを隠すと神妙な顔つきを作り、治療室から外へ出る。
「…おさー? れいむはー?」
「…むきゅ、ごめんなさい。 ぱちゅもがんばったんだけど、ておくれだったわ…」
「…わからないよー…」
「…いつものとおりみんなでゆっくりたべましょう。 それがれいむのためにもなるわ」
この群では死んだゆっくりは食葬にしていた。いつ食糧不足になるかわからない街ゆっくりの宿命である。
こうして長ぱちゅりーの意にそぐわないゆっくりを秘密裏に間引きし、群の食料不足の解消にも役立たせていた。
(ゲスとはさみはつかいようね! むきゅきゅきゅ!)
ゲスれいむの食葬も終わり、ゆっくり達は持ち場に戻り、割り当てられた仕事を再開した。
それではここのゆっくり達の生活を見てみよう。
このゆっくりプレイスはビルの床下なので、コンクリートの支柱と土台が飾り気もなくあるだけである。
その一画にダンボールハウスのおうちが整然と並んでいる。ゆっくり達の住宅街となっているここはありす種が受け持つ区域だ。
床下なのでおうちが無くとも雨風に困ることはないはずだが、ゆっくりの習性としておうちは必須なものらしい。
「ぐあいはどうかしら? そろそろしゅっさんっ!しそう?」
「ダンボールさんがこわれてるわ! とかいはじゃないわ~」
今はまだ仕事の時間なのでおうちにはにんっしんっ!した母親ゆっくりしか残っていない。
ありす種はにんっしんっ!したゆっくり達のサポートや、おうちのメンテナンスを行っている。
とかいはなコーディネート力を生かし、痛んだおうちを直しているのである。
また、新たに番になったゆっくり達のおうちを作るのも、それらの材料であるダンボールや新聞紙を集めることも、
さらには粗大ゴミの日に捨てられる布団や毛布を、都会派な観察力で見つけ出してくるのもありす種の仕事だ。
この区画はボイラー室に近いところにあるので、寒い冬も比較的温かく過ごすことができるであろう。
「まったりのひ~♪ ゆっくりのひ~♪ すっきりのひ~♪」
「「「「ゆっくち~♪」」」」
さて、おうちには子ゆっくりがひとりもいなかったが、彼女らは別の一画に集まっていた。
コンクリートブロックが塀のように取り囲む一画。ゆっくり達の保育所となっているここはれいむ種が受け持つ区域だ。
ブロック塀は成体ゆっくりなら飛び越えれるが、子ゆっくりには飛び越えられない。脱走による迷子防止のためである。
また、この区画は小さく千切られた新聞紙が敷き詰められている。ここで遊ぶ限りは子ゆっくり達は怪我をすることはないだろう。
さらにはゴミ捨て場から拾ってきたであろう、人間の子供の玩具などが沢山用意されていた。
保育所に子ゆっくりを安心して預けておけるので、親ゆっくり達はゆっくり仕事に集中できる環境になっていた。
「ゆっくりすててくるのぜ!」
「ゆっくりきをつけてね!」
こちらの区画は群の生命線になる食料庫だ。ボイラー室からは一番遠くて寒い一画を利用している。
断熱がわりに発泡スチロールで覆ったそこは温度が低く天然の室のようだった。ここにある限り食料は長持ちするだろう。
食料庫の前では、さきほどまりさ達が運んできた生ゴミが置かれている。
手の空いているありす種やれいむ種が食べれるものを仕分けしていた。
長持ちする食材は食料庫の中へ、痛みやすい食材は今夜の群の食料になるようだ。
食べれないゴミはまりさ種がおぼうしと玩具のバケツに入れて外の川まで捨てに行っている。
バケツを使うのは帰りに川の水を汲んでくるためだ。このプレイスには水場が無いので汲んでくるしかないのだ。
「わかるよー けんかはだめなんだねー」
「いじょうはないよー つぎをまわるよー」
そんな中をちぇん種が巡回していた。これだけの群になるとゆっくり同士でのイザコザも起こりやすい。
それらを機動力の高いちぇん種が見回ることにより、すばやく発見し取り押さえるようにしている。
また、ビルの外周のあちこちにある床下換気口から侵入者がこないように見張りもかねている。
換気口を塞いでしまえばよいのだが、明かりの取り入れ口でもあるので完全に塞ぐことはできない。
防犯として入り口以外の換気口回りには、ゆっくりできないとげとげした石などをばら撒いてある。
「むきゅー。 もんだいはないようね」
これらはすべて長ぱちゅりーひとりが考え出し、監督していた。
役割分担は単一作業しか知らぬゆっくり達にもわかりやすく、街中で隠れ住んでいるとは思えないほどうまく機能していた。
ゆっくりらしからぬ知能を持つ長ぱちゅりーによって、このゆっくりプレイスは大いに繁栄していった。
すべては自分が生き残るためではあるが、それを悟られないよう、慎重に慎重を重ねて群を構築していった。
そんな長ぱちゅりーにも懸念があった。あまりにもうまく行き過ぎて、群が大きくなりすぎたのである。
定期的に間引いてはいるが、さすがに連日『しゅじゅつ』するわけにはいかない。
そもそも長ぱちゅりーの『しゅじゅつ』は成功したためしがない。
手術という名の間引きなので当然だが、いつも食葬にするので「しあわせー!!」で全員コロッと忘れてしまうのである。
しかし、それも短期間で何度も続くと覚えてるゆっくりも出てきて怪しまれるだろう。
これ以上ゆん口が増えると今の縄張りだけでは食料が足りなくなる。
ある程度のすっきり制限は行っているが、ゆっくりするためにはすっきり禁止にはできない。
死ぬゆっくりが極端に少ないこの群では増えるばかりだ。
長ぱちゅりーが優秀すぎたせいで思わぬところで欠点がでてきた。
間引きができないなら縄張りを増やすしかない。
長ぱちゅりーは自分のおうちに篭りながらこの街の商店街ガイドブックを広げていた。
ガイドブックの地図を見ながら次の縄張り候補地をいくつかピックアップしていた。
「…むきゅ。 やっぱりこのケーキやさんね」
そう呟いてひとつのケーキショップに当たりをつける。
ゆっくりには至高の食べ物『あまあま』が調達できる数少ない餌場のひとつ。
ここからそれほど遠くなく、側溝を使って通える場所である。
しかし問題がひとつ。すでに他のグループの縄張りであることだ。
