ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2107 たこつぼ
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・実際のたこつぼを見ていただけると、少しイメージが沸きやすいかもしれません。
『たこつぼ』
「まってねクモさん。まりさにゆっくりたべられるんだぜ!!!
・・・ゆゆ!こんなところにゆっくりできそうなあなさんがあるんだぜ!!!」
「ゆう、こっちにも!ゆゆ、こっちにも!!いっぱいあなさんがあるよ!!!ここをみんなのゆっくりプレイスにしようね!!!」
「「「ゆっくち~~~!!!」」」
7匹のゆっくり一家がたこつぼの前に集まっている。
たこつぼは全部でそこに100個ほどあり、すべてゆっくりたちが入れる高さに置いてある。
形状はほとんどが丸い形で、口の部分が少し狭まっており、奥行きがそこそこある。
サイズは大小さまざまで、小さなたこつぼに子ゆっくりが、大きなたこつぼに親ゆっくりが入ると、
ちょうどゆっくりたちの居心地が良いようだ。
一般的なゆっくりの巣では、一家で一つの空間を共有するのが普通だが、
このたこつぼは、それぞれ別の部屋になっているので、親子や姉妹に干渉されずに一つの部屋を一匹だけでゆっくりすることができる。
一方で特大たこつぼの中は一家全員で入れる広さになっているので、食事の時などはみんなでそこに集まることができる。
さらに、風雨や天敵を避けられる頑丈な作りをしているので、
ゆっくりたちにとって、これ以上住みやすいおうちは他になかなか無いようだ。
海の近い港では、ゆっくりがたこつぼに住み着こうとする光景は日常茶飯事のことなのかもしれない。
しかしこのたこつぼ、海ではなく何故か山の中にあるのだ。
「ゆうう!れいむはこのあなさんのなかでゆっくりするよ!!!」
「ゆっ!まりさはかっこいいかたちのあなさんでゆっくりするんだぜ!!」
「おチビちゃんたちもゆっくりできるあなさんをえらんでね!!」
「ゆうう!れいみゅはきれいなあなしゃんがいいよ!!!」
「まりしゃはとくべちゅなあなしゃんをえらびゅよ!!」
「ゆううう、みんながゆっくりできるかられいむはとてもゆっくりできるんだよ!!」
子ゆっくりたちは近くにあるたこつぼを見て周り、自分がゆっくりできそうな巣穴を探す。
遠くまで歩くのに時間がかかる子ゆっくりたちは、すぐ近くのたこつぼを自分の巣穴にしたようだ。
「ゆう!まりちゃはおとなしゃんになったみたいだよ!!」
「みんなじぶんのゆっくりプレイスがえらべたみたいだね!!みんなえらいえらいさんだよ!!」
「ゆう!!!まりしゃはえらいえらいしゃんだよ!!!」
「ゆっふん!!!れいみゅもえらいえらいしゃんなんだよ!!!」
ゆっくりという個体は、自分が入れそうな穴を見つけると、
そこを自分たちの巣穴にしようとする習性がある。
穴の中に先客がいる場合はその場所をあきらめるのだが、
先客がいない場合、そこを勝手に自分のおうちにしてもいいという、ゆっくり同士の暗黙の了解があるのだ。
この一家もその掟に従い、たこつぼを自分たちのおうちにしようとしている。
そして誰も文句をいう者がいないので、その場所は晴れてゆっくりたちのおうちになったようだ。
「ゆう・・・・なんだかれいむはおなかがすいてきたよ。
みんなでいっしょにおいしいものをたべにいこうね!!」
「「「ゆっくち~~~!!!」」」
「ゆう!おチビちゃんたち、みんなついてくるんだぜ!!!」
「「「ゆっくちついていきゅよ!!!」」」
この一家の親れいむは、少し能天気なようだ。
自然の中で生きるゆっくりたちは、いつでもおいしいものを食べられるという保障を得られない。
狩りをして、そこで何も捕ることができなければ、結局は何も食べることができないのだ。
親まりさは頻繁に狩りに出かけているので、そのあたりのことは良く分かっているらしい。
向こう見ずにも思えるれいむの提案だが、
みんなで何かを食べに行こうという意見には、まりさも大賛成であった。
まりさ一匹だけで全員分の餌をとってくるのは、とても大変だからである。
みんなでゆっくりのおうたを歌いながら、食べるものがありそうな場所を探す。
すると、子ゆっくりの足で20分、まりさの足で5分の距離に、草のいっぱい生えている場所を発見した。
まりさは一安心した。
草は非常食にもなるので、これだけの草があればまず空腹で死ぬことはない。
そして草がいっぱい生えている場所には、ゆっくりの餌となる昆虫がよく集まってくる。
さらに、草に付着した水分を摂取して喉を潤すこともできるし、
天敵が近くに出現すれば、背丈の高い草に身を隠すこともできるのである。
このように、草がいっぱい生えている場所というのは、ゆっくりたちが生きていくうえで非常に便利な場所なのだ。
この場所は巣穴から比較的近いので、この一家はこれからいつでも、手ごろな食べ物を得ることができそうだ。
「ゆゆ!おいしそうなクモさんがいるよ!!みんなでむしゃむしゃしようね!!!」
「ゆう!またクモしゃんだ!!」
「このあたりはクモしゃんがいっぱいいるんだよ!!」
「ゆう!クモさんはえらいさんだぜ!!クモさんのおかげで、ゆっくりできるあなさんと
ゆっくりできるえさばをみつけることができたんだぜ!!!」
感謝の言葉を述べるまりさだが、容赦無く蜘蛛(クモ)の足をひっぱる。
それとこれとは話が別のようだ。
プツッ
蜘蛛の足がちぎれる。蜘蛛はそのまま息絶えてしまった。
引きちぎった蜘蛛のかけらを子ゆっくりの前に置いてあげる。
「ゆう!いただきま~しゅ!!むちゃむちゃ、し、しあわしぇ~~~~!!」
「クモしゃんはとてもおいちいよ!!!ゆっくちはしあわしぇ~だよ!!!」
子ゆっくりたちは蜘蛛を食べて満足している様子だ。
餌を食べ終わった後、まりさは貯蓄用の餌を集め、れいむは巣の中に敷き詰める草を集め始める。
子ゆっくりたちは丸い石やきれいなお花など、珍しい物を集めている。
狩りをしていると夕方になった。
それぞれが見つけてきたものを巣穴に持ち帰る。
まりさが集めた餌は、貯蔵用のたこつぼに、
れいむが集めた草は、それぞれの寝床に、
そして、子ゆっくりたちが集めた珍しい物は、宝物としてそれぞれ自分たちの寝床に運んでいく。
持ち帰ったものを運び終えると、親れいむがトイレに関しての注意を始める。
「おチビちゃんたち!うんうんやしーしーはこのなかでしてね!!」
とあるたこつぼの中で親れいむがうんうんを始める。その下には少量の草が敷かれている。
身をもって、子ゆっくりたちにトイレの場所を教えているのだ。
うんうんを終えると、体を使って草を奥の方へ押しやる。
子ゆっくりたちもこれを真似するんだよ!とれいむは教える。
排泄物を奥のほうへ押しやることで、トイレの空間を広く保つようにしているのだ。
そうこうしているうちに夜になった。
子ゆっくりたちはそれぞれの寝床に入っていき、自分がとってきた宝物を抱いてすーやすーやし始める。
れいむとまりさはすこし大きなたこつぼへ一緒に入り、入り口に草を敷き詰め、中ですっきりを始めた。
ゆっくりたちにとって、明日の糧となるすっきりである。
こんなにゆっくりできる場所なので、れいむとまりさは、
もう少し赤ちゃんを増やしても良いのではないか、と考えているようだ。
すっきりを済ませ、自分の寝床に戻ったれいむは、
これからもこんな幸せがずっと続くと良いなぁ、と思いながら、
子ゆっくりのいる巣穴の方を眺めている。
巣穴を見つめる目がうとうとし始め、眠気に勝てなくなったところで、
れいむはすやすやと寝息をたて始めた。
一方のまりさは、角ばったかっこいい巣穴の中でゴロンゴロンと転がったり背伸びしたりして、狩りの疲れをほぐしている。
そして、ぐーっと伸びをしている最中に気持ちよくなって、そのまますやすやし始めた。
夜に吹く風は心地よく、ゆっくりたちはとても気持ちよさそうな表情ですーやすーやしている。
子ゆっくりたちは少しよだれを垂らし、むにゃむにゃと言いながら、宝物に寄りそって寝ている。
集めてきた宝物が抱き枕として役立っているようだ。
みんなしあわせそうに眠っている。
翌日、一家はゆっくりと目を覚ます。
大きなたこつぼにみんなが集まったところで、一斉に朝ごはんを食べ始める。
まりさが集めた貯蔵用の餌はちょうど空になった。
家族みんながお腹いっぱいになったので、まりさは大喜びの様子だ。
「ゆぴ~~もうおなきゃいっぱいだよ!!れいみゅはとてもゆっくちできたよ!!!」
「ゆうう!!!!おチビちゃんたちのしあわせそうなおかおをみてると、とてもゆっくりできるんだぜ!!」
「ゆう!!まりさがかりをがんばってくれたおかげだよ!!まりさはとってもえらいさんだよ!!」
「ゆう!!れいむこそ、くささんをたくさんあつめてくれたおかげで
みんなとてもゆっくりすることができたんだぜ!!れいむこそえらいさんだぜ!!」
「ゆう!それならしあわせ~なおかおをしてるおチビちゃんたちもみんな、えらいえらいさんだよ!!
