ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2102 涼しさにご用心
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ankoss
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「涼しさにご用心」
羽付きあき
・小ネタ
・独自設定をいくつか盛り込んでいます
・最早空調ではない機械が登場しますご注意ください
「"ゆっくり用空調機械「ぱーふぇくとふりーず」"?」
「おうさ"ぱーふぇくとふりーず"よ」
「して、何故そのような物を?」
「わからぬか。日光浴を好むと言うゆっくりの特性を良く理解せぬままに真夏に窓際に置いておくという事例が多発しておったので加工所が新たに発売した付属製品だ。しかし空調を小型化しただけにすぎぬと・・・」
パキャ
・・・雑誌の一文が私の目にとまった。
「"加工所が開発したミニゆっくりケージ用空調・・・設定温度に幅があるのが大きな特徴"・・・?」
設定温度の最低温を見て私は目を丸くして驚いた。
遥か窓の向こうの、さらに向こう側に、ケージの様な物が置かれているのがチラリと見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
AM 9:12 内部温度 24度
金網型と違い、プラスチック全体に覆われたドームの様になった箱の中に、そのゆっくり達はいた。
「ゆゆ~ん!おちびちゃんたち!とってもとかいはね!」
「ゆゆ!おちびちゃんたち!おみずさんのちかくでこーろこーろするとあぶないよ!ゆっくりいどうしてね!」
ソフトボールサイズの成体「ミニゆっくり」とである。ありすとまりさが声を上げた。
ありすの方は上部に蔓が生えている。その先には、実ゆっくりが3体程のみのっていた。すべてありす種の様である。
水の張った容器近くで、ピンポン玉より一回り小さい程度の子ありす一体と子まりさ一体が声を上げる。
「ゆっきゅいりわかっちゃわ!」
「ゆっきゅりわかっちゃよ!」
今度は親まりさの方へ向かうと、小麦粉の皮を縦に長くのばし始める。
「ぴゃぴゃ!みちぇ!ありしゅのーびのーびできりゅようになっちゃわ!」
「まりしゃもできりゅようになっちゃよ!」
それを見た親まりさが声を上げる。
「ゆゆ!おちびちゃんたちすごいね!とってもゆっくりしてるよ!」
・・・そう、日差しが直接入らない場所に、外付けされた箱型の機械が快適な温度を提供し続けている。
しかし、デジタル表示板に現れた文字にはこう記されていた。
「セッテイキオン 24~"-28"」
・・・・・・
・・・
「おちびちゃん!はやくうまれてきてね!ゆ~♪ゆゆ~♪とかいは~♪とかいは~♪」
親ありすの歌声に反応し、目をつむったままの実ゆっくり達がわさわさと震えている。
「ゆゆ!みゃみゃのおうちゃはちょっちぇもちょかいはにぇ!ありしゅもうちゃうわ!」ゆ~♪ときゃいは~♪」
「おとうしゃん!しゅーりしゅーり!」
「ゆゆ!すーりすーり!」
父まりさと子まりさが小麦粉の皮を寄せ合ってすーりすーりしている。
快適な気温の中、ミニゆっくり達は、思い思い「ゆっくりしていた」
しかし気温は、刻一刻と低くなっていくのである。
今はまだ、ゆっくり達の楽しそうな声が聞こえている。
AM 9:45 内部温度 20度
「ゆ!ゆ!まりしゃのほうがかけっこがいちびゃんはやいよ!」
「ゆ!ゆ!ありしゅもまけにゃいわ!」
大鋸屑が薄く敷き詰められた地面を子ありすと子まりさが走っている。
「かけっこ」だ。
その脇では、ありすが幸せそうにその光景を眺めており、水の張った容器に口をつける親まりさの姿もあった。
「ゆふふ!ありすはとってもとかいはなおちびちゃんにめぐまれてしあわせだわ!」