しかも、近辺では武闘派で有名な『片目のみょん』がリーダーのグループの縄張りである。
長ぱちゅりーの群は、数では大幅に勝っているが、それだけに実戦経験に乏しいゆっくりが多い。
この武闘派のグループにまともに戦いを挑めばかなりの死傷ゆんが出るだろうと、今まで手を出さなかった場所である。
わざと戦って群のゆん口を減らすことも考えたが、派手な抗争になってケーキショップの人間に気付かれるのは避けたかった。
「…まともにたたかったらのはなしよね。 むきゅきゅきゅ!」
にやける長ぱちゅりーの顔はゲスそのものであった。
――――――――――
数日後、長ぱちゅりーの群は『片目のみょん』グループに宣戦布告をした。
ケーキショップの縄張りを譲れと迫ったのである。
縄張り争いはゆっくりとしては死活問題で、それを譲れとは死ねと言ってるのと同じだった。
長ぱちゅりーは抗争の場として、ケーキショップから少し離れた路地裏を指定した。
人数的に不利だったみょん達は、開けた場所で囲まれるより、壁を背にできる路地裏のほうが良いと判断してそれに応じた。
「あまあまはぜったいにわたさないみょん!」
「ぜったいに! ぜったいにゆるさなえ!」
「むほおおおおおお! はいすいのじんね! もえるわ~!」
リーダー『片目のみょん』は憤慨していた。あまりにも一方的な要求だったからだ。
グループとしてもあの餌場は生命線であるため、絶対に譲ることはできなかった。
しかし戦力差は絶望的である。体の脆いゆっくり同士の戦いにおいて数の暴力は絶対であった。
しかも相手は『路地裏の賢者』と呼ばれるほど知略に長けたぱちゅりーを頭とする群である。
だが、こと戦いのことに関しては『路地裏の賢者』にも負けないと『片目のみょん』は絶大な自信があった。
自慢のはくろーけん(拾ったペーパーナイフ)で切り捨てたゆっくりは100を超えるほどである。
壁を背に戦えば死角も少なくなる。不意をつかれなければ、ぱちゅりーのような貧弱に率いられる群に後れを取ることはないと考えていた。
みょん達が路地裏につくと、すでに長ぱちゅりー達が待ち構えていた。
長ぱちゅりー達は15匹、対するみょん達は5匹、3倍の戦力差である。
『片目のみょん』は数を数えることはできなかったが、相手のほうがたくさんいるのはわかった。
しかし、この程度ならなんとかなるだろうと踏んだ。それだけの自信と経験がみょんにはあった。
「むきゅきゅ! にげなかったようね! なわばりをゆずるきになったのかしら?」
「ねごとはねていえだみょん! ぜったいにわたさないみょん!」
「むきゅ! しかたないわ! えいえんにゆっくりしていってね!」
「しぬのはおまえらだみょん!」
『片目のみょん』ははくろーけんを構えた。通常、ゆっくりは武器を口にくわえて相手に突き刺して倒すものだ。
しかし『片目のみょん』は、舌で武器を絡めとり構えている。これにより相手を切り裂くことがみょんの剣術だ。
ペーパーナイフの切れ味と柔軟な舌を使った斬撃は、相手の攻撃を回避しながら叩き切ることを可能にしていた。
「むきゅ! はんほうえんっのじん!」
「「「「ゆー!」」」」
長ぱちゅりーは号令を掛けると壁を背にした。
そして長ぱちゅりーを中心に棒をくわえたまりさ達が半円を描くように2列に陣形を取る。
2列並んだそれはまるで槍衾のようである。ここに飛び込めば穴だらけにされるであろう。
「ゆゆっ!? どうゆうことだみょん!」
『片目のみょん』は二の足を踏んだ。自分達がやろうとした壁を背にする陣形を相手にやられたのである。
しかもこの半方円の陣形だと、得意の避けながらの斬撃も難しいだろう。
なにかおかしい。と『片目のみょん』は直感した。これは守りの陣形であって攻めるのには向かない。
数が多いのなら相手を取り囲んで複数で叩き潰すのが定石である。
なんだ?なにを狙っている?『路地裏の賢者』はなにを考えてこんな陣形を―――
「ゆわああああん! リーダー! たいへんだよ!」
「ゆっ!? れいむ! どうしたんだみょん!」
そこへボロボロになったれいむが駆け込んできた。みょん達のグループのようだ。
「ゆっくりプレイスがにんげんにおそわれたよ! はやくたすけないとみんなしんじゃうよ!」
「ゆゆっー!? なぜだみょん! にんげんにみつかるなんておかしいみょん!」
みょん達の住みかは、使われなくなった空き地に捨て置かれた廃材の中だ。
巧妙にカモフラージュしてあるし、人間に見つからないように出入りには気を使っていたはずだ。
慌てるみょん達を長ぱちゅりーはゲスな笑みを浮かべながら侮蔑する。
「むきゅきゅきゅ! はやくたすけないと、みんなかこうじょにつれていかれるわよ!」
「…おまえのしわざかみょん!!!」
長ぱちゅりーは加工所の職員がみょん達のゆっくりプレイスを襲うまで時間稼ぎをしていたのだ。
『片目のみょん』は、見慣れないゆっくりがプレイスの周りをウロウロしてると報告があったのを思い出した。
人間には注意を払っていたが、ゆっくりにまで注意を向けていなかったことを後悔した。
「しかたがないみょん! てったいするみょん!」
「むきゅきゅ! にがさないわ! せいっさいっよ!」
みょん達が浮き足立ったとみた長ぱちゅりーは攻撃命令を出した。
まりさ達が棒をくわえたまま前進をはじめると、すっかり戦意を削がれたみょん達は我さきへと逃げ出した。
「いまなんだねー! ふいうちだよー!」
その瞬間、路地裏に置かれていたダンボールを跳ね上げ、隠れていたちぇん達が横合いから不意打ちを仕掛けた。
「ゆげえ! かわいいれいむのびはだがあああ!」
「さ、さなえのおめめが! めが~!」
「ぎゃあああああ! ありすのとかいはなあんよがあああ!」
「み、みょおおおん! みんなにげるんだみょおおおん!」
ちぇん達はそのスピードを殺さぬように、かすめるような攻撃をみょん達へ仕掛けた。
ほんの少しのかすり傷でも、痛みに弱いゆっくり達は足を止めるのだ。
短時間しか効果はないがそれでいい。あとは追いついたまりさ達が止めを刺す。
「ゆっくりしぬんだぜ!」ドガッ!