ゆゆっ!そうなるとかぞくのみんながえらいえらいさんなんだよ!!」
「えらいえらいしゃん!!」
「ゆっくちたちはみんなえらいえらいしゃんなんだよ!!」
朝食と雑談が終わると、子ゆっくりたちは自分の巣穴に戻る。
れいむとまりさは、一家のために狩りにでかけることにする。
狩りに出かける前に、それぞれ巣穴の入り口に草を敷きつめ、外敵が来ても大丈夫なようにしておく。
そんな苦労を知らない子ゆっくりたちは、昨日の疲れもあってか巣の中でスヤスヤと二度寝を始めた。
餌場と巣穴を何度も往復するれいむとまりさ。
今回の狩りも、たくさんの収穫があったようだ。
まりさは、みんなが満足できる量の餌を、
れいむは、よりふかふかで気持ちのいい寝床になる草を集めることができた。
そんなこんなで、ゆっくりした時間をゆっくりたちは過ごしていく。
あっという間に一ヶ月が経った。
7匹だったゆっくり一家は、いつの間にか13匹に増えている。
ちょうどその頃、別のゆっくり一家がこのたこつぼを発見し、
先に住んでいたゆっくり一家のおとなりさんとして、仲良く暮らし始める。
家族が増えたみたいで、子ゆっくりたちは嬉しそうだ。
さらに一ヶ月経った。
周りからゆっくりがたくさん集まり、100個あるたこつぼのうち、88個のたこつぼにゆっくりが住むようになっていた。
残りの12個は、共有の部屋、貯蔵庫、トイレとして使っている。
今、88匹のゆっくりがそれぞれのたこつぼに住み、
赤ゆっくりも含めると、合計で120匹を超える大きな群れになっている。
これだけの数のゆっくりがいても、巣穴の近くには優良な餌場があるので、みんな食べるものには困らない。
ここに住み始めたゆっくりたちは、この場所から離れようとする気配を見せない。
なぜなら、ここはとてもゆっくりできる場所で、わざわざ引越しする必要が無いからだ。
この時期がゆっくりたちにとって最も良かった・・・・
寒い冬が近づいてきた。それぞれの貯蔵庫には豊富な餌が蓄積されている。
トイレにも排泄物がたくさんたまってきている。
たこつぼの中のゆっくりたちは、食べるものにはあまり困っていないのだが、
ひとつ、困ったことが起きていた。
ゆっくりたちの巣穴が、圧倒的に足りないのだ。
今ここにいるゆっくりの数は200匹を超えている。
以前は1匹につき1つの巣穴があったのだが、
今は1つの巣穴の中に、最低でも2匹以上のゆっくりが住むようになっている。
後からきたゆっくりや、新しく生まれた子ゆっくりが
先客のいる巣穴に住まわせてもらっているのだ。
「ゆう~~、せまいよ~~~!!」
「がまんしてね!!ほかにはいるあなさんがないんだよ!!」
「ゆ!!!!れいむはおこったよ!!!
あとからきたゆっくりがおそとにでればいいんだよ!!!
れいむはさいしょからここにいたんだから、ここはれいむのゆっくりプレイスだよ!!
あとからきたゆっくりは、れいむのゆっくりプレイスからとっととでていってね!!!」
「しょうだよ!!あときゃらきたゆっくちはとっととでていっちぇね!!!!」
「どぼぢでそんなこというのぉおおおおお!!!!」
もう、たこつぼは飽和状態なのだ。
子ゆっくりたちが大事にしていた宝物は、巣の中にあると邪魔なので、すべて巣穴の外に出される。
トイレや共有部屋だった場所も中の物が全て取り出され、ほかのゆっくりの寝床として利用される。
ここまで徹底すると、これはもう居住ではなく、収容だ。
さっそく巣の中のスペースについて、ゆっくり同士で喧嘩が起こっているようだが、
ゆっくり同士が殺しあうという事態はまだ起こっていない。
この場所で一緒にゆっくりする仲間なのだ、そう簡単には排除しない。
しかし排除しないことが、ゆっくりたち自身をどんどん苦しめていく。
気温がますます下がり、たこつぼの周りに雪が積もり始める。
ゆっくりたちは自分の寝床に籠もり、中に蓄えてある餌をゆっくり食べながら、ひたすら春が来るのを待ち続ける。
ゆっくりたちはその間、住居者の増えた狭いたこつぼの中で、あまりゆっくりせずに過ごすことを強要される。
少し体を動かすにも、同居しているゆっくりの許可を取らなければならない。
一方が自分の楽な姿勢ばかりとろうとすると、もう一方が窮屈になる。
それが原因で相手との喧嘩になる恐れがあるので、ゆっくりたちは狭い空間を譲り合わないといけない。
どのたこつぼに入っているゆっくりも、すでにガマンの限界に達しているようだ。
さらに、1つのたこつぼに2匹のゆっくりがいる場合、1匹で過ごす場合に比べて餌の減りは3倍早い。
それは、相部屋のゆっくりに餌をとられまいと、ゆっくり同士が競うように貯蓄してある餌を食べるからだ。
いろいろなことが積み重なり、とうとうゆっくりたちの堪忍の緒が切れた。
同じたこつぼ内のゆっくり同士で、一斉に殺し合いが始まってしまったようだ。
こうなってしまうと、力の弱い赤ゆっくりが優先的に殺されていくことになる。
「ここはれいむがゆっくりするあなさんだよ!!えささんをいっぱいむしゃむしゃする
くいしんぼうなあかちゃんはとっととしんでね!!!」
「ゆうううう!!!どうぢでしょんに゛ゃぎょという゛に゛ょぉおおおおお!!!!
あときゃらきたゆっくちこそしんぢぇいっちぇにぇ!!!ゆぶっ、ゆぎゃぁぁあああ!!!」
「ゆっくりしんでね!!!ゆっくりしんでね!!!ゆっくり・・・ゆぎゃああああああああ!!!」
「おチビちゃんをころすゲスなゆっくりはとっととしんでね!!!」
「ゆうう!おきゃーしゃ~~ん!!!たすきゃったよ~~~・・・ゆっ、ゆぎゃあああ!!!おきゃーしゃん、どうじで・・・」
「ごめんねおチビちゃん。おチビちゃんがいると、おかーさんのえささんがなくなるんだよ。ゆっくりりかいしてね!!!」
「ゆぅうううう・・・・しょんなのいやぢゃよ!!まりしゃもゆっくちしちゃいよ!!・・ゆぎゃあああああああ!!!!」
「それいじょうなかないでね!!それいじょうないたら、おかーさんもさびしくなってくるよ!!」
「も゛っちょ・ゆっぐぢ・・じだがったよぉおおお・・・・」
この巣穴の中では、最初にたこつぼを発見した一家の親れいむが生き残ったようだ。
しかしその代償として、後から入ってきたゆっくりれいむと、自分の赤ん坊を殺してしまったようだ。
これだけ窮屈だと、別の場所でゆっくりしたほうがはるかにましな気がする。
しかし、冬が訪れる前にゆっくりたちがそうしなかったのは、
ここ以上のゆっくりプレイスを探すことができなかったからである。
遠出をしていて自分のたこつぼが横取られてもいけないので、
遠くまでゆっくりプレイスを探しに行く訳にもいかない。
そう、ゆっくりたちは完全に、このたこつぼに依存しきっているのだ。
何かに絡め取られているかのように
ゆっくりの数が飽和状態に達した状況で、ゆっくりたちが快適にゆっくりするためには、
他のゆっくりを蹴落としてでも、自分がゆっくりしようとしなければならない。
雪が積もって巣穴の外に出ることができないので、ひとたび巣穴の中で起こった争いは、
たこつぼの中のゆっくりが一匹になるまで終わらない。
そして争いで生き残った一匹だけが、寝床と餌を独占できるのである。
ただし残念なこともある。殺した相手の死臭を常に嗅ぎながら、冬越えをしなくてはならないということだ。
「ゆゆ!!!ゲスなゆっくりとおチビちゃんからくさいくさいにおいがするよ!!