「ごーくごーく・・・きょうはなんだかすずしいね!」
最初の異変に気がついたのは親まりさであった。
徐々に徐々に温度は下がっていく。
・・・大鋸屑は埋もれるほど敷き詰められていない。それは即ち、このゆっくり一家には寒さをしのげる術は無いと言う事だ。
直接的な冷風が、勢いを増して吹いている。
AM 10;30 内部気温 14度
「ゆゆ・・・なんだかまりしゃちょっちぇもしゃむいよ・・・」
「ありしゅもしゃむいわぁぁ・・・」
・・・温度は子ゆっくりが寒いと感じる程に下がっていた。
当然親まりさと親ありすもそれに気が付いている。
「おちびちゃんたち!きょうはきっととくべつにすずしいひなのよ!みんなありすのところにきてね!」
「まりさもちかくにいるよ!みんなでくっつけばゆっくりあったかいよ!」
親ゆっくり達の提案で、小麦粉の皮を寄せ合って一つになるゆっくり一家達。
寒さはまだしのげていた。
「ゆゆ!しゅーりしゅーり!ちょっちぇもあちゃちゃかいわ!」
「ゆゆーん!まりしゃもあっちゃかいよ!ゆっきゅりしちぇるにぇ!」
子ゆっくり達が声を上げる。親ゆっくり達も一安心した様だ。
「ゆゆ!じゃあきょうはみんなでおうたをうたいましょう!」
「ゆゆ!ありす!ゆっくりわかったよ!ゆ~♪ゆゆ~♪」
・・・親ありすの提案により歌を歌い出すゆっくり一家
親まりさを皮切りに、一斉に歌を歌い始める。
「ゆ~♪とかいは~♪ありすはとってもとかいは~♪」
「ちょかいは~♪ちょかいは~♪」
「ゆっくり~♪ゆっくり~していって~ね~♪」
「ゆっきゅり~♪」
歌声が辺りにひびいていた。
だが、冷風を黙々と送る音は掻き消えない。
AM 11:00 内部温度 9度
「ゆぅぅ・・・さ、さむいよぉぉ・・・」
「みゃみゃ・・・かじぇしゃんが・・・しゃむいわぁぁ・・・」
既に子ゆっくり達がブルブルと震えだす程に温度が低下を始めた。
この頃には親ゆっくり達にも余裕の色が消え始める。
「ゆ!おちびちゃんたち!ありすにもっとくっつくのよ・・・!」
「ゆ・・・あ、ありす・・・なんだかさむくなってきてるね・・・」
・・・その飾りの形状や特性から、比較的寒さに強いまりさ種でさえ根を上げ始めているのだ。
親ありすはもっと寒いだろう。
だが、親ありすはそれを億尾にも出さずに、子ゆっくり達を寒さから守り続ける。
「とかいはなぼせい」が、それを為していた。
「かぜしゃんわちゅめちゃいわぁぁ・・・」
「ゆ・・・!しゃむいぃぃ・・・」
・・・冷風が勢いを増してきた。とうとうゆっくり一家に直接あたる様になっていく。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!ありすのうしろにいってね!ありすがかぜさんをさえぎるわ!」
・・・子ゆっくり達の直接冷風が当たらない様に、自身が盾となる親ありす。
親まりさも同様であった。
「ゆゆ!まりさもいっしょにがんばるよ!ありす!ゆっくりがんばってね!おちびちゃんたちもゆっくりあんしんしてね!」
子ゆっくりたちの為に何も通さぬとばかりにドッカリと底部を地面に付け、子ゆっくり達を寒さから守り続ける親ゆっくり達。温度はとうとう、5度を切り始めた。
・・・痛みすら伴う冷風が吹き始める。
AM 11:18 内部気温 3度
「ざむ・・・いぃぃ・・・!」
「おぢび・・・ぢゃん・・・だぢ!・・・ゆっくり・・・ありすたちのうしろから・・・はなれちゃ・・・だめよ・・・」
・・・氷点下間近にまで温度が下がった。
痛みすら伴うほどの寒さの中で、必死に「寒風」を受け続けるゆっくり親子達。
先ほどの余裕など当にない。
だが、全体の温度が下がり始めているのだ。
風が当たらないとはいえ、子ゆっくり達にとっては、もう限界であった。
「ゆぅぅ・・・しゃむいわぁぁ・・・ちゅめちゃいわぁぁ・・・」