「さっさとつぶれるんだぜ!」グシャ!
「まりささまのオールさんをくらうんだぜ!」ザクッ!
まりさの体当たりを食らい、ボロボロだったれいむの皮が破れて餡子が飛び散る。
まりさのボディプレスで潰され、さなえの傷ついた目から寒天状のものが勢い良く飛び出る。
まりさの棒で突き刺され、ありすの自慢のぺにぺにごと穴だらけにされ、カスタードが漏れ出す。
「あんこさん… れいむのあんこさんがとまらない…」
「さなえのおめめ… おめめどこ…」
「もっと… すっきりしたかった…」
「みょおおおおん!! みょおおおおん!!」
「むきょきょきょきょきょきょきょきょきょ!」
こうして武闘派で有名な『片目のみょん』グループは、『路地裏の賢者』によって壊滅した。
――――――――――
―――『片目のみょん』グループが壊滅する数日前の話。
長ぱちゅりーは護衛のちぇんを連れて、朝早くから少し離れた公園へ来ていた。
この公園は障害者や高齢者の方でも安全に利用できるように、バリアフリー対策が取られた公共施設だ。
そのため急な坂や段差などが無く、ゆっくりにも安全に歩き回れる作りになっている。
長ぱちゅりーは公園の中にある電話BOXに来ていた。
車椅子でも利用できるようにドアが無く、大型の雨風避けフードに覆われている。
車椅子のまま電話が使えるように低い位置に電話機が設置されていた。
携帯電話が普及してほとんど使われなくなったそこは、人の気配がなくとても寂れていた。
長ぱちゅりーは、ちぇんを踏み台に電話機の台にあがると、器用にもおさげで受話器を取った。
電話機の緊急通報用の赤いボタンの横には『緊急のときはこちら/警察110/消防119/加工所999』と明記されている。
舌先で緊急通報用の赤いボタンを押したあと、ゆっくりと『999』と押した。
プルルルル…ガチャ『はい加工所です』
「むきゅ…あーあー…もしもし?
○丁目の空き地にゆっくりが住み着いてるザマス! なんとかして欲しいザマス!
いつごろ駆除してくれるザマスか? …むきゅ! わかったザマス!
よろしくお願いするザマス! むきゅ!」
ガチャリ
「むきゅきゅ! これであまあまはいただきね!」
ゆ害が深刻化した当時は、警察や消防に通報する事例が後を絶たなかった。
しかし警察や消防には本来の業務があるのでゆっくりなどにはかまってられなかった。
そこで加工所が設立されたときに、ゆ害対策は加工所が請け負うことになった。
しかし、ゴキブリが出たから駆除してくれと110番するゆとりがいる世の中である。(※実話です)
当時の加工所はあまりメジャーではなかったため、簡単にはゆ害=加工所に報告という流れにはならなかった。
その時におこなった加工所の認知度アップの一環として、公衆電話の緊急通報先に加工所を加えたのである。
長ぱちゅりーはそれを利用して、ゆっくりの身でありながら加工所にゆっくり駆除を依頼したのである。
下手な喋りではあったが、漢字交じりの通報は電話越しのこともあり、まさかゆっくりだとは加工所にも気付かれなかった。
『片目のみょん』グループのゆっくりプレイスは事前にちぇん達に偵察させて場所を特定していた。
「おさは、むずかしいことばがつかえるんだねー わかるよー」
「むきゅ! ぱちゅはけんじゃなのよ、なんでもできるわ」
「でもザマスってなにかなー? わからないよー」
「にんげんさんのおくさまはザマスをつかうのよ!」
「ぜんぜんわからないよー」
後は、加工所が邪魔者を駆除してくれるだろう。
しかし『片目のみょん』は切れ者らしい。人間相手でも逃げ切るかもしれない。
念には念を入れて当日は呼び出しておこう。リーダーがいなければ烏合の衆だ。
―――『片目のみょん』も加工所も、長ぱちゅりーの手のひらで踊っていたにすぎなかった。
作:248あき
過去作
ふたば系ゆっくりいじめ 633 バス停
ふたば系ゆっくりいじめ 765 かまくら
廃棄されたのであろう、放置された古タイヤの影にうごめく汚饅頭たちがいる。
「おさー わかるよー もうすぐよるなんだねー」
「むきゅ! まだよ! もうすこしまつのよ!」
長と呼ばれたのはゆっくりぱちゅりー。体の弱いぱちゅりー種が街中で生き残っているのは珍しい。
ゆっくりはその性格上、無駄に動いたり大声で叫ぶことが多いのであまり燃費がよろしくない。
その上ぱちゅりー種は少食なので食いだめができず、定期的な食料確保が難しい街では栄養失調になりやすい。
力も弱くストレスにも弱いぱちゅりー種が、過酷な野良生活で生き残るのは珍しいと言える。
しかし、この長ぱちゅりーはいわゆるゲスであった。
ゲスならではのずる賢さを生かし、多くのゆっくりを率いる立場を手に入れたのだ。
手足となるゆっくり達を使うことで十分な食料が取れ、ぱちゅりー種にしては丈夫なゆっくりになっていた。