くさいくさいゆっくりはとっととおそとにでていってね!!!
・・・ゆ!!いりぐちさんがあかないよ!!どぼぢでいりぐぢざんはれ゛い゛む゛をいじめ゛るのぉお゛お゛お゛お゛!!!
ゆううう!!!!くさいくさいはがまんできないよ~~~!!!ゆうっ、おぇえええええええ・・・」
大量の餡子を吐き出す親れいむ。しかし死臭はたこつぼの中に充満し、いくら餡子を吐いてもすっきりすることはない。
匂いに耐え切れなくなった親れいむは、しきりに入り口の草やたこつぼに体当たりし、
体中あざだらけになりながら外に出ようとする。だが、外には一向に出られない。
やがて親れいむは、傷口から漏れ出した餡子と自分の吐いた餡子が許容量を越え、そのまま永遠にゆっくりしてしまった。
そんなこんなで、ピーク時に200匹以上いたゆっくりは、
春を迎える頃には50匹にまで減っていた。
だいぶ数が減ったようにも思えるが、
他の群れでは、数十匹ものゆっくり全員が冬を越せずに、群れ自体が消滅するケースもある。
それに比べれば、ここにいるゆっくりたちははるかにましである。
力の差があるものの、ここのゆっくりたちが春まで生き残る確率は、単純に25%弱である。
春が来て暖かくなり、ゆっくりたちは巣穴から出られるようになった。
しかし、10匹ほど不運なゆっくりがいる。
小さなたこつぼの中でぐんぐんと大きくなり、
たこつぼから出られないサイズにまで成長してしまったゆっくりだ。
「ゆうう!おそとにでられないよぉおお!!!お゛そとでゆ゛っぐりじだいよぉお゛お゛お゛お゛!!!」
こうなるともう手遅れだ。
何も食べずにそのまま餓死するか、たこつぼの中で成長を続け、そのまま圧死するしかない。
ほかの40匹のゆっくりたちが一斉に外に出ていった。
ところが、何か外の様子がおかしい。
近くに川ができているのだ。
「ゆ?なんでおうちのちかくにおみずさんがきてるの?」
「これじゃ、かりにいけないよ!!!」
「ゆううん、おなかちゅいたよ~~~なにきゃたべちゃいよ~~~~」
冬篭りをする前は、このような川は確かに存在しなかった。
この川の正体は、雪解け水によって形成される、一時的な川のようだ。
雪解け水の量は意外に多く、そこには流れの早い川ができている。
ちょうど、たこつぼの周りを囲うように川が流れているので、
餌場に行くためにはこの川を渡らなければならない。
「ゆううん、なにかたべたいよ~~~!!!」
「はるさんになったのに、これじゃゆっくりできないよぉおおおお!!!」
「おみずさんはやくなくなってね!!!」
その日ゆっくりたちは、川の水をずっと見つめながら過ごした。
翌日、水が無くなっていることを期待して、ゆっくりたちは外に出た。
しかし、周囲の川は無くなるどころが、余計に広くなってきている。
「どぼぢでおみ゛ずざんがふえ゛でる゛の゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
「このままだとゆっくりたちはなにもたべられないよ!!!」
空腹に耐えられなくなった一匹のありすが、対岸へ渡ろうと川に入る。
川の流れは予想以上に速く、ありすが水につかった瞬間、その体はあっという間に流されていった。
一匹のまりさは、帽子に乗って対岸へ渡ろうとするが、
帽子を水に浮かべた直後、帽子だけが下流へ流されていった。
帽子のなくなったまりさは、流された帽子を必死に追いかけていくが、ぬかるみに足を滑らせて川の中に転落してしまった。
ばちゃばちゃと川を流れるありすとまりさ、その体は急流によって溶かされ、1分もするとそのまま消滅してしまった。
まだ早い段階であれば、ゆっくりたちは対岸に渡ることができたかもしれない。
だが川の水量が増えた現時点で、ゆっくりたちが川を渡る手段は無い。
さらに追い討ちをかけるように、空から雨が降ってきた。
仕方なく、ゆっくりたちはたこつぼの中に入っていった。
空腹に耐えながら、雨と水が止むのをひたすら待つ。
そしてこの時点で、ゆっくりたちが貯蓄していた餌がとうとう底をついてしまった。
翌日には雨が止んだ。
50匹生き残っていたゆっくりのうち、30匹が飢えと事故で死んだ。
残る20匹も空腹と死の恐怖に犯され、ゆっくりとしているゆっくりは一匹もいない。
ゆっくりたちの空腹は限界を超えてしまったようだ。
寝床に使っている草や、栄養にならない自分のうんうんさえも食べて、なんとか飢えをしのごうとしている。
この日もゆっくりたちはたこつぼから出てくるが、川の向こうへは渡れそうにない。
日を追うごとに、たこつぼの中で餓死するゆっくりが増えていった。
「も゛っど・・・・ゆ゛っぐり゛・・じだ・がっだ・よ゛ぉお゛お゛お゛・・・・」
「お゛な゛ががず・・・い゛・・だ・・・・よ゛・・・・・・」
「ゆ゛っ・・・・ゆ゛っ・・・・・ゆ゛っ・・・・・・・・・・・・」
ゆっくりたちの死に行く言葉がたこつぼに反響し、低音の合唱となって聞こえてくる。
その声は天国には届かず、地獄の悲愴曲としてこだまする。
その声を聞くゆっくりたちも連鎖的に絶望を感じ、ストレスでますます弱っていく。
「どぼぢで・・ごんな゛ごどに・・・・・」
「ふゆさん・・がくるまでは・・ゆっくり・・・できたのに・・ここはゆっくり・できないばしょなんだよ・・・」
共食いをすればお腹が満たされるのだが、共食いは本能的にゆっくりできないと感じるのであろう、
共食いをしようとするゆっくりは一匹もいない。
それから4日経った。
現在、3匹のゆっくりがかろうじて生き残っている。
しかしその3匹も、いつ死んでもおかしくない状況だ。
そんな地獄の中に悪魔が現れる。
れみりゃだ。
今までも何度か、れみりゃがここに飛んできたことがあるのだが、
ゆっくりたちはたこつぼの中に逃げこみ、入り口を草で封鎖することで、
れみりゃを追い返すことに成功していた。
しかし今は、入り口を封鎖するための草が無い。
ゆっくりたち自身が、空腹に負けてすべての草を食べ尽くしてしまったのである。
こうなるとゆっくりたちは、比較的小さなたこつぼの中に逃げるしかない。
しかしさらに不幸なことに、残った3匹はいずれも、れみりゃの体より大きい。
どのたこつぼに隠れたとしても、簡単にれみりゃに侵入されてしまうのだ。
3匹に逃げ場は無い。
飛んでくるれみりゃを見れば、ゆっくりたちは何も考えずに逃げるはずである。
しかし、3匹のゆっくりのうち2匹はその場に残り、飛んでくるれみりゃに対して身構えている。
この2匹は、れみりゃを食べようと考えているようだ。
空腹のあまり、正常な判断ができなくなっている。
残念ながら、いくらゆっくりたちのお腹が空いていようと、捕食種は捕食種。
れみりゃから必死に逃げなければ、ゆっくりたちは食べられてしまうのだ。
さっそくれみりゃが2匹に近づき、そのうち1匹の頭を噛む。
「ゆぎぃ!やめてね!!!ゆっくりできないよ!!!!」
「れみりゃをたべるよ・・・いただき・・ま~す・・・・」
噛まれたゆっくりは悲鳴をあげ、もう一匹は空腹で元気がないが、なんとかれみりゃにのしかかろうとする。
れみりゃは、のしかかろうとするゆっくりをかわし、一方のゆっくりを口にくわえたまま空に舞い上がり、
高い位置からそのゆっくりを落とす。
落下したゆっくりは、くちゃっとつぶれて動かなくなった。
さらにれみりゃは2匹目のゆっくりに近づく。
地上のゆっくりは、その場でじっとしているだけである。
すぐに2匹目のゆっくりも上空に連れられ、そこから落とされてしまった。
生き残ったゆっくりは、たこつぼに逃げ込んだ1匹だけである。
先ほどたこつぼに逃げ込んだゆっくり、じつは、
最初にたこつぼを発見した一家の親まりさであった。
家族みんなを失い、1人ぼっちになって途方にくれていたが、途中で何か吹っ切れたようだ。
その冷静な判断力で、地獄とも呼べるこの状況をかろうじて生き延びていたのである。
食べられそうな草を早めに食べていたおかげで、殺された2匹よりは体力が残っていたようだ。
今回も冷静な判断力で、真っ先に捕食種から逃げ出したのだが、果たしてまりさの運命はどうなるのか?