「まりしゃ・・・あんこしゃん・・・が・・・かちかちになりしょう・・・ぢゃよ・・・」
小麦粉の皮をくっつけあってカタカタと震える子ゆっくり達。
それを見たまりさが一つの決断を下す。
「お・・・ちび・・・ちゃん・・・たち・・・まり・・・さ・・・のおぼうし・・・のなか・・・にはいって・・・ね・・・!」
カタカタと震える舌で、何とか帽子を取り払うと、頭の上に子ゆっくり達を載せてかぶり直す。
既に、冬場の街ゆっくりなら「おうち」を持たぬものがカチカチの饅頭となって地面に突っ伏す程の温度に下がり始めている。
「あり・・・ず・・・も・・・!まり・・・ざ・・・のうじ・・・ろ・・・にいっで・・・ね・・・!あたまの・・・おちびちゃ・・・ん・・・たち・・・は・・・まり・・・さ・・・がまもる・・・よ・・・!」
「ゆっくり・・・わかった・・・わ・・・!」
まりさの強い決意に動かされ、ありすが後ろに下がる。
まりさが盾となって、直接的な冷風を一身に受け続けた。
「ゆ”ぅ・・・ぅぅ・・・ざむ・・・いぃぃ・・・!でも・・・まり・・・ざ・・・まげない・・・よ・・・!みん・・・な・・・!は・・・!まりさ・・・が・・・まも・・・る・・・から・・・ねっ・・・!」
既に温度が、氷点下を割り始める。
AM 11: 46 内部温度 -6度
「ゆぎっ・・・!ゆぎぃぃ・・・!いだいぃぃ・・・!」
凄まじい形相で寒風を受け続ける。まりさ。
寒天の両目が血走って見開き、砂糖細工の歯が歯茎をむき出しにして見えている。
「ぼう・・・げんがい・・・だ・・・よ・・・!ばやぐ・・・ばやぐ・・・!かぜざん・・・どばっで・・・ね!」
まりさの後ろでは、ありすから生えた蔓から、実ゆっくりがフルフルと震えて、落ち始めていた。
ポトリと落ちた赤ありす達は、「ゆっきゅりしちぇいっちぇね」とは言わなかった。
「ゆっきゅ・・・!ゆっ・・・!~~~・・・!」
「ときゃ・・・!と・・・きゃ・・・~~~!」
「ゅ・・・し・・・て・・・!・・・!!!・・・!!・・・!」
あまりの寒さに、小麦粉の皮が薄い赤ゆっくりの小麦粉の皮とカスタードクリームが半シャーベット状になりはじめ、うまく動かす事が出来ないのだ。当然、親ありすが蔓を落としても、食べられない。
「おぢびぢゃんっ!づるざんをだべないどゆっぐりでぎないわ・・・!だべでっ!ゆっぐりだべでぇぇ・・・!」
親ありすが必死に呼びかけるも、声にもならない声を上げ、くーねくーねと体をくねらせて悶絶している。
温度はさらに低下を見せ、赤ありす達は蔓も食べられぬままに、衰弱していった。
「ゅ・・・!ひゅー・・・ひゅ・・・」
「と・・・きゃ・・・みゃ・・・み・・・と・・・」
「ゅっきゅ・・・ちちゃ・・・ぃぃ・・・」
・・・蔓を食べなければ、赤ゆっくりは一時間程で中の餡子やカスタードクリームを使い果たし、物言わぬ饅頭となってしまう。
さらにこの温度下ならその半分以下の時間だろう。親ありすはただその場で泣き叫び続ける事しかできなかった。
「おぢびぢゃんっ!どがいばっ!どがいばぁぁっ!!」
そして暫くすると、徐々に動きが無くなっていき、そして止まった。・・・蔓を目の前に中のカスタードクリームの量が三分の一を割ったのである。
「あでぃずのおぢびぢゃんがぁぁぁ・・・!!!どぼじでぇぇぇ・・・!」
苦しみ抜いた表情でカチカチの饅頭となり果てた赤ありす達に涙する親ありす。
・・・だが状況はさらに悪くなっていくのだった。
AM 12:27 内部温度 -16度
「ゆ・・・かはっ・・・ゆぎっ・・・!ひゅー・・・!ひゅー・・・!」
親まりさの方は既に小麦粉の皮に霜が降り始めていた。呼吸すら困難になるほどの極寒の中で、とうとう限界を迎える。
「あ・・・り・・・ず・・・」
「どぼ・・・じだ・・・の・・・!?」
まりさがありすを呼んだ。
まりさは砂糖細工の歯をカチカチと鳴らしながらありすにこう言った。