今は厳選した配下のゆっくり達を連れてレストランの裏路地の古タイヤの影に隠れている。
長ぱちゅりーの下調べどおりなら、そろそろ店の新入り店員が生ゴミを捨てにくるはずである。
このレストランは、いつもは生ゴミもマニュアル管理しているので手が出せないでいたが、
最近入った新入り店員はマニュアルをあまり守っておらず、生ゴミを出しっぱなしにするのだ。
野良ゆっくりにとってはありがたい話である。
ただし、新入り店員が生ゴミを捨てる当番は週1回しかない。
それ以外の日はマニュアル指導された店員が、ゆっくり対策通りに生ゴミには殺ゆ剤を投与して捨てている。
つまり、他の店員が捨てる生ゴミを食べるとゆっくりは死ぬのである。
それゆえ新入り店員の日を覚えることができないゆっくりにとって、このレストランは鬼門でもあった。
だが、この長ぱちゅりーはとても頭がよかった。時計やカレンダーを理解できるほどである。
何度もレストランを観察し、新入り店員の日を特定していた。
ガタンッガタンッ…ガチャ
「よっこいしょ… うわっ今日は寒いな…」
店の裏口を開けて、新入り店員がゴミ袋をかかえて出てきた。
(むきゅ! きたわよ! みんなしずかにね…)
新入り店員は寒さに震えながらポリバケツにゴミ袋を詰め込むと、蓋もせずにさっさと店内に戻っていった。
「…いったようね。 みんないくわよ!」
「「「「ゆー!」」」」
古タイヤの影からぞろぞろと這い出るゆっくり達。まずは足の速いちぇんが飛び出した。
「わかるよー たおすんだよー」
ドンッ! ガタンッ!
その俊足を生かし、速度の乗った体当たりでポリバケツを倒す。そしてそのまま道に飛び出して警戒に入る。
裏路地とはいえ人が通る可能性がある。ちぇんは主に周囲を警戒する護衛役のようだ。
「「「「あとはまりさたちにまかせるのぜ!」」」」
次にまりさ達だ、おぼうしを使うことによりたくさんの荷物を運ぶことができるため、運搬役には最適である。
ニ匹のまりさがおぼうしからオール状の棒を取り出し、ポリバケツから生ゴミをかき出しはじめた。
残りのまりさ達はおぼうしをひっくり返して並べたあと、順番に生ゴミをくわえておぼうしに運び込む。
まるで流れ作業のような連携された動きで、あっというまに生ゴミが運ばれていく。
「…うっめ! これめっちゃうっめ!」
「がまんできなかったんだねー わかるよー でもたべるのはかえってからだよー」
一匹のまりさが我慢できずに生ゴミを食べ始める。ちぇんが注意するが止まる気配もない。
長ぱちゅりーはそれを横目で確認しつつも注意はしなかった。それよりも自分のおさげをじっと見ている。
よく見るとおさげになにか付いてる。どうやら子供用の腕時計のようだ。
「むきゅ! そろそろまずいわ! いそいでかえるわよ!」
ポリバケツを倒してからきっかり5分後。
腕時計で時間を計っていた長ぱちゅりーは撤退命令を出す。
おぼうし一杯に生ゴミを詰め込んだまりさ達が、次々と古タイヤの影に戻ってくる。
そのまま古タイヤの影にある側溝の穴へと飛び込んでいく。どうやら通路代わりに利用しているようである。
「おさー あのまりさがまだなんだねー」
「むーしゃむーしゃ! しあわせー!!」
つまみ食いをしていたまりさがまだ食べ続けていた。運搬役というのをすっかり忘れているようである。
「ぱちゅがなんとかするわ、ちぇんはみんなをつれてもどって」
「わかるよー ゆっくりもどるよー」
そうしてまりさと長ぱちゅりーを残して、ゆっくり達は側溝へ消えた。
まりさ種は運動能力が高いとはいえ、おぼうし一杯の荷物があるとその移動速度はかなり遅くなる。
そのため、先に戻ってもらったのである。
長ぱちゅりーはひとりで古タイヤの影に隠れてまりさを観察していた。
(…むきゅ! あれだけたべてもなんともないならだいじょうぶね!)
あのまりさは新入りでしかもゲスだった。同じゲスとして長ぱちゅりーには感じるものがあったのだ。
ゲスと知りつつ食料集めに参加させたのは、ゲスなら必ずつまみ食いをするだろうと予想してだ。
つまりはゲスまりさを毒見役にしたのだ。
新入り店員の日は殺ゆ剤は投与されていないはずだが確実ではない。
人間の気分次第では投与されている可能性があるからだ。
(ゲスのやくめはおわりね)
長ぱちゅりーは小石を2個口にくわえ、レストランの裏口に向かって2連射で吹き付けた。
コンッコンッ
ガチャ「…はーい?」
長ぱちゅりーの投石を、ノックと勘違いした新入り店員が出てくる。
「…あれ? 気のせいだったかな… あっ! ゆっくりかよ!」
まぬけなことにゲスまりさはまだ食べ続けていた。よほど腹が減っていたのだろう。
「むーしゃむーしゃ! しあわ」グシャ!ブシュー!
新入り店員に踏み潰されて、目と口とあにゃるから餡子を噴出しながらゲスまりさはこの世を去った。
(ゲスはにんげんさんにせいっさいっされてね! むきゅきゅきゅ!)