れみりゃは、殺した2匹を食べようとしない。
しきりに、たこつぼの方向をチラチラと伺っている。
たこつぼに逃げたまりさに気がついているようだ。
その様子を見ていると、このれみりゃは同種の中でもかなり賢い個体だと考えられる。
賢いハンターは、ほかのハンターに獲物を横取りされる心配が無い場合、
複数の獲物を先に殺してから、その後でじっくりと獲物を食べ始める。
そうすることで、たくさんの獲物を狩ることができるのだ。
「もういっぴき、どこかにかくれているはずなんだど~~!!!はやくでてくるんだど~~~!!!」
れみりゃはたこつぼに近づき、一つずつ中を見ていく。
中には他のゆっくりの亡骸が入っているが、れみりゃは見向きもしない。
生きているゆっくりを殺すことが先決なのだ。
対してまりさは、絶対絶命のピンチに陥っていた。
扉となる草はもう無い。
れみりゃに見つかってしまえば、その時点でアウトである。
れみりゃの声がジワジワとまりさのほうに近づいてくる。
まりさは、いつでも外に飛び出せるよう構えている。
「ここからいきたあまあまのにおいがするど~!!ここにいるんだど~~!!!」
れみりゃが穴の中に飛び込む!同時にまりさが穴の中から飛び出す!!
・・・・・・・・
衝突する音は聞こえなかった。
「う~?あまあまがいないんだど~~~。・・・・・・うっ!?うー!!!うしろになにかあたったんだど~~!!!」
れみりゃは、まりさのいた穴の隣に入ったようだ。
その穴の中には、まりさのうんうんがベットリとついた帽子が入っていた。
れみりゃはその匂いにつられたようだ。
外に飛び出したまりさは、すぐさま背後かられみりゃに体当たりする。
体当たりされたれみりゃはたこつぼの奥に押し込まれ、たこつぼとまりさに挟まれてダメージを受ける。
痛さと暗さでパニックになり、れみりゃは体を反転させることができない。
そのスキをついて、まりさが何度も何度も体当たりする。
「うーうー!!やめるんだど~~~!!!いたいんだど~~~くらいんだど~~~~!!!さくやぁあああ!!!!」
れみりゃは何十回も体当たりをくらう。
そしてとうとう、れみりゃはつぶれて動かなくなってしまった。
まりさはそれを確認すると、すぐにその場から離れ、先ほど殺された2匹のゆっくりの亡骸をたこつぼの中に移動させ始めた。
そして、周りにほかのれみりゃがいないことを確認してから、亡骸となったれみりゃをゆっくりと食べ始める。
ゆっくりたちの亡骸をわざわざたこつぼの中へ移動させたのは、
埋葬するだとか、まだ生きてるかもしれないだとか、そういうことを考えたわけではない。
ただ、ゆっくりの亡骸をほかのれみりゃに発見されて、
近くにいる自分もついでに発見されないようにするため、亡骸を目立たない場所に隠しただけである。
れみりゃをゆっくりと食べれば、まりさの命は1週間持つであろう。
それまでに川の水が引いてくれれば、餌場に移動することができる。
つまり、生き残ることができるのだ。
れみりゃの亡骸を食べることで、まりさは生きているという確かな充実感をつかむ。
あとは川の水が引くのをひたすら待ち続けるだけだ。
それから5日後、とうとう川の水が無くなり、川の向こう岸に移動できるようになった。
歓喜の声をあげるまりさ、その声を聞くものは誰もいない。
200匹以上いたゆっくりのうち、このまりさ1匹だけが生き残っている。
そのほかのゆっくりたちは、たこつぼの中で永遠にゆっくりしている。
まりさは足早に餌場へ向かった。
そこには、春の息吹を感じた虫たちがたくさん姿を現しているはずである。
綺麗な花や大量の草が生い茂り、お腹いっぱい満足するまで餌をむさぼり続けることができるはずである。
そこで他のゆっくりを見つけ、子供を作ってたくさん子孫を残すことができるはずである。
餌場に近づくにつれて、花の香りが辺り一面に漂い始める。
そこに広がる光景に、まりさは思わず大量の涙を流し、体を震わせて大量のしーしーをもらした
花は一面に咲き乱れ、草は青々と茂り、たんぽぽやちょうちょなどありとあらゆる春のシンボルがそこに集結している。
まりさ一匹だけでは、とうていゆっくりしつくすことのできない至福の幸せがそこにある。
何ものにも邪魔されることの無い、とてもゆっくりとしたゆっくりプレイス!!!!
まりさはその場所に近づいていく。その足取りはゆったりしている。
まりさの涙が止まらない。大量の涙で顔がくしゃくしゃである。
目を潤ませ、ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・と声をあげる。
体の震えを止めることができない。体の震えのせいで、まりさは何度かつまずいてこける。
こけながらも、目を見開いてその光景を見ながら一歩、また一歩前進していく。
恋をするように、待ちに待ち焦がれ、耐えに耐え、その光景に会いたくて会いたくて、苦しい夜を何度も過ごして、
まりさはとうとう、誰もがうらやむ至福の場所に踏み入ることが・・・・・・・・
餌場までわずか2m
まりさと餌場の間には、別の川が流れていた。
「どぼぢでぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!!!ごんな゛の゛ひどい゛よ゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!」
天国にたどりつきかけたまりさ
しかしつかまっていた蜘蛛の足がちぎれ
再び地獄の底に落ちていった
この仕打ちには、さすがのまりさも冷静さを失ってしまったようだ。
川のほうへゆっくりと近づいていく。目の焦点は合っていない。
そしてまりさは、流れの速い川の中へ入っていった。
同じ死ぬにしても、天国に近い場所で死にたい、そう考えたようだ。
川の水は容赦なくまりさを飲み込んでいく。
しかし運よく、まりさは餌場の方の浅瀬に流れ着いた。
とうとうまりさは、餌場にたどりつくことができたのだ。
そして、そこに生えているたんぽぽの前にたどりつき、
たんぽぽの葉っぱを口に含んだところで、力尽きて死んでしまった。
一ヵ月後、雪解け水の川が完全に引いた。
たこつぼの中の甘い餡子やゆっくりのお飾りは、さまざまな生き物が持ち去って行く。
それから二ヶ月後、2匹のゆっくりがたこつぼを発見し、嬉しそうにその中に入っていった。
蜘蛛の姿を追って
蜘蛛は自らの足をちぎり、ゆっくりを地獄に落とす。
そう、蜘蛛はゆっくりの前に現れ、
たこつぼという地獄にゆっくりたちをおびき寄せているのだ。
そして、たこのようにたこつぼに入っていくゆっくりたち。
そこでたこつぼの快適さを経験してしまったゆっくりは、そこから離れられなくなってしまう。
そして、気づかぬうちにその身をじわじわと削られていき、最後には自然界の餌となるのだ。
では蜘蛛はどういうメリットから、ゆっくりを地獄に落とすのか?