「までぃ・・・ざ・・・は・・・ぼう・・・だべ・・・だよ・・・ばりざ・・・が・・・ゆっぐ・・・り・・・でぎなぐなっだ・・・ら・・・ありず・・・が・・・までぃ・・・ざ・・・のおぼうじざん・・・をかぶっで・・・ね・・・!」
「までぃざぁぁ・・・!ゆっぐり・・・!ゆっぐりずるのよ・・・!」
「ゆ・・・ひゅー・・・ひゅ・・・おぢび・・・ぢゃん・・・をおでがい・・・ね・・・あでぃ・・・ず・・・ゆっぐりじで・・・い・・・で・・・ね・・・」
・・・最後の力を振り絞り、中の子ゆっくり達を入れたまま帽子をありすにかぶせると、そのまま前のめりに倒れて、動かなくなってしまった。
「までぃざぁぁ・・・!!」
ありすの呼びかけも空しく、まりさはゆっくりとしての機能を消失した。
冷気が、さらに強まっていく。
ありすは、まりさの帽子をかぶったまま寒さに耐える。
今や「とかいはなぼせい」とまりさの託した意思だけが、底部を支えていた。
「おぢび・・・ぢゃん・・・!は・・・まり・・・ざ・・・の・・・ぶん・・・まで・・・!あでぃ・・・ず・・・が・・・まもる・・・わ・・・!」
だが、寒風の轟音でありすには聞こえていなかった。帽子の中の子ゆっくり達がどうなっていたのかが。
「ひゅー・・・ひゅー・・・ざむ・・・ぃぃ・・・」
「きゃらぢゃ・・・が・・・うみゃく・・・うごきゃな・・・い・・・わぁぁ・・・」
多少はましとはいえ帽子の中も寒い事には変わりない。
すーりすーりを繰り返すうちに、子まりさと子ありすの小麦粉の皮がくっついてしまったのだ。
すーりすーりが出来なくなったまま、動けずに寒さをしのぐ事は、子ゆっくりサイズのゆっくりでは無理であった。
既にありす以上に子ゆっくり達はゆっくりできなくなっている。
AM 12:56 内部温度 -26度
「ひゅー・・・!ひゅー・・・!」
親ありすの小麦粉の体は、既に凍りかかっており、満足に底部を動かす事が出来なくなっていた。
それでもまだ、凍りかかった寒天の眼を開き、極寒の中耐え続ける。
「おぢび・・・ぢゃ・・・あでぃ・・・ず・・・の・・・どがい・・・ば・・・な・・・おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・まも・・・る・・・がら・・・ね・・・!ぜっだ・・・い・・・あでぃ・・・ず・・・が・・・まもる・・・がら・・・ね・・・!」
「とかいはなぼせい」がありすの意識をつないでいた。
しかし、とうとう限界が訪れたようだ。そのまま、横に倒れるありす。
まりさから託された帽子が投げ出された。
「お・・・ぢび・・・ぢゃ・・・!うご・・・うごが・・・ない・・・わぁぁ・・・!ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
既にゆっくりとして機能しているかしていないかさえ分からないほどに、動かなくなっている子ゆっくり達を冷気から守ろうと凍る小麦粉の体を何とか動かそうとするありす。だが、動く事はかなわなかった。
霞む視界なので、よくは見えないが、既に子ゆっくり達は饅頭としての機能を完全に消失している事に気が付いていないのだ。
自身の無力さに、悲しむありす。
「おぢび・・・ぢゃ・・・ごべ・・・ね・・・あでぃ・・・ず・・・は・・・もう・・・うご・・・げ・・・ない・・・わぁぁ・・・」
極寒の冷気の中、ありすにとうとう限界が訪れた。
「ゆ”・・・!ゅ”・・・!おぢび・・・ぢゃ・・・お・・・ぢ・・・ど・・・が・・・い・・・」
小刻みに痙攣を始めるありす。そのまま、痙攣が徐々に治まると、それっきり動かなくなってしまった。
内部気温は設定通り、たった今-28度を記録した所であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まどろみの中、目が覚めた私は、ふと時計に目をやった。