ゲスはかならず群に迷惑をかける。ぱちゅりーの群には役に立たないゆっくりはいらない。
長ぱちゅりーはこの慎重で狡猾な性格で今まで生き残ってきたのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
「むきゅ! みんなおつかれさま!」
「きょうもたいりょうなんだねー! わかるよー!」
長ぱちゅりー達はゆっくりプレイスへ戻ってきた。ここは古い雑居ビルの床下である。
ゆっくり達はビルの路地裏にある床下換気口から出入りしていた。
換気口は非常階段の影にあり、さらに捨てられた角缶などを使ってけっかい!を張ってある。
また、ビルの1階にあるボイラー室がゆっくり特有のうるさい声をかき消してくれる。
これらの要素に守られ、ゆっくり達は人間に見つかることもなく穏やかに過ごしていた。
「まりさたちはごはんさんをおいてくるのぜ!」
「ちぇんはじゅんかいにいくよー わかってねー」
「むきゅ! おねがいするわ!」
長ぱちゅりーはまりさ達とちぇん達を見送りながら、昔を思い返していた。
長ぱちゅりーにはなぜか過去の記憶が無かった。気付いたらこの路地裏にいたのである。
そんな彼女にあったのは人間への絶対的な恐怖と、なにがなんでも生き延びるという生への渇望であった。
長ぱちゅりーは人間には絶対かなわないことを心得ていた。
そこで彼女が取った行動は『徹底して人間から隠れる』ことであった。
人間がまずやってこない床下をおうちとして選び、移動も側溝や物陰を利用し、目立たないように努めた。
さらに時間や日付の概念が理解できるので、誰よりも正確に安全に生ゴミを漁ることができた。
そのうち、桁違いに頭が良い長ぱちゅりーの手腕がうわさになって、彼女に付き従うゆっくり達が出てきた。
大半が長ぱちゅりーを利用しようとしたゲスであったが、逆に利用されてずっとゆっくりしていった。
そうやって選別された聞き分けのよいゆっくり達を手に入れたことにより、色んなことがやれるようになった。
まずは種ごとに役割を与えることで作業の効率化を図った。
まりさ種には主におぼうしを使った食料調達役に。
ちぇん種にはその機動力を生かした護衛・偵察役に。
ありす種にはとかいはな判断力でおうちの拡張・整備役に。
れいむ種には得意なお歌を使った子育て役に。
この役割分担により、少数精鋭で一気にゴミ捨て場を漁るようにした。しかも、ゴミを散らかさずにだ。
人間がゴミを漁るゆっくりを嫌う理由に、食べれるものを漁るのでゴミが散らかるというのがある。
そこで、ゴミ袋を丸ごと持ち去ることにした。おうちに運びこんでから食べれるものを仕分けるのである。
この手法は食べれないものも持ち去るので無駄もでた。
だが、ゴミ捨て場の滞在時間が減ったため、人間に見つかって潰されるゆっくりが格段に減ったのだ。
それに、ゴミ袋が1つ2つ消えたところで困る人間はいない。
むしろ群が縄張りにしたゴミ捨て場はキレイになったぐらいである。
キレイなゴミ捨て場にはゆっくり対策も取られなくなり、楽々と食料を集められるようになった。
そうして安定した食料供給と、安全なゆっくりプレイスが揃った彼女らは、爆発的に数を増やした。
通常、街では狩場(主にゴミ捨て場)が限られているので群と呼べるほどのグループは形成されない。
1つの狩場につき2~3家族の小規模グループが縄張りとして居つくのが普通である。
そもそも群とは外敵に対抗するための集まりのことだが、ここは人間の街である。
ゆっくりが集まったところで人間には対抗できないし、むしろ目立つので加工所に通報されるだろう。
しかし、このゆっくりプレイスには20家族以上、赤ゆっくりを含めれば3桁に届く数が生活していた。
長ぱちゅりーひとりから始まったこのゆっくりプレイスは、街中でありながらりっぱな群になったのである。
物思いにふけっていた長ぱちゅりーにれいむが話しかけてきた。あのゲスまりさの番である。
「おさ! ゆっくりおかえりなさい! …ゆ? れいむのステキなまりさは?」
「…むきゅ。 まりさはにんげんさんとたたかって、えいえんにゆっくりしちゃったわ」
「ゆわわわ! ぞんなあああああ!! れいむひとりじゃあかちゃんそだてられないのにいいい!!」
まりさの死を悲しむより先に自分の心配をするれいむ。ゲスの番は当然ゲスのようだ。
(ゲスなれいむはひつようないわね)
そんなゲスれいむに長ぱちゅりーはささやいた。
「むきゅ、きをおとさないで。 とくべつにあまあまをあげるからげんきをだして」
「ゆっ?! あまあま?!」
あまあまと聞いて急に生き生きとしだすゲスれいむ。さすがしんぐるまざー(笑)である。
長ぱちゅりーはゲスれいむにだけ見えるように白い錠剤状のあまあまを取り出した。
「これはラムネさんといって、とってもおいしいあまあまよ。 みんなにはないしょよ」
「むーしゃむーしゃ! しあわZzzzzzzz…」バタンッ
ゲスれいむはあっという間にラムネを食い尽くすとそのまま倒れた。
ゆっくりはラムネを吸収すると眠りに落ちるのである。
「むきゅ! れいむがたおれたわ! いそいでちりょうしつに!」
そして治療室と呼ばれる一室に運び込まれるゲスれいむ。
ダンボールの壁で仕切られたその一室の中央には、コンクリートブロックが2つ並べて置かれている。
これが治療台のようで、ゲスれいむはその上に寝かされる。
「れいむのちりょうをするわ! むずかしい『しゅじゅつ』になるから、だれもはいらないように!」
ひとりになった長ぱちゅりーは、ブロックの影に隠してあった先が細くなった金属棒を取り出した。
ゴミ捨て場から拾ってきたのだろうそれは、カクテルの氷を削るのに使うアイスピックだった。
慣れた手つきで口に咥えると、ゲスれいむのあにゃるに先を当てる。
(ゲスはえいえんにゆっくりしていってね! むきゅきゅきゅ!)