蜘蛛に
メリットなどない
天国にいる神にメリットがある
すなわち
たこつぼと蜘蛛を置いた人間にメリットがあるのだ
『たこつぼ』
「まってねクモさん。まりさにゆっくりたべられるんだぜ!!!
・・・ゆゆ!こんなところにゆっくりできそうなあなさんがあるんだぜ!!!」
「ゆう、こっちにも!ゆゆ、こっちにも!!いっぱいあなさんがあるよ!!!ここをみんなのゆっくりプレイスにしようね!!!」
「「「ゆっくち~~~!!!」」」
7匹のゆっくり一家がたこつぼの前に集まっている。
たこつぼは全部でそこに100個ほどあり、すべてゆっくりたちが入れる高さに置いてある。
形状はほとんどが丸い形で、口の部分が少し狭まっており、奥行きがそこそこある。
サイズは大小さまざまで、小さなたこつぼに子ゆっくりが、大きなたこつぼに親ゆっくりが入ると、
ちょうどゆっくりたちの居心地が良いようだ。
一般的なゆっくりの巣では、一家で一つの空間を共有するのが普通だが、
このたこつぼは、それぞれ別の部屋になっているので、親子や姉妹に干渉されずに一つの部屋を一匹だけでゆっくりすることができる。
一方で特大たこつぼの中は一家全員で入れる広さになっているので、食事の時などはみんなでそこに集まることができる。
さらに、風雨や天敵を避けられる頑丈な作りをしているので、
ゆっくりたちにとって、これ以上住みやすいおうちは他になかなか無いようだ。
海の近い港では、ゆっくりがたこつぼに住み着こうとする光景は日常茶飯事のことなのかもしれない。
しかしこのたこつぼ、海ではなく何故か山の中にあるのだ。
「ゆうう!れいむはこのあなさんのなかでゆっくりするよ!!!」
「ゆっ!まりさはかっこいいかたちのあなさんでゆっくりするんだぜ!!」
「おチビちゃんたちもゆっくりできるあなさんをえらんでね!!」
「ゆうう!れいみゅはきれいなあなしゃんがいいよ!!!」
「まりしゃはとくべちゅなあなしゃんをえらびゅよ!!」
「ゆううう、みんながゆっくりできるかられいむはとてもゆっくりできるんだよ!!」
子ゆっくりたちは近くにあるたこつぼを見て周り、自分がゆっくりできそうな巣穴を探す。
遠くまで歩くのに時間がかかる子ゆっくりたちは、すぐ近くのたこつぼを自分の巣穴にしたようだ。
「ゆう!まりちゃはおとなしゃんになったみたいだよ!!」
「みんなじぶんのゆっくりプレイスがえらべたみたいだね!!みんなえらいえらいさんだよ!!」
「ゆう!!!まりしゃはえらいえらいしゃんだよ!!!」
「ゆっふん!!!れいみゅもえらいえらいしゃんなんだよ!!!」
ゆっくりという個体は、自分が入れそうな穴を見つけると、
そこを自分たちの巣穴にしようとする習性がある。
穴の中に先客がいる場合はその場所をあきらめるのだが、
先客がいない場合、そこを勝手に自分のおうちにしてもいいという、ゆっくり同士の暗黙の了解があるのだ。
この一家もその掟に従い、たこつぼを自分たちのおうちにしようとしている。
そして誰も文句をいう者がいないので、その場所は晴れてゆっくりたちのおうちになったようだ。
「ゆう・・・・なんだかれいむはおなかがすいてきたよ。
みんなでいっしょにおいしいものをたべにいこうね!!」
「「「ゆっくち~~~!!!」」」
「ゆう!おチビちゃんたち、みんなついてくるんだぜ!!!」
「「「ゆっくちついていきゅよ!!!」」」
この一家の親れいむは、少し能天気なようだ。
自然の中で生きるゆっくりたちは、いつでもおいしいものを食べられるという保障を得られない。
狩りをして、そこで何も捕ることができなければ、結局は何も食べることができないのだ。
親まりさは頻繁に狩りに出かけているので、そのあたりのことは良く分かっているらしい。
向こう見ずにも思えるれいむの提案だが、
みんなで何かを食べに行こうという意見には、まりさも大賛成であった。
まりさ一匹だけで全員分の餌をとってくるのは、とても大変だからである。
みんなでゆっくりのおうたを歌いながら、食べるものがありそうな場所を探す。
すると、子ゆっくりの足で20分、まりさの足で5分の距離に、草のいっぱい生えている場所を発見した。
まりさは一安心した。
草は非常食にもなるので、これだけの草があればまず空腹で死ぬことはない。
そして草がいっぱい生えている場所には、ゆっくりの餌となる昆虫がよく集まってくる。
さらに、草に付着した水分を摂取して喉を潤すこともできるし、
天敵が近くに出現すれば、背丈の高い草に身を隠すこともできるのである。
このように、草がいっぱい生えている場所というのは、ゆっくりたちが生きていくうえで非常に便利な場所なのだ。
この場所は巣穴から比較的近いので、この一家はこれからいつでも、手ごろな食べ物を得ることができそうだ。
「ゆゆ!おいしそうなクモさんがいるよ!!みんなでむしゃむしゃしようね!!!」
「ゆう!またクモしゃんだ!!」
「このあたりはクモしゃんがいっぱいいるんだよ!!」
「ゆう!クモさんはえらいさんだぜ!!クモさんのおかげで、ゆっくりできるあなさんと
ゆっくりできるえさばをみつけることができたんだぜ!!!」
感謝の言葉を述べるまりさだが、容赦無く蜘蛛(クモ)の足をひっぱる。
それとこれとは話が別のようだ。
プツッ
蜘蛛の足がちぎれる。蜘蛛はそのまま息絶えてしまった。
引きちぎった蜘蛛のかけらを子ゆっくりの前に置いてあげる。
「ゆう!いただきま~しゅ!!むちゃむちゃ、し、しあわしぇ~~~~!!」
「クモしゃんはとてもおいちいよ!!!ゆっくちはしあわしぇ~だよ!!!」
子ゆっくりたちは蜘蛛を食べて満足している様子だ。
餌を食べ終わった後、まりさは貯蓄用の餌を集め、れいむは巣の中に敷き詰める草を集め始める。
子ゆっくりたちは丸い石やきれいなお花など、珍しい物を集めている。
狩りをしていると夕方になった。
それぞれが見つけてきたものを巣穴に持ち帰る。
まりさが集めた餌は、貯蔵用のたこつぼに、
れいむが集めた草は、それぞれの寝床に、
そして、子ゆっくりたちが集めた珍しい物は、宝物としてそれぞれ自分たちの寝床に運んでいく。
持ち帰ったものを運び終えると、親れいむがトイレに関しての注意を始める。
「おチビちゃんたち!うんうんやしーしーはこのなかでしてね!!」
とあるたこつぼの中で親れいむがうんうんを始める。その下には少量の草が敷かれている。
身をもって、子ゆっくりたちにトイレの場所を教えているのだ。
うんうんを終えると、体を使って草を奥の方へ押しやる。
子ゆっくりたちもこれを真似するんだよ!とれいむは教える。
排泄物を奥のほうへ押しやることで、トイレの空間を広く保つようにしているのだ。
そうこうしているうちに夜になった。
子ゆっくりたちはそれぞれの寝床に入っていき、自分がとってきた宝物を抱いてすーやすーやし始める。
れいむとまりさはすこし大きなたこつぼへ一緒に入り、入り口に草を敷き詰め、中ですっきりを始めた。
ゆっくりたちにとって、明日の糧となるすっきりである。
こんなにゆっくりできる場所なので、れいむとまりさは、
もう少し赤ちゃんを増やしても良いのではないか、と考えているようだ。
すっきりを済ませ、自分の寝床に戻ったれいむは、
これからもこんな幸せがずっと続くと良いなぁ、と思いながら、
子ゆっくりのいる巣穴の方を眺めている。
巣穴を見つめる目がうとうとし始め、眠気に勝てなくなったところで、
れいむはすやすやと寝息をたて始めた。
一方のまりさは、角ばったかっこいい巣穴の中でゴロンゴロンと転がったり背伸びしたりして、狩りの疲れをほぐしている。
そして、ぐーっと伸びをしている最中に気持ちよくなって、そのまますやすやし始めた。
夜に吹く風は心地よく、ゆっくりたちはとても気持ちよさそうな表情ですーやすーやしている。
子ゆっくりたちは少しよだれを垂らし、むにゃむにゃと言いながら、宝物に寄りそって寝ている。
集めてきた宝物が抱き枕として役立っているようだ。
みんなしあわせそうに眠っている。
翌日、一家はゆっくりと目を覚ます。
大きなたこつぼにみんなが集まったところで、一斉に朝ごはんを食べ始める。
まりさが集めた貯蔵用の餌はちょうど空になった。
家族みんながお腹いっぱいになったので、まりさは大喜びの様子だ。
「ゆぴ~~もうおなきゃいっぱいだよ!!れいみゅはとてもゆっくちできたよ!!!」
「ゆうう!!!!おチビちゃんたちのしあわせそうなおかおをみてると、とてもゆっくりできるんだぜ!!」
「ゆう!!まりさがかりをがんばってくれたおかげだよ!!まりさはとってもえらいさんだよ!!」
「ゆう!!れいむこそ、くささんをたくさんあつめてくれたおかげで
みんなとてもゆっくりすることができたんだぜ!!れいむこそえらいさんだぜ!!」
「ゆう!それならしあわせ~なおかおをしてるおチビちゃんたちもみんな、えらいえらいさんだよ!!