既に昼の12時を回っている。
顔にかけた雑誌を取り払うと、あくびをしながらリビングを離れた。
テーブルの上に置かれた雑誌の一文にこう書いてある。
"・・・幅広い温度設定が可能。主な対象はゆっくりちるの、ゆっくりれてぃ"
羽付きあき
・小ネタ
・独自設定をいくつか盛り込んでいます
・最早空調ではない機械が登場しますご注意ください
「"ゆっくり用空調機械「ぱーふぇくとふりーず」"?」
「おうさ"ぱーふぇくとふりーず"よ」
「して、何故そのような物を?」
「わからぬか。日光浴を好むと言うゆっくりの特性を良く理解せぬままに真夏に窓際に置いておくという事例が多発しておったので加工所が新たに発売した付属製品だ。しかし空調を小型化しただけにすぎぬと・・・」
パキャ
・・・雑誌の一文が私の目にとまった。
「"加工所が開発したミニゆっくりケージ用空調・・・設定温度に幅があるのが大きな特徴"・・・?」
設定温度の最低温を見て私は目を丸くして驚いた。
遥か窓の向こうの、さらに向こう側に、ケージの様な物が置かれているのがチラリと見えた。
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AM 9:12 内部温度 24度
金網型と違い、プラスチック全体に覆われたドームの様になった箱の中に、そのゆっくり達はいた。
「ゆゆ~ん!おちびちゃんたち!とってもとかいはね!」
「ゆゆ!おちびちゃんたち!おみずさんのちかくでこーろこーろするとあぶないよ!ゆっくりいどうしてね!」
ソフトボールサイズの成体「ミニゆっくり」とである。ありすとまりさが声を上げた。
ありすの方は上部に蔓が生えている。その先には、実ゆっくりが3体程のみのっていた。すべてありす種の様である。
水の張った容器近くで、ピンポン玉より一回り小さい程度の子ありす一体と子まりさ一体が声を上げる。
「ゆっきゅいりわかっちゃわ!」
「ゆっきゅりわかっちゃよ!」
今度は親まりさの方へ向かうと、小麦粉の皮を縦に長くのばし始める。
「ぴゃぴゃ!みちぇ!ありしゅのーびのーびできりゅようになっちゃわ!」
「まりしゃもできりゅようになっちゃよ!」
それを見た親まりさが声を上げる。
「ゆゆ!おちびちゃんたちすごいね!とってもゆっくりしてるよ!」
・・・そう、日差しが直接入らない場所に、外付けされた箱型の機械が快適な温度を提供し続けている。
しかし、デジタル表示板に現れた文字にはこう記されていた。
「セッテイキオン 24~"-28"」
・・・・・・
・・・
「おちびちゃん!はやくうまれてきてね!ゆ~♪ゆゆ~♪とかいは~♪とかいは~♪」
親ありすの歌声に反応し、目をつむったままの実ゆっくり達がわさわさと震えている。
「ゆゆ!みゃみゃのおうちゃはちょっちぇもちょかいはにぇ!ありしゅもうちゃうわ!」ゆ~♪ときゃいは~♪」
「おとうしゃん!しゅーりしゅーり!」
「ゆゆ!すーりすーり!」
父まりさと子まりさが小麦粉の皮を寄せ合ってすーりすーりしている。
快適な気温の中、ミニゆっくり達は、思い思い「ゆっくりしていた」
しかし気温は、刻一刻と低くなっていくのである。
今はまだ、ゆっくり達の楽しそうな声が聞こえている。
AM 9:45 内部温度 20度
「ゆ!ゆ!まりしゃのほうがかけっこがいちびゃんはやいよ!」
「ゆ!ゆ!ありしゅもまけにゃいわ!」
大鋸屑が薄く敷き詰められた地面を子ありすと子まりさが走っている。
「かけっこ」だ。
その脇では、ありすが幸せそうにその光景を眺めており、水の張った容器に口をつける親まりさの姿もあった。
「ゆふふ!ありすはとってもとかいはなおちびちゃんにめぐまれてしあわせだわ!」
「ごーくごーく・・・きょうはなんだかすずしいね!」
最初の異変に気がついたのは親まりさであった。
徐々に徐々に温度は下がっていく。