そうして慎重に角度を合わせると一気に突き刺した。
ズブッ「ゆ゛ぶぶっ…」
ゲスれいむはアイスピックで中枢餡を一突きにされ、口とあにゃるから餡子を垂れ流して動かなくなった。
ゆっくりは中枢餡を傷つけられて死ぬと、中枢餡によってコントロールされていた体中の餡子が弛緩する。
そうなると穴という穴から体液や緩くなった餡子を流出する。具体的には涙やしーしーやうんうんを漏らすのだ。
長ぱちゅりーがやったようにあにゃるから一刺しで殺すと、傷が目立たないうえに漏れたうんうんで隠れてしまう。
こうなるとゆっくりの目では突然死したようにしか見えない。犯行の瞬間さえ目撃されなければ完全犯罪の成立だ。
うまくいったと笑みを浮かべる長ぱちゅりー。
アイスピックを隠すと神妙な顔つきを作り、治療室から外へ出る。
「…おさー? れいむはー?」
「…むきゅ、ごめんなさい。 ぱちゅもがんばったんだけど、ておくれだったわ…」
「…わからないよー…」
「…いつものとおりみんなでゆっくりたべましょう。 それがれいむのためにもなるわ」
この群では死んだゆっくりは食葬にしていた。いつ食糧不足になるかわからない街ゆっくりの宿命である。
こうして長ぱちゅりーの意にそぐわないゆっくりを秘密裏に間引きし、群の食料不足の解消にも役立たせていた。
(ゲスとはさみはつかいようね! むきゅきゅきゅ!)
ゲスれいむの食葬も終わり、ゆっくり達は持ち場に戻り、割り当てられた仕事を再開した。
それではここのゆっくり達の生活を見てみよう。
このゆっくりプレイスはビルの床下なので、コンクリートの支柱と土台が飾り気もなくあるだけである。
その一画にダンボールハウスのおうちが整然と並んでいる。ゆっくり達の住宅街となっているここはありす種が受け持つ区域だ。
床下なのでおうちが無くとも雨風に困ることはないはずだが、ゆっくりの習性としておうちは必須なものらしい。
「ぐあいはどうかしら? そろそろしゅっさんっ!しそう?」
「ダンボールさんがこわれてるわ! とかいはじゃないわ~」
今はまだ仕事の時間なのでおうちにはにんっしんっ!した母親ゆっくりしか残っていない。
ありす種はにんっしんっ!したゆっくり達のサポートや、おうちのメンテナンスを行っている。
とかいはなコーディネート力を生かし、痛んだおうちを直しているのである。
また、新たに番になったゆっくり達のおうちを作るのも、それらの材料であるダンボールや新聞紙を集めることも、
さらには粗大ゴミの日に捨てられる布団や毛布を、都会派な観察力で見つけ出してくるのもありす種の仕事だ。
この区画はボイラー室に近いところにあるので、寒い冬も比較的温かく過ごすことができるであろう。
「まったりのひ~♪ ゆっくりのひ~♪ すっきりのひ~♪」
「「「「ゆっくち~♪」」」」
さて、おうちには子ゆっくりがひとりもいなかったが、彼女らは別の一画に集まっていた。
コンクリートブロックが塀のように取り囲む一画。ゆっくり達の保育所となっているここはれいむ種が受け持つ区域だ。
ブロック塀は成体ゆっくりなら飛び越えれるが、子ゆっくりには飛び越えられない。脱走による迷子防止のためである。
また、この区画は小さく千切られた新聞紙が敷き詰められている。ここで遊ぶ限りは子ゆっくり達は怪我をすることはないだろう。
さらにはゴミ捨て場から拾ってきたであろう、人間の子供の玩具などが沢山用意されていた。
保育所に子ゆっくりを安心して預けておけるので、親ゆっくり達はゆっくり仕事に集中できる環境になっていた。
「ゆっくりすててくるのぜ!」
「ゆっくりきをつけてね!」
こちらの区画は群の生命線になる食料庫だ。ボイラー室からは一番遠くて寒い一画を利用している。
断熱がわりに発泡スチロールで覆ったそこは温度が低く天然の室のようだった。ここにある限り食料は長持ちするだろう。
食料庫の前では、さきほどまりさ達が運んできた生ゴミが置かれている。
手の空いているありす種やれいむ種が食べれるものを仕分けしていた。
長持ちする食材は食料庫の中へ、痛みやすい食材は今夜の群の食料になるようだ。
食べれないゴミはまりさ種がおぼうしと玩具のバケツに入れて外の川まで捨てに行っている。
バケツを使うのは帰りに川の水を汲んでくるためだ。このプレイスには水場が無いので汲んでくるしかないのだ。
「わかるよー けんかはだめなんだねー」
「いじょうはないよー つぎをまわるよー」
そんな中をちぇん種が巡回していた。これだけの群になるとゆっくり同士でのイザコザも起こりやすい。
それらを機動力の高いちぇん種が見回ることにより、すばやく発見し取り押さえるようにしている。
また、ビルの外周のあちこちにある床下換気口から侵入者がこないように見張りもかねている。
換気口を塞いでしまえばよいのだが、明かりの取り入れ口でもあるので完全に塞ぐことはできない。
防犯として入り口以外の換気口回りには、ゆっくりできないとげとげした石などをばら撒いてある。
「むきゅー。 もんだいはないようね」
これらはすべて長ぱちゅりーひとりが考え出し、監督していた。
役割分担は単一作業しか知らぬゆっくり達にもわかりやすく、街中で隠れ住んでいるとは思えないほどうまく機能していた。
ゆっくりらしからぬ知能を持つ長ぱちゅりーによって、このゆっくりプレイスは大いに繁栄していった。
すべては自分が生き残るためではあるが、それを悟られないよう、慎重に慎重を重ねて群を構築していった。
そんな長ぱちゅりーにも懸念があった。あまりにもうまく行き過ぎて、群が大きくなりすぎたのである。
定期的に間引いてはいるが、さすがに連日『しゅじゅつ』するわけにはいかない。