ゆゆっ!そうなるとかぞくのみんながえらいえらいさんなんだよ!!」
「えらいえらいしゃん!!」
「ゆっくちたちはみんなえらいえらいしゃんなんだよ!!」
朝食と雑談が終わると、子ゆっくりたちは自分の巣穴に戻る。
れいむとまりさは、一家のために狩りにでかけることにする。
狩りに出かける前に、それぞれ巣穴の入り口に草を敷きつめ、外敵が来ても大丈夫なようにしておく。
そんな苦労を知らない子ゆっくりたちは、昨日の疲れもあってか巣の中でスヤスヤと二度寝を始めた。
餌場と巣穴を何度も往復するれいむとまりさ。
今回の狩りも、たくさんの収穫があったようだ。
まりさは、みんなが満足できる量の餌を、
れいむは、よりふかふかで気持ちのいい寝床になる草を集めることができた。
そんなこんなで、ゆっくりした時間をゆっくりたちは過ごしていく。
あっという間に一ヶ月が経った。
7匹だったゆっくり一家は、いつの間にか13匹に増えている。
ちょうどその頃、別のゆっくり一家がこのたこつぼを発見し、
先に住んでいたゆっくり一家のおとなりさんとして、仲良く暮らし始める。
家族が増えたみたいで、子ゆっくりたちは嬉しそうだ。
さらに一ヶ月経った。
周りからゆっくりがたくさん集まり、100個あるたこつぼのうち、88個のたこつぼにゆっくりが住むようになっていた。
残りの12個は、共有の部屋、貯蔵庫、トイレとして使っている。
今、88匹のゆっくりがそれぞれのたこつぼに住み、
赤ゆっくりも含めると、合計で120匹を超える大きな群れになっている。
これだけの数のゆっくりがいても、巣穴の近くには優良な餌場があるので、みんな食べるものには困らない。
ここに住み始めたゆっくりたちは、この場所から離れようとする気配を見せない。
なぜなら、ここはとてもゆっくりできる場所で、わざわざ引越しする必要が無いからだ。
この時期がゆっくりたちにとって最も良かった・・・・
寒い冬が近づいてきた。それぞれの貯蔵庫には豊富な餌が蓄積されている。
トイレにも排泄物がたくさんたまってきている。
たこつぼの中のゆっくりたちは、食べるものにはあまり困っていないのだが、
ひとつ、困ったことが起きていた。
ゆっくりたちの巣穴が、圧倒的に足りないのだ。
今ここにいるゆっくりの数は200匹を超えている。
以前は1匹につき1つの巣穴があったのだが、
今は1つの巣穴の中に、最低でも2匹以上のゆっくりが住むようになっている。
後からきたゆっくりや、新しく生まれた子ゆっくりが
先客のいる巣穴に住まわせてもらっているのだ。
「ゆう~~、せまいよ~~~!!」
「がまんしてね!!ほかにはいるあなさんがないんだよ!!」
「ゆ!!!!れいむはおこったよ!!!
あとからきたゆっくりがおそとにでればいいんだよ!!!
れいむはさいしょからここにいたんだから、ここはれいむのゆっくりプレイスだよ!!
あとからきたゆっくりは、れいむのゆっくりプレイスからとっととでていってね!!!」
「しょうだよ!!あときゃらきたゆっくちはとっととでていっちぇね!!!!」
「どぼぢでそんなこというのぉおおおおお!!!!」
もう、たこつぼは飽和状態なのだ。
子ゆっくりたちが大事にしていた宝物は、巣の中にあると邪魔なので、すべて巣穴の外に出される。
トイレや共有部屋だった場所も中の物が全て取り出され、ほかのゆっくりの寝床として利用される。
ここまで徹底すると、これはもう居住ではなく、収容だ。
さっそく巣の中のスペースについて、ゆっくり同士で喧嘩が起こっているようだが、
ゆっくり同士が殺しあうという事態はまだ起こっていない。
この場所で一緒にゆっくりする仲間なのだ、そう簡単には排除しない。
しかし排除しないことが、ゆっくりたち自身をどんどん苦しめていく。
気温がますます下がり、たこつぼの周りに雪が積もり始める。
ゆっくりたちは自分の寝床に籠もり、中に蓄えてある餌をゆっくり食べながら、ひたすら春が来るのを待ち続ける。
ゆっくりたちはその間、住居者の増えた狭いたこつぼの中で、あまりゆっくりせずに過ごすことを強要される。
少し体を動かすにも、同居しているゆっくりの許可を取らなければならない。
一方が自分の楽な姿勢ばかりとろうとすると、もう一方が窮屈になる。
それが原因で相手との喧嘩になる恐れがあるので、ゆっくりたちは狭い空間を譲り合わないといけない。
どのたこつぼに入っているゆっくりも、すでにガマンの限界に達しているようだ。
さらに、1つのたこつぼに2匹のゆっくりがいる場合、1匹で過ごす場合に比べて餌の減りは3倍早い。
それは、相部屋のゆっくりに餌をとられまいと、ゆっくり同士が競うように貯蓄してある餌を食べるからだ。
いろいろなことが積み重なり、とうとうゆっくりたちの堪忍の緒が切れた。
同じたこつぼ内のゆっくり同士で、一斉に殺し合いが始まってしまったようだ。
こうなってしまうと、力の弱い赤ゆっくりが優先的に殺されていくことになる。
「ここはれいむがゆっくりするあなさんだよ!!えささんをいっぱいむしゃむしゃする
くいしんぼうなあかちゃんはとっととしんでね!!!」
「ゆうううう!!!どうぢでしょんに゛ゃぎょという゛に゛ょぉおおおおお!!!!
あときゃらきたゆっくちこそしんぢぇいっちぇにぇ!!!ゆぶっ、ゆぎゃぁぁあああ!!!」
「ゆっくりしんでね!!!ゆっくりしんでね!!!ゆっくり・・・ゆぎゃああああああああ!!!」
「おチビちゃんをころすゲスなゆっくりはとっととしんでね!!!」
「ゆうう!おきゃーしゃ~~ん!!!たすきゃったよ~~~・・・ゆっ、ゆぎゃあああ!!!おきゃーしゃん、どうじで・・・」
「ごめんねおチビちゃん。おチビちゃんがいると、おかーさんのえささんがなくなるんだよ。ゆっくりりかいしてね!!!」
「ゆぅうううう・・・・しょんなのいやぢゃよ!!まりしゃもゆっくちしちゃいよ!!・・ゆぎゃあああああああ!!!!」
「それいじょうなかないでね!!それいじょうないたら、おかーさんもさびしくなってくるよ!!」
「も゛っちょ・ゆっぐぢ・・じだがったよぉおおお・・・・」
この巣穴の中では、最初にたこつぼを発見した一家の親れいむが生き残ったようだ。
しかしその代償として、後から入ってきたゆっくりれいむと、自分の赤ん坊を殺してしまったようだ。
これだけ窮屈だと、別の場所でゆっくりしたほうがはるかにましな気がする。
しかし、冬が訪れる前にゆっくりたちがそうしなかったのは、
ここ以上のゆっくりプレイスを探すことができなかったからである。
遠出をしていて自分のたこつぼが横取られてもいけないので、
遠くまでゆっくりプレイスを探しに行く訳にもいかない。
そう、ゆっくりたちは完全に、このたこつぼに依存しきっているのだ。
何かに絡め取られているかのように
ゆっくりの数が飽和状態に達した状況で、ゆっくりたちが快適にゆっくりするためには、
他のゆっくりを蹴落としてでも、自分がゆっくりしようとしなければならない。
雪が積もって巣穴の外に出ることができないので、ひとたび巣穴の中で起こった争いは、
たこつぼの中のゆっくりが一匹になるまで終わらない。
そして争いで生き残った一匹だけが、寝床と餌を独占できるのである。
ただし残念なこともある。殺した相手の死臭を常に嗅ぎながら、冬越えをしなくてはならないということだ。
「ゆゆ!!!ゲスなゆっくりとおチビちゃんからくさいくさいにおいがするよ!!