・・・大鋸屑は埋もれるほど敷き詰められていない。それは即ち、このゆっくり一家には寒さをしのげる術は無いと言う事だ。
直接的な冷風が、勢いを増して吹いている。
AM 10;30 内部気温 14度
「ゆゆ・・・なんだかまりしゃちょっちぇもしゃむいよ・・・」
「ありしゅもしゃむいわぁぁ・・・」
・・・温度は子ゆっくりが寒いと感じる程に下がっていた。
当然親まりさと親ありすもそれに気が付いている。
「おちびちゃんたち!きょうはきっととくべつにすずしいひなのよ!みんなありすのところにきてね!」
「まりさもちかくにいるよ!みんなでくっつけばゆっくりあったかいよ!」
親ゆっくり達の提案で、小麦粉の皮を寄せ合って一つになるゆっくり一家達。
寒さはまだしのげていた。
「ゆゆ!しゅーりしゅーり!ちょっちぇもあちゃちゃかいわ!」
「ゆゆーん!まりしゃもあっちゃかいよ!ゆっきゅりしちぇるにぇ!」
子ゆっくり達が声を上げる。親ゆっくり達も一安心した様だ。
「ゆゆ!じゃあきょうはみんなでおうたをうたいましょう!」
「ゆゆ!ありす!ゆっくりわかったよ!ゆ~♪ゆゆ~♪」
・・・親ありすの提案により歌を歌い出すゆっくり一家
親まりさを皮切りに、一斉に歌を歌い始める。
「ゆ~♪とかいは~♪ありすはとってもとかいは~♪」
「ちょかいは~♪ちょかいは~♪」
「ゆっくり~♪ゆっくり~していって~ね~♪」
「ゆっきゅり~♪」
歌声が辺りにひびいていた。
だが、冷風を黙々と送る音は掻き消えない。
AM 11:00 内部温度 9度
「ゆぅぅ・・・さ、さむいよぉぉ・・・」
「みゃみゃ・・・かじぇしゃんが・・・しゃむいわぁぁ・・・」
既に子ゆっくり達がブルブルと震えだす程に温度が低下を始めた。
この頃には親ゆっくり達にも余裕の色が消え始める。
「ゆ!おちびちゃんたち!ありすにもっとくっつくのよ・・・!」
「ゆ・・・あ、ありす・・・なんだかさむくなってきてるね・・・」
・・・その飾りの形状や特性から、比較的寒さに強いまりさ種でさえ根を上げ始めているのだ。
親ありすはもっと寒いだろう。
だが、親ありすはそれを億尾にも出さずに、子ゆっくり達を寒さから守り続ける。
「とかいはなぼせい」が、それを為していた。
「かぜしゃんわちゅめちゃいわぁぁ・・・」
「ゆ・・・!しゃむいぃぃ・・・」
・・・冷風が勢いを増してきた。とうとうゆっくり一家に直接あたる様になっていく。
「ゆゆ!おちびちゃんたち!ありすのうしろにいってね!ありすがかぜさんをさえぎるわ!」
・・・子ゆっくり達の直接冷風が当たらない様に、自身が盾となる親ありす。
親まりさも同様であった。
「ゆゆ!まりさもいっしょにがんばるよ!ありす!ゆっくりがんばってね!おちびちゃんたちもゆっくりあんしんしてね!」
子ゆっくりたちの為に何も通さぬとばかりにドッカリと底部を地面に付け、子ゆっくり達を寒さから守り続ける親ゆっくり達。温度はとうとう、5度を切り始めた。
・・・痛みすら伴う冷風が吹き始める。
AM 11:18 内部気温 3度
「ざむ・・・いぃぃ・・・!」
「おぢび・・・ぢゃん・・・だぢ!・・・ゆっくり・・・ありすたちのうしろから・・・はなれちゃ・・・だめよ・・・」
・・・氷点下間近にまで温度が下がった。
痛みすら伴うほどの寒さの中で、必死に「寒風」を受け続けるゆっくり親子達。
先ほどの余裕など当にない。
だが、全体の温度が下がり始めているのだ。
風が当たらないとはいえ、子ゆっくり達にとっては、もう限界であった。
「ゆぅぅ・・・しゃむいわぁぁ・・・ちゅめちゃいわぁぁ・・・」
「まりしゃ・・・あんこしゃん・・・が・・・かちかちになりしょう・・・ぢゃよ・・・」
小麦粉の皮をくっつけあってカタカタと震える子ゆっくり達。
それを見たまりさが一つの決断を下す。
「お・・・ちび・・・ちゃん・・・たち・・・まり・・・さ・・・のおぼうし・・・のなか・・・にはいって・・・ね・・・!」