そもそも長ぱちゅりーの『しゅじゅつ』は成功したためしがない。
手術という名の間引きなので当然だが、いつも食葬にするので「しあわせー!!」で全員コロッと忘れてしまうのである。
しかし、それも短期間で何度も続くと覚えてるゆっくりも出てきて怪しまれるだろう。
これ以上ゆん口が増えると今の縄張りだけでは食料が足りなくなる。
ある程度のすっきり制限は行っているが、ゆっくりするためにはすっきり禁止にはできない。
死ぬゆっくりが極端に少ないこの群では増えるばかりだ。
長ぱちゅりーが優秀すぎたせいで思わぬところで欠点がでてきた。
間引きができないなら縄張りを増やすしかない。
長ぱちゅりーは自分のおうちに篭りながらこの街の商店街ガイドブックを広げていた。
ガイドブックの地図を見ながら次の縄張り候補地をいくつかピックアップしていた。
「…むきゅ。 やっぱりこのケーキやさんね」
そう呟いてひとつのケーキショップに当たりをつける。
ゆっくりには至高の食べ物『あまあま』が調達できる数少ない餌場のひとつ。
ここからそれほど遠くなく、側溝を使って通える場所である。
しかし問題がひとつ。すでに他のグループの縄張りであることだ。
しかも、近辺では武闘派で有名な『片目のみょん』がリーダーのグループの縄張りである。
長ぱちゅりーの群は、数では大幅に勝っているが、それだけに実戦経験に乏しいゆっくりが多い。
この武闘派のグループにまともに戦いを挑めばかなりの死傷ゆんが出るだろうと、今まで手を出さなかった場所である。
わざと戦って群のゆん口を減らすことも考えたが、派手な抗争になってケーキショップの人間に気付かれるのは避けたかった。
「…まともにたたかったらのはなしよね。 むきゅきゅきゅ!」
にやける長ぱちゅりーの顔はゲスそのものであった。
――――――――――
数日後、長ぱちゅりーの群は『片目のみょん』グループに宣戦布告をした。
ケーキショップの縄張りを譲れと迫ったのである。
縄張り争いはゆっくりとしては死活問題で、それを譲れとは死ねと言ってるのと同じだった。
長ぱちゅりーは抗争の場として、ケーキショップから少し離れた路地裏を指定した。
人数的に不利だったみょん達は、開けた場所で囲まれるより、壁を背にできる路地裏のほうが良いと判断してそれに応じた。
「あまあまはぜったいにわたさないみょん!」
「ぜったいに! ぜったいにゆるさなえ!」
「むほおおおおおお! はいすいのじんね! もえるわ~!」
リーダー『片目のみょん』は憤慨していた。あまりにも一方的な要求だったからだ。
グループとしてもあの餌場は生命線であるため、絶対に譲ることはできなかった。
しかし戦力差は絶望的である。体の脆いゆっくり同士の戦いにおいて数の暴力は絶対であった。
しかも相手は『路地裏の賢者』と呼ばれるほど知略に長けたぱちゅりーを頭とする群である。
だが、こと戦いのことに関しては『路地裏の賢者』にも負けないと『片目のみょん』は絶大な自信があった。
自慢のはくろーけん(拾ったペーパーナイフ)で切り捨てたゆっくりは100を超えるほどである。
壁を背に戦えば死角も少なくなる。不意をつかれなければ、ぱちゅりーのような貧弱に率いられる群に後れを取ることはないと考えていた。
みょん達が路地裏につくと、すでに長ぱちゅりー達が待ち構えていた。
長ぱちゅりー達は15匹、対するみょん達は5匹、3倍の戦力差である。
『片目のみょん』は数を数えることはできなかったが、相手のほうがたくさんいるのはわかった。
しかし、この程度ならなんとかなるだろうと踏んだ。それだけの自信と経験がみょんにはあった。
「むきゅきゅ! にげなかったようね! なわばりをゆずるきになったのかしら?」
「ねごとはねていえだみょん! ぜったいにわたさないみょん!」
「むきゅ! しかたないわ! えいえんにゆっくりしていってね!」
「しぬのはおまえらだみょん!」
『片目のみょん』ははくろーけんを構えた。通常、ゆっくりは武器を口にくわえて相手に突き刺して倒すものだ。
しかし『片目のみょん』は、舌で武器を絡めとり構えている。これにより相手を切り裂くことがみょんの剣術だ。
ペーパーナイフの切れ味と柔軟な舌を使った斬撃は、相手の攻撃を回避しながら叩き切ることを可能にしていた。
「むきゅ! はんほうえんっのじん!」
「「「「ゆー!」」」」
長ぱちゅりーは号令を掛けると壁を背にした。
そして長ぱちゅりーを中心に棒をくわえたまりさ達が半円を描くように2列に陣形を取る。
2列並んだそれはまるで槍衾のようである。ここに飛び込めば穴だらけにされるであろう。
「ゆゆっ!? どうゆうことだみょん!」
『片目のみょん』は二の足を踏んだ。自分達がやろうとした壁を背にする陣形を相手にやられたのである。
しかもこの半方円の陣形だと、得意の避けながらの斬撃も難しいだろう。
なにかおかしい。と『片目のみょん』は直感した。これは守りの陣形であって攻めるのには向かない。
数が多いのなら相手を取り囲んで複数で叩き潰すのが定石である。
なんだ?なにを狙っている?『路地裏の賢者』はなにを考えてこんな陣形を―――
「ゆわああああん! リーダー! たいへんだよ!」
「ゆっ!? れいむ! どうしたんだみょん!」
そこへボロボロになったれいむが駆け込んできた。みょん達のグループのようだ。
「ゆっくりプレイスがにんげんにおそわれたよ! はやくたすけないとみんなしんじゃうよ!」
「ゆゆっー!? なぜだみょん! にんげんにみつかるなんておかしいみょん!」
みょん達の住みかは、使われなくなった空き地に捨て置かれた廃材の中だ。