くさいくさいゆっくりはとっととおそとにでていってね!!!
・・・ゆ!!いりぐちさんがあかないよ!!どぼぢでいりぐぢざんはれ゛い゛む゛をいじめ゛るのぉお゛お゛お゛お゛!!!
ゆううう!!!!くさいくさいはがまんできないよ~~~!!!ゆうっ、おぇえええええええ・・・」
大量の餡子を吐き出す親れいむ。しかし死臭はたこつぼの中に充満し、いくら餡子を吐いてもすっきりすることはない。
匂いに耐え切れなくなった親れいむは、しきりに入り口の草やたこつぼに体当たりし、
体中あざだらけになりながら外に出ようとする。だが、外には一向に出られない。
やがて親れいむは、傷口から漏れ出した餡子と自分の吐いた餡子が許容量を越え、そのまま永遠にゆっくりしてしまった。
そんなこんなで、ピーク時に200匹以上いたゆっくりは、
春を迎える頃には50匹にまで減っていた。
だいぶ数が減ったようにも思えるが、
他の群れでは、数十匹ものゆっくり全員が冬を越せずに、群れ自体が消滅するケースもある。
それに比べれば、ここにいるゆっくりたちははるかにましである。
力の差があるものの、ここのゆっくりたちが春まで生き残る確率は、単純に25%弱である。
春が来て暖かくなり、ゆっくりたちは巣穴から出られるようになった。
しかし、10匹ほど不運なゆっくりがいる。
小さなたこつぼの中でぐんぐんと大きくなり、
たこつぼから出られないサイズにまで成長してしまったゆっくりだ。
「ゆうう!おそとにでられないよぉおお!!!お゛そとでゆ゛っぐりじだいよぉお゛お゛お゛お゛!!!」
こうなるともう手遅れだ。
何も食べずにそのまま餓死するか、たこつぼの中で成長を続け、そのまま圧死するしかない。
ほかの40匹のゆっくりたちが一斉に外に出ていった。
ところが、何か外の様子がおかしい。
近くに川ができているのだ。
「ゆ?なんでおうちのちかくにおみずさんがきてるの?」
「これじゃ、かりにいけないよ!!!」
「ゆううん、おなかちゅいたよ~~~なにきゃたべちゃいよ~~~~」
冬篭りをする前は、このような川は確かに存在しなかった。
この川の正体は、雪解け水によって形成される、一時的な川のようだ。
雪解け水の量は意外に多く、そこには流れの早い川ができている。
ちょうど、たこつぼの周りを囲うように川が流れているので、
餌場に行くためにはこの川を渡らなければならない。
「ゆううん、なにかたべたいよ~~~!!!」
「はるさんになったのに、これじゃゆっくりできないよぉおおおお!!!」
「おみずさんはやくなくなってね!!!」
その日ゆっくりたちは、川の水をずっと見つめながら過ごした。
翌日、水が無くなっていることを期待して、ゆっくりたちは外に出た。
しかし、周囲の川は無くなるどころが、余計に広くなってきている。
「どぼぢでおみ゛ずざんがふえ゛でる゛の゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
「このままだとゆっくりたちはなにもたべられないよ!!!」
空腹に耐えられなくなった一匹のありすが、対岸へ渡ろうと川に入る。
川の流れは予想以上に速く、ありすが水につかった瞬間、その体はあっという間に流されていった。
一匹のまりさは、帽子に乗って対岸へ渡ろうとするが、
帽子を水に浮かべた直後、帽子だけが下流へ流されていった。
帽子のなくなったまりさは、流された帽子を必死に追いかけていくが、ぬかるみに足を滑らせて川の中に転落してしまった。
ばちゃばちゃと川を流れるありすとまりさ、その体は急流によって溶かされ、1分もするとそのまま消滅してしまった。
まだ早い段階であれば、ゆっくりたちは対岸に渡ることができたかもしれない。
だが川の水量が増えた現時点で、ゆっくりたちが川を渡る手段は無い。
さらに追い討ちをかけるように、空から雨が降ってきた。
仕方なく、ゆっくりたちはたこつぼの中に入っていった。
空腹に耐えながら、雨と水が止むのをひたすら待つ。
そしてこの時点で、ゆっくりたちが貯蓄していた餌がとうとう底をついてしまった。
翌日には雨が止んだ。
50匹生き残っていたゆっくりのうち、30匹が飢えと事故で死んだ。
残る20匹も空腹と死の恐怖に犯され、ゆっくりとしているゆっくりは一匹もいない。
ゆっくりたちの空腹は限界を超えてしまったようだ。
寝床に使っている草や、栄養にならない自分のうんうんさえも食べて、なんとか飢えをしのごうとしている。
この日もゆっくりたちはたこつぼから出てくるが、川の向こうへは渡れそうにない。
日を追うごとに、たこつぼの中で餓死するゆっくりが増えていった。
「も゛っど・・・・ゆ゛っぐり゛・・じだ・がっだ・よ゛ぉお゛お゛お゛・・・・」
「お゛な゛ががず・・・い゛・・だ・・・・よ゛・・・・・・」
「ゆ゛っ・・・・ゆ゛っ・・・・・ゆ゛っ・・・・・・・・・・・・」
ゆっくりたちの死に行く言葉がたこつぼに反響し、低音の合唱となって聞こえてくる。
その声は天国には届かず、地獄の悲愴曲としてこだまする。
その声を聞くゆっくりたちも連鎖的に絶望を感じ、ストレスでますます弱っていく。
「どぼぢで・・ごんな゛ごどに・・・・・」
「ふゆさん・・がくるまでは・・ゆっくり・・・できたのに・・ここはゆっくり・できないばしょなんだよ・・・」
共食いをすればお腹が満たされるのだが、共食いは本能的にゆっくりできないと感じるのであろう、
共食いをしようとするゆっくりは一匹もいない。
それから4日経った。
現在、3匹のゆっくりがかろうじて生き残っている。
しかしその3匹も、いつ死んでもおかしくない状況だ。
そんな地獄の中に悪魔が現れる。
れみりゃだ。
今までも何度か、れみりゃがここに飛んできたことがあるのだが、
ゆっくりたちはたこつぼの中に逃げこみ、入り口を草で封鎖することで、
れみりゃを追い返すことに成功していた。
しかし今は、入り口を封鎖するための草が無い。
ゆっくりたち自身が、空腹に負けてすべての草を食べ尽くしてしまったのである。
こうなるとゆっくりたちは、比較的小さなたこつぼの中に逃げるしかない。
しかしさらに不幸なことに、残った3匹はいずれも、れみりゃの体より大きい。
どのたこつぼに隠れたとしても、簡単にれみりゃに侵入されてしまうのだ。
3匹に逃げ場は無い。
飛んでくるれみりゃを見れば、ゆっくりたちは何も考えずに逃げるはずである。
しかし、3匹のゆっくりのうち2匹はその場に残り、飛んでくるれみりゃに対して身構えている。
この2匹は、れみりゃを食べようと考えているようだ。
空腹のあまり、正常な判断ができなくなっている。
残念ながら、いくらゆっくりたちのお腹が空いていようと、捕食種は捕食種。
れみりゃから必死に逃げなければ、ゆっくりたちは食べられてしまうのだ。
さっそくれみりゃが2匹に近づき、そのうち1匹の頭を噛む。
「ゆぎぃ!やめてね!!!ゆっくりできないよ!!!!」
「れみりゃをたべるよ・・・いただき・・ま~す・・・・」
噛まれたゆっくりは悲鳴をあげ、もう一匹は空腹で元気がないが、なんとかれみりゃにのしかかろうとする。
れみりゃは、のしかかろうとするゆっくりをかわし、一方のゆっくりを口にくわえたまま空に舞い上がり、
高い位置からそのゆっくりを落とす。
落下したゆっくりは、くちゃっとつぶれて動かなくなった。
さらにれみりゃは2匹目のゆっくりに近づく。
地上のゆっくりは、その場でじっとしているだけである。
すぐに2匹目のゆっくりも上空に連れられ、そこから落とされてしまった。
生き残ったゆっくりは、たこつぼに逃げ込んだ1匹だけである。
先ほどたこつぼに逃げ込んだゆっくり、じつは、
最初にたこつぼを発見した一家の親まりさであった。
家族みんなを失い、1人ぼっちになって途方にくれていたが、途中で何か吹っ切れたようだ。
その冷静な判断力で、地獄とも呼べるこの状況をかろうじて生き延びていたのである。
食べられそうな草を早めに食べていたおかげで、殺された2匹よりは体力が残っていたようだ。
今回も冷静な判断力で、真っ先に捕食種から逃げ出したのだが、果たしてまりさの運命はどうなるのか?