カタカタと震える舌で、何とか帽子を取り払うと、頭の上に子ゆっくり達を載せてかぶり直す。
既に、冬場の街ゆっくりなら「おうち」を持たぬものがカチカチの饅頭となって地面に突っ伏す程の温度に下がり始めている。
「あり・・・ず・・・も・・・!まり・・・ざ・・・のうじ・・・ろ・・・にいっで・・・ね・・・!あたまの・・・おちびちゃ・・・ん・・・たち・・・は・・・まり・・・さ・・・がまもる・・・よ・・・!」
「ゆっくり・・・わかった・・・わ・・・!」
まりさの強い決意に動かされ、ありすが後ろに下がる。
まりさが盾となって、直接的な冷風を一身に受け続けた。
「ゆ”ぅ・・・ぅぅ・・・ざむ・・・いぃぃ・・・!でも・・・まり・・・ざ・・・まげない・・・よ・・・!みん・・・な・・・!は・・・!まりさ・・・が・・・まも・・・る・・・から・・・ねっ・・・!」
既に温度が、氷点下を割り始める。
AM 11: 46 内部温度 -6度
「ゆぎっ・・・!ゆぎぃぃ・・・!いだいぃぃ・・・!」
凄まじい形相で寒風を受け続ける。まりさ。
寒天の両目が血走って見開き、砂糖細工の歯が歯茎をむき出しにして見えている。
「ぼう・・・げんがい・・・だ・・・よ・・・!ばやぐ・・・ばやぐ・・・!かぜざん・・・どばっで・・・ね!」
まりさの後ろでは、ありすから生えた蔓から、実ゆっくりがフルフルと震えて、落ち始めていた。
ポトリと落ちた赤ありす達は、「ゆっきゅりしちぇいっちぇね」とは言わなかった。
「ゆっきゅ・・・!ゆっ・・・!~~~・・・!」
「ときゃ・・・!と・・・きゃ・・・~~~!」
「ゅ・・・し・・・て・・・!・・・!!!・・・!!・・・!」
あまりの寒さに、小麦粉の皮が薄い赤ゆっくりの小麦粉の皮とカスタードクリームが半シャーベット状になりはじめ、うまく動かす事が出来ないのだ。当然、親ありすが蔓を落としても、食べられない。
「おぢびぢゃんっ!づるざんをだべないどゆっぐりでぎないわ・・・!だべでっ!ゆっぐりだべでぇぇ・・・!」
親ありすが必死に呼びかけるも、声にもならない声を上げ、くーねくーねと体をくねらせて悶絶している。
温度はさらに低下を見せ、赤ありす達は蔓も食べられぬままに、衰弱していった。
「ゅ・・・!ひゅー・・・ひゅ・・・」
「と・・・きゃ・・・みゃ・・・み・・・と・・・」
「ゅっきゅ・・・ちちゃ・・・ぃぃ・・・」
・・・蔓を食べなければ、赤ゆっくりは一時間程で中の餡子やカスタードクリームを使い果たし、物言わぬ饅頭となってしまう。
さらにこの温度下ならその半分以下の時間だろう。親ありすはただその場で泣き叫び続ける事しかできなかった。
「おぢびぢゃんっ!どがいばっ!どがいばぁぁっ!!」
そして暫くすると、徐々に動きが無くなっていき、そして止まった。・・・蔓を目の前に中のカスタードクリームの量が三分の一を割ったのである。
「あでぃずのおぢびぢゃんがぁぁぁ・・・!!!どぼじでぇぇぇ・・・!」
苦しみ抜いた表情でカチカチの饅頭となり果てた赤ありす達に涙する親ありす。
・・・だが状況はさらに悪くなっていくのだった。
AM 12:27 内部温度 -16度
「ゆ・・・かはっ・・・ゆぎっ・・・!ひゅー・・・!ひゅー・・・!」
親まりさの方は既に小麦粉の皮に霜が降り始めていた。呼吸すら困難になるほどの極寒の中で、とうとう限界を迎える。
「あ・・・り・・・ず・・・」
「どぼ・・・じだ・・・の・・・!?」
まりさがありすを呼んだ。
まりさは砂糖細工の歯をカチカチと鳴らしながらありすにこう言った。
「までぃ・・・ざ・・・は・・・ぼう・・・だべ・・・だよ・・・ばりざ・・・が・・・ゆっぐ・・・り・・・でぎなぐなっだ・・・ら・・・ありず・・・が・・・までぃ・・・ざ・・・のおぼうじざん・・・をかぶっで・・・ね・・・!」