巧妙にカモフラージュしてあるし、人間に見つからないように出入りには気を使っていたはずだ。
慌てるみょん達を長ぱちゅりーはゲスな笑みを浮かべながら侮蔑する。
「むきゅきゅきゅ! はやくたすけないと、みんなかこうじょにつれていかれるわよ!」
「…おまえのしわざかみょん!!!」
長ぱちゅりーは加工所の職員がみょん達のゆっくりプレイスを襲うまで時間稼ぎをしていたのだ。
『片目のみょん』は、見慣れないゆっくりがプレイスの周りをウロウロしてると報告があったのを思い出した。
人間には注意を払っていたが、ゆっくりにまで注意を向けていなかったことを後悔した。
「しかたがないみょん! てったいするみょん!」
「むきゅきゅ! にがさないわ! せいっさいっよ!」
みょん達が浮き足立ったとみた長ぱちゅりーは攻撃命令を出した。
まりさ達が棒をくわえたまま前進をはじめると、すっかり戦意を削がれたみょん達は我さきへと逃げ出した。
「いまなんだねー! ふいうちだよー!」
その瞬間、路地裏に置かれていたダンボールを跳ね上げ、隠れていたちぇん達が横合いから不意打ちを仕掛けた。
「ゆげえ! かわいいれいむのびはだがあああ!」
「さ、さなえのおめめが! めが~!」
「ぎゃあああああ! ありすのとかいはなあんよがあああ!」
「み、みょおおおん! みんなにげるんだみょおおおん!」
ちぇん達はそのスピードを殺さぬように、かすめるような攻撃をみょん達へ仕掛けた。
ほんの少しのかすり傷でも、痛みに弱いゆっくり達は足を止めるのだ。
短時間しか効果はないがそれでいい。あとは追いついたまりさ達が止めを刺す。
「ゆっくりしぬんだぜ!」ドガッ!
「さっさとつぶれるんだぜ!」グシャ!
「まりささまのオールさんをくらうんだぜ!」ザクッ!
まりさの体当たりを食らい、ボロボロだったれいむの皮が破れて餡子が飛び散る。
まりさのボディプレスで潰され、さなえの傷ついた目から寒天状のものが勢い良く飛び出る。
まりさの棒で突き刺され、ありすの自慢のぺにぺにごと穴だらけにされ、カスタードが漏れ出す。
「あんこさん… れいむのあんこさんがとまらない…」
「さなえのおめめ… おめめどこ…」
「もっと… すっきりしたかった…」
「みょおおおおん!! みょおおおおん!!」
「むきょきょきょきょきょきょきょきょきょ!」
こうして武闘派で有名な『片目のみょん』グループは、『路地裏の賢者』によって壊滅した。
――――――――――
―――『片目のみょん』グループが壊滅する数日前の話。
長ぱちゅりーは護衛のちぇんを連れて、朝早くから少し離れた公園へ来ていた。
この公園は障害者や高齢者の方でも安全に利用できるように、バリアフリー対策が取られた公共施設だ。
そのため急な坂や段差などが無く、ゆっくりにも安全に歩き回れる作りになっている。
長ぱちゅりーは公園の中にある電話BOXに来ていた。
車椅子でも利用できるようにドアが無く、大型の雨風避けフードに覆われている。
車椅子のまま電話が使えるように低い位置に電話機が設置されていた。
携帯電話が普及してほとんど使われなくなったそこは、人の気配がなくとても寂れていた。
長ぱちゅりーは、ちぇんを踏み台に電話機の台にあがると、器用にもおさげで受話器を取った。
電話機の緊急通報用の赤いボタンの横には『緊急のときはこちら/警察110/消防119/加工所999』と明記されている。
舌先で緊急通報用の赤いボタンを押したあと、ゆっくりと『999』と押した。
プルルルル…ガチャ『はい加工所です』
「むきゅ…あーあー…もしもし?
○丁目の空き地にゆっくりが住み着いてるザマス! なんとかして欲しいザマス!
いつごろ駆除してくれるザマスか? …むきゅ! わかったザマス!
よろしくお願いするザマス! むきゅ!」
ガチャリ
「むきゅきゅ! これであまあまはいただきね!」
ゆ害が深刻化した当時は、警察や消防に通報する事例が後を絶たなかった。
しかし警察や消防には本来の業務があるのでゆっくりなどにはかまってられなかった。
そこで加工所が設立されたときに、ゆ害対策は加工所が請け負うことになった。
しかし、ゴキブリが出たから駆除してくれと110番するゆとりがいる世の中である。(※実話です)
当時の加工所はあまりメジャーではなかったため、簡単にはゆ害=加工所に報告という流れにはならなかった。
その時におこなった加工所の認知度アップの一環として、公衆電話の緊急通報先に加工所を加えたのである。
長ぱちゅりーはそれを利用して、ゆっくりの身でありながら加工所にゆっくり駆除を依頼したのである。
下手な喋りではあったが、漢字交じりの通報は電話越しのこともあり、まさかゆっくりだとは加工所にも気付かれなかった。
『片目のみょん』グループのゆっくりプレイスは事前にちぇん達に偵察させて場所を特定していた。
「おさは、むずかしいことばがつかえるんだねー わかるよー」
「むきゅ! ぱちゅはけんじゃなのよ、なんでもできるわ」
「でもザマスってなにかなー? わからないよー」
「にんげんさんのおくさまはザマスをつかうのよ!」
「ぜんぜんわからないよー」
後は、加工所が邪魔者を駆除してくれるだろう。
しかし『片目のみょん』は切れ者らしい。人間相手でも逃げ切るかもしれない。
念には念を入れて当日は呼び出しておこう。リーダーがいなければ烏合の衆だ。
―――『片目のみょん』も加工所も、長ぱちゅりーの手のひらで踊っていたにすぎなかった。
作:248あき
過去作
ふたば系ゆっくりいじめ 633 バス停
ふたば系ゆっくりいじめ 765 かまくら