れみりゃは、殺した2匹を食べようとしない。
しきりに、たこつぼの方向をチラチラと伺っている。
たこつぼに逃げたまりさに気がついているようだ。
その様子を見ていると、このれみりゃは同種の中でもかなり賢い個体だと考えられる。
賢いハンターは、ほかのハンターに獲物を横取りされる心配が無い場合、
複数の獲物を先に殺してから、その後でじっくりと獲物を食べ始める。
そうすることで、たくさんの獲物を狩ることができるのだ。
「もういっぴき、どこかにかくれているはずなんだど~~!!!はやくでてくるんだど~~~!!!」
れみりゃはたこつぼに近づき、一つずつ中を見ていく。
中には他のゆっくりの亡骸が入っているが、れみりゃは見向きもしない。
生きているゆっくりを殺すことが先決なのだ。
対してまりさは、絶対絶命のピンチに陥っていた。
扉となる草はもう無い。
れみりゃに見つかってしまえば、その時点でアウトである。
れみりゃの声がジワジワとまりさのほうに近づいてくる。
まりさは、いつでも外に飛び出せるよう構えている。
「ここからいきたあまあまのにおいがするど~!!ここにいるんだど~~!!!」
れみりゃが穴の中に飛び込む!同時にまりさが穴の中から飛び出す!!
・・・・・・・・
衝突する音は聞こえなかった。
「う~?あまあまがいないんだど~~~。・・・・・・うっ!?うー!!!うしろになにかあたったんだど~~!!!」
れみりゃは、まりさのいた穴の隣に入ったようだ。
その穴の中には、まりさのうんうんがベットリとついた帽子が入っていた。
れみりゃはその匂いにつられたようだ。
外に飛び出したまりさは、すぐさま背後かられみりゃに体当たりする。
体当たりされたれみりゃはたこつぼの奥に押し込まれ、たこつぼとまりさに挟まれてダメージを受ける。
痛さと暗さでパニックになり、れみりゃは体を反転させることができない。
そのスキをついて、まりさが何度も何度も体当たりする。
「うーうー!!やめるんだど~~~!!!いたいんだど~~~くらいんだど~~~~!!!さくやぁあああ!!!!」
れみりゃは何十回も体当たりをくらう。
そしてとうとう、れみりゃはつぶれて動かなくなってしまった。
まりさはそれを確認すると、すぐにその場から離れ、先ほど殺された2匹のゆっくりの亡骸をたこつぼの中に移動させ始めた。
そして、周りにほかのれみりゃがいないことを確認してから、亡骸となったれみりゃをゆっくりと食べ始める。
ゆっくりたちの亡骸をわざわざたこつぼの中へ移動させたのは、
埋葬するだとか、まだ生きてるかもしれないだとか、そういうことを考えたわけではない。
ただ、ゆっくりの亡骸をほかのれみりゃに発見されて、
近くにいる自分もついでに発見されないようにするため、亡骸を目立たない場所に隠しただけである。
れみりゃをゆっくりと食べれば、まりさの命は1週間持つであろう。
それまでに川の水が引いてくれれば、餌場に移動することができる。
つまり、生き残ることができるのだ。
れみりゃの亡骸を食べることで、まりさは生きているという確かな充実感をつかむ。
あとは川の水が引くのをひたすら待ち続けるだけだ。
それから5日後、とうとう川の水が無くなり、川の向こう岸に移動できるようになった。
歓喜の声をあげるまりさ、その声を聞くものは誰もいない。
200匹以上いたゆっくりのうち、このまりさ1匹だけが生き残っている。
そのほかのゆっくりたちは、たこつぼの中で永遠にゆっくりしている。
まりさは足早に餌場へ向かった。
そこには、春の息吹を感じた虫たちがたくさん姿を現しているはずである。
綺麗な花や大量の草が生い茂り、お腹いっぱい満足するまで餌をむさぼり続けることができるはずである。
そこで他のゆっくりを見つけ、子供を作ってたくさん子孫を残すことができるはずである。
餌場に近づくにつれて、花の香りが辺り一面に漂い始める。
そこに広がる光景に、まりさは思わず大量の涙を流し、体を震わせて大量のしーしーをもらした
花は一面に咲き乱れ、草は青々と茂り、たんぽぽやちょうちょなどありとあらゆる春のシンボルがそこに集結している。
まりさ一匹だけでは、とうていゆっくりしつくすことのできない至福の幸せがそこにある。
何ものにも邪魔されることの無い、とてもゆっくりとしたゆっくりプレイス!!!!
まりさはその場所に近づいていく。その足取りはゆったりしている。
まりさの涙が止まらない。大量の涙で顔がくしゃくしゃである。
目を潤ませ、ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・と声をあげる。
体の震えを止めることができない。体の震えのせいで、まりさは何度かつまずいてこける。
こけながらも、目を見開いてその光景を見ながら一歩、また一歩前進していく。
恋をするように、待ちに待ち焦がれ、耐えに耐え、その光景に会いたくて会いたくて、苦しい夜を何度も過ごして、
まりさはとうとう、誰もがうらやむ至福の場所に踏み入ることが・・・・・・・・
餌場までわずか2m
まりさと餌場の間には、別の川が流れていた。
「どぼぢでぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!!!ごんな゛の゛ひどい゛よ゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!」
天国にたどりつきかけたまりさ
しかしつかまっていた蜘蛛の足がちぎれ
再び地獄の底に落ちていった
この仕打ちには、さすがのまりさも冷静さを失ってしまったようだ。
川のほうへゆっくりと近づいていく。目の焦点は合っていない。
そしてまりさは、流れの速い川の中へ入っていった。
同じ死ぬにしても、天国に近い場所で死にたい、そう考えたようだ。
川の水は容赦なくまりさを飲み込んでいく。
しかし運よく、まりさは餌場の方の浅瀬に流れ着いた。
とうとうまりさは、餌場にたどりつくことができたのだ。
そして、そこに生えているたんぽぽの前にたどりつき、
たんぽぽの葉っぱを口に含んだところで、力尽きて死んでしまった。
一ヵ月後、雪解け水の川が完全に引いた。
たこつぼの中の甘い餡子やゆっくりのお飾りは、さまざまな生き物が持ち去って行く。
それから二ヶ月後、2匹のゆっくりがたこつぼを発見し、嬉しそうにその中に入っていった。
蜘蛛の姿を追って
蜘蛛は自らの足をちぎり、ゆっくりを地獄に落とす。
そう、蜘蛛はゆっくりの前に現れ、
たこつぼという地獄にゆっくりたちをおびき寄せているのだ。
そして、たこのようにたこつぼに入っていくゆっくりたち。
そこでたこつぼの快適さを経験してしまったゆっくりは、そこから離れられなくなってしまう。
そして、気づかぬうちにその身をじわじわと削られていき、最後には自然界の餌となるのだ。
では蜘蛛はどういうメリットから、ゆっくりを地獄に落とすのか?
蜘蛛に
メリットなどない
天国にいる神にメリットがある
すなわち
たこつぼと蜘蛛を置いた人間にメリットがあるのだ