「までぃざぁぁ・・・!ゆっぐり・・・!ゆっぐりずるのよ・・・!」
「ゆ・・・ひゅー・・・ひゅ・・・おぢび・・・ぢゃん・・・をおでがい・・・ね・・・あでぃ・・・ず・・・ゆっぐりじで・・・い・・・で・・・ね・・・」
・・・最後の力を振り絞り、中の子ゆっくり達を入れたまま帽子をありすにかぶせると、そのまま前のめりに倒れて、動かなくなってしまった。
「までぃざぁぁ・・・!!」
ありすの呼びかけも空しく、まりさはゆっくりとしての機能を消失した。
冷気が、さらに強まっていく。
ありすは、まりさの帽子をかぶったまま寒さに耐える。
今や「とかいはなぼせい」とまりさの託した意思だけが、底部を支えていた。
「おぢび・・・ぢゃん・・・!は・・・まり・・・ざ・・・の・・・ぶん・・・まで・・・!あでぃ・・・ず・・・が・・・まもる・・・わ・・・!」
だが、寒風の轟音でありすには聞こえていなかった。帽子の中の子ゆっくり達がどうなっていたのかが。
「ひゅー・・・ひゅー・・・ざむ・・・ぃぃ・・・」
「きゃらぢゃ・・・が・・・うみゃく・・・うごきゃな・・・い・・・わぁぁ・・・」
多少はましとはいえ帽子の中も寒い事には変わりない。
すーりすーりを繰り返すうちに、子まりさと子ありすの小麦粉の皮がくっついてしまったのだ。
すーりすーりが出来なくなったまま、動けずに寒さをしのぐ事は、子ゆっくりサイズのゆっくりでは無理であった。
既にありす以上に子ゆっくり達はゆっくりできなくなっている。
AM 12:56 内部温度 -26度
「ひゅー・・・!ひゅー・・・!」
親ありすの小麦粉の体は、既に凍りかかっており、満足に底部を動かす事が出来なくなっていた。
それでもまだ、凍りかかった寒天の眼を開き、極寒の中耐え続ける。
「おぢび・・・ぢゃ・・・あでぃ・・・ず・・・の・・・どがい・・・ば・・・な・・・おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・まも・・・る・・・がら・・・ね・・・!ぜっだ・・・い・・・あでぃ・・・ず・・・が・・・まもる・・・がら・・・ね・・・!」
「とかいはなぼせい」がありすの意識をつないでいた。
しかし、とうとう限界が訪れたようだ。そのまま、横に倒れるありす。
まりさから託された帽子が投げ出された。
「お・・・ぢび・・・ぢゃ・・・!うご・・・うごが・・・ない・・・わぁぁ・・・!ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
既にゆっくりとして機能しているかしていないかさえ分からないほどに、動かなくなっている子ゆっくり達を冷気から守ろうと凍る小麦粉の体を何とか動かそうとするありす。だが、動く事はかなわなかった。
霞む視界なので、よくは見えないが、既に子ゆっくり達は饅頭としての機能を完全に消失している事に気が付いていないのだ。
自身の無力さに、悲しむありす。
「おぢび・・・ぢゃ・・・ごべ・・・ね・・・あでぃ・・・ず・・・は・・・もう・・・うご・・・げ・・・ない・・・わぁぁ・・・」
極寒の冷気の中、ありすにとうとう限界が訪れた。
「ゆ”・・・!ゅ”・・・!おぢび・・・ぢゃ・・・お・・・ぢ・・・ど・・・が・・・い・・・」
小刻みに痙攣を始めるありす。そのまま、痙攣が徐々に治まると、それっきり動かなくなってしまった。
内部気温は設定通り、たった今-28度を記録した所であった。
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まどろみの中、目が覚めた私は、ふと時計に目をやった。
既に昼の12時を回っている。
顔にかけた雑誌を取り払うと、あくびをしながらリビングを離れた。
テーブルの上に置かれた雑誌の一文にこう書いてある。
"・・・幅広い温度設定が可能。主な対象はゆっくりちるの、ゆっくりれてぃ"